●リプレイ本文
●通行止め
「見世物じゃねぇんだ! 命が惜しい奴は羅生門から出るんじゃねぇぞ!」
四月某日、晴れ。
いつもは旅人や行商人で往来の多い羅生門付近は、今日に限って物々しい雰囲気であった。
新撰組一番隊と、それを指揮する一番隊組長代理、鷲尾天斗(ea2445)が事が済むまで人払いを試みているが、やはり全ての野次馬をシャットダウンは出来なかった。
面白半分に埴輪大魔神を拝んでみようとするのは無論よろしくない。
危険な上に邪魔だからである。
「やれやれ‥‥まるで見世物だな。万が一我々が撃退し損ねたらどうするつもりなのか‥‥」
「子供たちには大人気のようでござるな、埴輪大魔神‥‥」
溜息を吐くカノン・リュフトヒェン(ea9689)や久方歳三(ea6381)の後ろでは、子供の『カッコイイ〜!』といった賞賛の声があちこちから上がっていた。
そう‥‥遠目とはいえ、埴輪大魔神はすでに羅生門から視認できる距離まで接近しているのだ。
彼らが撃退に失敗すれば、脅威はすぐさま京都に降りかかることになる。
「あのような巨体で京に押し入ろうとは無粋な奴だ‥‥デビルの新手の芸当か、はたまた埴輪原人の侵略かは知らぬが、黙って通してやるわけにはいかんな」
「原人? 幻人? どっちにしろ邪魔だいっ!」
「ち、近ー! やっぱり最初現われた時に、何か対策しておけばよかったんすよ〜!」
真幌葉京士郎(ea3190)はいたって真面目に発言しているつもりなのだが、後に楠木麻(ea8087)や太丹(eb0334)が続いてしまうとどうしてこうギャグっぽく聞こえてしまうのだろう?
それは誰にも分からない。(ぇ)
「そろそろ参りましょう。少しでも早く迎撃に回ったほうが、魔法の射程も取りやすいかと思います」
「埴輪大魔神‥‥大魔神などと酷い‥‥。埴輪はただ主命に忠実なだけ。悪いのは、埴輪を操って破壊活動をさせている何者かですのに‥‥。でも、今は止めないと‥‥都が‥‥!」
世界でも最強クラスの魔法使い、ジークリンデ・ケリン(eb3225)の言葉で全員が頷き、移動を開始する。
ふっと悲しい顔をして呟く一条院壬紗姫(eb2018)は、埴輪と心を通じ合わせることが出来る(?)稀有な人材。
それ故に、今回のような埴輪が大破壊をもたらすかもという状況は辛いのだろう。
「‥‥気の抜ける顔だこと。何よ、あのヒゲ」
「鎧も随分と豪華だな‥‥御丁寧に肩に『神』と書いてあるが」
「ボクは埴輪世界の神となるッ!」
「‥‥五月蝿い黙れ」
「ぬぉぉっ!? 串っ! これ、お団子か何かの串ですよねぇぇぇっ!?」
冒険者たちの思いを知る由もなく、ずしんずしんと歩を進める埴輪大魔神。
援軍としてやってきた藁木屋錬術とその相棒、アルトノワール・ブランシュタッドも、その外見に毒気を抜かれる。
ボケをかました楠木の額にアルトがなにやら投げつけてツッコミを入れた分、更に気が抜けた。
と。
「‥‥ところで。『はにきんぐ』のほうが字面的にも可愛いと思うのですが?(真面目な顔で)」
『知るかぁぁぁっ!?』
ここで更に一条院の天然ボケが発動、シリアス感を木っ端微塵に粉砕する。
四月馬鹿はもう過ぎたというのに、冗談みたいなこの状況‥‥果たして、笑って済ませられるかどうか―――
●埴輪大魔神はダテじゃない!?
埴輪大魔神。
丹波藩の南部、多田銅銀山付近から現れたという噂のある巨大な埴輪。
今まで数々の挑戦者を蹴散らし、新撰組七番隊をも打ち破ったその実力は‥‥まさに本物であった。
「くっ‥‥な、なんという硬さだ‥‥殆ど傷にならない‥‥!?」
ガギィンッ、という大音響が響き、カノンがスマッシュで叩き付けたハンマーの一撃が軽々と弾かれる。
全長5メートルの埴輪は、立ち止まるでもなく突き進む。
「オス! 右手にホーリーナックル、左手にホーリーナックル、合体拳法『牛角聖拳』っす!」
補助魔法で準備万端の冒険者一行。
フトシたんも全力全開で埴輪大魔神の膝裏を殴りつけるが、まるで無傷!
鬱陶しいと認識されたのか、逆に蹴りつけられて吹っ飛ぶ!
「い、意外と動きが速いでござるよ! オフシフトを使わないと攻撃が避けきれな―――」
攻撃は二度までだろうと踏んでいた久方は、フトシたんが一撃目を喰らい、自分が二撃目を避けたことで油断した。
いや、油断と言ってしまっては久方に悪いか。
まさか埴輪の一種から達人クラスの攻撃が三回も来るとは誰も思わないだろう。
「歳ちゃん感激〜っ!?」
一撃で重傷ダメージをもたらす鉄拳を喰らい、星になる久方。
攻撃も防御も想像以上の化物は、その威力を誇示するかのように叫ぶ(?)。
『はにー‥‥』
「しかし‥‥漢の浪漫と言うか何ていうか、この埴輪操縦してぇ! そうすりゃ京都の護りは完璧になるし、カッコいいんだが‥‥なぁっ! って、魔法全開でも駄目かよっ!?」
鷲尾の金棒ですらロクなダメージにならない。
最初のカノンが放ったスマッシュ込みのハンマーアタックのみが有効打。
それも微々たるダメージということは、槌系であってもスマッシュを絡めないと無駄ということか。
「おろおろ‥‥おろおろ‥‥」
槌を持ったまま、回避に専念する一条院。
埴輪を攻撃する事自体に躊躇がある彼女は回避が得意なのだが、彼女も気合を入れて避けないと星にされるだろう。
このメンバーの中で、唯一無傷で済みそうなのは‥‥。
「まずいな‥‥随分攻撃精度が高い。アルト、避けられるか?」
「‥‥なんとかね。でも気を抜くとやられるかも知れないわ。関節に縄金票撃ち込んでも効きやしないんだもの」
藁木屋錬術だけは持ち前の驚異的な回避で埴輪大魔神の攻撃をものともしない。
が、結構避けるはずのアルトノワールは当たる可能性があるという。
獲物に固執しない埴輪大魔神は、避ける藁木屋錬術たちもそこそこ相手するだけで進む。
アルトの射撃は正確だが、威力に欠ける。
槌で叩いてもさして堪えない相手に射撃武器など涼しいものだろう。
避けるだけでは埴輪大魔神は止まらない。ここは、やはり‥‥!
「北方の大公の道楽とばかり思っていたが、今はかような鎚が生み出されていた事を、感謝させて貰うとするか。京へ向かうがいかなる理由かは知らぬが、ここから先は俺達が一歩も通さん!」
大公の戦鎚という巨大で重い槌を振るい、まずソニックブームで様子見する真幌葉。
ダメージは望めないが、それでスマッシュEXは避けられる公算が高いが、スマッシュではダメージが薄いと判断、一気に接近して懇親の一撃を見舞う!
それを避けかけた(!)埴輪大魔神だが‥‥!
「避けさせん! 同時なら止めるくらいは!」
「大人しくバグッて殴られてハニーって言うっすよ!」
「‥‥鬱陶しいのよ、ヒゲ‥‥!」
カノン、フトシたん、アルトが同時攻撃で動きを制限! 直撃コースへ!
「これが俺の魂の一撃だ‥‥心無き土塊よ、再び土に帰るがいい!」
『はにー‥‥』
バギャァァァンッ! と甲高くも重苦しい音が響き、さしもの埴輪大魔神も大きくぐらつく!
しかし!?
「馬鹿な‥‥これでも、まだ―――」
真幌葉が、中傷で済んだ(!)埴輪大魔神の反撃を受ける瞬間‥‥ヤツの身体が、地面に沈んだ!
「志士の身分を捨てて、生まれ変わった不死身の体。土器の悪魔をたたいて砕く。アサーンがやらねば誰がやる!!」
ウォールホールの連続使用で埴輪大魔神の足元をすくい、体勢を崩して穴の中へ!
完全に嵌らないまでも、身体の半分くらいは地面に埋まってもがく埴輪!
さらにグラビティーキャノンで追撃するも、これは大して効かず!
「よ、よしっ! ここまで嵌ればもうロクに動けないはずでござるよ‥‥!」
「よっしゃ、全員離れろ! ジークリンデ、出番だぜぇっ!」
「お待ちしておりました。マグナブロー‥‥この魔力尽きるまで!」
鷲尾の合図でジークリンデが超越級の魔法を連打!
穴に嵌って動けない埴輪大魔神の足元から、巨大な火柱が三連続で巻き起こる!
『は‥‥はにー‥‥!』
「恐ろしい火力だ‥‥並の人間なら一撃で消し炭だぞ‥‥!」
「お、おぉぉ、おっかないっす‥‥(泣)」
カノンやフトシたんに吹き付ける風と、巻き起こる土煙で、視界はかなり悪くなった。
が、人を軽く三回は殺せる炎の連続攻撃‥‥流石にこれは勝負ありだろう。
「あぁぁ‥‥は、はにきんぐさんが‥‥(泣)」
「凄まじい防御能力だった。俺の全力であの程度の破損では、二度戦いたいとは思わんな‥‥」
「まったくだ。これだけ連携が取れた波状攻撃で超越のマグナブロー。流石の奴も‥‥」
土煙が収まり始める。そこには、埴輪大魔神の欠片さえ見当たらなかった。
バラバラに消し飛んでしまった、ということか?
しかし‥‥!
「あ‥‥ぁ‥‥! そ、そん、な‥‥!」
ジークリンデが、魔法力回復アイテムを使うことも忘れて見上げた空。
あちこち煤けてひび割れ、破損しているものの、青い空に悠然と浮かんでいたのは‥‥!
「なっ‥‥え!? ちょっ、飛んでるっすよ!? いや、埴輪が空を‥‥うぇぇっす!?」
「なにぃ!? 奴は化け物か!? それとも神か悪魔か!?」
「むぅ‥‥そういえば聞いたことがある‥‥!」
「なにー。しっているのれんじゅつー(←超棒読みのアルト)」
「西洋のゴーレムは、白金以上になると空を飛ぶ物もあるらしい。しかも飛ぶ方が移動速度が速いとか‥‥!」
藁木屋の言葉を肯定するように、埴輪大魔神は空中でくるりと向きを変えて飛んでいってしまう。
それは京都方面ではなく、もっと北西‥‥つまりは丹波藩の方角だ。
高硬度の金属でできているのか、ジークリンデの魔法すらも本来のダメージにならなかったようだが、それでも被害は甚大と判断し、ねぐらに戻ったのだろう。
この状況で明るい顔をしていたのは、埴輪の無事を知って喜んだ一条院だけだ。
これだけの面子がそろって、あれだけの攻撃を加えて、まだ逃げる余力があるとは信じがたかった。
魔法でもダメージが通り辛いのは、金属製ゴーレムの共通事項なのだろうか?
まぁ、人が燃える炎でも金属には大きな問題ではないことは多いが‥‥。
「これで終わりではないでござるな‥‥。きっと第二、第三の埴輪大魔神が来るでござるよ‥‥!」
「いやいやいやいや。まだ一体目も倒してないんですよ、ボクたち!?」
「あんなのがゾロゾロ出てくるようならこの国は終わりだ。はっきり言ってな」
「逃げたのはやっぱり丹波方面‥‥。丹波藩の『多田銅銀山』か‥‥調査した方がいいな」
何はともあれ、埴輪大魔神は大きなダメージを負って逃走。
冒険者たちの活躍で、京都はその恐怖から解放されたのだ。
しかし、ヤツはまだ滅びていない。
丹波藩の多田銅銀山に何があるのか‥‥それはまた、別の話であった―――
「はにきんぐさん‥‥今度こそ、心を通わせたいものですね‥‥」
‥‥え?