アルフのお仕事
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■ショートシナリオ
担当:西川一純
対応レベル:11〜lv
難易度:普通
成功報酬:5 G 55 C
参加人数:8人
サポート参加人数:1人
冒険期間:07月02日〜07月07日
リプレイ公開日:2008年07月04日
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●オープニング
世に星の数ほど人がいて、それぞれに人生がある。
冒険者ギルドでは、今日も今日とて人々が交錯する―――
アルフォンス・ブランシュタッド。
故郷であるイギリスから突然京都にやってきて、たまたま再会した姉の家に居候しているハーフエルフのナイトである。
気まぐれなのに妙にアグレッシブで、大のお姉ちゃんっ子。現在は定職も無く、半ばニートである。
が、そんな彼女が今日に限って妙にやる気を見せていた。
「一海、例の依頼の依頼書マダー? アタシも付いてくんだからー」
「例のって‥‥あの、ハーフエルフが起こした殺人事件ですか? 一応、もう出来てますけど‥‥」
冒険者ギルドの職員で、アルフとも知人である西山一海は、怪訝な顔で聞き返す。
付いていくとか言っていたが、数ヶ月間遊んでばかりの彼女だけに信用は無い。
ちなみに、アルフがせっついた依頼というのは、つい最近、ある山村で起こった殺人事件のこと。
村に住む青年が殺害され、その犯人が、同じ村の住人であるハーフエルフの女だというのである。
目撃者もあり、犯行は確定的。その女は逃走し、山を移動して逃げ延びるつもりらしい‥‥とのこと。
「だってそいつ、狂化して被害者を殺したハーフエルフなんでしょ? そーいうのはアタシの出番。アタシの仕事は、そーいうやつらを殺すことなの。ま、あんまり大っぴらにしちゃダメだって言われてるけどー♪」
「‥‥は?」
いつものような軽快な笑顔で、さらりと怖いことを言うアルフ。
彼女のことだから冗談ではないのだろう。彼女は不真面目ながらも自分の生き方に素直だからだ。
が、アルフもハーフエルフであることを一海は知っている。
ハーフエルフを毛嫌いする者も少なく無いが、一海は気にしていない。しかし、ハーフエルフが率先してハーフエルフを殺すというのも意味が分からない。
「知ってると思うけど、ハーフエルフってよく思われていないのがデフォなの。そういう待遇だから、ハーフエルフの中には『ハーフエルフの名誉を汚したものは厳罰にすべし』っていう考え方の連中もいるのね。ロシア以外じゃ、人間やエルフの社会に身を寄せてるのが多いから肩身が狭いのよっ‥‥てそんな話は別にいいか。そもそも狂化って、個人によって条件も症状もまちまちでしょ。真っ赤な目を爛々と光らせて、狂ったように暴れるのは怖いわよー。そんなの放置してたら、ジャパンでもハーフエルフのイメージが悪くなる。
だから、私は、そーいう『狂化して犯罪を犯したハーフエルフ』を狩ろうと思ってジャパンに来たわけ」
「へー、初耳ですね。だからこの依頼に随伴するんですか? 冒険者さんに任せればいいじゃないですか」
「いーやーよ。そろそろ何かしないとお姉ちゃんに追い出されちゃいそうだし、アタシはこういう仕事のためだけに育てられて生きてきたの。これ放置しちゃったら、アタシの存在意義が無くなっちゃうじゃない。ねーぇー、いいでしょー? 邪魔はしないからー♪」
「いや、まぁいいんですけど‥‥この依頼は抹殺が目的じゃないんですからね? 話して分かる相手だったり、捕まえて更生させられるようなら殺しちゃ駄目ってことを頭に叩き込んでおいてくださいよ?」
「はーい。わかってまーす♪」
「‥‥‥‥」
激しく不安だ、と思う一海。
ともあれ、依頼の協力者が多いに越したことはないだろう。
ハーフエルフが起こした殺人事件‥‥果たして、この事件の顛末や如何に―――
●リプレイ本文
●個人の主観
「‥‥アルフ殿は人とハーフエルフとの恋愛は成立‥‥幸せになれると思われますか?」
件の村へ向かう最中、一条院壬紗姫(eb2018)は、アルフにそう問いかけてみた。
聞けばハーフエルフである彼女の姉が、最近祝言を挙げたばかりなのだという。
それだけに、アルフの考え方やこの事件そのものに思うところが色々あるらしい。
問われたアルフはご機嫌で鼻歌などを歌っていたが、さらりとこう言った。
「なれるんじゃなーい? 認めたくはないけど、アタシのお姉ちゃんもなんだかんだで幸せそうだし。でも勘違いしないでよね! お姉ちゃんを一番好きなのはこのアタシなのだー♪」
「待て待て。私はアルフォンス殿のような考え方も分からないではない、むしろ一つの結論としては自然だと思っていたんだが。そんな理解のある台詞を吐いておいて、何故今回の依頼に同行している?」
「むしろいない方が厄介ごとが減った‥‥あぁいやなんでも(汗)。それじゃあレイラさんを殺す気はないのかな?」
「んーん。100パー殺す気まんまん〜♪」
「理不尽過ぎます。アルフォンスさんの考え方は僧兵という立場以前に、同じハーフエルフの身としても同意できるものではありません。考え直せとは申し上げませんが」
事が事だけに、今回の依頼にはハーフエルフの参加者が非常に多い。
カノン・リュフトヒェン(ea9689)も、ライル・フォレスト(ea9027)も、琉瑞香(ec3981)もハーフエルフである。
であるが故に、殺すといったかと思えば理解のあるような事を言い、でもやっぱり殺すという思考が理解できない。
ちなみにレイラとは、件の殺人犯のハーフエルフの名である。
「何て言うか‥‥他人事とは思えないから来たんだが、想像以上に厄介な荷物が紛れ込んでるな。嫁さんがエルフなんで、ハーフエルフ事件に関しては無関心ではいられないんだ、これがな」
「人が死んでる以上、それ相応の罪には問われる必要はあるとは思いますが、アルフォンスが手を下すべき事かといえば、それも後味が悪い気がします。どうしてそこまでこだわるのですか?」
「狂化して殺人ってのがまずかったわねー。通常の状態で人殺しっていうなら関係ないんだけど、狂化しての犯罪行為はダメ、ゼッタイ。情状酌量の余地無し。命を以って償うべし! ‥‥って、言われて育ったから」
「‥‥何それ。それじゃあなた、言われたままにそんなことを続けてきたの?」
「間違っていると断言は出来ませんが‥‥もっと違う道もあったんじゃありませんか?(汗)」
新撰組一番隊組長代理、鷲尾天斗(ea2445)もハーフエルフと縁の深い人物のようである。
そうでないベアータ・レジーネス(eb1422)も、南雲紫(eb2483)も、セイロム・デイバック(ea5564)もアルフの考え方がほぼ受け売りであることに愕然とする。
言われたからそうする。それではまるで人形だ。
アルフのような奔放な人物が、そんな言いつけに縛られているとは想像もしていなかったのである。
「だってさー、ブランシュタッド家って『ハーフエルフこそ選ばれた生命体だ』なんて考え方なんだもん。しかも呪われてるみたいに、代々仕組まなくてもハーフエルフが生まれるような恋愛模様を繰り広げてるのよ? 笑えるでしょ。だからこそ不名誉を許さない。独自の倫理観で同族を裁くの。でもだーれも文句は言ってこないらしいわよー? ま、アタシもそれでお小遣い貰ってるんだから文句はないかなー」
「‥‥お小遣い? ハーフエルフを殺して、お小遣い‥‥!?」
一番最初に質問を投げつけた‥‥議論の発端を作った一条院の体温が少し上昇する。
明確な敵意は発していないものの、憤っているのは明らかだった。
「悪いー? いいじゃない、犯罪者なんだし」
「‥‥ではお聞きします! アルフォンス殿は、今回の犯人があなたのお姉さんだったとしても、同じ事をするのですか!?」
「するよー。‥‥あぁ、ちょい間違いかも。手足の腱を切って抵抗できないようにしてから、今度こそアタシだけのお姉ちゃんになってもらっちゃうかもしんない♪ ‥‥んふふ‥‥それ、いいかもね‥‥!」
「‥‥っ! あなたは‥‥!」
赤く染まり始めたアルフの瞳。
それになお食って掛かろうとする一条院を、南雲が止めた。
「壬紗姫、止めておきなさい。アルフも、錬術がいる限りそんなことはあり得ないんだから、本気にしないの」
「はぁ‥‥やっぱそうだよねー。ちぇー」
どこまで本気なのか。おそらくすべて本気なのだろう。
それ故に、この事件において、アルフを抑えるのは絶対条件とも言えるだろう。
そして、山岳地帯をどれだけ登ったか。件の村が、ようやく見えてくる―――
●隠し事
「お前さんが言ったっていうのは絶対秘密にするから、知っている事を教えてもらえないかな」
「い、いや‥‥でも‥‥」
「俺は新撰組一番隊組長代理だ。嘘は吐かないさ」
「‥‥えっと‥‥ですね。絶対、絶対内緒にしてくださいよ? 実は‥‥あの家族、村長に疎まれてたんです」
「‥‥疎まれていた? 外国人だからですか?」
「は、はい。声高にしていたわけじゃありませんけど、『どこの馬の骨ともわからない外国の妖怪が、村の娘をかどわかして半妖怪を生ませた』と言っていたこともあるとか‥‥。あ、酔った勢いで、ですよ? 村長も悪い人じゃないんです!」
件の村には、事件の後ということもあり、鷲尾と一条院のみが調査に入った。
ハーフエルフや外国籍の者は自主的に村の外で待機。一見地味だが、充分に効果のある行動であった。
気弱そうな村人の男は、鷲尾の肩書きに安心したのか、細々と語り始めた。
曰く、レイラの家族は村長に疎まれていた。曰く、村長は息子とレイラの恋仲をどうにかして裂きたかった。
曰く、事件当日、村長はかなり酔っていた‥‥。
「ははんほほん。なーるほど。大体読めたが‥‥一つ確認させてくれ。村長はともかく、他の村人はどうだったんだ? やっぱりレイラちゃんたちをよく思っていなかったのか?」
「え? い、いや、その‥‥多分、みんな疎んでたんじゃないですか? 俺は別に違いますけど‥‥」
「‥‥それを、他の人たちに確認してみましたか?」
「そんな!? それで自分だけ疎んでませんなんて知れたら、今度は俺が疎まれっちまいますよ!?」
「‥‥そんな‥‥! そんな、狭い思い込みだけで一つの家族が‥‥」
「よせって。悪いな、かーなーり参考になった。大丈夫、お前さんのことは他言しないさ」
こうして、聞けば聞くほど哀しいすれ違いを思い知りつつ‥‥調査は続いた―――
●想いの果て
「ぶーぶー。ちょっと紫ぃ! なーんでアタシのことずっとマークしてるのよー!」
「放っておくと勝手に暴走するからでしょ。アルトに言われなかった? 同行者に迷惑かけるなって」
「確かにそうだけどー! ズルイわよ、お姉ちゃんの名前出すのはー!」
「ふふ‥‥なんとでも。まったく、こうしてる分には可愛いものなのにね」
さて、戻ってきた鷲尾と一条院と合流した一行は、レイラを追うべく、更なる山奥へと足を踏み入れる。
しかし、どこを探しても血の跡などは見つけることが出来ず、大雑把な方向しか手がかりは無い。
が、調査の結果、レイラはハーフエルフではあるが冒険者のような戦闘能力は無く、ド素人であると判明したのだ。
ならば、見つけてしまえば捕縛は簡単。少なくとも、このメンバーなら。
「サンワード‥‥。方向はあちらですね。まだ少々遠いです」
「OK。なら俺はちょっと先に行って調べてくるよ。山や森はお手の物だからさ」
「わかった。だが無理はするなよ。分かっているとは思うが、私たちの狂化は戦闘の素人ほど危うい」
「それなら私たちは、扇状に囲むように移動しましょうか。この鎖鎌も、なるべくなら使いたくないですから‥‥」
ベアータの支援の下、ライル、カノン、セイロムは素早く行動を開始する。
地形に適正のあるライルを先行させ、レイラを追っていく。
そして、どれだけの時が流れただろう?
ライルが、谷を流れる川のほとりで、力なく岩に寄りかかっている一人の女性を発見した。
「レイラ、さん? 無事かい?」
「っ!? だ、誰!? 追いかけてきたの!?」
「大丈夫、落ち着いて。俺もハーフエルフなんだ。狂化はちょっと待ってもらえないかな?」
「知らない! あなたがハーフエルフだって関係ないわよ! だってあなた、結局は私を捕まえに来たんでしょ!?」
「一応はね。でも‥‥犯人は君じゃない」
「‥‥っ! 本当に‥‥そう、思うの‥‥?」
「あぁ。仲間が村で色々調べてくれたからね。‥‥追いついてきたか。彼らのおかげさ」
あちこち破け、泥や砂で薄汚れた格好のレイラ。
ライルだけでなく、他の面々も現場に到着する。
狂化しかかっていたレイラの瞳が、大勢に囲まれたことでまた赤みを増した。
「落ち着いてください。メンタルリカバーをかけてみますので。ちなみに、私もハーフエルフですよ」
「俺はハーフエルフが嫁さんでな。どうも腑に落ちないんで調べに来たんだ。ずばり言うが、犯人は村長。酔ってお前たちが過ごしていた家に押し入り、お前を殺そうとしたが、息子がお前を庇って死んでしまった。それなのに、その罪をお前に擦り付けた‥‥といったところだろ?」
目に涙をためて、こくこくと頷くレイラ。
食べ物にも苦労していたのだろう、急に頭を振ったものだからふらついていた。
「だ、そうだ。残念だったな、アルフォンス殿。彼女は犯罪者ではない。よって殺す理由はない」
「そうなんだ‥‥ま、それならそれでもいいんだけど。けどさ、それって証拠あるの?」
「‥‥証拠? ‥‥!」
アルフに釘を刺したカノンと、レイラに保存食を分け与えていた一条院が、気づいてはっとする。
レイラの衣服には、刺された恋人に駆け寄ったときに付着したのであろう血がべったりと付いている。
しかも村長は、ご丁寧に目撃者まででっち上げている。
村長とハーフエルフ‥‥社会的にもどちらが信用されるかと言われれば、苦しいところだ。
「このままだと、レイラさんが犯人ということで無実の罪で裁かれてしまいます。かと言って、村長の罪を立証するのも難しいですし‥‥。匿うにしても、人一人預かるのは大変なことですよ?」
「だからって放っておけない! こういうことを許していたら、いつまで経ってもハーフエルフの立場は向上しないんだ」
セイロムとライルも頭を悩ますが、上手い解決策は出てこない。
「はいはーい、提案ー。いっそのこと村長殺しちゃえばぁ?」
「馬鹿を言わないでください。問題がすり替わるだけで解決しません」
「何度も言うようですが、軽々しく命を絶つような選択は止めてください」
「なによー。少なくともレイラは救われるじゃない」
ベアータも琉も、アルフの極端な意見をさらっと流す。
と。
「‥‥もう、いいです。あの人を殺したのが私だっていうことにされたくなくて必死で逃げてましたけど‥‥もう疲れました。最後に、あなた方のような人たちに出会えました。あなたたちさえ覚えていてくれればいいですから‥‥私も、彼の元に‥‥」
「‥‥駄目です! あなたにだって、幸せになる権利があるんです! だから、死ぬなんて絶対駄目です!」
「でも‥‥もう、彼はこの世にいないんです。彼がいなきゃ、私は‥‥幸せになんて‥‥!」
そう言われてしまうと何も言えない。
必死に説得を試みた一条院ですら、その一言で言葉を失ってしまったのだ。
金を払えば人は生き返る。そう言う者もいるが、必ずしもそうではない。いや、そうでないことの方が多いのだ。
「‥‥ん。おっけー、じゃあ選んで」
と、ここでまたもアルフの発言。
また妙なことを言い出すのかと一同がため息を吐くと‥‥。
「どうしても死にたいならアタシが殺してあげる。他の連中はやりたがらないみたいだから。でも、あなたの命を守って死んだ男の行動を無駄にしたくないなら、生きなさい。抗いなさい。出来ないなら‥‥それこそ死んでしまえ。死んだ男も、つまんない女を守ってつまんない死に方したってことになるだけよ」
「アルフ‥‥」
アルフの姉、アルトノワールと付き合いの長い南雲は、やっぱり姉妹なんだなと感心してしまう。
元々そっくりな顔立ちのアルトとアルフ。厳しいことを言うときの表情など瓜二つだ。
「私は‥‥私は‥‥!」
「ふ‥‥なんだ、随分優しいじゃないか。殺すとか息巻いていたわりには」
「お姉さんと同じで、随分捻くれていらっしゃいますね‥‥(苦笑)」
「言ったでしょ。狂化して犯罪しなきゃアタシのターゲットじゃないの!」
やがて、選ばれた一つの選択肢。
生きて、無実を証明するべく戦う日々。
味方はいる。
きっと、今日、この場に来てくれた冒険者たちは、レイラの味方だから―――