黄泉と鬼神の因果

■ショートシナリオ&
コミックリプレイ


担当:西川一純

対応レベル:11〜lv

難易度:難しい

成功報酬:9 G 4 C

参加人数:6人

サポート参加人数:-人

冒険期間:12月10日〜12月15日

リプレイ公開日:2008年12月23日

●オープニング

 神話より蘇った黄泉の女神‥‥イザナミ。
 中国地方を掌中に収めつつ、勢力と戦力を拡大し続け‥‥彼女はついに京都のすぐ隣、丹波藩をも制圧した。
 これは明日にも京都に不死者の軍団が進軍してきてもおかしくない、未曾有の危機である。
 しかし、イザナミはすぐに京都に兵を向けることはせず、京都周辺の藩に戦力の一部を送り込んだり、京都内部に黄泉人の何人かを潜入させたりといたって慎重であった。
 人類全体に憎悪を向けているイザナミだけに、この停滞は不可思議。
 まぁ、一気呵成に攻め立てられても困るといえば困るのだが‥‥。
 そして先日、ついに送り込んできた軍団も、十万と豪語する総兵力からすれば微々たる数字の1000程度。
 充分驚異的な数字ではあるのだが、先にも述べたように京都を攻めるには少ない気がする。
 憎しみを抑えてまで戦線の采配を行っていたイザナミにしては、少々拙い攻めではないか?
 失敗すれば無駄に兵を失うだけであろうことは、素人目にも明らかだ。
 だが、そこは流石に黄泉の女神。
 この進軍に隠された意図。そして、それを予見したとしても迎撃に出ざるを得ないと読みきった思考。
 その日、ある噂を耳にした京都軍上層部の面々は、一人残らず血の気の引く思いがしたという。
 京都に黄泉人が潜入したという報告。それだけならば、悔しいが以前にも事例がある。
 しかし、その黄泉人が向かった場所が『比叡山』とあっては洒落にならない。
 比叡山の鉄の御所には、未だに鬼王・酒呑童子が鎮座している。
 もし黄泉人が鬼と手を組んだら? イザナミと酒呑童子が協力して京都を攻めることになりでもしたら?
 その結果は、火を見るよりも明らかだろう。
 さらに悪いことに、目撃された黄泉人は、豪華な着物に身を包んだ女のような格好であったという。
 これがイザナミの部下の一人なのか、はたまたイザナミ本人であるかは定かではないが‥‥状況は決してよくない。
 上層部は冒険者ギルドに依頼を出し、何が何でも黄泉人と酒呑童子の接触を妨害するか、最悪でも彼らが手を組むことを合議する会談をぶち壊しにせよとの命を出す。
 どうやら両者が手を組む可能性が高いと踏んでいるようだが、何か思い当たる節でもあるのだろうか?
 黄泉の女神。そして、比叡山の鬼王。
 京都の未来のためにも、二者に手を結ばせるわけにはいかない―――

●今回の参加者

 ea1774 山王 牙(37歳・♂・侍・ジャイアント・ジャパン)
 ea2445 鷲尾 天斗(36歳・♂・侍・人間・ジャパン)
 ea6526 御神楽 澄華(29歳・♀・志士・人間・ジャパン)
 eb4646 ヴァンアーブル・ムージョ(63歳・♀・バード・シフール・イギリス王国)
 eb4803 シェリル・オレアリス(53歳・♀・僧侶・エルフ・インドゥーラ国)
 eb5475 宿奈 芳純(36歳・♂・陰陽師・ジャイアント・ジャパン)

●リプレイ本文

●待ちぼうけ
「探」
 意識を集中し、500mにわたる広範囲を探索する鷲尾天斗(ea2445)。
 オーラセンサーの対象は黄泉女神イザナミ。
 現在丹波まで迫り、十万の軍勢を以って西国を脅かす総大将が、単身で京都に潜入し、鷲尾達の現在位置である鉄の御所を目指しているという。
 その目的を京都上層部は鬼王、酒呑童子との同盟と推測した。
 確証はないが、如何なイザナミと言えど、敵地京都に乗り込んでくるのは余程の事。同盟と考えるのに不思議はない。
 魔法に反応はない。周辺にイザナミの気は感じられなかった。
「了解なのだわ。捜索班にテレパシーで伝えておくのだわ」
 シフールのヴァンアーブル・ムージョ(eb4646)は別働隊に連絡を取りつつ、鉄の御所内部にいる酒呑童子にも念話を飛ばす。
 アポイントを取るためだが、酒呑童子は拒否。
 理由が、『大事な先客がある』というのだから洒落にならない。
 偶然の一致でなければ、その相手はイザナミではないか。だとすれば酒呑童子は既にイザナミと通じている公算が高い。慌てたヴァンアーブルは仲間に対処法を聞きまくった。
「イザナミは本気で――生者と死者の境界を乗り越えても、酒呑童子と手を結ぶつもりなのですわ。あれだけの力を持つ者が、それほど都の闇は深いと‥」
 鉄の御所との交渉に賭けていたシェリル・オレアリス(eb4803)の顔に、苦悩の色が浮かぶ。
 最悪の場合、冒険者は酒呑とイザナミを同時に敵に回す。ともあれ、この場で強行突破は自殺行為。鬼に気づかれぬよう三人は潜伏し、様子をうかがう。

●捜索
 一方その頃。
 ムージョと連絡が取れる範囲で、直接イザナミを捜索する三人組があった。
 探索範囲が鷲尾のオーラセンサーと被るが、魔法だけに頼るのは不安もある。対策は多いに越した事はない。
「イザナミは必ず現れます」
 断言する宿奈芳純(eb5475)。
「占いですよね」
 御神楽澄華(ea6526)は疑いの眼差しを向けた。
「心外な‥‥暦道暦1003通りに、私の占術を駆使した結果です。外れている訳が無い」
 陰陽師にして達人占い師の誇りにかけて云う芳純。とはいえ占いは占い。当たるも八卦、当たらぬも八卦だ。まずは努力せねば何も成せない。
「ん‥‥私もイザナミは来ると思います。あの状況で、火雷に嘘は無い」
 果たして、その時は近づいていた。

「来た‥‥! あの容姿‥‥姿。イザナミに間違いない!」
 仲間の探知魔法を頼りに駈け出した山王牙(ea1774)が、山道をたった一人で登る着物姿の女性を発見する。
「焦りは禁物です」
 戦闘馬から飛び降りた澄華が、刀に手をかけた牙を止める。
「迂闊に攻撃すれば、イザナミの人間嫌いを煽るだけ。ここは、理を説いて後退を願いましょう」
「‥‥ええ」
 頭では理解しているが、山王はイザナミ阻止の覚悟が気負いとして表に出ていた。必死にならねば、とても止められない相手だ。
 冒険者達に気づいているや否や、イザナミは悠然と登ってくる。女神の名に相応しい絶世の美女。その姿を保つために人の命が潰えている事を冒険者達は知っている。

●因果
「良い眺めじゃな。都がよく見える」
 京都を見下ろしながら、イザナミは立ちはだかる冒険者達に話しかけた。
「我が封じられておる間に、人の世は様変わりしたが、再び京を見るとはのう」
「‥‥京都を知っている口ぶりだ」
「下郎、我を誰と心得るか? 退けや、今日はお主たちと遊ぶ気はないぞ」
 山王を一瞥し、イザナミはゆったりと歩を進めた。そこへ。
「お初にお目にかかります。私は陰陽師の宿奈芳純と申す者。道中を妨げるご無礼、御容赦願います」
 御神酒を差し出しつつ、転がるように進み出た宿奈が恭しく頭を下げる。
 一瞬足を止めたイザナミに、宿奈は逸る心を抑えて言葉を継ぐ。
「失礼ながらイザナミ様は鉄の御所におわします酒呑童子様に御用がおありのご様子。人の身で神たる貴方様の行いに物申すは僭越と存じますが、何卒人との争いに鬼を巻き込まぬよう、伏してお願い申し上げます」
「鬼を巻き込むなとは、傲岸な物言いじゃな。人間と鬼は争うておるのでは無かったかえ?」
「残念ながら争うておりまする。なれど酒呑童子様は長年争った延暦寺と友好を結ぶ程の御方。私は都との関係修復を切に願う者にて‥‥」
「聞き捨てならぬ。いよいよ会わねばならぬようじゃ」
 再び歩みを進めるイザナミに。
「どうしても進まれますか?」
「くどい」
「覚悟しておりました。愚かしいと思われましょうが、私共にイザナミ様と交渉の余地があった事はお忘れなきよう」
 宿奈がすすっと下がる。と、御神楽と山王が抜刀して前に出た。
「ここは生者の領域。黄泉神と言えど、許可なく脅かすならば志士として容赦は出来ぬ。あくまで退かぬなら相手になります!」
 人の理が通じるとは思えなかったが、澄華は口上を発する。
 決死の武士二人を見て、イザナミは口端を歪めた。
「お主達、母が子に会うを何故そうも邪魔だてするか」
『なっ‥‥!?』
 扇子で口元を隠しながらも、眉を顰めるイザナミに、ただ冒険者達は驚愕の表情を浮かべた。
 一方、その頃‥‥。

「新撰組一番隊を預かる鷲尾天斗。前回は慌しかったから、改めて名乗らせて頂く」
 鉄の御所の正面、硬く閉じられた巨大な鉄の門。
 押しても引いてもびくともせぬそれに、イザナミ来るの知らせを聞いた冒険者達が取り付いていた。鷲尾の何度目かの言上の後、不意に門が開いた。
 並の鬼より一回りも二回りも大きな体に、端正な顔立ち。
 強烈な存在感と強さを誇る鬼王酒呑童子が、鉄門の奥にずらりと揃った屈強な人喰い鬼を従えて出てきた。その数、50は下るまい。
 冒険者が見つめる中、酒呑童子がただ一人で鉄門をくぐった。
「待て!」
 この際、アポがあろうがなかろうが関係ない。鷲尾は、かつて鬼王の腕を切り落とした強敵。眼前に走り込んできた男に、酒呑は目を向けた。
「‥‥何用だ?」
「あらためて名乗らせて頂く」
 言上を繰り返す鷲尾を、酒呑童子は黙して見下ろす。
「今回参った理由はもう知れていると思うが、黄泉人がここに来るらしい。そこで京の上層部は鬼と黄泉人が盟を結ぶ可能性が高いと言う事で我等を寄越したが、腑に落ちぬ事がある。何故、都の上層部がそのように判断したのか。双方は確かに京の脅威だが、それだけで判断したとは俺には思えない」
 酒呑童子は無言。
 鷲尾は豪胆という他は無い。そんな人間の事情は自分で調べるべき事で、都の脅威、つまりは敵方と名指しする者に尋ねる話では無い。
「腑に落ちぬが、我等は冒険者。決定権も無ければ約束も出来ない。だからお願いする。何卒、イザナミとの盟は考えて欲しい」
 鷲尾の口上を依頼人が聞いたなら絶句したろう。
「虫が良すぎる」
 酒呑は一笑にふした。
「願うならば貴様の王に願え」
 酒呑童子は近隣の鬼族に大きな影響力を持つ。イザナミと盟を結ぶとすれば、畿内の鬼族を考慮した鬼王としての政治。鷲尾の頼み方では答えは決まっている、わざと失敗を狙ったものか。
「王様とは繋がらないのだわ」
 ムージョが呟いた。彼女は神皇と直接交渉を図ったが失敗。考えられるのは御所に安祥が不在か、テレパシーが届くほどムージョが安祥と接していないか。
「ちょっと良いかしら? 酒呑さんを慈円さんの縁者と見込んで相談があるのだけど」
 緊迫した空気を無視してシェリルが酒呑童子の前に出る。
「延暦寺の者か?」
「違うわ。だけど慈円座主とはご縁があった冒険者よ。慈円さんは遺体の返還も叶わず供養も許されない状態なのだけど、ささやかな供養をと思っているのよね」
 シェリルはリヴィールマジックのかかった目で酒呑童子を見た。
(「‥‥え、これは白魔法だわ。誰がかけたのかしら?」)
 呪いを受けているかもと思ったのだが。
「座主にはお世話になった。願っても無い話だが延暦寺が承知せねば悪かろう」
 慈円を慮る酒呑童子にシェリルはなお話を継ごうとし、
「俺はイザナミを迎えねばならんのでな、ゆっくり話してはおれぬ」
 冒険者達と歓談するうちにイザナミが到着すれば、王として非礼。立ち去るよう促す酒呑に、鷲尾は食い下がる姿勢を見せたがシェリルが止める。
「鷲尾さん、ムージョさん、ここはお暇しましょう」
「異議はないのだわ」
 シェリルの言葉は、退けという意味ではない。
 ムージョもそれを察し、鷲尾にちらりと視線を送った。
 別動隊と合流し、先にイザナミをどうにかする。少なくともこの場で酒呑童子と彼の軍勢を相手にするよりは現実的だ。
「それは困るな」
 酒呑童子の呟きに、晴れ渡る空に突如として黒雲が湧き起こった。
 稲妻と共に現れたのは鬼王の盟友、鵺の月王。
 雷獣は酒呑を背に乗せ、冒険者の頭上を飛び越えた。

●時の流れ
『ごめんなさい、しくじったのだわ! 酒呑さんがそっちへ!』
『‥‥承知。皆さんは無事なのですか?』
 御神楽はムージョの念話を受ける。最悪の展開だが、悩む時間が惜しい。
 事情を聞く間、澄華は七桜剣をイザナミに向けたまま微動だにしない。
「‥‥畏れながら、お手向かい致します」
 山王と視線を交わし、イザナミに左右から挟撃を仕掛けようと動いた。山王はオーラを付与、御神楽も火の呪を唱えた。
「愚か者」
 イザナミは片手を地面に当て、語りかけるように呪を紡ぐ。宿奈も後方に下がりつつ、感知魔法を準備した。
 二人の志士がタイミングを合わせて地を駆ける。
「なっ」
 山王は我が目を疑った。イザナミが一瞬で彼の眼前に現れる。あり様は忍者のような速度でイザナミが間合いを詰めたのだが、
「遅いわ」
 鋭い爪の攻撃を刀と楯で必死に受け止める。だが手数が多い。鎧の隙間を爪が切り裂いた。傷は浅いが、多量の生気を吸われて膝が崩れかける。
「迂闊‥!」
 山王はイザナミの攻撃を懸命に受け流した己を呪った。何故防御を捨てて刺し違えない。イザナミに迫る御神楽は、捨身を決意した山王と眼が合う。
「仕方ありません。一太刀なりとも‥」
 危うく死地に飛び込む彼女を救ったのは、宿奈の制止。
「御神楽殿!」
 リヴィールエネミーを使った彼は、逸早く地中から飛び出す青白い影に気づく。太古の鎧に身を包んだ透き通る体の戦士が四体、イザナミの周囲に現れた。
『母神様‥‥お懐かしい‥‥』
 冒険者を無視し、膝を折ってイザナミに頭を下げる亡霊戦士達。
「そんな‥‥鬼の領域、それも霊山で怨霊召喚?」
 イザナミ自身の戦闘力、更にアンデッド召喚まであるなら僧侶の居ない今の彼女らに勝機は無い。
 その直後。
 ずぅん、という大音響と共に、一匹の鬼が着地する。
 舞い上がる土埃が、鬼王の到来を告げた。
「くっそぉ! 駄目なのかよ!」
「黄泉の女神と、鬼王‥」
「最悪なのだわ‥‥!」
 鷲尾達が駆け付けて、役者が揃う。
 膝をついたまま冒険者らを牽制する酒呑童子に背後のイザナミが声をかけた。
「久しいの酒呑童子。いや‥‥建御雷神殿」

 建御雷神(タケミカヅチ)。
 日本神話に登場する天津神の雷神、剣神。

『なッ!?』
 冒険者一同は、もはや開いた口がふさがらない。
 反面、イザナミは酒呑童子に穏やかな笑みを見せた。心なしか楽しげですらある。
「都と戦っておるそうな。そちともあろう者が無様よの。腕を失ったと聞いたが」
「先代のようには参りませぬ」
「何?」
 振り返る酒呑童子に、イザナミは息を呑んだ。
「建御雷神殿では無い」
「先代は世を去りました。今は私が名を継いでおります」
 イザナミに対し、片膝をついて酒呑は頭を垂れた。
「面を上げよ。建御雷神殿で無くとも‥‥鬼王であろう。そちと我は対等で良い」
「ふむ。話せる国母神で助かる」
「ほう、建御雷神殿の若い頃に似ておるわ」
 扇子で口元を隠しながら楽しげに話すイザナミ。
 もはや次元が違う会話だ。これは神話の続きか?
「そうか建御雷神殿が‥‥生者の定めと言え、親不孝者よ」
 しかし。
 和やかすぎる。これでは同盟締結も確実。
 目を閉じたイザナミが、パチン、と扇子を閉じた一瞬。そこだけが、神話に人間が入り込める刹那であった。
「お覚悟を!」
 だんっ、と地面を蹴り、イザナミに斬りかかる御神楽。
 話し合いを主眼にする山王と鷲尾はこの場では動かない。澄華は違う。二人の因果は気にかかるが、両者の同盟は確実に陛下を害する。
 これが最善では無いにしろ、女志士に迷いは無い。
「是非も無し」
 宿奈は走りながらスクロールを開き、酒呑童子とイザナミの間に石壁を出現させた。
『やらせぬっ』
 疾走する女志士の眼前に古代戦士の亡霊が立ちはだかる。
 躊躇う澄華の横から、大きな影が躍り出た。山王の刀が旋風の如く亡霊戦士を切り裂く。
「私も、迷いません‥‥酒呑童子とイザナミが組めば、知将の名君の元に、一騎当千の豪傑が集う事になる。怨霊は私が引き受けます!」
 話したい事もあったが、今は仲間と都の為に。
「イザナミ!」
「させっかよ! 今度は腕一本じゃ済まねえぜ!」
「調子に乗るな小僧!」
 酒呑童子は鷲尾達が牽制した。シェリルが張った結界を酒呑童子の斬馬刀が粉砕し、その隙に鷲尾は飛び込む。

「お覚悟っ」
 御神楽とイザナミの一騎打ち。
 信じ難い事だが、山王の一戦で手数は向こうが上と見た。
「ならば‥」
 澄華は刀身に片手を滑らせる。高速詠唱のバーニングソード。桜色の刀が炎を発し、両手で構えた刀を上段からイザナミに叩きつけた。
「!」
 避けられぬと察した黄泉神は左腕をかざし、その腕に刀が深く食い込む。が、イザナミは傷ついた腕で刀を掴んだ。
「なっ!?」
 両手に力を込めるが、抜けない。
「良い戦士よな‥‥我の同朋となりや!」
 右の爪を繰り出すイザナミに、咄嗟に両手を離した。
 攻撃は空を切るが唯一の得物を手放した澄華を敵が逃す筈もなく、瞬く間に抑えつけられた。
「あっ」
 身体から急速に生気が抜けていく。
 その時、イザナミを白い光が包んだ。シェリルのピュアリファイ超越。
「おぉぉぉぉっ」
 並のアンデッドなら消滅する浄化の光にイザナミは耐える。
「おのれっ‥‥これほどの僧が居たかっ」
 苦悶の表情を浮かべたイザナミの腕が、半ば乾涸びている。
「何っ」
 冒険者達が見る間に、イザナミは乾燥し、肌はかさかさにひび割れていく。髪も艶やかな黒から灰、そして白へと変化した。
「あぁっ!」
 黄泉人を見慣れた冒険者にはどうという事は無いが、イザナミは狼狽し、扇子で顔を覆って後退した。
「今なのだわ! シャドゥフィールド!」
 漆黒の闇が周囲を包み込む。
「く、撤退か!」
 予め打ち合わせていた冒険者達は算を乱して脱出する。
 ムージョが結界を張ったのは、シェリルを脅威と見た酒呑が瞬く間に彼女を真っ二つにしたからだ。延暦寺に蘇生の使い手が不在で、冒険者達は慌てて山を降り、東寺に駆け込んで彼女を復活させた。
 イザナミと酒呑童子がどうしたかは、知らない。

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