大江戸捕物帳 黒い三連刀を追え!

■ショートシナリオ


担当:西川一純

対応レベル:1〜3lv

難易度:普通

成功報酬:0 G 65 C

参加人数:8人

サポート参加人数:-人

冒険期間:09月29日〜10月04日

リプレイ公開日:2004年10月02日

●オープニング

世に星の数ほど人がいて、それぞれに人生がある。
冒険者ギルドでは、今日も今日とて人々が交錯する―――

「どーもー、こんにちは。本日はお日柄もよく‥‥絶好の依頼日和だと思いませんか?」
 キラキラする謎のエフェクトを背負いながら、冒険者ギルドの若い衆は内容を記した紙を机に置く。
「皆さんもご存知だとは思うんですけれど、今江戸を騒がせている三人組の武芸者‥‥全員が刀身を真っ黒に塗装した刀を使うことから付けられたあだ名が『黒い三連刀』。結構馬鹿にできない被害が出てるんですよ」
 妙に目撃談の多いこの武芸者たちは、殺すことが目的なのではない。武士や志士といった武装した人間を中心に腕試しを申し込み、金を持っているであろう悪徳商人をちょいと脅して金を巻き上げるという、いまいちしょぼい感じが拭えない連中らしい。
 しかも必要ないと見なせば商人は殺さず、被害者がその足で奉行所に被害届けを出すこともしばしば。
「巷じゃ義賊だとかいう風潮もありますが、実際に殺された武士や志士もいる以上放っておくわけにも行かないでしょう。どんな理由があっても悪いことですからね。とはいえ相手は手練が三人‥‥奉行所も頭を痛めた挙句、こちらへ依頼が回されたわけです」
 依頼の紙には頭巾をかぶった三人の男が描かれているようだが、いかんせん顔が分からないのでは探しようがない。ここは大人しく、冒険者たちが囮をやるのが確実かもしれなかった。
「この連中が男だということだけは確実です。声を聞いた者がたくさんいますし、偽名でしょうけどこんなものまでわざわざ落としていったくらいですから」
 自己紹介のつもりだろうか、意外と達筆な筆跡でこう書かれた紙を取り出す。
 黒い三連刀 壱の太刀、大地丸(だいちまる)
       弐の太刀、茸ノ丞(たけのじょう)
       参の太刀、折手矢(おりてや)
「なーんかどこかで聞いたような気もしますけどね。まぁいいです、とにかく今回の依頼は彼らの捕縛で‥‥生死は問わず。でも彼らが繰り出すという一直線に並んでの連続攻撃には注意してくださいね♪」
 連中も腕試しをするにしてももう少しやり方というものがあるだろう。武装した人間を襲うというなら、いつ自分が襲われるかも分からないのが冒険者。後の憂いは早目に断っておくのが吉かも知れない。
 君は‥‥生き延びることができるか―――(ぉぃ

●今回の参加者

 ea2984 緋霞 深識(31歳・♂・浪人・人間・ジャパン)
 ea3813 黒城 鴉丸(33歳・♂・志士・人間・ジャパン)
 ea6269 蛟 静吾(40歳・♂・志士・人間・ジャパン)
 ea6381 久方 歳三(36歳・♂・浪人・人間・ジャパン)
 ea6657 ルー・エレメンツ(29歳・♀・ナイト・人間・ノルマン王国)
 ea6717 風月 陽炎(31歳・♂・浪人・人間・ジャパン)
 ea7029 蒼眞 龍之介(49歳・♂・浪人・人間・ジャパン)
 ea7148 柳川 卓也(30歳・♂・忍者・人間・ジャパン)

●リプレイ本文

●強襲! トリプル‥‥げふんげふん
 『黒い三連刀へ噂の乱気流攻撃に挑戦致したく候。十月一日子の刻、江戸市中大通りにて待つ 丸八小隊』
 街中にそう大きく書かれた張り紙が広まり、冒険者ギルドが流した情報も瞬く間に江戸中に広がった。その策を考案した久方歳三(ea6381)は、意気揚々と仲間を指定場所まで案内していた。
「さぁ、いよいよでござるな‥‥。黒い三連刀、やってくるか否か‥‥」
「私は昼間の方がよかったのですがね。決まったものは仕方ありません‥‥さて、私が正攻法で参加してもそんなに勝率は変わらないでしょう。それなら保険は掛けておかないと」
 黒城鴉丸(ea3813)は憮然として呟くと、さっさと暗がりである建物の陰へと引っ込んでしまう。
「まぁ連中も昼間よりは誘いに乗りやすいだろう。ですよね、先生」
「そうだな。情報は充分集めた‥‥後は相対し、作戦を実行するだけだ」
 蛟静吾(ea6269)と蒼眞龍之介(ea7029)は親しいらしく、随分気さくに話し合っている。事前の情報収集により、多少なりと奴らの知識は全員に行き渡っている。
「どっちでもいいでしょう。今はただ名だたる武芸者たる彼らを捕まえるのみです」
「ま、そういうこった。俺もこの日のために愛用の棍棒を青く塗ったんだ‥‥こいつも活躍させてやんないとな」
 『白い悪魔』という通り名を狙っているという風月陽炎(ea6717)と、恐らく青系の通り名を狙っているであろう緋霞深識(ea2984)。それを決めるのは人々と‥‥今回の活躍如何だろう。
「そうだね。でも例え出てきても、俺とルーさんの魅力でメロメロにしちゃうかも♪」
「‥‥あなた、変装したその声と顔で『俺』っていうのはやめてくれないかしら。はたから見てて恐いんだけど」
 忍者であり変装が趣味の柳川卓也(ea7148)は、何故か随分可愛い女侍に変装している。理由は『なんとなく』だそうで、女としては複雑な心境のルー・エレメンツ(ea6657)だった。
「‥‥おしゃべりはここまでだ。来たようだぞ」
 年長者である蒼眞が指差した先‥‥月明かりに照らされた大通りを三つの影がこちらへ向かってきている。
 頭巾をかぶった男と思わしき三人組は、絶妙のタイミングで同時に刀を引き抜く。漆黒に塗装された三本の刀は、月光の下でも判別がし辛かった―――

●必殺! じぇっと‥‥げふんげふん、乱気流攻撃!
「あぁ、貴方達が噂の黒い三連刀? 噂はかねがね伺っているわ。でも‥‥貴方達如きの剣、騎士には通用しないわよ? 何なら、アタシ達で試してみる? それとも、女如きには使えないのかしら?」
 素早く指示を出した蒼眞に従い、一行は所定のフォーメーションを組む。そしてこれも作戦通りに、蒼眞とルーが最前へ歩み出て三連刀と相対した。
「ふ‥‥俺たちも舐められたものだな。あんな大仰に挑戦状とは‥‥いや、評価してもらっているというべきか」
「へっ、自分たちから誘ったんだ‥‥殺されても文句はねぇよな」
「大地丸、どうやら乱気流攻撃がお望みのようだぜ。焦らなくてもくれてやるさ!」
 二人が挑発するまでも無く、三連刀は一旦距離をとって一直線に並ぶ。後ろの面々が乱気流攻撃を意識しての隊列を取っていることに気付きながらも、よほど自信があるのか三連刀はあえてその攻撃を選ぶ。
「上等じゃない‥‥こっちの狙いを知っててあえてとはね。嫌いじゃないわ、そういうの!」
「それが我らの武人としての誇りだ。茸ノ丞! 折手矢! 奴らに乱気流攻撃をかけるぞ!」
 『了解!』大地丸の声に二人が呼応する。駆け出す三人‥‥迎え撃つ7人! 最初にぶつかるのは‥‥ルー!
「遠慮はしないわよ! 砕けなさい!」
 バーストアタックとスマッシュを同時発動し、大地丸の武器破壊を狙うルー。だが!
「ふん、お前もか。ヌルいわ!」
 ゴゥッ! 大地丸が刀を薙ぐと同時に発する衝撃波‥‥ソードボンバーだ! こういう反撃に慣れているのか、非常に的確な返し技である!
「がはっ‥‥!?」
 受け止め及び迎撃しようとしていたルーは避けることができず、逆に吹っ飛ばされてしまう。三連刀の動きは止まらない!
「ちっ、なら次は僕だ! その技は連続じゃ使えないだろう!」
「へへ‥‥カウンターアタック狙いか? それも読んでるんだよ!」
 大地丸が右へ逸れると同時に放たれる真空波‥‥茸ノ丞のソニックブーム!
「なんだとっ‥‥ぐぁっ!?」
 間合いの外からの攻撃に対処できない蛟。三連刀は自分たちの技の弱点を上手く補う技を習得しているのが厄介だ!
「‥‥計算外だが‥‥出る!」
「戦いが計算どおりに行くかよ! 下調べが足りなかったなぁ!」
 一気に加速して蒼眞の懐に飛び込む折手矢。スタッキングでの超近接戦闘に、ブラインドアタックでの抜刀が発動できない! 
「ぐふっ‥‥!」
 膝蹴りが深々と蒼眞の腹をえぐる。蒼眞だけは軽傷で済んでいるが、一瞬の交差で三人が中傷ダメージで打ち倒されてしまった。そして三連刀は間髪いれずに後方にいた四人にバラけて斬りかかる!
「うわっと! あっら〜‥‥こ、これってやばくないかな?」
「強い‥‥甘く見ていたようですね‥‥!」
「くそっ、これならどうだ! こっちだってソニックブームくらい使える!」
 ギリギリで攻撃を避ける柳川、鍔迫り合いでじりじり押される風月、事態を打開すべくディザームと同時発動する緋霞。だが衝撃波では充分にディザームの効果が発揮できていない!
「困ったでござるな‥‥ここは捕縛を投げてもいいでござろうか!?」
 緋霞の攻撃で少なからず怯んだ茸ノ丞に対し、スープレックスでの投げ飛ばしを仕掛ける久方。上手く地面に叩きつけたが、すぐに大地丸と折手矢が援護に入って立ち上がらせてしまう。
「なんて連携だ‥‥付け焼刃の作戦じゃまるで勝負にならないじゃないか!」
「冗談じゃありません‥‥このまま終われますか!」
「ここはふざけてる場合じゃないよね!」
 緋霞たちもルーたち先鋒組みを庇うように陣形を取り直すが、形勢は明らかに不利。風月が飛び蹴りのスタンアタック、柳川が忍者刀での近接戦を挑むが‥‥。
「痛ぇじゃねぇか‥‥危うく意識を失うところだったぜ?」
「そんな腕で俺たちに当てるつもりかよ!」
 各々折手矢、茸ノ丞に止められてしまったところを大地丸の追撃が入る! なんとか回避したものの、この鉄壁ともいえる連携を崩す手がどうにも見当たらない。
「先生、俺たちで行きますか!?」
「いや‥‥相手は三人。まともな連携を取れるのが私たちだけでは厳しいだろう」
 人数が少なくとも、連携を大事にし、自分たちに合った‥‥自分たちの弱点を補強するような技を習得すれば数の不利を覆せるといういい見本だ。三連刀の基本的な戦闘力は冒険者たちと大差がないのだから。
「ふん‥‥数の上ではこちらが不利だからな。これ以上やるというなら命のやり取りも止むをえん」
「それは本来あたしたちの台詞のはずなんだけどね‥‥でもまだまだ、ノルマンの騎士は伊達じゃないところを見せてあげてよ!」
「そうだ! このままじゃ折角塗った棍が泣くってもんだからな!」
「大地丸、まだやる気らしいぜ」
「仕方ねぇな‥‥俺たち『堕天狗党』はなるべく殺さない主義なんだけどよぉ、絶対殺さないわけじゃないんだ」
「折手矢、喋りすぎだぞ。まぁいい‥‥どうせ覚えているものはいなくなる」
 再び乱気流攻撃の態勢に入る三連刀。傷つき、陣形の崩れた彼らに防ぐのは厳しいだろう。
「では‥‥死んでもらおう!」
「‥‥あなたたちがね」
『何!?』
 ゴアッ! 駆け出そうとした矢先、側面から直線状に穿たれた魔法の奔流‥‥これは、グラビティーキャノン!
「不意打ち結構、勝てば官軍。丸八小隊だというのに七人しかいないのはおかしいと思いませんでしたか?」
 暗がりから歩み出てきた黒城。魔法を受けて吹っ飛んだ三連刀を見下ろし、刀を構えて不敵に笑う。
「クックック、殺るなら徹底的に、こんな輩が二度と現れないように」
「卑怯でござろう! あなたには誇りというものが無いのでござるか!?」
「そんなものはゴミの日に捨てました。私は学者ですしね、勝てばいいんですよ、勝てば」
「そういう問題ですか! 今まで日和見しておいて‥‥!」
「最初に言ったでしょう。保険は掛けておかないと、とね。おいしいところを掻っ攫ったようで恐縮ですが」
 黒城と他の面々が言い争っている間に三連刀は体勢を立て直し、素早く距離をとっていた。傷自体は大した事はないが、思わぬ伏兵に焦ったのだろうか。
「おのれ‥‥ぬかった。だがここは引いた方がよさそうだ。また会おう!」
「ちくしょう、次に会ったら油断は無いぜ!」
「気付かなかった俺らの負け‥‥ってな!」
 逃げる時も一糸乱れぬ連携‥‥しっかり撒きびしのようなものまで撒いていったため、もう追いつくのは無理だろう。
「八人で取り逃がすなんて‥‥あたしたちこんなに弱かったのかしら‥‥」
「違うな。私や君が云々ではなく‥‥やつらを褒めるべきだろう」
 得意技を昇華し、磨き、弱点を克服する。言うのは簡単だが、易々とできる芸当ではない。それをしたのがやつらなのだから、確かにそこは賞賛に値するかもしれなかった。
「やれやれ、取り逃がしましたか‥‥。それにしても堕天狗党とはいったい‥‥?」
 憮然とする仲間を無視して、一人考える黒城。これはひょっとしたら氷山の一角に過ぎないのではないか、と。
 堕天狗党‥‥やつらの暗躍は、今始まったばかり―――