埴輪軍団を撃破せよ!

■ショートシナリオ


担当:西川一純

対応レベル:1〜5lv

難易度:難しい

成功報酬:1 G 48 C

参加人数:8人

サポート参加人数:-人

冒険期間:01月31日〜02月06日

リプレイ公開日:2005年02月03日

●オープニング

世に星の数ほど人がいて、それぞれに人生がある。
冒険者ギルドでは、今日も今日とて人々が交錯する―――

「あ、どうもこんにちは。冒険者ギルドの若い衆こと、西山一海です。今回はちょっと急を要する依頼がありまして‥‥まぁ、聞いていってください」
 返答も待たずに依頼の説明を始める一海。だが緊迫しているのか緩んでいるのかはイマイチ判別がつかないのだが。
「江戸の近郊‥‥そうですね、1日も北に向かえば着ける村がありまして、そこが今回の舞台となります。何の特徴も無いごくありふれた村‥‥美味しい白菜が取れるのだけが自慢だそうで、観光・流通とはほぼ無縁の村だとか」
 依頼の紙曰く‥‥『村近くの山に、突如大量の埴輪が出現。人里に下りてくることは今は無いが、山に入ろうとすると攻撃を仕掛けてくる』のだそうだ。山には畑もあるし、果物の生る木もあり、封鎖されては非常に困るらしい。
「どうやらその山に古墳か何かがあったらしくて‥‥で、盗掘者がそこを暴いた結果、大量の埴輪が起動。墓を守るために一帯を封鎖している‥‥と」
 盗掘者がどうなったかは定かではないが、大量の埴輪に囲まれたとなると結果は推して知るべしである。一匹一匹は大して強くなくとも、相手は集団だ。
「現在確認されている数は16体。標準的なよく見る型の埴輪で、武装などはしていません。ただし、埴輪というのは見た目よりはるかに硬く、刀等では殆ど傷を与えられないと思います。槌みたいに叩き割るような武器か、バーストアタックを使えないと厳しいのではないでしょうか」
 術者の命令で動いている埴輪のような人造モンスターは、破壊しない限りいつまでもその一帯をうろつくだろう。村人や旅人が襲われるという後顧の憂いを絶つためにも、埴輪は全滅させなければならない。
「そうそう、そんな暇無いと思いますけど、一応注意を。埴輪を全部片付けたとしても古墳には手を出さないことです。違う罠が発動したり、埴輪の第二波が出てきたりするかもしれませんし‥‥何よりバレたら盗掘ですから、お縄になっちゃいますよ♪」
 何故か爽やかに怖いことを言う一海。
 何はともあれ、第一目標は埴輪軍団の撃破である―――

●今回の参加者

 ea0648 陣内 晶(28歳・♂・浪人・人間・ジャパン)
 ea2831 超 美人(30歳・♀・志士・人間・ジャパン)
 ea3318 阿阪 慎之介(36歳・♂・侍・人間・ジャパン)
 ea5480 水葉 さくら(25歳・♀・神聖騎士・人間・ジャパン)
 ea8026 汀 瑠璃(43歳・♀・僧兵・人間・ジャパン)
 ea8846 ルゥナー・ニエーバ(26歳・♀・神聖騎士・ハーフエルフ・ロシア王国)
 ea8903 イワーノ・ホルメル(37歳・♂・ウィザード・ハーフエルフ・ロシア王国)
 eb0861 無頼厳 豪刃(43歳・♂・志士・人間・ジャパン)

●リプレイ本文

●古代の戦士を打ち砕け!
 馬を飛ばして早々に村に着いた一行は、一日休養を取ってから件の山に赴いた。罠を張ろうと用意を始めた途端、わらわらと埴輪が集まってきてそれどころではなくなってしまったのだが。
 一同は事前の作戦通りの陣形を組み、16体の埴輪を迎え撃つ!
 ガゴンッ! 汀瑠璃(ea8026)のスマッシュ+バーストアタックの一撃が埴輪の一体を一気に重傷状態に追い込む。いや、厳密に言えば生き物ではないのだから、『大破』‥‥というのが正しいか?
「せいやぁぁぁっ!! 何事も景気よう行かんとなっ♪」
 槌を使えば充分にもかかわらず、汀はCOまで使って攻撃する。埴輪は確かに硬いが、砕くことに特化した武器を使えば案外あっけなく壊れるようだ。
 時間の関係でオーラエリベイションのみ発動した阿阪慎之介(ea3318)もまた、汀に続く!
「新陰流、阿阪慎之介参る。新陰流灯篭切り受けよ」
 ガシュッ! バーストアタックを使った日本刀の攻撃は、硬い埴輪にも充分効果がある。重傷状態にまでなった埴輪が反撃し、阿坂も軽傷を受けてはいるが、その力の差は歴然である。
「いけるべ!」
「離れろ!」
 イワーノ・ホルメル(ea8903)と無頼厳豪刃(eb0861)のローリンググラビティーの詠唱が完了し、直径3メートルの円の形に、二つの魔法が発動! 二人に近づいていた5体の埴輪が上空に巻き上げられ、落ちてくる!
 ごとっ! ごとごとごとごとっ! 本来頑丈な埴輪は、上空から落ちたのにもかかわらず殆どダメージを受けていない。地面が岩場だったなら致命的かもしれないが、生憎ここは森の中。下が土である以上、大したダメージは望めないだろう。
「叩いたほうが速いか‥‥。趣味の道具が役に立つとはな」
「ま、仕方ないべよ。俺ぁ叩くのも得意だぁ」
 大した効果が得られなかったと悟った二人は、素早く槌を構えなおす。
「わたくしにとっては木製のロングクラブも鉄の棒と同じ‥‥いきますわ!」
 ごずっ! ローリンググラビティーで体勢を崩している(転倒はしていない)埴輪の一体に目標を定め、ルゥナー・ニエーバ(ea8846)が攻撃を仕掛ける。彼女もスマッシュ+バーストアタックを習得しており、一撃で重傷状態へ追い込んだ。
「古の主人を守る埴輪か‥‥できればそっとしておきたいが村人の生活に支障が出るようでは仕方あるまい。亡き者より生ある者を優先させねば」
 埴輪に多少なりとシンパシーを感じているらしい超美人(ea2831)だったが、そこはそこ、それはそれ。仕事と割り切って日本刀でのバーストアタックを仕掛け、重傷にする。
「止すんだ埴輪達! 人間の心を取り戻せ!」
 人じゃねぇ、というツッコミは無しだろうか。何故か男泣きしながら6体(!)の埴輪に囲まれながらも、その攻撃をことごとく回避し槌で叩きまわっている陣内晶(ea0648)。一発一発は中傷程度だが、埴輪は陣内に一発も当てられないのだから圧倒的に見える。陶器割リストの面目躍如といったところだろう(絶対違う)。
 ‥‥で、だ。
「‥‥え、えっと‥‥あ、あの‥‥えいっ、えいっ!」
 かきんかきんと小気味のいい音が辺りに響く。水葉さくら(ea5480)が煙草も吸わないのに所持している真鉄の煙管を使って埴輪を叩いているのだが‥‥。
「はぁっ、はぁっ、はぁっ‥‥は、埴輪さん‥‥頑丈です‥‥。お兄様‥‥さくらは今日もがんばります(ぐっ」
 鉄製の鈍器にもなる煙管であるが、彼女の細腕では埴輪の装甲に弾かれるだけ。目の前で拳を握って決意を新たにする水葉を前に、埴輪はどう反応していいのか分からず反撃してこないのが幸いである。
「ぐっ! なんであの娘の付近だけ埴輪が集まらんのじゃ!?」
「なんででしょうねぇ。いいじゃないですか、一対一で微笑ましくて」
「あなたはいいかもしれませんが、わたくしたちは‥‥!」
 水葉以外の7人は、瀕死状態で動けない4体と水葉の相手をしている一体を除いた、11体の埴輪からの攻撃を受けている。手数の違いというのは恐ろしいもので、汀、ルゥナー、阿坂、無頼厳、超の5人が中傷状態になっていた。
「こりゃ手早く数減らさねぇとまずいべなぁ。もう一周されたら陣内どんと水葉どん以外はすぐに大怪我だべよ」
「一発一発は大した威力ではないが‥‥意外と正確な攻撃だ。油断は禁物というところだな」
「一人2体はやらねばならない。力の限り攻撃あるのみ!」
 イワーノ、無頼厳、超は中傷の体に鞭打って構えを取った。陣内に攻撃が当てられないと悟った埴輪たちは、本能的に組し易い相手へと狙いを変えたからだ。
 その分陣内は攻撃に専念できるのだが、現在中傷の人間より与えるダメージが低いのが問題だ。
「‥‥というかでござる。水葉殿の方はいかがいたそう」
『放置で』
 一同の意見は見事なまでに一致していた。
「あ、あの‥‥みなさん、え、援護して‥‥いただけませんか‥‥?」
 叩きつかれたのか、水葉が荒い息をついて訴えかけるが、とりあえず無視される。水葉が戦っている埴輪は彼女のことが気に入ったのか、ぴょこぴょこ彼女の周りを飛び跳ねるだけである。
 気を取り直して‥‥戦闘再開。
「いかに装甲が厚くとも、強敵(とも)の大福帳程ではあるまい! 君が割れるまで! 叩くのを止めない!」
「恨みはねぇけんどもよぉ、こっちに死人出すわけにはいかねぇだぁよ」
「とりあえずは自分を回復させないと‥‥。わたくしが魔法を使えなくなるわけにはまいりませんから」
「同情はする‥‥だが、今は生き残るのが先なのでな」
「オーラシールドは‥‥いや、やめておこう。今は叩いたほうがいいでござろうからな!」
「太古の遺産の守り手を破壊するのはやや心苦しいものがあるが、こういう時でもなければ全力も出せんのでな。悪いが破壊させてもらうぞ」
「こやつら、回避は一般人並みじゃからのう。囲まれぬよう陣形を保ちながらこめかみグリグリの刑じゃ!」
 一人無茶を言う汀だったが、戦闘は真剣そのもの‥‥スマッシュ+バーストアタックの2連撃で、今度は二体の埴輪を重傷に追い込む。
 他の面々も一気に一体を行動不能に追い込むより、より多くの埴輪に重傷を与えることにしたらしい。水葉と遊んでいる(おいおい)一体を除いて、全ての埴輪を重傷へと追い込んだ。
 だが重傷状態にあってなお、埴輪の攻撃は当たる時は当たる。武器こそ持っていない分正確な一撃は、この場において確実に回避できるのは陣内だけなのだ。非常にかったるいことではあるが、現状なら陣内一人で戦ったほうが安全かつ確実ではある。
 無論、そんなことを言い出す人間は居はしなかったが。
「み、みなさん‥‥も、もう一息です‥‥! が、頑張ってください‥‥!」
『お前も何かしろぉ!?』
「はうっ!? す、すみませんすみませんすみません〜!?」
 味方の水葉の声援に、何故か殺気を増す6人。苦笑いをするだけの陣内と、水葉の横で一緒に謝っているように見える埴輪が印象的だったが。
「がっ‥‥! せ、拙者ともあろうものが‥‥!」
「くぅっ‥‥て、手を抜いているわけでもないのだが‥‥!」
 運悪く連続攻撃を避けきれなかった阿坂と超が重傷状態となり、危険域に達する。ルゥナーが慌てて二人を引っ張り、埴輪の近くから遠ざける。
「リカバーで治しきれません‥‥! 陣内様、イワーノ様、なるべく埴輪を引き付けてください! 汀様や無頼厳様に攻撃が行かないように!」
「お、気遣い感謝じゃ! じゃがわしにも面子があっての‥‥このまま引き下がれんじゃろう!」
「左に同じだ。折角の機会‥‥趣味の道具もこんな時でないと有効活用できんしな」
「流石にやりますね‥‥君たちも強敵(とも)と認定します! 観光名所となった埴輪も居るだけにこの結果は残念ですが‥‥。分かってくれるよね、埴輪。君にはいつでも会いに行けるから‥‥!」
 なんだかよく分からない台詞を吐いて、槌を握りなおす陣内。多勢に無勢のこの戦い‥‥勝敗は如何に―――

 結局‥‥なるべく陣内が攻撃を引き付け、他のものが止めを刺して回るという図式で事態は決着を見た。
 中傷で済んだイワーノ、無頼厳、汀はルゥナーに回復してもらったが、重傷の阿坂と超はそれが出来ないため、江戸に戻ってから‥‥ということになるだろう。一応、水葉が応急手当はしたのだが。
「あう‥‥か、可愛かったのに‥‥。お友達に、なれなかったんでしょうか‥‥」
「いやぁ、現状じゃ無理でしょう。それに今回の依頼内容は、あくまで埴輪の全滅ですから。あぁ‥‥またしても強敵(とも)の屍を越えていかなければいけないなんて‥‥!」
 最後まで遊んでいた埴輪は汀の手によって叩き壊され、晴れて16体全機撃墜となったわけである。
 なお‥‥獅子奮迅の活躍を見せた陣内には、村人から彼に相応しい特別報酬が送られたとか―――