【黄泉の兵】京都防衛戦! 怪骨を撃破せよ!

■ショートシナリオ


担当:西川一純

対応レベル:2〜6lv

難易度:普通

成功報酬:1 G 69 C

参加人数:8人

サポート参加人数:2人

冒険期間:03月22日〜03月27日

リプレイ公開日:2005年03月27日

●オープニング

 一つ立つ灯火の灯りだけが照らす、陰陽寮の一室。
 その薄闇の中で、奇妙な文様の描かれた占い板を前にして、静かに念じる男が一人。
 ややあってその瞳を静かに開けると、男は流れるように立ち上がって部屋の外へと歩み出る。
「どうされました?」
「ただ、よくなき卦が出ただけよ‥‥」
 男は廊下で待っていた配下のものと、陰陽寮の廊下を歩みながら、鋭く瞳を細めて答えを返した。
「よくなき卦で、ございますか?」
「昨今の妖どもの暴れよう‥‥江戸での月道探しに現を抜かしている場合ではないということかな。京都守護と検非違使に急ぎ通達せよ」
 ぱちりと扇子を閉じながら、ジャパンの精霊魔法技術を統べる陰陽寮の長、陰陽頭・安倍晴明は、矢継ぎ早に伝令に言伝を伝える。
「京都見廻組と新撰組、だけでは足りぬだろう。やはり‥‥」
 晴明は思案に暮れながらも、陰陽寮に残り資料を捜索すべく、書庫へと消えた。

「京の都の南に向かうこと」
 ‥‥それが、京都冒険者ギルドにて布告された依頼であった。
 その依頼人は陰陽寮、京都見廻組、新撰組と多岐に渡るが、全て、同じ場所に向かえとの内容は共通している。
「何でも、陰陽寮に託宣が下ったそうだ」
 そう告げるのは冒険者ギルドの係員。まだ開いても間もないギルドゆえ、一度にやってきた依頼を整理するのにてんてこ舞いという様相だった。
「陰陽寮の頭、安倍晴明様の占いによれば、南から災いと穢れがやって来るんだと。物騒な話だが、あのお方の話じゃあ、無碍に嘘とも思えねえし、京の南で怪骨やら死人憑きやら、妖怪が群れてやがったという噂も入ってきてる。
 ‥‥それに、京都見廻組や新撰組も動いてる。陰陽寮の力添えもあって出来たギルドとしちゃ、動かんわけにはいかんのよ‥‥ぜひ、力を貸してくれや?」


「さてさて、つい今しがた京都へ着いた者も、京都に在住している者も御静聴願いたいッ!」
 ざっ、と京都冒険者ギルド内でマントを翻し、拳を握って叫ぶのは大牙城。自らも妖怪と戦ったりする、武闘派のギルド職員である。
 京都ギルドでもかなり濃い部類に入る彼を良くも悪くも無視できる人間は、そういない。
「現在、奈良方面よりこの京都へ、大量の死人が向かってきているッ! 京都南部の村々が襲撃され、被害も馬鹿に出来ないものとなっており、事態は非常に芳しくないッ! そこでッ!」
 びしっ、と拳を突き上げてポーズをとる大牙城。
「『真の漢』を目指し、また探す私としては、この状況を見過ごしておくことは断じて出来ぬッ! 上手い具合に新撰組から京都防衛のための人員派遣依頼が舞い込んできたため、紹介することと相成ったッ! さぁ、冒険者諸君ッ! 自らの力をッ! 自らの『漢』を示すのだぁッ!」
 江戸の冒険者ギルドでちらっと顔を見せたときは、西山一海という旧友が抑えてくれていたが、生憎今の彼を制御できる人間はここにはいない。
 まさに独壇場と化している大牙城の熱弁。言っている事は間違っていないのだが、暑苦しくて大袈裟‥‥というのが同僚の認識だとか。
「今回は羅生門近くに出没する怪骨の掃討だッ! すでに新撰組や検非違使、京都守護などもあちこちに散って応戦しているが、手が足りぬ故の依頼ッ! 8体確認されている怪骨を見事打ち砕き、『真の漢』へとまた一歩近づこうではないかッ!」
 あさっての方向を指差して、大牙城の熱弁は終わりを告げた。冗談をやっているように見えるが、本人はいたって真面目だし、切羽詰った事態も本当である。
 ただ一つ残念なのは‥‥大牙城はギルドの仕事に追われ、妖怪退治に参加できないと言うこと―――

●今回の参加者

 ea6114 キルスティン・グランフォード(45歳・♀・ファイター・ジャイアント・イギリス王国)
 ea6415 紅闇 幻朧(38歳・♂・忍者・人間・ジャパン)
 ea6429 レジーナ・レジール(19歳・♀・ウィザード・シフール・イスパニア王国)
 ea8213 佐上 和樹(33歳・♂・志士・人間・ジャパン)
 ea8703 霧島 小夜(33歳・♀・浪人・人間・ジャパン)
 eb0788 荒波 巌雄(40歳・♂・浪人・ジャイアント・ジャパン)
 eb1012 ペペロ・チーノ(37歳・♂・ウィザード・ドワーフ・イスパニア王国)
 eb1067 哉生 孤丈(36歳・♂・浪人・人間・ジャパン)

●サポート参加者

桐沢 相馬(ea5171)/ 薬師寺 狂介(eb1642

●リプレイ本文

●いざ、羅生門へ
「羅生門ねー‥‥あんまりいい噂は聞かないけど‥‥ま、依頼だししょうがないわね」
「やれやれ、折角京都に来たというのにいきなり死人騒ぎか‥‥勘弁してほしいものだ」
 シフールのウィザード、レジーナ・レジール(ea6429)は霧島小夜(ea8703)の頭の上で軽い溜息をついた。霧島が馬で羅生門まで移動しているので、ついでに乗っけてもらっているのだ。
 ふと横を見れば、他の参加者も全員馬で移動をしている。
「どうでもいいけど、急がないとねぃ。かけてもらったオーラパワーが解けちまう」
「無駄だ。いくら急いでも6分少々で羅生門までは着かないだろう。あてが外れたな」
 哉生孤丈(eb1067)とキルスティン・グランフォード(ea6114)は一頭の馬に二人乗りし、現場へと急ぐ。
 哉生が呼んだ助役に、出立直前に全員がオーラパワーをかけてもらったのだが、どうやら現場まですら保ちそうに無い。
 助役はあくまで助役‥‥正規の参加者が出立するまでの準備や情報収集を手伝った後は、見送るしかないのである。
「さて、まずは怪骨退治といきましょうか。先制が、上手く決まればいいのですけど‥‥」
「なーに、大丈夫でござるよ。魔法の長射程を以ってすれば、スカルウォーリアー程度なら確実に成功するでござる」
 こちらの馬は、佐上和樹(ea8213)とペペロ・チーノ(eb1012)の二人が搭乗している。前述のオーラパワーの関係から、馬を持たない・馬の速度が遅い者は二人乗りを余儀なくされていた。
「おう、なんだなんだ。京の都って言ったらもっと華やかな所だと思っとったけどえれぇ不気味だな。話には聞いちゃいたが、これ程わんさか死霊が沸いてるなんぞ、血が滾るぜ」
 もう一頭は一人乗り‥‥荒波巌雄(eb0788)だけである。
 最後の参加者は、すでに羅生門付近へ偵察に出ているというが‥‥大丈夫だろうか。
「あ。オーラパワーが切れちまいましたねぃ‥‥やっぱ無理か」
「ねぇねぇ、羅生門ってあれじゃない!? なんか開いてるみたいだけど‥‥スカルウォーリアーは門の外なの!?」
「そのはずでござる! 魔法の準備をしたほうがよさそうでござるな!」
 残念ながらオーラパワーはやはり現場まで保たず‥‥魔法を使うレジーナとペペロは、馬上で詠唱を開始する。
 どんどん迫る羅生門‥‥京都防衛のための一戦が今、幕を開ける―――

●戦力差
「来たか。話では、確か初っ端に魔法が飛んでくるんだったな」
 羅生門の外側で怪骨8体から逃げ回っていた紅闇幻朧(ea6415)は、馬の蹄の音を察知して怪骨の集団から距離をとった。
 分身の術、疾走の術、韋駄天の草履と、連続行動に適した術・装備は伊達ではないらしく、辺りをうろついていただけの怪骨8体をおびき寄せ、纏めていたのである。
 もっとも、無傷とは行かずに中傷の傷を負っているのだが。
「OK、紅闇さん離れてるね! うっふっふ〜♪ 骨って燃えにくいのよね〜♪ 私の魔力を試すいい機会じゃない? さあ、燃えなさい!」
 ごぅんっ! 球状に炸裂するレジーナのファイヤーボムが、怪骨7体を巻き込んで炸裂する。
「一匹範囲外でしたね‥‥では、そちらは私が!」
 ずがががががっ! 耳障りな音を立てて佐上のライトニングサンダーボルトが8体目の怪骨を捉えるが、魔法の先制攻撃を受けたとはいえ各々軽傷程度。ゆっくりと体勢を整えると、馬から下りた前衛組みへと近づいてくる!
「ふん‥‥持ってきた握り飯前の運動にもなりゃしない。江戸霜月闘武神の力、見せてやろう」
 怪骨1の攻撃をデッドorライブで受け止め、かすり傷の代わりにカウンターアタックを叩き込むキルスティン。言うのは簡単だが、追加で絡めたスマッシュEXが恐ろしい。
 ただでさえ大ダメージが確定的なこの戦法で、メタルクラブのスマッシュEXを合わせた大技なんて喰らおうものならば‥‥!
「おや、カルシウムが足りてないんじゃないのかね。一発で動かなくなってしまったぞ」
 肩口から入った攻撃はあばら骨をあっさり粉砕し、背骨まで砕いて怪骨1を即死させてしまう。例え魔法の先制攻撃がなかったとしても、結果は同じであったであろう。
「な、なんという馬鹿力‥‥いやいや、凄まじい攻撃でござるか。もしかしなくとも、キルスティン殿だけで全滅も可能なのではござらんか?」
 しっかりとアイスチャクラを怪骨2に投げつけながら、ペペロは驚愕を禁じえない。
 何しろ、一度蘇った死人を一撃でもう一度黄泉路送りに出来る冒険者はそう多くないのだから当然だが。
「まぁこちらはこちらでしっかりやるだけだ。誰の差し金かは知らないが、招かれざる客にはお引取り願おうか」
 霧島はシュライクでの攻撃で、怪骨3に確実にダメージを与えていく。相手の攻撃は無難かつ確実に武器で捌いているので、後れを取ろうはずも無い。
 ただ、キルスティンほどの派手さがないのが残念といえば残念だが。
「まあ、わしは戦闘以外に出来ることねぇからな。ひたすら前衛で殴るぜ」
 一方、荒波は怪骨4にスマッシュでの日本刀の攻撃を叩き込んでいた。一撃で重傷まで持っていくその威力は、やはり頼りになる。
「怪骨ってのは初めて見るが、ホント骨だねぃ‥‥」
 こちらはキルスティンの背後を守るようにして戦っている哉生である。一応、お互い敵に背後を見せないような陣形を組んではいるのだが‥‥二人ともそんなことをしなくても、怪骨程度にならまず負けない。もっとも。もっと大量の怪骨に囲まれたとしたら話は別だが。
 大斧の重量を活かしたスマッシュは、やはり一撃で怪骨5を重傷まで追い込む威力。どうやら今回は、怪骨に対して相性のいい冒険者に恵まれているらしかった。
「現世を彷徨いし亡者よ、在るべき処へ‥‥」
 カシュッ‥‥! 霧島と同じような、『叩き割る』のではない『叩き斬る』タイプの音。紅闇は力が強いわけでも一撃が鋭いわけでもないが、行動力を活かした連続攻撃がある。
 中傷クラスの傷を負ってはいるが、怪骨6に当てるのにはまだ問題ないレベルだ。
「えっと‥‥先制攻撃が終わった後って、私暇なのよね〜。仕方ないから、仏さんから金目のものでも‥‥♪」
「魔法も接近戦の技能も中途半端なのが苦しいですね‥‥って、どこに行くつもりですか罰当たり。そんなに暇なら、怪骨の注意でも逸らしてきてください!」
 こそこそと羅生門の方面へ引き返そうとするレジーナをむんずと掴み、佐上は静かな怒気を発する。
 意外と怒りっぽいのが播磨の苦労人の意外な一面である。
「あ、ちょ、ちょっと! まだ中を見てないんだから! 中に死霊がいたら‥‥きゃー、人さらい〜!」
 ぽいっと怪骨7の目の前に放り投げられ、その攻撃を紙一重で避けるレジーナ。体勢が悪かったのが原因だが、もう少しで羽が切り取られていたかも知れない。
「少し時間を稼いでください。魔法で攻撃しますから」
「ウインドスラッシュでしょ!? それじゃ攻撃力‥‥うわっ、不足じゃない! 普通にそのメタルクラブで‥‥うわっと、叩きなさいよぉ!?」
「‥‥なんでこう、私は女性に怒鳴られることが多いんでしょう‥‥」
 怪骨8までレジーナに寄ってきてしまい、避けるレジーナは必死だ。
 佐上はぶつぶつとこの世の不条理を口にしながら、メタルクラブでの攻撃に切り替えた。‥‥強い姉を持つと、想像以上に弟は苦労するのかも知れない。
「手伝おう。後はこの2体だけだ」
「霧島さん‥‥もうそっちは終わったんですか?」
「あぁ、途中でペペロがアイスチャクラで援護に入ってくれたからな。キルスティンはすでに握り飯を頬張るほどの余裕ぶりだ」
「わしの担当も終わったぞ。簡単すぎて欠伸が出そうだぜ」
「こちらもだ。道返の石を使うまでも無い‥‥低級だ、この連中」
「いやいや、楽なら楽に越したことはないですがねぃ。まだまだ続きそうな防衛戦の初戦にがしゃ髑髏とか出られたら、それこそ骨ってもんだ」
 見れば荒波、紅闇、哉生もすでに相対した怪骨を撃破したらしく、穏やかに談笑していた。キルスティンとペペロは握り飯で食事中と、最早楽勝ムードである。
「ちょっ、ちょっ、わ、私をっ、忘れて、ないっ!?」
 必死で怪骨8の攻撃を避け続ける、レジーナ以外は‥‥だったが―――

●原因は?
「ぜぇ、ぜぇ、ぜぇ‥‥あー、死ぬかと思ったわよ、もう!」
 佐上の頭の上で荒い息をつくレジーナだったが、すでに怪骨は全滅。赤闇が多少怪我しているが、それも囮をしていたときに受けたもの‥‥合流したあとは、誰も傷らしい傷は受けていないのが凄い。
 休憩と食事も兼ねて、その場でまったりしているのだが‥‥ペペロやキルスティンは骨の調査をしていたりする。
 もっとも、どれだけ観察しても骨は骨‥‥何故京都へ大量の死人が押し寄せているかの原因は特定できそうになかったが。
「まぁまぁ、ともあれ危なげなく勝ててよかったですねぃ」
「そうだな。後手後手に回るのは嫌だが、先手を取ったから確実に勝てると言うわけでなし。今回はこれでよしとしよう」
 未だ危機に晒されている京都。これからの戦いも、この調子でいければいいのだが―――