猛追! 逆サバイバル鬼ごっこ!
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■ショートシナリオ
担当:西川一純
対応レベル:フリーlv
難易度:普通
成功報酬:0 G 65 C
参加人数:8人
サポート参加人数:13人
冒険期間:07月08日〜07月13日
リプレイ公開日:2005年07月14日
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●オープニング
世に星の数ほど人がいて、それぞれに人生がある。
冒険者ギルドでは、今日も今日とて人々が交錯する―――
「みなさんこんにちは! 黄泉人との戦いも一段落し、京都の平和は守られたといっても過言ではないでしょう! しかし被害も決して小さくは無かったようですから、みなさんもストレスが溜まっているのではないでしょうか?」
台詞の割にはにこやかに、冒険者ギルドの職員、西山一海はテンション高く手に持った紙をひらひらさせる。
彼が上機嫌に依頼を紹介する=色モノ系のお遊び依頼、と言ってもいいだろう。
「よいかッ!? 今回の依頼は『鬼ごっこ』だ! そう、以前似たような依頼があったと思うが、その時の依頼人がまた同じような依頼を出してきたのだッ! 山一つを使った鬼ごっこ‥‥これは漢を磨けると言うものよッ!」
一海と同様、京都冒険者ギルドの職員の大牙城。いつもの虎覆面とマントだが、テンションが高いのは彼も一緒だ。
一応一海の方がまだ常識人だが、結局どっちもどっちに色モノ系のキャラなのである。
ちなみに、この依頼は京都の貴族が出したもので、その貴族の私兵である傭兵集団の訓練を兼ねてとの名目で出されている。
実際は前回冒険者たちに二人も逃げ切られてしまったのが悔しかったから、リベンジを目論んでいるという噂だが。
「えっとですね、開催場所は以前と同じです。京都西にあるそれほど標高の無い山の一つで、歩いたって一日掛からない近場です。今回は『逆』サバイバル鬼ごっこなので、みなさんが追う側になるみたいですね♪」
「では、基本となるその鬼ごっこのルールをご紹介しようッ! 前回とほぼ変わらぬが、追加・変更された項目もあるので読み飛ばさぬようッ! 『はじめに』と書いて『肝に銘じろ』と読むのが漢の道だぞッ!」
それが本当に漢の道かどうかはさておいて、ルールは以下の通りである。
一つ:山一つを舞台とし、丸ごと全域をフィールドとする。一歩でも山から出たら失格となる。
二つ:傭兵集団が出発してから一時間後に、鬼役の冒険者たちが捜索に出かける。傭兵集団は山の中を移動するなり隠れるなりして逃げるので、24時間以内に捕まえられれば成功となる。
三つ:疾走の術や馬等、移動スピードを上げる術や道具は禁止。また、今回から韋駄天の草履等、体力を温存して長距離移動できるような道具類も禁止となる。飛行またはそれに属する魔法も禁止。ただし、シフールの参加者の飛行は地上2メートルの高さくらいまでは許可される。
四つ:例え傭兵集団と相対しても、攻撃してはならない。冒険者は捕まえる事だけを念頭に置き、もし傭兵集団を攻撃して捕まえた場合、露見次第失格とする。
五つ:遊戯開始前に件の山に立ち入ることを禁ずる。前準備して罠などを仕掛けるのは不公平であるため。
六つ:魔法で穴を掘り、隠れるのは禁止。
七つ:傭兵集団を一人でも捕まえれば賞品ゲットです。ただし、傭兵集団が数多く捕まるたびに賞品のランクが下がります(例:一人だけが捕まった時の賞品がスクロールなら、三人捕まった時はヒーリングポーション、と言った具合)。
「以上だッ! また、例によって武器や盾を持っていっても遊戯開始前に係員に預けてもらうことになるとのことッ! 己が知恵と体力を振り絞って、山中という過酷な状況で、24時間の間に目標を捕獲せよッ!」
傭兵集団の数は冒険者の参加数と同じ値に調整されるので、最大でも8人。ただし、その構成は忍者・浪人・志士・シフールとバラエティに富んでいる。
戦闘依頼ではないので、出来るだけ軽装かつバックパックも軽い方が追う時にも有利なのではないだろうか。
「‥‥何やってるの、あなたたち。今日はまた一段と鬱陶しいわね」
「アルトノワールさん。そうだ、折角なんで藁木屋さんに補助頼めません? 参加者さんも聞きたいこと多いでしょうから」
「‥‥何で私が。面倒だから嫌」
「うっ。っていうか、何しに来たんですか? 藁木屋さんなら今日は来てませんけど」
ふと顔を出した艶やかな長い黒髪の女性‥‥アルトノワール・ブランシュタッド。
藁木屋錬術という京都の何でも屋をサポートする、謎多き人物である。
「‥‥錬術に『一海君に依頼について聞きに行ってくれ』って言われたのよ」
「じゃあ一石二鳥じゃないですか。藁木屋さんサポート決定♪」
「‥‥なんか納得出来ないんだけど。物凄く」
「何はともあれ、各々方ッ! 逃げる側と負う側では戦略がまるで違うからな‥‥熟考されよッ!」
必死に誤魔化した大牙城。
この後、不機嫌になったアルトノワールを宥めるのにまた一悶着あったというが‥‥それはまた、別の話―――
●リプレイ本文
●天風誠志郎(ea8191)の場合
「さて、何処に隠れているやら‥‥」
開始の合図である法螺貝が鳴り響き、傭兵集団が逃げるための一時間が過ぎた後、天風は早速山に入っていった。
一口に山一つと言っても、現実的には恐ろしく広く、厄介なフィールドだ。
天風は罠の存在、どこでもやなぎという衣装、シフールの隠れられそうな細かい岩陰や空洞などにも注意しながら捜索を続けているが‥‥これには大きな欠点があった。
探し方としてはベストと言ってもいい方法なのだが、如何せん時間が掛かりすぎる。
あれもこれも、ここもあそこもと、24時間という制限時間がある遊戯で行うには、疲労も溜まってしまってよろしくないのだ。
「こういうのも、たまにはいいな。童心に返ったようで悪くない」
本人が意外と楽しんでいるようなので、どうなるかは分からないが‥‥堅実すぎる彼の勝算や如何に―――
●風月陽炎(ea6717)の場合
「私に会ったら、潔く捕まるか、全力で逃げることをお勧めします。下手に抵抗すると、こんな目に遭うかも知れませんから」
遊戯開始前、傭兵集団の目の前で、『ゴシカァン!』と妙な音を立てて岩を砕いた風月。
相手にプレッシャーを与えるための行動らしく、実際攻撃が飛んでこないと分かっていても恐怖を抱いたものがいるようだ。
「ふむ‥‥」
開始からかなり時間が経ち、夕日が沈みかけている今も、太目の木を見つけては蹴りつけて回り、木の上に誰か居たりしないかと確認して回っている。
そして、今日何本目かの木を蹴り、くるりと背を向けたときだ。
ぼとっ。
そんなコミカルな音と共に、忍者装束の男が一人、木の上から落ちてきて風月と視線を合わせた。
「‥‥‥‥」
「‥‥‥‥」
「‥‥さらばっ!」
一目散にダッシュで逃げだした忍者を、風月は必死で追いかけたが‥‥さて、捕まえられるかどうか―――
●太丹(eb0334)の場合
「きゃぁぁぁっ、な、なんなのよあなたはぁぁぁぁぁぁっ!?」
「ごはん〜! 腹減ったっす〜!」
さて、夜の闇を引き裂くような絶叫を上げて逃げているのは、遊戯開始前にフトシたん(太丹のあだ名)のオヤビンなる人物にナンパされ、ちょっとその気になってしまった女志士。
一方、何故か四つん這いでそれを追いかけるのがフトシたんである。
腹を空かし、大食漢の本能で傭兵の持つ保存食の匂いを追うという作戦は見事功を奏したのだが‥‥。
「あ、あの人には悪いけど、こんな人に捕まったら何されるかわかんないわよ! 保存食どころか私が食料にされかねない予感がひしひしとっ!?」
「ご〜は〜ん〜!」
夕方頃から野生化暴走モードに入ったフトシたんは、日が暮れてからも本能で捜索を続行。
運良くターゲットを見つけたのはいいが、遠距離走が得意というわけではないのですぐには追いつけない。
黙っていれば美景な男が、目をギラつかせながら四つん這いで迫ってくる(しかも夜)その姿は、お世辞にも格好よくは無いが‥‥さて、このまま本能で食料を(ぇ)追い詰めることが出来るのか―――
●アマラ・ロスト(eb2815)&神薙理雄(ea0263)の場合
「ジャパンは暑い上にむしむしして、汗で気持ち悪いね〜。いっそ川で遊んじゃお〜♪」
「アマラさん、別に全部脱ぐ必要はないのでは‥‥ほら、この踊り子の衣装でも遠目には裸に見えますよ、きっと」
「邪な視線を感じても気にしな〜い! 僕の決戦は早朝、日が昇る寸前だからね♪」
「いや、それならなおの事体力を消耗しないようにしないといけないのでは‥‥」
アマラと神薙は、偶然にも同じ水場で出くわし、意気投合して水浴びしながら待ち構える作戦を取っていた。
やたら開放的なアマラに神薙は大分戸惑っているようだったが、ペットのグルーダ(鷹)が行動できる昼はあまり動かないつもりらしい。
体力の温存も出来るし、悪い手ではない。(ビジュアルでお見せできないのが残念です)
その時、がさっと音を立てて何かが走り去っていくのが見えた。
その後姿から、人であるのは間違いない!
「グルーダ、あの人の邪魔をして欲しいですの!」
「よーし、僕も捕まえに行っちゃうぞ〜!」
「その格好で行かないでくださいですの!?」
神薙に押し止められたアマラも止めた神薙も、当然追跡に出遅れる。
さて‥‥彼女たちとグルーダは、人影に追いつけるのかどうか―――
●天城烈閃(ea0629)の場合
「ふーん。あなた、意外と純情なんだ。すぐ逃げ出しちゃってさ」
「‥‥出歯亀なような真似をしたくなかっただけだ。君は捕まった身なんだから、黙っていてくれないか?」
先ほど水浴びしていた二人組みから逃げ出したのは、この天城だったのである。
すでにシフールのウィザードを投げ縄で捕まえていた天城が、ちょっと水を飲もうと水場を通りかかったところ、目に毒っぽい風景を見てすぐに引き返したらしい。
「けどよくよく縁があるわねー。よっぽどアタシの運が悪いのか、アンタの運がいいのか‥‥」
「両方だろう。まぁ今回、俺は出来るだけ数多く捕まえるつもりだからな‥‥まだ終わりじゃない」
「‥‥欲張り」
「なんとでも」
数多く傭兵を捕まえたからといって賞品の質がよくなるわけではないが、天城は自分で決めた目標に邁進するつもりらしい。
ブレスセンサーで索敵までできる彼は、やはりこの手の遊戯には強いのだろう。
「で、正直なところは? わりといいもの見られたって思ってない?」
「まぁ、悪い気はしないな。俺も男だし」
「ぶーぶー。もうちょっと動揺してよ、若いくせに」
「人それぞれだろう」
天城と捕まったシフールとの問答は遊戯終了まで続いたというが‥‥さて、最終的に天城は何人捕まえたのだろうか―――
●灰原鬼流(ea6945)の場合
「泥棒と誘拐犯の活動時間は夜と決まってんだよ‥‥っと」
潜伏に調度良い場所を見つけ、そこで夕方まで寝て自分の体力確保と行動時間をずらした灰原は、夜になった現在が最高の活動時間になっている。
湖心の術で無音移動できるため、気配を悟られることはほぼなく、術を再使用する時も忍術は煙が立つだけで発光しないため、夜の森ではそうそう察知できない。
視覚・聴覚・嗅覚を活かし、索敵を続けているが‥‥この協議には運も必要。
運が悪ければ、傭兵と会うことすらできないなどという事態も充分あり得るのだ。
と、その時である。
カランカランカラン‥‥!
「何‥‥!?」
木の枝や板で作った簡易の鳴子のようなものが、引っ掛けた縄を伝って辺り一帯に音を響かせる。
予めこの辺は灰原が歩き回り、チェックをしたはずだが‥‥彼が寝ている時に仕掛けられたのだろうか。
「‥‥鳴子があるということは、近くに仕掛けたヤツが潜伏しているということか。‥‥手前が何処まで出来るか、いざ」
灰原は湖心の術がまだ効いている事を確認した後、逃げ出す気配が無いか確認しつつ辺りを捜索し始めた―――
●天螺月律吏(ea0085)の場合
「ちっ、ちくしょう‥‥なんて体力だ!」
「長距離を走ることには自信があってな」
あくまで言葉少なげに返し、前を走る浪人を追いかける天螺月。
遊戯もそろそろ終了かと思わしき時間帯になった時、偶然傭兵の一人を発見した天螺月は、自慢の足を以って最後の追い込みをかけていたのである。
夜中や朝方にも捜索していた彼女だったが、夕暮れまで体力を温存して寝ていたことや、元来あまり寝なくても何とかできる体質が大きくプラスに働いたといっていいだろう。
「ぜぇっ、ぜぇっ、ぜぇっ‥‥!」
「‥‥ちっ、思ったより粘るな‥‥」
逃げる浪人の方も必死な様子で、息も絶え絶えに全力疾走を続ける。
まぁ息の切れ方から比較しても、天螺月が彼を捕まえるのは時間の問題だろうが。
「時間も厳しいからな‥‥速度を上げるぞ」
「う、嘘だ‥‥ろぉ!?」
地の果てまで追いかける勢いで追従してきた天螺月が速度を増すとは思わなかったのか、哀れ浪人は背後からタックルを喰らって盛大に地面を擦った。
捕まえた天螺月の方はと言えば、ふぅ、と軽く息をついていい運動をしたと言わんばかりの表情。
「終了か。ま、運もよかったな」
「くそ‥‥あん、あんた‥‥げほっ、せ、赤兎馬か、あんた‥‥!」
「三国志は呂布の愛馬か。悪くない比喩だ」
赤い髪を華麗に舞い踊らせ、天螺月は余裕綽々で笑ったのである―――
●結果発表
さて、気になる結果は以下の通りである。
天風誠志郎:必死に捜索するが、シフールに追いつけず、忍者にも逃げられる。相手が悪かったというところか。
風月陽炎:結局例の忍者には追いつけず、出会った相手がそれこそ全力で逃げるため収穫なし。脅しが効きすぎたか?
太丹:あの後、保存食を囮に女志士は逃走。物を食べて我に帰ってしまい、本能策敵が使えず収穫ゼロ。
アマラ・ロスト:神薙と一緒に居たせいかイマイチ色香作戦が功を奏さず。残念ながら収穫なし。
神薙理雄:オープンすぎるアマラを止めるので必死。最後の方は放置して捜索に専念したが、時すでに遅し。
天城烈閃:最終的に、シフールのウィザードと浪人を捕獲。やはり射程の長い投げ縄とブレスセンサーが強力だった。
灰原鬼流:鳴子は足止め用の罠だったらしく、いくつも鳴子がある区画があったがどこにも傭兵は見えず。ジリ貧の形に。
天螺月律吏:実力で運までも引き寄せた格好。捕まえたのは一人だけだが、捕まえ方は派手であった。
賞品をゲットしたのは天城と天螺月の二人。天城が軍配、天螺月がリカバーポーションデラックスを貰って閉幕となった。
そんなこんなで、今回も冒険者にしてやられた、とある貴族。
彼のリベンジは、今度はいつ、どんな形で行われるのであろうか―――