史上最凶の暇つぶし
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■ショートシナリオ&
コミックリプレイ
担当:西川一純
対応レベル:8〜14lv
難易度:難しい
成功報酬:4 G 15 C
参加人数:6人
サポート参加人数:5人
冒険期間:08月06日〜08月11日
リプレイ公開日:2005年08月15日
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●オープニング
世に星の数ほど人がいて、それぞれに人生がある。
冒険者ギルドでは、今日も今日とて人々が交錯する―――
「‥‥暇」
「は?」
「だから、暇なの。なんか面白いことない?」
「いや、そんなこと言われましても‥‥(汗)」
「使えないわね」
いきなり冒険者ギルドにやってきてそんな無茶を突きつけているのは、アルトノワール・ブランシュタッドという名の女騎士。
最近京都にやってきた便利屋、藁木屋錬術のパートナー。
彼女の知人であるギルド職員は、いつもながらの唐突さに面食らっていた。
「‥‥仕方ないか。ねぇ西山一海、依頼出すから相手集めて」
「相手? なんのです?」
「‥‥戦う相手に決まってるでしょ。たまには錬術以外の人と戦ってみるのも面白そうかなって思ったのよ」
「‥‥はぁ?(いつもなら『‥‥面倒くさい』とか言って戦いたがらないくせに‥‥)」
「‥‥文句あるの? 殺すわよ」
「いえいえ滅相もないッ!?」
アルトノワールが気分屋なのは今に始まったことでは無い。
一海はぶつぶつ文句を言いながらも律儀に筆と紙を取り出す。
「アルトさんの戦う相手くらい、都を探せば幾らでも見つかりそうなもんですが‥‥で、依頼はどんな風に?」
「‥‥シューティング」
「へ?」
「‥‥だからシューティングだってば」
「日本語で言ってください(泣)」
「『真剣勝負』という意味だよ、一海君」
後ろから一海の肩を叩き、同情するように語り掛けたのは藁木屋錬術である。
いつの間にやってきていたのか、話の大筋は理解しているようだった。
「アルト、真剣勝負がしたいなら私が良い場所を紹介しよう」
「‥‥えー。なんか別のこと考えてない? ‥‥私、面倒くさいのは嫌よ」
「断るなら仕方無い。この忙しい時期に君のわがままに冒険者を付き合わせるのは忍びないからな、依頼は取り消しだぞ」
大和へ黄泉人追討が決定し、腕の立つ冒険者は一人でも多く必要とされた時期だ。
「‥‥わかったわよ。‥‥それで、どこで戦えばいいの?」
青年の圧力に屈してアルトノワールは溜息とともに降参する。
錬術は笑みを浮かべた。
「五条大橋」
「え、えっと、演習ってことでいいですよね? 依頼を受けてくれる人たちは、アルトノワールさんを相手に戦えばいい、と」
「‥‥そうね。‥‥そうだ、一人ずつ順番に戦っていって、もし私に勝てたら‥‥いいものあげるって書いておいて」
「壺ですか?」
真顔でボケる一海。
「‥‥違うわよ。魔法が掛かった武器でもいいし、貴重な道具でもいいわ。とにかく、私を倒したやつの好きな品物を、私がプレゼントする。それぐらいしてあげないと可哀想でしょ」
「負けるなんてこれっぽっちも思ってないんですね‥‥」
アルトノワールは金持ちという話だが、幾らなんでも望む物をプレゼントするは言い過ぎであろう。
「本当にいいんですか? 相手が魔法を使ってきたらどうするんです?」
「‥‥なんとかなるわよ。気にするだけ面倒だし。‥‥ま、殺さないよう手加減できる自信はないけどね」
呆れる一海をよそに、言いたい事だけ言って、意気揚々と帰っていくアルトノワール。
「本当に大丈夫なんですか?」
「さあ‥‥なるようになるだろう」
藁木屋の返答は絶望的に素っ気無かった。
「そんな曖昧な‥‥(汗)」
「暇潰しに真剣勝負がしたいだなどと言われても困る。たまには負けるのもいい薬になるさ。‥‥所で、一海君。今回の黄泉人騒動で諸国から都にやってくる腕自慢は後を絶たないという話だぞ」
「‥‥へ?」
「五条大橋のあたりはちょうどそんな武士達が通る路だが、そんな場所にあのアルトが立っていたらどんなことになるだろうかな」
さて、黄泉人追討の勅旨が発せられた頃の話。
京都五条大橋に鬼が出るという噂が立った。
鬼は美しい女性の格好をして、腕自慢の武士が橋を通ろうとすれば襲ってきて、得物を奪うという。
噂を聞きつけて幾人もの勇者が立ち向かうが、未だ勝利した者は皆無。
‥‥挑戦者モトム!
●リプレイ本文
●猛者、集結
某月某日、快晴。
カンカン照りとばかりの太陽光線が降り注ぎ、正直立っているだけでも汗が滲み出てくる。
そんな中、依頼の場所である五条大橋には、この陽気でなお黒を基調とした服装の女性が待ち構えていた。
「‥‥来たわね。ウォーミングアップも終わってるわよ」
そう言って6人を見やった女こそ、この依頼を出した張本人‥‥アルトノワール。ブランシュタッドである。
容姿端麗、スタイル抜群、お金持ち(らしい)と、聞くだけなら理想の女性と言ってもいいが‥‥如何せん彼女の場合、性格が破綻しまくっているのがなんとも勿体無い。
冒険者たちもすでに戦闘準備万端‥‥気力充実といったところか。
「一応自己紹介しておくぜぇ! 俺は戦人、虎魔慶牙(ea7767)! 面と向かって話すのは初めてだよなぁ!」
「初めまして‥‥だな。パウル・ウォグリウス(ea8802)、侍魂を旨とするナイトだ」
「オス! 自分は『フトシたん』こと太丹(eb0334)っす。よろしくっす」
「デュランダル・アウローラ(ea8820)だ。名前くらいは覚えていただけていると思うが‥‥」
「ミーの名は暮空銅鑼衛門(ea1467)でござる! 秘密結社ぐらんどくろすのため、若葉屋のため‥‥笑撃のでびゅーでござる!」
「やれやれ‥‥本当はあまり気乗りがしないんだがね。マナウス・ドラッケン(ea0021)、お姫様の退屈凌ぎに参上だ」
各々名のある冒険者だけに、自己紹介するだけでも周りのギャラリーからどよめきが起こる。
剣技に秀でた者、射撃に秀でた者、人ならざるまでの胃袋を持つ者(!)等、実にバラエティに富んでいた。
「‥‥ふぅん‥‥全員嫌でも覚えちゃうくらいの有名人じゃない。わざわざ面倒を押して依頼を出した甲斐はあったかしら」
「ほほう! 秘密結社ぐらんどくろすのエージェントであるミーも、随分有名になったものでござる!」
「‥‥あなたの場合は褌屋ってイメージしかないわよ」
「くっ‥‥喜んでいいものか微妙でござるよ‥‥」
銅鑼衛門が男泣きをするも、とりあえず総員無視を決め込んでいる。
「‥‥じゃ、面倒だから自己紹介した順にかかって来なさいな。どうせ順番で有利不利なんてないから」
「そうこなくっちゃな! なら俺から行かせてもらうぜぇ!」
そう言って、ずずいと前に歩み出た虎魔。
斬馬刀を軽々と操る彼の姿に、ギャラリーの期待も高まる一方だ。
鬼とさえ噂されたアルトノワールの実力が、今明らかになる―――
●VS若き猛虎
「さぁて、楽しい喧嘩にしようぜぇ! おまえさんともいっぺん戦った見たかったからなぁ!」
「‥‥喧嘩?」
「おう、喧嘩さ。俺にとっちゃ強いやつと戦うのが楽しいわけで、殺し合いがしたいわけじゃない。俺の信念を簡単に表すのが喧嘩って言葉なんだぜぇ!」
「‥‥あ、そ。じゃあ‥‥」
ひゅんっ‥‥どすっ!
「あ?」
見得を切ろうとちょっとアルトから視線を外した瞬間。
虎魔の右足に、アルトが投げつけた縄金票が突き刺さっていた。
「おぉぉぉぉぉっ!? お、おいおい、そりゃあないんじゃねぇか!?」
「‥‥なんで? だってあなた、『喧嘩』って言ったじゃない。喧嘩ってヨーイドンで始めるものじゃないでしょ」
その言葉を聞いて、一瞬ポカーンとした虎魔だったが、やがて心底面白そうに笑い出す。
「だっはっはっは! そうか、そりゃそうだ! 喧嘩する前提で対峙してるのに、隙を見せた俺が悪い! ‥‥だがよぉ!」
どん、と怪我をした右足で元気よく踏み出す虎魔。
中傷クラスの傷で動きは鈍っているが、彼の闘争心にはあまり関係ないらしい。
「‥‥タフね。ならもう一つ」
そう言って今度は左手の縄金票を投げつけ、虎魔の右手に直撃させる!
だがそれでも虎魔の突進は止まらず、ついには彼必殺の間合いに入った!
「喧嘩はやっぱり斬りあいだぜ!」
「‥‥ちっ!」
流石にヤバイと感じたのか、慌てて攻撃を回避するアルト。
重傷を負ってなおアルトに当てかねない腕前と腕力は、正直脅威以外の何物でもない。
「‥‥ちょっとヒヤッとしたわね。噂通りってところかしら」
少し距離をとって縄金票を手元に引き戻し、アルトは言う。
「‥‥楽しかったわ。あなたとの喧嘩」
再び連続で縄金票を喰らい、流石の虎魔も動けなくなる。
達人同士の戦いは一瞬が命‥‥ギャラリーがそれを理解するには、充分な一戦であった―――
●VS江戸霜月小武神
「ひとつ人の世に生き血を啜り‥‥。ふたつ不埒な福袋三昧‥‥。みっつ醜い浮世の鬼を――退治てくれよう『侍魂』」
バサ、と上着を脱ぎ捨て、文字通り『侍魂』と書かれた背中の刺青を披露するパウル。
観衆からはどよめきが起こるが、アルトはやっぱり興味ない様子。
「どうした、今度は不意打ちなしかい?」
「‥‥ずっと警戒してるくせによく言うわよ」
「ふっ、千両役者は同じ手でやられるわけには行かないからな」
お互い構えを取ったまま、しばし動かない。
とはいえ距離があっては近接攻撃を得意とするパウルに不利なため、やはり仕掛けざるを得ない!
「‥‥虎魔ってやつと変わらないじゃない。三文役者もいいところね」
「ところがどっこい!」
飛来する縄金票をリュートベイルで受け止め、パウルはなおも接近する!
「‥‥ふぅん。じゃあ大根役者に格上げしてあげる」
「何‥‥ぐおっ!?」
どたん、とパウルが五条橋の上で倒れ付す。
見ればパウルの左足に、もう一つの縄金票が突き刺さっている!
「ダブルシューティングか! ち、流石に二つ同時はきつい‥‥!」
アルトはクン、と右の縄金票を引き戻し、体勢を整える。
パウルも痛みを堪えて立ち上がり、またしても接近し、ゼロ距離まで踏み込んだ!
「錬術、浮気してるぜ」
アルトにだけ聞こえるように耳打ちし、即座に後頭部へのハイキックを決めるパウル。
観衆からは何やら『き、きたねぇ!』等のブーイングが飛んでいるが、パウルは何故か顎をしゃくれさせて『シャイシャイシャイ!』と叫ぶだけ。
だがアルトは気絶するどころか動揺することもなく、バックジャンプしながら右の縄金票で再攻撃した。
「どぉっ!? き、気にならないのかよ!?」
「‥‥別に。錬術が私を好きかどうかは錬術が決めることだもの。私は錬術を好き。それだけが確かなことだから」
「はっ、羨ましいねぇ‥‥」
ぺたんと橋の上に座り込んでしまったパウル。
それ即ち、決着がついたということだ―――
●VS不幸青年&世紀末褌救世主?
「オス、自分たちは二人で戦いたいっすけど、いいっすか?」
「‥‥別に。私は面白ければそれでいいから、どっちだって構わないわ。賞品をあげるかどうかは気分次第」
「それでも結構でござる! 行くでござるよ太丹殿! 『おぷしょんぱーじ!』」
「褌ブラザーズっす!」
銅鑼衛門の声に太丹が応え、一瞬にして戦闘準備を完了する。
即ち‥‥褌一丁以外何も身につけていない、ほぼ素っ裸の状態だ。
当然ギャラリーのお嬢様方からは悲鳴が飛ぶが、アルトは例によって無反応。
「‥‥いいけど、その格好で戦うの? 手加減なんてしないわよ」
「構わないっすよ。暮空さん、準備はいいっすか?」
「完了しているでござる! それでは早速‥‥そ〜らをじゆーに、とびたいでござる〜」
「はい、ス〜プレックス〜っす!」
専門レベルのオーラパワーとオーラボディを纏った暮空(身長123センチ)が、太丹(身長245センチ)の投げ技で文字通り宙を舞う。
出鱈目な攻撃にアルトノワールも一瞬判断を迷ったが、暮空に縄金票を投げつけ、迎撃を試みる。
が、魔法で強化された暮空の皮膚には、かすり傷程度のダメージしか与えられない!
「‥‥うざったいわね」
回避するのは簡単だったらしく、暮空は頭から五条橋に突っ込んだが、やはり魔法で強化されていてダメージはない。
「てつやまなんたら〜っす!」
「‥‥っ!?」
背後から攻撃してきた太丹を察知できず、気絶こそしないものの結構な勢いで弾き飛ばされたアルト。
体勢を保とうとふらふらしていると、運悪く橋の欄干に頭をぶつけていた。
「‥‥きゅぅ‥‥」
「‥‥勝ったッ! 第三部完ッ! っす!」
「事故に近いのが何でござるな‥‥」
運も実力のうちと言うか何と言うか‥‥真剣勝負の最中に言い訳は効かない。
アルトもそれを知っているからこそ、素直に負けを認めて彼らに賞品を渡したのだろう―――
●VSバーサルナイト
「‥‥あなたも来るとはね。接近されたら終わりかしら」
「さてな。気取るわけではないが‥‥騎士デュランダル・アウローラ。参る」
言葉少なげに挨拶を終え、軍配をかざして突っ込むデュランダル。
それに対し、いつものように両手の縄金票でシューティングポイントアタックEXを仕掛けるアルト。
「‥‥防がない‥‥?」
デッドorライブでダメージを軽減し、二発喰らっても中傷で済んでいるのは脅威と言えよう。
だが、喰らった場所がまずかった。
「ぐっ‥‥り、両足を‥‥!」
「‥‥振袖貰っておいて何だけど、手加減なしよ。その足じゃ私の動きにはついてこられない‥‥」
確かにデュランダルの技量を持ってすれば、アルトの射撃を盾で防ぐことも出来る。
だが足に怪我を負って速度が鈍っては近づくこともままならないし、ダブルシューティングを絡められたりでジリジリ消耗していく一方だろう。
教訓。どんなときでも‥‥特に達人同士での戦いの場合、攻撃は出来るだけ喰らわないようにしましょう―――
●VSアーチャーメリー
「女性と戦うのは趣味じゃないんだがな。まぁ、暇つぶしに付き合うくらいだったら良いか」
「‥‥確かあなた、アルスターだったわね。どの程度の実力か‥‥楽しみだわ」
「つくづく過激なお姫様だ。通じるか謎だが‥‥一つ面白い技を見せよう」
ダブルシューティングEXで右手に持った3本のナイフを同時に投擲し、攻撃とするマナウス。
回避も得意なアルトはさらりとそれを避け、突っ込んでくるマナウスに攻撃を仕掛けようとするが、欄干を蹴って軌道を変えたりと、イマイチ効果的なタイミングがつかめない。
「もう一度!」
今度は左手に持った3本のナイフを投げつけるマナウス。当然アルトは回避する。
「‥‥馬鹿にしてるの? もう弾切れでしょ」
「さてね。そちらこそ、シューティングポイントアタックEXは不安定で使いづらいだろう?」
ざん、とマナウスがアルトノワールの目の前まで接近する。
「‥‥あなたは回避が上手い上に同門だから苦手ね。でも、素手で私を倒すつもり?」
「素手じゃないさ」
ぴたり、とアルトの喉元にナイフが突きつけられる。
「‥‥まだ持っていた‥‥ってわけじゃないわね。釣り糸か何かかしら」
「強度的には縄に見劣りするが、隠密性は高い。油断大敵だったな、お姫様。多少の暇つぶしにはなったかね? 俺は」
「‥‥そうね、わりと面白かったわ。‥‥私の負けよ」
その瞬間、観客からどっと歓声が上がる。何せアルトに参ったと言わせたのはマナウスだけなのだ。
知力・実力・相性・運‥‥全てが合わさっての勝利と言えよう―――
結局、暮空、太丹、マナウスの三人が勝利したとみなされ、賞品を贈られた。
アルトは自分を負かすほどの冒険者と戦い満足したのか、五条大橋で騒ぎを起こすこともなくなったという。
多くの人間を巻き込んだ我侭娘の暇つぶしは、一先ず終了。
次はどんな無理難題を押し付けてくるのやら―――