夏の終わりに‥‥拳で語れ!?
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■ショートシナリオ
担当:西川一純
対応レベル:1〜3lv
難易度:普通
成功報酬:0 G 65 C
参加人数:8人
サポート参加人数:-人
冒険期間:09月08日〜09月13日
リプレイ公開日:2004年09月09日
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●オープニング
世に星の数ほど人がいて、それぞれに人生がある。
冒険者ギルドでは、今日も今日とて人々が交錯する―――
「舞い散る汗! 唸る拳! 空を裂く蹴り! 江戸の夜を血飛沫が舞いますよ〜!」
やたらハイテンションで依頼の紙‥‥というかチラシを机に叩きつける冒険者ギルドの若い衆。
随分乗り気なイベントらしく、いつもより5割増しにテンションが高い。
「題して、『残暑見舞い武道大会』! 残暑見舞いで怪我人の見舞いも増やすはた迷惑な大会です!」
台詞のわりにニヤニヤしっぱなしで、体全体から『絶対に観戦に行くぞオーラ』があふれ出していた。
渡された紙に書いてあることは以下の通り。
一つ、仕合は全て素手で行うこと。金属拳なども認められない
二つ、仕合は特設武舞台で行われる。場外は即失格
三つ、仕合において基本的に反則は無し。ただし、対戦相手を殺したら即失格
四つ、明るく楽しく激しい武道
「最後のはいまいちよく分かりませんけど、まさに血沸き肉躍る素手の祭典! 勿論普段は刀を振るっているという人でも素手で出場するなら問題ありません。え? そんなの本職の武道家に敵うわけないだろって? 大丈夫です、素手が本職じゃない人と素手が本職の人がぶつかった場合、救済措置がとられるそうですから!」
腕と足に錘をつけて戦うらしいが‥‥どれくらいの重量なのかはチラシには書いていない。なお、救護班として1〜2人程の回復魔法または応急処置のできる人間も同時募集と、隅っこの方に書いてある。これは別に集まらなくても構わないらしいが。
「今回はどれだけの怪我人‥‥もとい、観衆が集まるんでしょうね。参加者も観戦者も年々増えてきてるんでレベルも高くなってきたようですし。皆さんも力と技の風車を回してください♪」
怪我をしても救護班に治してもらえるだろうし、ベスト8にはそれぞれ賞金、優勝者にはさらに別途に賞金も出るという。夏の終わりに、こんな思い出はいかがだろうか―――
●リプレイ本文
●つかもうぜ♪ ドラゴ‥‥げふんげふん
夏ももう終わりかけ、風が爽やかなある晴れた日。普段は空き地のはずの某所には人が溢れかえっていた。会場に入りきらない人たちは周囲の家屋の屋上から観戦したりと、例年通り武道会は盛況だ。
予選から始まった大会もすでに上位8名までに絞られ、激戦が展開されている。
「刃と戦うまで負けられるか!」
「ふふ、残念だけどアタシには勝てないよ」
第一回戦第一試合、結城利彦(ea0247)VS榊朗(ea1465)。事前のアミダクジで決定された上位8人の組み合わせにより開始された試合は、榊が優勢であった。
バーニングソードを拳に纏い、攻撃する結城に対し、榊はまったくの素手。さらにお互い相手の攻撃を避けるのが困難なため、まさに背水の陣の打ち合いである。しかし長身を活かした榊の拳や蹴りは、少しずつではあったが一歩深いダメージを与えていったのだ。
「ぐはっ‥‥あ‥‥ぐ!?」
「ごめんね。もう少し修行すればアタシにくらいならすぐ追いつけるよ、結城利彦サン」
素早い回し蹴りが後頭部に決まって結城が崩れ落ち‥‥審判が高らかに榊の勝利を宣言した―――
●色気=武器
第一回戦第二試合、河島兼次(ea2900)VS九条棗(ea3833)。街道場の師範をしていると言う河島有利かと思われたが、試合は意外な展開を見せる。
「ふふふ‥‥見たいのか?‥‥だったら試合の後で私を買ってくれ‥‥そうすれば目だけじゃなく肌でも愉しむ事ができるぞ」
「ば、馬鹿を言うな! もう少し恥じらいというものを持てんのかお前は!? ええい、着物を正せ!」
九条の見えそで見えないお色気攻撃(?)は、河島はおろか会場に来ている男ども全員に効果を上げていた。全力で戦おうとする河島だが、ヒット&アウェイを執拗に繰り返す九条に比べ、どこかしら身体に余計な緊張が走っているようだ。
「ぐおっ‥‥ふ、不覚‥‥!」
「身体は立派な女の武器だ‥‥武器に遠慮するなんてどうかしてる」
回し蹴りをスカしてから回転し、そのまま拳をこめかみに叩き込まれ‥‥河島の意識が刈り取られた―――
●ハンデを越えて
第一回戦第三試合、玖珂刃(ea0238)VS紅李天翔(ea0967)。本職の武道家である紅李には錘のハンデが付けられているため、試合的には互角といってよかった。
「利彦がさっさとやられちまったんだ‥‥俺は違うって所を見せてやる!」
「私は盲目だ。だから己の武道を究めてみたい。例え錘があろうとも‥‥!」
玖珂のブラインドアタックは、盲目の紅李に対し逆に意味がなく、一方の紅李はハンデのせいで当てづらくはなっているものの、オーラパワーを駆使しているため当たればそこそこと言う具合だ。
そして業を煮やした玖珂が一撃必殺のチャージングを試みる!
「一か八か。決めてやるぜ!」
「‥‥それを待っていた!」
鈍い音がして、両手をクロスさせて拳を受け止めた紅李が大きく後ろに後退させられる!
あわや場外と言うところで勢いが止まり‥‥体が浮いて一瞬無防備になった玖珂にストライクが決まる―――
●いくらなんでも‥‥
第一回戦第四試合、阿武隈森(ea2657)VSレディス・フォレストロード(ea5794)。正直、運が悪かったと思ってもらうしかなかった。あまりに‥‥あまりに一方的な試合。
「要するにアレだろ。素手ゴロの喧嘩ってコトだろ? けどこれは流石に殴る気になれないぜ」
「へ、『兵は詭道なり』、ですよ。小手先勝負なら大得意です‥‥得意、ですけど‥‥」
245センチの阿武隈と44センチのレディス‥‥オフシフトを駆使して回避を続けたとしても限界がありありと見えていた。さしもの観客も哀れみの混じったざわめきを続けてるしかない。
「変身を駆使しても絶対無理です‥‥残念ですけど、棄権しますね」
「ま、運が悪だけと思いなよ。ここに来れただけでも実力あるってことだぜ?」
会場からは暖かな拍手。阿武隈の言うとおり、上位8人に残っただけでも良しとすべきではないだろうか―――
●女の戦い 〜陸奥の技〜
準決勝第一試合、榊VS九条。女性同士の対決と言うことで、流石にお色気攻撃は通用しない。だがそんなものに頼らずとも、九条は強かった。
「陸奥流が一人、九条棗! いざ参る!!」
「嬉しいわ‥‥女であなたほどできる相手と戦えるなんてね」
お互い一回戦のダメージは救護班に回復してもらったため、体調は万全だ。だが今回もまた、お互いの攻撃を避けきれず打ち合う乱打戦になってしまった榊は心理的にどうだろうか?
「この緊張感‥‥やっぱりいいわね。棗サンも色気なんで使わないで、純粋にこの緊張感を楽しんだらどうかしら?」
「楽しいさ。だがそれも勝ってこそ。それに‥‥見られるのも嫌いじゃないんだ!」
「そこんところは理解しがたいけどね‥‥まぁ、楽しませてもらってるからいいわ!」
凄まじい打ち合いをしながらもさらりと会話をする二人。榊が右腕を極めようとすれば九条は身体を捻って蹴りを繰り出す。それを右腕でガードしつつ、掴んでいた九条の右手を放して逆に蹴りにもっていく。
至近距離で、しかも本職の武道家でもない二人の試合はまさに壮絶であった。
「月影、稲妻、電光、後電光、雁下、水月、肺尖、胸尖、開元、癪活、活殺、金的、腕馴、肘詰、内肘詰、開握、内尺沢、外尺沢、曲地、合谷、甲手、内関、外関、後稲妻、夜光、後詰、承山、内踵、甲利、向脛、手打、潜龍、草靡、絶骨、伏兎、ガードを固めようとも突き込む急所は必ず在る!」
「そろそろ決めようって言うわけね‥‥いいわ、受けてたとうじゃない」
突っ込んでくる九条に対し、榊も地面に踏ん張って相手の動きを読もうとする。おそらくダブルアタックで来るのは間違いない‥‥後は受け止められるかどうか!
一方、九条は榊に避ける意思がないことを感じ取ると、微妙に体制を変化させ、右拳でのアッパーを放つ!
「くっ! 止める!」
榊が両手で、突き上げてくる拳を受け止めた! しかし恐ろしいことに、九条は受け止められた後の余分な力で逆向きに回転、右足の踵を榊に叩き落とす!
「ぐぅっ‥‥そ、そうか‥‥陸奥流は、足も‥‥!」
「そういうこと。強いな‥‥気に入ったよ‥‥今度は闘技場では無く寝所で愉しませてあげるよ‥‥」
「ふ、ふ‥‥考えて‥‥おく、よ‥‥」
その言葉を残し、榊は気を失った。二人とも、女同士だとかそういうことはまるで気にしていないらしかった―――
●なぐりあい宇宙
準決勝第二試合、 阿武隈VS紅李。体格差があるので紅李の錘は急遽外されることになり、力対技の戦いが見られそうだった。
「さて‥‥グッドラックもかけ終えた。あとは殴るだけだぜ?」
「戦いは力だけで決まるものではないだろう。武道はそんなに単純であるものか」
「あ、そう。悪ぃけどよ、俺がやってるのは‥‥」
開始の合図と同時に殴りかかる阿武隈。大柄な割りに意外と速い‥‥!
「はっはー! 俺がやってんのは、喧嘩なんだぜぇ!」
どごっ!
「なっ‥‥ぐっ‥‥ち、ちぃぃっ!」
派手な音を立てて拳が炸裂する。痛みに顔を歪ませながらも、紅李はストライクで反撃する!
「ごふっ!? そ、そうだぜ‥‥こうでなくっちゃあ面白くねぇってもんだ!」
一撃一撃がかなり効く。こうなると後はどれだけタフか。そして精神力が保つかで決まる。
お互い体の限界以上を引き出して打ち合うこの試合。その凄惨さは九条と榊の試合の比ではなく、血が飛び骨が軋む音が観客席まで聞こえてきそうな‥‥そんな『死合』。
だがこういう持久戦になれば、やはり‥‥。
「がぁっ‥‥! お、己の力量を知るのもまた強さのうちか‥‥今のままでは、勝てん‥‥!」
「へ、へへ‥‥圧倒的な力ってのも充分な武器だろ? 後のことは殴ってから考えりゃいいのさ」
「ふっ‥‥面白いヤツだ。ま、またどこかで戦ってくれるか? 私ももっと精進しよう」
「おぉ、好きなだけ来い。返り討ちにしてやるぜ」
血沸き肉躍るを通り越すと凄惨にしかならない素手の殴り合い。しかし、戦っている当人にはそれが何より楽しく、充実している時間なのだ。武道を目指しているわけではない阿武隈と、武道を究めんとする紅李‥‥違いはあれど、拳で通じ合えるのは‥‥こんなに嬉しいことはないのかもしれなかった―――
●決着、天下一‥‥げふんげふん
いよいよ決勝‥‥予選から数えて、参加人数は122人。その頂点に立つべく、武舞台に現れた二人。
方や陸奥流の技を使い、変幻自在に戦う九条棗。
方や圧倒的なパワーを用いた力押しで戦う阿武隈森。
まさに正反対の二人だが‥‥阿武隈も準決勝のようには行かないだろう。九条にはスタンアタックがあり、油断して下手に喰らおうものなら‥‥そこでアウトだ。
「見てたぜ、おまえの試合。胸同様すげぇ技だったぜ」
「ふふふ‥‥胸だけではないぞ、凄いのは。なんなら試してみるか‥‥?」
「そりゃ嬉しいねぇ。俺が優勝した後、上位8人みんなで飲みに行って、その後に‥‥ってか」
「あぁ‥‥その条件では無理だ。何故なら‥‥私が勝つからな」
不敵に笑いあう二人‥‥今、開始の合図が―――
結局、夏の暑さを取り戻すかのような熱い戦いを制したのは、阿武隈森であった。その圧倒的なパワーはまさにジャイアントに相応しいものであり、それをもって技の九条を組み伏せたのだ。
優勝賞金をもらった阿武隈は先の言葉どおり、他の7人を誘って盛大に飲み食いし、豪快に遊び倒したのは言うまでもない。
ちなみに‥‥その後阿武隈と九条がどうなったか、九条と榊がどうなったかは‥‥定かではない―――