【羽狩り】ミーニャ・リベンジ

■ショートシナリオ&プロモート


担当:西尾厚哉

対応レベル:6〜10lv

難易度:普通

成功報酬:1 G 85 C

参加人数:4人

サポート参加人数:-人

冒険期間:11月04日〜11月07日

リプレイ公開日:2008年11月11日

●オープニング

――キエフの闇市では、シフールの羽が売られている。
 その噂が立ったのは数週間前だ。
 シフールの羽をコレクションする金持ち達と、彼らに商品を提供するチンピラ共。
 悪趣味ながら需要と供給は成り立っているらしく、少し前は稀有な模様や色であると危ないと言われていたのが、今や『よほど見た目が悪くなければ』にまで拡大している。
 どうやら収穫祭も終盤になり、人が多い時期に売れるだけ売っておこうという悪辣な状態になっていると思われた。
 もはや噂どころではなくなっているというのに羽を切られるシフールは後を絶たない。
 これはチンピラ達に知恵を貸しているか、手助けをする者がいるのではないか、という噂が新たに広まりつつある。
 そこに羽狩りに関与するシフールの存在も浮上する。
 被害者は一様に『見知らぬシフール』に連れて行かれているからだ。その容貌は青い羽であったり、茶色い羽であったり、と定かではない。ちらりと本来シフールにあるはずのない『尻尾』を見た、という者もいたが、それも明確な情報ではなかった。


 靴屋の工房に出入りしていたミーニャは自分を訪ねてきたシフールと出て行ったきり、戻らなかった‥いや、正しくは戻れなくなった。
 ちょうど羽狩りの噂が広まりかけた頃だ。
 心配した靴屋の親方夫婦がギルドに依頼を出し、冒険者達に救出された時には既に羽を切り取られていた。ミーニャの青い羽は高値がついたらしく、助け出されなければ死ぬまで羽を切られ続けていたかもしれない。
 危ないから一緒に住もうという靴屋のおかみさんの強い申し出もあって、彼女は工房にヴァレンたちと一緒に住むことになったが、しょんぼりしていることが多かった。
 いくら二週間程すれば元通りになるとはいえ、シフールが羽を切られるというのはきっと想像がつかないくらいの屈辱であるのかもしれない。
 しかし、羽が生え揃うといつもの元気を取り戻した。屈辱は怒りに変わる。
 彼女はたびたび言った。
「ミーニャ、とっても悔しいのです。あの子を見つけ出したら引っ掻いて蹴飛ばしてやりたいくらいなのです! あの子はミーニャが羽を切られている時笑っていたです! 男にも殴られたです! どこかでリベンジするです!」
『僕が仕返ししてやりたいよ』
 ヴァレンはそう思うが、彼女には言えない。自分にチンピラを相手にする力があればどんなにいいだろう。


 おかみさんがミーニャに友達が尋ねてきたよと告げた時、ミーニャだけでなくヴァレンも、そばにいたダニイルもぎょっとして顔をあげた。おかみさんだって、見知らぬシフールの話を知らないわけではない。
「シフールの好青年よ。変な感じじゃなかったわよ?」
「ヴァレン、一緒に行ってきたら」
 ダニイルがヴァレンを促す。ヴァレンは立ち上がると、ミーニャと一緒に店先に顔を出した。
 そこにはシフールの青年が待っていた。端正な彼の姿にミーニャが一瞬戸惑う。見覚えのない青年だった。
「ミーニャさんですか」
 彼は言った。
「僕はディルといいます。シフール自警団のひとりです」
「ジケイダン?」
 ミーニャとヴァレンは顔を見合わせた。ディルは頷く。
「シフールの羽狩りと対抗するために有志で集まった自警団です。もともとシフール飛脚の組織が短期的に集めた護衛の集団です。数はそんなに多くはないですが」
「それで私に何の用?」
 ミーニャーはつつつ、と警戒するようにヴァレンの傍に寄る。ヴァレンも少し身構える。
 ディルはそれを見て小さく息を吐いた。
「‥僕は本当に自警団です」
 実は、と彼は話し始めた。

 今やシフール飛脚にまで危険が及ぶようになり、有志を募った自警団が設立されたがどうにも被害が留まらない。そのため飛脚ギルドは組織一掃退治の依頼を冒険者ギルドに出すという。
「つまり、護衛をつけているとコストの面で飛脚業が成り立たないのです。有志とはいえ護衛は無償ではない」
 ディルは肩をすくめた。
 彼は依頼を出す前に集められるだけの情報を集める役目を担っているらしい。
 ミーニャが助け出された話を聞いたディルは、その後そのアジトに踏み込んでみたのだが、予想通りもぬけの殻だった。
 解放されたシフールで町に留まっているのはミーニャだけだったようで、それで話を聞きに来たのだ、と彼は言った。
「嫌な思いをしたと思いますが‥覚えていることを教えていただけますか」
 ミーニャはしばらく考え込んでいたが、ヴァレンから離れるとディルに近づいた。そして息を吸い込んだ。
「思い出すだけで悔しいのです! あの子見つけたら掴んで振り回してごんごん殴って蹴り飛ばして、うきーっ!」
 言っているうちに興奮してきたらしく、ミーニャは拳を握り締めて振り回し始めた。振り回し過ぎてディルの頬にぶつかりそうになる。彼はそれを片手でぱしりと受け止めた。
「あ、ごめんなさいなのです‥」
 ミーニャは顔を真っ赤にした。
「あの子、というのはどんな感じでしたか」
 ディルは彼女の手を握ったまま腕を下におろすと、ミーニャの顔を覗きこんで尋ねた。
 美しい顔に覗きこまれてミーニャは更に顔を赤くした。
「‥女の子だったです。ミーニャとおんなじ青い羽持ってたです。おんなじねって声をかけられたです。それからしばらくお喋りしたです」
「どんな話を?」
 ミーニャは握られたままの手をちらりと見た。
「それが‥あんまり覚えてないのです‥。でも、しばらくお話してたら気分良くなって、ふらふら〜って一緒について行っちゃったです‥」
 ふたりのやりとりをヴァレンは心配そうに見守っている。
「尻尾‥というのを見ましたか? その人に」
「尻尾?」
 ディルの言葉にミーニャは目を丸くする。
「いえ、そういう情報があったものですから‥」
 ミーニャはかぶりを振った。
「尻尾は見てないです‥」
「そうですか」
 ディルの少しがっかりした表情になった。
「でも、あの子の言ったことで、すっごく腹が立った言葉があるです」
 それを聞いて小首をかしげるディル。ミーニャはちらりとヴァレンを振り返る。
「羽を切られる前、誰かを好きになってる奴は大嫌い、って言われたです‥」
 ミーニャはそう言ったあと俯いた。
「何度も羽を切り取って苦しんだら、そのうちあんたなんか、魂を抜き取ってやるって‥」
 ぽろりと出たミーニャの涙に今度はディルが慌てた。
「ありがとう、もういいです。辛い話をすみません」
 ミーニャは急いで涙を拭う。
「ミーニャ、悪い男たちの顔はしっかり覚えてるです。うろうろしてたらすぐ分かるです。必要があったら協力するのです。見つけたら殴りたいのです」
 それを聞いてヴァレンが口を挟んだ。
「ミーニャ、それは危ないよ」
「大丈夫なのです」
 ミーニャはにっこりと笑った。
「冒険者さんて強いのです」
 ヴァレンの表情が曇る。
 ディルはミーニャの顔をしばらく見つめたのち、彼女の手の甲にさりげなく口づけした。それを見て、ミーニャだけではなくヴァレンも目を丸くする。
「‥勇敢な人だ。その時には必ず僕が護衛をしましょう」
 ディルは丁寧にお辞儀をすると深い碧の色を持つ羽を羽ばたかせて去っていった。
 ミーニャは胸の前で手を合わせてうっとりと見送っている。
 その彼女の後ろ姿を見つめるヴァレンの背をダニイルがそっとこづいた。
「恋敵、登場?」
 振り向いたヴァレンからダニイルは小さく舌を出して逃げた。

●今回の参加者

 ea2100 アルフレッド・アーツ(16歳・♂・レンジャー・シフール・ノルマン王国)
 eb3232 シャリン・シャラン(24歳・♀・志士・シフール・エジプト)
 eb7693 フォン・イエツェラー(20歳・♂・ナイト・ハーフエルフ・ロシア王国)
 ec3096 陽 小明(37歳・♀・武道家・人間・華仙教大国)

●リプレイ本文

 夕刻、ミーニャとディルは木の皮の包みを下げてよろよろと飛んできた。
 ミーニャはぽてんと着地し、ずずっと包みを押しやる。
「マイアさんから‥ピロシキどうぞなのです‥ふう」
 どうやら肉屋のマイアに足止めをくらったらしい。
 しかし、シャリン・シャラン(eb3232)の姿を見て彼女は顔を輝かせた。
「きゃーん! 綺麗〜!」
 シャリンはくるりと回ってみせた。
「しふしふ〜。あたいはシャリンよ、よろしくね」
 うっとりするミーニャ。すぐにハッとしてぺこんと頭を下げた。
「よ、よろしくなのですー」
「じゃ、始めましょうか」
 ダウジングペンデュラムを取り出すシャリン。ディルが腰に挿していた羊皮紙を抜き広げた。
「シフール飛脚の地図です。僕たちが得た闇市の情報は3箇所」
 ディルはそれぞれ離れた場所を示した。
「了解」
 シャリンはダウジングペンデュラムをミーニャに突き出した。
「はい、これ持って。覚えてる男の顔を思い浮かべてね。絶対懲らしめてやるから力を貸して」
 ミーニャは頷いて地図の上に振り子を垂らす。
 振り子はやがてディルの示した場所のひとつを指し始めた。しかし一点に定まらない。アルフレッド・アーツ(ea2100)が彼女の手を移動させてみるが、指す範囲は広かった。
「何人覚えているの?」
 アルフレッドが尋ねる。
「3人なのです‥」
「この一帯が怪しいということでしょうね」
 陽小明(ec3096)の言葉にフォン・イエツェラー(eb7693)も頷く。彼はミーニャの顔を見た。
「男たちの顔はどんな感じですか?」
 視線を泳がせるミーニャ。
「吊り目と鼻が大きいのと憎たらしい顔してるのと‥」
 全員に困惑の表情が浮かぶ。何ともアバウトな人相だ。
「わたし、一緒に行くです!」
 ミーニャはきっぱりと言った。


 夜になってから町の露店は灯りが吊るされ、収穫祭終盤の賑わいを見せていた。それを背に陽小明は薄暗い路地に足を向ける。
 当然のことながら闇市は大っぴらな店ではない。情報を知っている者だけが、ぴたりと閉められた黒い木戸を叩いて目当ての物を買うのだろう。
 シフールたちは屋根を伝って来ているはずだ。フォンは小明とシフールの両方に注意して後方にいる。
 出発前、シャリンはフォーノリッヂを試していた。
『羽狩り、犯行』
 その言葉で彼女が見たのは薄暗い部屋の中だ。再度試した時は男の大きな手に鷲掴みにされるミーニャの姿を見た。
 フォーノリッヂは未来予知のに、なぜミーニャが捕まる姿が?
「とりあえず、ミーニャに注意」
 彼女の言葉に従い、ミーニャはぴたりと護衛されている。尻尾のあるシフールも気になるが、地上でない分ミーニャが男に捕まる心配はない。
「何かお探しで?」
 声をかけられて小明は顔を巡らせた。黒い影が近づく。
 差し出された男の皺だらけの手に、小明は10Cを乗せた。
「寒くなる前に華国に帰ろうと思っているが、せっかくなのでここでしか手に入らないものをと。多少値は張って構わん」
「龍の鱗はどうです?」
 小明は小さく笑う。
「華国で数倍に売れるものが良い」
「それなら‥シフールの羽は?」
「どこに?」
 尋ねると、再び手が差し出された。
 小明がさらに10Cを乗せると相手は手招きをした。古びた木戸の前で皺だらけの手が扉を叩く。
 扉の小窓が一瞬動き、キイと音が響いた。顔を出した男が小明に顎をしゃくる。
「入れ」
 小明が身を滑り込ませたその途端
「このーっ!」
 甲高い声に小明はぎょっとして振り返った。その目に拳を振り上げるミーニャの姿が映る。
 拳は男の顔に突き当たり‥

 ぽふ。

 人差し指でつい、と頬を押されたようなものだ。
 意表を突かれて男は反対側に顔を向けたが、すぐに険しい顔になる。
「‥んだぁ?」
 まずい、と小明が身構えると、穏やかな笑みを浮かべた騎士が姿を見せた。フォンだ。
「失礼‥。これは私の連れです」
 彼はにこやかにそう言うと、あっという間にミーニャを連れて立ち去った。
「品を見せてくれ」
 小明が素早く声をかける。男はフォンの去った方向をひと睨みした後、扉を閉めた。


 まさかミーニャが自分から飛び掛っていくとは‥。
「ねえ、あの男‥」
 シャリンがそう言った時には飛び出そうとしたディルをアルフレッドが止めていた。フォンが動いたのを見てとったからだ。
「あいつを一番殴りたかったですー! ごめんなさーい!」
 泣き出すミーニャを見てシャリンがしょうがないわね、というように肩をすくめ、小明に顔を向けた。
「アルフレッドが見張りを続けてる。中はどうだった?」
「シフールの羽が並んでいました」
 小明は眉をひそめる。
「男は6人。奥に部屋がありましたから、他に数人の可能性も。怪しまれぬよう手付金を置いて来ましたが‥」
「あんまり時間ないよね‥アルフレッドと合流しよう」
 シャリンの言葉にふたりは頷く。
「あたしも‥」
 そのミーニャをディルが止めた。
「家にお送りします」
 ミーニャはくすんと鼻をすすりあげた。
「とっておきは残しておいてあげるわよ」
 悪戯っぽく言うシャリン。きょとんとするミーニャにフォンと小明も笑みをみせた。


 合流したアルフレッドは薄暗い通りの奥を指差した。
「さっきの男がミーニャを思い出したみたいだ‥。店と別の場所に行った。捕獲組だね」
「と、いうことは、私はもう警戒されますね」
 フォンが呟く。
「中には何人ほど?」
 小明が尋ねる。
「4人。奥にあるのは‥倉庫かな」
「踏み込みますか」
 フォンの言葉に小明も頷く。
「じゃ、あたいは奥の部屋を探るね」
 シャリンは言った。

 シャリンは力任せに黒い扉を叩いた。小窓から目が覗く。
「あたいの踊りを見てくれない?」
 これ見よがしにくるりと回ってみせる。
 小窓がぱたりと閉まった。だめかな、と思った時、扉が開かれた。
 あっという間に小明のオーラパワーを付与された拳を受けて男が倒れる。
 シャリンは素早く奥の部屋に飛んでいった。
 他の男たちも飛び掛ってくるが、所詮チンピラだ。アルフレッドの投げるタガーとフォンの剣、小明の拳の敵ではない。次々に大きな音をたてて床に伸びた。
 ひとりがよろよろと逃げて行くのを見送った3人は奥の部屋へ。
「シャリンさん‥ひとりが仲間を呼びに行ったよ」
 アルフレッドが声をかける。
 部屋の中は薄暗く、うず高く箱が積まれている。
 シャリンは箱を叩いていた。いくつか叩いて中から音が返ってきた時には全員がぎょっとした。
 閉じ込められたシフールだろうか。フォンが蓋をこじ開ける。
「大丈夫?」
 そう言って中を覗き込んだシャリンは、黒い瞳のシフールを見た。
 黒なんてめずらしい‥そう思った刹那、シャリンははっとして身を反らす。
 彼女の赤い髪を小さな爪がかすめた。
「ばぁか!」
 天井まで飛び上がって叫ぶシフールを4人は見た。黒い髪と瞳、妙に禍々しく感じるのはなぜだろう。
「おまえみたいな奴は大嫌いだ!」
 黒いシフールの体が一気に燃え上がる。ファイヤーバード‥!
 アルフレッドがシャリンを庇う。炎は小明の頬とフォンの右腕をかすめていった。と、同時にどやどやと足音がする。店のほうの奴らが来たようだ。小明とフォンが身構える。
「破っ‥!」
 最初のひとりは小明の一撃で難なく倒れる。次のひとりが持つ短刀はあっけなくフォンに薙ぎ払われた。
「あいつは‥?!」
 シャリンが顔を巡らせた。
「外‥!」
 答えて外に飛び出すアルフレッドをシャリンも追う。
 アルフレッドは屋根の上にいる相手を見つけるとシフールの礫を投げつけた。
「ぎゃっ‥!」
 声と共に屋根から転げ落ちる黒いシフール。必死になって羽ばたき、地面の激突は避けたが着地するなりうずくまる。
 シャリンとアルフレッドは、矢尻のように尖った細い尻尾を見た。
「寄るな‥!」
 黒いシフールが叫ぶ.。
 次の瞬間、止めを刺そうとしていたアルフレッドの手をシャリンが掴んだ。
 飛び退ったふたりと黒いシフールの間に炎の壁が吹き上がる。狭い路地に火はあっという間に広がっていく。
 炎の向こうに、アルフレッドは羽音を聞いた。闇の中に数体のインプがちらりと見えた。
「逃げた‥!」
 シャリンはアルフレッドが悔しそうに呟くのを聞いた。

「火事だ!」
 小明とフォンは目の前の男を叩きのめしたあと、外で叫ぶ声を聞いた。窓の外に目を向けると真っ赤だ。
 逃げようと横をすり抜ける男の襟首をフォンが掴む。
「おっと‥! 貴方はだめです」
 冗談じゃない、と睨みつける男に、フォンは剣を突きつけてにっこりと笑った。
「私たちは約束があるんです」

 火は明け方に鎮火した。収穫祭の賑わいで人手があったため、焼け落ちたのは闇市の開かれていた一帯だけだった。羽の店も全焼したが、町の治安を脅かす場所がひとつなくなったことは確かだ。
 ギルドに戻る前、4人は捕まえた男をミーニャの前に突き出した。
「あっ‥!」
 ミーニャは男の顔を見るなり声をあげた。
「よくも羽を切ってくれたですね!」
 拳を振り上げる。

――ぽふっ。

 足で蹴り上げる。

――ぽこっ‥。

「うわーん! 効かないですー!」
 悔しそうに叫ぶミーニャ。
 シャリンがアルフレッドの腕をそっとつつく。
 アルフレッドは小さく笑い、つい、と離れた。そしてミーニャが次に手を振り上げた時、タイミングを合わせてシフールの礫を男の尻に向かって投げた。

「いってえええっ!」

「これに懲りたら悪いことはしないのですっ!」
 仁王立ちになって叫ぶミーニャ。彼女の溜飲もこれで下がったことだろう。
「でも、あいつ‥捕まえたかったな」
 アルフレッドが呟いた言葉に小明とフォンも口を引き結ぶ。
「ほんと。シフールの姿のデビルがシフールの羽を切るなんて許せない」
 シャリンのピアスが揺れた。

 男は役人に引き渡された。うまくいけば購入者も突き止められるかもしれない。もっとも‥地位の高い者が関与しているとすんなりとはいかないかもしれないが。