野良アロサウルスを倒せ

■ショートシナリオ&プロモート


担当:虹黒

対応レベル:8〜14lv

難易度:普通

成功報酬:4 G 15 C

参加人数:6人

サポート参加人数:-人

冒険期間:10月29日〜11月03日

リプレイ公開日:2006年11月09日

●オープニング

 依頼の全てが、利益のみを生むものではない。
 時には不利益を被る場合もある。
 金銭的なもの、肉体的なもの、精神的なもの――それは様々な形で現れる。
 己の力量をわきまえて、己の力で解決できる依頼だけを請け負う。
 まさに、冒険者とは経験を積んで大きくなる者達なのだ。

●野良アロサウルスを倒せ
 戦争は多くのものを破壊するが、多くのものを生み出す素地――つまり再生の機会となる。
 ただしそれが、良いものであるとは限らない。
 長い平和が政治を腐らせるように、様々な物は表裏一体なのだ。
 カオス戦争の傷跡は、今だメイの国に数多く残っている。
 その一つに、戦争で騎乗者を失い野生化した凶獣の存在がある。
 ごく少数ではあるが彼らは適応し、野生化して繁殖を続けているのだ。
 そして先日、隊商が一つ壊滅し超弩(ど)級の野生凶獣の存在が明らかになった。
 
 種別名アロサウルス――。
 
 カオス戦争で猛威を振るった、別名『腐肉竜』とまで呼ばれる悪食の恐獣である。
 カオスニアンが使う薬物を使った調教を施せば、騎乗者の愚鈍だが命令に忠実な獣である。
 だが騎乗者を失い、野生化した野アロサウルスは本能のままに暴れ狂った。
 そして運悪く被害にあったのが、先日壊滅した隊商だった。 
 このままアロサウルスを放っておく訳にはいかない。
 メイに三つあるうちの該当分国では、早急に対策が立てられることになった。
 が、『早急に』というのが問題である。
 軍を動かすには準備が必要で、しかも国は今なおカオスからの侵略の危機にさらされているのだ。
 つまり状況に選ばれたのは、究極の遊撃兵である冒険者である。
 分国領主はバガン級ゴーレムの貸与を条件に、アロサウルスの討伐を依頼した。
 守るべきものは、無辜の民である。
 
 野生化したアロサウルスは、本来持っていたわずかな知性も失っているようだ。
 また、報告によるとアロサウルスの個体数は一匹のみと聞いている。
 とは言え、相手は凶暴な獣――まさに恐獣だ。
 
 アロサウルスの討伐に、君達冒険者の力を貸して欲しい。

●今回の参加者

 eb2582 メリーアン・ゴールドルヴィ(38歳・♀・ファイター・人間・ノルマン王国)
 eb4099 レネウス・ロートリンゲン(33歳・♂・鎧騎士・人間・アトランティス)
 eb7857 アリウス・ステライウス(52歳・♂・ゴーレムニスト・エルフ・メイの国)
 eb7875 エリオス・クレイド(55歳・♂・鎧騎士・人間・メイの国)
 eb8174 シルビア・オルテーンシア(23歳・♀・鎧騎士・エルフ・メイの国)
 eb8362 カリム・エストローネ(29歳・♀・鎧騎士・人間・メイの国)

●リプレイ本文

野良アロサウルスを倒せ
代筆:三ノ字俊介

●いきなり閑話
メリーアン:「それにしても、新米冒険者に『竜退治(ドラゴンバスター)』依頼なんて、すごいお国柄ね。驚いたわ」
ギルド担当:「は? 何を言っているんですか。相手は『恐獣』ですよ? いくら天界のお方でも、精霊の眷属である『竜種(ドラゴン)』と『恐獣(ダイナソア)』を混同されては、困ります。人々から要らぬ不興を買い、冒険者の品格を汚すことになりますから。その辺、よしなにお願いしますね」
メリーアン:(豪毅な国柄という意味では、あまり変わらないような気もするけど‥‥)

●恐獣事件勃発
 メイの国は、安全な土地ではない。
 武王であるアリオ・ ステライドの治世が行き届いているとはいえ、国土にカオスの跳梁を許し、ましてや恐獣や鬼(オーガ)種をはじめとする様々なモンスターの生息する土地を安全と言えるなら、まだしも天界のアメリカという国のニューヨークにあるハーレムという地区で、『私は人種差別主義者です』と書いた看板を背負って素っ裸で歩いた方が安全である――と言ったのは、そのアメリカ生まれの天界人である。
 ともあれ、50年前の『カオス戦争』の爪痕は未だ数多く残っており、そして認めたくは無いが、その傷を癒す暇も無いほど争いは絶えない。またメイの国の国土はとにかくだだっ広く、そしてすべて平坦というわけではないのだ。
 『恐獣現る』の報に動いた冒険者は5名。急募だったのでこの数はやむを得ないかもしれないが、もとよりゴーレムを貸与されるという条件での依頼である。アロサウルス単騎が相手ならば、むしろ大人数より運動性があって良いかもしれない。
「場所は『リザベ領』某地‥‥予想通りといえば予想通りだな」
 メイの鎧騎士エリオス・クレイド(eb7875)が地図をにらみながら言う。ちなみにリザベ領はカオスの地に面した分国領土で、非常に厳しい状況の場所だ。
 彼らは海戦騎士団のゴーレムシップの送迎を受けて、海路を移動中である。冒険者が単独で到達できる距離は少ない。また装備も限られてくる。無論ゴーレムの陸上輸送は現実的ではない。
 ゆえに冒険者ギルドでは、遠隔地に行く依頼に対して王宮から様々な協力を得ていた。このゴーレムシップの手配はそれによるものである。
 なお、貸与されたゴーレムはモナルコス級で、装備は剣と盾であった。ウィルの鎧騎士レネウス・ロートリンゲン(eb4099)は槍の装備を申請したのだが、現在のところメイの国には『剣と盾以外の装備が無い』という驚愕の事実を知ることになる。
「それだけの巨大生物なら、何か痕跡を残していると思うわ」
 ノルマン出身のファイターであるメリーアン・ゴールドルヴィ(eb2582)が、理知的な容貌に真摯な表情を浮かべて言った。元々猟遊の心得がある彼女は、猟師的な見地で相手の進路を探ろうと考えていた。実際問題として、それほどの恐獣であれば痕跡を残さないほうがどうかしている。上陸後愛馬で先行した彼女は程なく、その生物のものらしい足跡や排泄物を発見した。
 エルフ族のウィザードであるアリウス・ステライウス(eb7857)もフライングブルームを使用して広域捜索に加わった。大筋の見当はメリーアンがつけていたので、平地を行く小山のような巨体はすぐに発見された。
「まずい‥‥進路がかみ合わない‥‥」
 アリウスが思う。アロサウルスの進路はある意味でたらめで、道や平原に沿って移動していた彼ら冒険者の進路とは交差しそうになかった。どうやら知性を失っているというのは本当らしい。
 それ以前に、新参を申し出たエルフ族の鎧騎士シルビア・オルテーンシア(eb8174)からは次のような提案が出ていた。
『恐獣を発見したら、エリオスさんやメリーアンさんのほうで誘導できないでしょうか?』
 正直リスクもあり気乗りしなかったのであるが、相手が思い通りに動かないのであれば動くようにし向けるしかない。
「やむを得ん‥‥《ファイヤーボム》!!」
 詠唱から一気に魔力を解放し、アリウスは火弩弾を放った。爆音が大気を震わせ、業火がアロサウルスを焼く。
 ――GUAAAAAAAAAA!!
 アロサウルスがほえた。そしてアリウスを確認すると、彼に向かって猛然と走り出した。

    ◆◆◆

「あれは‥‥魔法の炎ですよね‥‥」
 メイの鎧騎士カリム・エストローネ(eb8362)が遠くを見ながら言う。別に取り立てて視力が良いというわけではないが、それでも簡単に見られるほどくだんの爆発は明らかだった。かすかに大気を震わせる爆音は二つ目三つ目を刻み、冒険者一同がそれをはっきり偶然の産物ではないと知覚する。何より丸い黒煙が地平線の向こうにぽこぽことあがれば、嫌でも気づくだろう。
「モナルコスを起動させる! 援護を頼む!」
 エリオスが、モナルコスの制御胞に乗り込む。
「ウィルの鎧騎士の武勇、見せていただきます」
 カリムが言うと、天界人の来落で最近微妙に流行しつつある親指を立てた握り拳の合図――サムズアップ(この場合は任せろの意)――をして、エリオスはハッチを閉めた。

●モナルコスvsアロサウルス
 モナルコスの起動は成功した。立ち上がり、武器を装備して相手を待ちかまえる。
 やがて、向こうから土煙が見えてきた。メリーアンの馬とアロサウルスのものだ。
 アリウスはすでに、かなりの距離まで来ている。
「魔力が残り少ない。打撃は与えられるだけ与えた。これが最後の援護だ」
 そしてアリウスは《バーニングソード》をモナルコスの剣に唱えた。ぼうっと、モナルコスの剣が燃え上がる。
「あとはお願い!」
 やはり燃える剣を手にしたメリーアンが、モナルコスの横を通り過ぎてゆく。そして地響きを響かせて、アロサウルスが迫ってきた。
『ふん!!』
 ガツン!!
 アロサウルスの突進を、モナルコスが盾で受け止めた。関節がぎしぎしときしむのは、アロサウルスが尋常ではない膂力を発揮しているからであろう。まさに暴走である。
 足跡が2メートルほど後ろに溝を掘り、レネウスのモナルコスはアロサウルスの突進を受けきった。
『スキだらけだ!』
 モナルコスはアロサウルスの足をねらった。《ポイントアタック》である。魔法で強化された威力の相乗で、アロサウルスの足はあっさり破壊された。
 足を失った恐獣はそれほど怖い物ではない。しかし生身の人間が接近して戦うには危険すぎる。尻尾の一撃を受ければ、人間のあばらぐらいは軽くへし折られる。
 ねらい所が良かったこと、アロサウルスが致命的なほど正気を失っていたこと。そのほか様々な要因が重なって、間をおかずにアロサウルスはとどめを刺された。
「これがゴーレムの実戦‥‥」
 シルビアなどは、感嘆に近い感想を抱いた。

●戦果
 ウィルの鎧騎士の武勇を発揮し、レネウスは面目を果たした。他の鎧騎士も、自らの戦い方のありように参考になったようである。
 何より、目の前で戦果を挙げ戦技をきっちり使いこなしたのが大きい。つまり戦いようによっては、アロサウルスほどの恐獣でもきっちり倒せるのだ。
 冒険者たちは損害らしい損害を受けず、目的を果たし帰還した。

    ◆◆◆

「誰だこんな無茶な使い方したヤツはっ!!」
 ただし。
 モナルコスの関節がガタガタになっていて、城のゴーレムニストを泣かせたことは付け加えておこう。正面から受けたのはいいが、正面過ぎてもだめなのである。
 どっとはらい。

【おわり】

(代筆:三ノ字俊介)