遺跡についてわかることを
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■ショートシナリオ
担当:まれのぞみ
対応レベル:フリーlv
難易度:普通
成功報酬:0 G 78 C
参加人数:10人
サポート参加人数:2人
冒険期間:08月22日〜08月27日
リプレイ公開日:2005年08月30日
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●オープニング
「遺跡のことを調べてもらいたいんです」
どこか暗い表情の青年、ダンテスがギルドを尋ねてきたのは、夏の陽光がわずかながらもかげり、どこかで秋の風が吹いた、そんな日のことであった。
その容姿、その言葉のはしばしから異国――たぶん北方の人間だろう――の商人であることを偲ばせる青年は、こう話し始めた。
「実は、ドレスタットまで来る道中にどうしても気になる遺跡があるのです」
そう言って、彼は幼い頃から故郷の街からドレスタットに来る途中で見続けている山中の遺跡のことを語りだした。そこはドレスタットから離れた山間にある遺跡で、青年が山越えをするとき、毎年のように世話になっている宿のある村のそばにあるという。
そして、その村でもその遺跡の由来などはまるでわからなくなっていると青年は――微妙になにかを隠したような言葉遣いで――言った。そこで、そこがどんな遺跡であるのかを調べてほしいと言う。
「村の方でもありませんのに、なんとも奇特な依頼ですね。しかも、報奨金もあなたもちみたいじゃないですか!」
と、応対のギルドの人間が笑うと、
「ああ、まあ、いや、その‥‥遺跡とか、まあ、そんなものに興味がありまして‥‥地図みたいなものを見ると楽しくてしかたないんですよ」
ダンテスは、しどろもどろな返答となる。
ただ、その点には追求せず――理由ありの依頼などいつものことですから――書類に必要事項を書き、契約書をたがいに確認し、サインをする。そして、ダンテスが頭を下げ、出て行くと、ギルドの人間たちはいつものように冒険者募集の応募要綱を書き始めるのであった。
●リプレイ本文
山の峰に太陽が降り頃になって、ようやく雨がやんだ。風の向きも変わる。雲間から茜色の陽光がさしてくると、水溜りのできた細く長い上り坂を、愛剣を肩にかついたリョウ・アスカ(ea6561)が昇ってきていた。たまたまフェノセリア・ローアリノス(eb3338)へ言伝を伝えるために馬を走らせながら、雨のせいで足を止められてしまった七神斗織から情報と受け取り、アドムン・ジョントルメンが仲間に託したもの懐にしまい、ひとり、遅れて目的の場所に向かってきたのだ。
村の入り口に仲間たちの影を見つけた。
「こんなものでしょうか‥‥」
今回の依頼人のダンテス氏が不安げな調子でいうと、カラット・カーバンクル(eb2390)とフェノセリアはとまどったような表情で顔を見合わせた。ふたりの両手は荷物でいっぱい。まるでお小遣いをいっぱい使って、心行くまでお買い物を楽しんだ娘たちのようなのである。これでも本当は、巴渓(ea0167)からいくばくかの見せ金をもらって情報集めにきているのだ。しかし、そんなお金は使うまでもなく、フェノセリアが村の老人、老婆から得た情報には、これといってめぼしいもの――近所でかわいい赤ちゃんが生まれたとか、だれだれさんの家の子羊が一頭だけ行方不明だとか、今年うちの畑でとれた野菜がなどといった等しか――なく、代わりに、このかわいらしくてめずらしいお客さんは、人のいいおばあちゃん達やダンテスから野菜やパン、それにミルクなどをもらうこととなったのだ。
そんなふたりを見て、あまにも場違いな様子にリョウは苦笑する。
「どうでした?」
村人たちから離れると、カラットは素直な感想を述べた。
「みなさん、親切なんですけれど、なにかを隠しごとをしているみたいでした」
さて、そんなやりとりがあってからしばらく時間がたった。
雲は去り、日は落ち、月が昇り、あたりは秋の宵となる。
「お疲れ様です」
キャンプに、遺跡から調査隊が戻ってきた。
巴がすこし残念そうな顔をしている。本当ならば、遺跡のまわりだけ見てもっと早く帰ってきてダンテスを表敬訪問するつもりだったのだが、結局は雨宿りもかねて、遺跡の中をすこし調査することとなってしまったのだ。
居残り組が夕食の準備をはじめている。
料理を作ることが好きなマクファーソン・パトリシア(ea2832)が、手伝おうとして、あわてて駆け出す。そんな娘をティルコット・ジーベンランセ(ea3173)が呼び止める。
「おいおい、初めての遺跡で緊張してなかったのかよ? 疲れているんだったら、すこしは休んだ方がいいとじゃんか! あ、いや、料理を作るの? それじゃあ、なにか手伝えることはない?」
笑い声が周囲であがった。
「なんだよ!」
「なんでもないよ!」
やがて、火が焚かれ、暖かなスープが作られる。もらってきたパンとミルク。それに酒がふるまわれ、座を囲んだ仲間達のあいだから笑い声があがってきた。
無味簡素な保存食を食べなくていいのは幸いなことである。
そして、今日の報告――いまのところ遺跡の周囲にはモンスターらしき姿はないこと、いても小動物くらいであった、また遺跡じたいはかつてなにかの神殿かなにかではなかったのか、そしてダンテスはロシアの商人である等――がなされ、明日の予定を確認しあい、散会となった。
その晩、最初の歩哨が立つ。
ある者はマントで体を包んで仮眠をとる。
ときどき、焚き火に枝をくべながら、アルフレッド・アーツ(ea2100)は描きかけの地図を見つめていた。
夜も深い――
(「地図みたいなものを見ると楽しくてしかたないんです‥‥見ているだけで言ったことのない場所の‥‥知らないはずの場所がわかるんです‥‥。そして、自分で書けば‥‥自分はもうそこにはいないけど‥‥次に来た人の‥‥道案内ができますし‥‥」)
いつしか、小声は寝言に、寝言は寝息に変わっていた。
地図を胸にアルフレッドはどんな夢を見ているのだろうか。
誰かが、そっとシフールに毛布をかけると、その天上には、星がまたたき、夏の空はいつか秋の星空へと変わっていた。
そうであっても日が再び昇れば、やはり夏が残っている。
「きたぜ! きたぜ! きたぜぇ!?」
ハイレッディン・レイス(ea8603)は今日も朝からさんさんと照りつける太陽のようなハイテンションぶりである。
「昨日は、ここまで調べたし、きょうは――」
巴が作りかけの地図を見ながら予定を組む。まだ何部屋しか回っていない遺跡は、地下にひろがっていることがわかっている。
迷宮へもぐり、やがて、昨日までは調べていない部屋にいたる。
「いかにも雰囲気ですね!」
マクファーソンが感嘆をあげた。
やはり、ここはかつて何かの神殿であったのだろう。フェノセリアの暗闇でもよく見える目で見るに、その壁にはいまでは意味のわからなくなってしまった物語らしきものが、みごとな彫刻とともに施されている。もう何十年、何百年ものあいだ、ひとの使った形跡がほとんど見えない。いや、あったとしても、それらすも積もった埃にかき消されてしまっている。
カラットの照らすランプのもと、ただただ、長く、単調な探索がつづく。
地図を描いていたアルフレッドの表情がしだい曇ってくる。
「どうしたんだ?」
劉蒼龍(ea6647)がアルフレッドの表情をまじまじと見つめ、やがてその手元を覗き込んだ。
「この形なんですか‥‥」
「ほぉう」
地図を細い指先がなぞる。
「星の形?」
「たぶん‥‥」
作りかけの地図に描かれようとする形は、あるいは冒険者達にとって見慣れた形であったかもしれない。
「まだ確定はできませんが、魔法陣‥‥でしょうね――もしかしたら、この遺跡自体が巨大な魔法陣!?」
ミステリー好きのノア・キャラット(ea4340)が、そんな説を唱えて、息を呑む。
「そうね‥‥――」
マクファーソンもうなずいて、ノアの可能性を支持する。
地下の空気が一団と冷たくなった気がする。
なんにしろ事後策を練るしかない――遺跡の中でキャンプを張りたいという劉の願いはかなわず――そのまま、仲間達は地上のキャンプに戻った。三日の予定で組んだ計画だ。遺跡を調査できるのは、明日一日しか残っていない。
その日の夕食――きょうも村とダンテスから差し入れがあったとのこと――を口にしながら、しばらく騒ぎとなった。引くか戻るか、どこまで報告するべきか、否か。喧々諤々。討論は、深夜遅くまでつづいた。
そして、なんにしろ調査だけはしてみようということになる。
ただ、いままでとは違い、まず偵察に出てもらい慎重にも慎重を重ねるという策が採用された。
「さて、行くぜ!」
ハイテンションなハイレッディンの様子は今日も変わらない。ただ、どこか緊張があるように見えるのは気のせいだろうか。いや、そればかりか、見慣れてきたはずの遺跡の様子も、今日ばかりは、昨日までとはどこか違うようにも見えてしまう。
もはや、無駄口をたたくものはいない。
ティルコットが偵察から帰ってきた。
「やはり、この地図でいう星の真ん中に部屋がある。背後しか見えなかったが、でかい影が見えた。背中の翼を入り口に向けて、うずくまるようにして座っていたぜ」
「やはりモンスターがいたようですね。みなさんの武器をこちらに! 焔の力を付与します!」
ノアの魔法が仲間たちの剣に炎を宿す。
仲間たちは互いに顔を見回した。
劉は落ち着いている。アスカが大剣をふりかぶり、ハイレッディンがくくぅくと笑いながら抜刀する。マクファーソンが呪文を唱え――突撃!
通路を抜けると、広い部屋にでる。
「いた!」
その巨躯に向かって、マクファーソンの水の魔法がぶちあたる。
巴がこぶしが巨躯にめりこみ、他の仲間の剣戟がふるわれる。
奇襲は成功した。
あとは、その悪魔が振り向き――
「なに?」
振り向かない。
その悪魔は、まったく動こうとはしなかった。
「石だな‥‥」
それに、こぶしや剣に伝わってきた感触から。わかる。
それは、石像であった。
しかし、それがはたして本当の石像なのか、あるいは悪魔が魔法的な力によって、こうなったのかはわからない。あるいは、かつてここを訪れた冒険者によって仕留められたのかしれない。
そんな中、劉が情報の少ない中、見事な推論を述べた。
「この遺跡はデビル信仰の名残じゃないね〜か?? と思っていたんだ。だから、ギルドに記録が残っていなかったり、村人たちも何も知らないのかなと? そんなことを知られたら、村の恥だろ? そうすると、それを調べていた依頼人というのは――」
しかし、劉の推理は、最後の点だけは外れていたようである。
報告を聞いたダンテスは、最初こそは驚いたような表情をしたが――他人をだまそうとするあまりに無防備な様子で――すぐに納得したように何度もうなずき、
「ありがとうございました」
と言ってダンテスは冒険者達に頭をさげるのであった。