秋の森の秘密
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■ショートシナリオ
担当:まれのぞみ
対応レベル:1〜5lv
難易度:普通
成功報酬:1 G 35 C
参加人数:4人
サポート参加人数:-人
冒険期間:12月02日〜12月07日
リプレイ公開日:2006年12月11日
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●オープニング
「すまんな‥‥」
おいしいという評判の店のおやじが客に頭をさげた。
食材の仕入れがままならならから、今日はもう店じまいだという。
残念無念とつぶやきながら去っていく客を見ながら、おやじは腕を組んで考え込んだ。毎年、この季節になると秋の味覚を運んでくる知り合いの村人たちがいるのだが、今年はぱたりと止まっているのだ。
(「なにか理由があるのだろうか――」)
そう考えかけて、まあ、いいさとおやじは頭をふった。他力本願ではしかたない、自分でことを解決することにしよう。
結果、ギルドに、こんな依頼がきた。
「食材をとってきてくれないかい? そうだな、できればシチューにいれたいから、キノコがいいんだが‥‥それに、できれば行き先の森を指定したいんだが‥‥」
※
染まった広葉樹の森に枯れ葉が降りつもっている。
例年ならば、冬を前にして秋の恵みを採りにくる者たちが絶えぬ森だ。
しかし、この秋はちがう。
ほら――
森から悲鳴が聞こえた。
不気味な声だ。
男とも女ともとれぬその声は昼と夜とを問わずに、その森に響いている。
救いを求める声のようだと言う者もいる。
しかし、大抵は、その不気味さから人々の足を森から遠ざけることとなっていた。
そして、そんな場所であるから、きなくさい噂も聞こえてくるようになる。
曰く、小さな黒い影が森へ飛んでいくのを見た。
あるいは、木に止まった不気味な三羽の鳥を見たともいう。
「悪魔だった!」
と断ずる者さえいる。
なんにしろ、さほど広いとはいえない森の怪異は冬を前にして近隣の村々の不安をかきたてるのであった。
薄暗くなってきた
教会の鐘が鳴った。
森からは、いまもなお悲鳴が聞こえている――
「森の怪異の調査、あるいは問題の解決を依頼いたします」
●リプレイ本文
ざわめく枝葉は冬の音を奏で、精霊達が冬の歌を謡っている。雪こそはふるまいが、木々のあいだからのぞく空は曇り、はや、季節の到来を告げている。
ただ、森の奥に入っていくと、風の音も不思議と遠くに聞こえる。足を踏み入れた森は暗い。ランタンに火を灯し、あたりを見回しながら小道をゆく。
なにごとか呪文のようにつぶやきながら少女が歩いていく。
青い瞳は、どこか宙をさまよい、一歩ごとに、その馬の尻尾のように編んだ髪が揺れている。本当であるのならば、少女ではなく女と呼んだ方が正しいのだが、そのあどけなさすら残す容姿はやはり少女のものだと言いたくなってしまう。
街でもよく歳を若く間違えられるクァイ・エーフォメンス(eb7692)は、その日、飯屋のおやじの依頼でキノコを取りに来ていた。
こうこうこう――とおやじに教えられたキノコの特徴をつぶやきながら森の小道を歩いていく。こんなかわいらしい娘がひとり、森の小道を歩いていると、なにかの物語ではないが、森のしげみから何かよからぬことを考えた狼が顔をのぞかせたり、おかしのお城がでてきたり――ほら――
「きゃあ!?」
クァイが、悲鳴をあげた。
ふいに頭を何かが突っついてきたのだ。
不意打ちといっていい。ふだんの戦闘ならば、致命傷となったであろう、そんなタイミングも、今回はちょっとしたイベント。
頭上では、カラスが鳴いている。
「なによ!」
クァイがにらむとカラスは、かぁかぁ。ランタンに光にクァイの髪がきらきら、カラスがもう一度、かぁかぁ。どうやら、銀色の髪を飾るティアラに興味をもったらしく、いたずらをしかけてきたらしい。やがて、カラスは木の枝にとまった。
「いたらずらカラス!」
ぷんぷんとクァイは頬をふくらませた。
すると、こんどは、藪から、がさがさという音がした。
「あら?」
クァイの前にあらわれたのは三人の女性であった。
エルミーラ・ヴィッターマン(eb5470)。ライラ・マグニフィセント(eb9243)。コルリス・フェネストラ(eb9459)。
彼女たちは、自分たちのことをそう名乗り、この森の怪異を調べにきているのだといった。
「怪異って、なにかしら?」
「森から聞こえてくる悲鳴の謎を突き止める依頼を受けてきたのだ」
そう応じたのは、ライラであった。ばっさりと髪を切ったその風貌と、その口ぶりから青年を思わせる、凛々しいたたずまいの女性だ。
「森の怪異はわたくしが解決してさしあげてよ!」
ほほほほ‥‥とエルミーラは高笑いしながら、赤い髪をかきあげている。
「それで、あなたはなぜこの森にいらっしゃったのですか?」
エルフの娘であるコルリスがクァイにたずねてきた。
こんどはクァイが応える番だ。
愛嬌のある娘はにっこりと笑うと語りだした。
「私はね――」
※
村人の情報どおり、森の奥には泉があった。森にくる者達の憩いの場所だそうで、謎の悲鳴が聞こえる前には毎日ように猟師やキノコ狩りの村人たちが利用していたのだという。情報交換もかねてここで休憩をとることになった。
歩きつかれたクァイが足を伸ばすと泉を水鏡にしてエルミーラが髪をとぎはじめた。
歌をくちづさみながら、自慢の赤い髪に櫛をいれ、何べんも、何べんも、それも髪にはキズをつけないように丁寧に丁寧に。でも、出来に満足できていないようだ。
ちょうどそこへ、コルリスが戻ってきた。
さきほどクァイが飯屋のおやじの依頼でキノコを採りにきたと聞くと
「そっか――」
と言って、茂みの中に入っていったのだ。
森に土地勘のあるエルフの娘としては、見知らぬ森でも家に帰ってきたような気安さがあるのかもしれない。ほら、その証拠にいまの彼女の表情は、どこかいたずら好きな少女がなにか突拍子もない仕掛けをしたような満足な微笑みを浮かべている。
そんな彼女にエルミーラが叫んだ。
「私の髪をといでくれないかしら!?」
ご自慢の髪がうまくきまらない様子で、お姫さまはご機嫌斜めである。コルリスは、にっこりと笑ってエルミーラの髪をすいてあげた。
そんな様子を横目で見ながらライラは剣をふった。
枯れた草で軽やかなステップを踏みながら、放つ剣先はあたかも鞭でもあるかのような鋭い一撃になっている。
「うまくいきそうだな‥‥」
額の汗をぬぐいながら、ライラは剣を腰に戻した。
ちょうどクァイが、飯屋のおやじが用意してくれたランチと村人たちが準備してくれた食事をならべ終え、ライラを呼んだのだ。
ランチタイムとなる。
飯屋の料理は好評で、彼女たちの会話もはずむ。
そして、食事を終えた頃、森の奥から悲鳴が聞こえてきた。
「あら、こんどこそおでましのようね」
ライラに手をとってもらい、エルミーラが立ち上がる。あたかも美貌の従者にかしずかれるお姫さまというところだろう。コルリスとクァイは弁当を片付け、さあ、謎の解明へ出発。
悲鳴を追って森の奥へとゆく。
木々の枝にしるしの赤い布を巻きながら、慎重により声が大きくなる方向へと進んでいく。しだいに木々がうっそうとしげり道なき道状態になる。しかし、そこはエルフの勘。なんとかかんとかきり抜け、開けた場所にでた。
「ごたいめ〜ん」
なにをしているのか、四人の目の前に黒い生き物がいた。
いたといっても彼女たちには気がついていない。
黒い羽をもったその小さな生物は空に浮かびながら倒れた木に見えるキノコを見ているようだ。そして、カラスがそのキノコをついばみに来るのを見計らって、キノコのそばに着地。
そのとたん、キノコが耳をつんざくような悲鳴をあげ、カラスが逃げていった。
けけけけとその黒い悪魔は笑う。
「あれは‥‥?」
「悲鳴をあげるキノコ?」
それは人の腰ほどはあろうかという大きなキノコであった。形こそはマッシュルームに似ているが、毒々しい極彩色で彩られている。素人目にも毒キノコにしか見えない姿である。しかも、きぃきぃと悲鳴をあげているのだ。
「モンスター?」
なのだろう。
「なんにしても悪魔退治だな!」
ライラが抜刀するや駆け出し、さきほど練習をしていた技を仕掛ける。小悪魔の背後にスマッシュが決まった。
血が飛び散り、ふたつの悲鳴があがり、それが戦闘の合図‥‥とは、ならなかった。完全に奇襲に成功した一撃のせいで、モンスターは戦闘意欲を失い、そのまま逃げ出してしてしまったのだ。
「ほほほほほ」
エルミーラが勝利の高笑いをして、クァイに言った。
「じゃあ、あとはあなたのキノコさがしを手伝わなくっちゃね」
クァイは首を横にふる。
「えっ?」
「もう、見つけました」
「見つけた?」
「はい――」
そう言って、クァイは、森に入ってくるときつぶやいていたキノコの特徴をふたたび口にした。
「この‥‥キノコ?」
「はい」
※
悲鳴をあげるキノコを文字どうりだまらせて、収穫しおえた帰り道。
ふたたびコルリスの姿が見えなくなったことがあった。案内人が不在となって三人が困り果てていると、コルリスがなにかを手にして戻ってきた。
「これ!」
それは、野うさぎであった。
クァイが飯屋に頼まれたと聞いて気を利かせて罠を仕掛けたのだという。
誰となく、さきほどのランチのおいしさを思い出して、ごくり。
そして、その帰り道での話題はキノコもどきがはたして食材になるのかということであった。見た目から毒みたいという感想もあったし、悲鳴をあげる食材なんて非常識だわという声もあがった。もちろん、料理人が求めるほどなのだから、おいしい素材なのだろうという意見もある。なんにしろ、見知らぬ素材が彼女たちの好奇心をかきたてていたのは確かである。
「でも、ヘンな話だな」
ライラが、こんな疑問を呈した。
「そのキノコが、そんな有名な食材ならば、なぜ今年だけ悲鳴の件で――もちろん、あの悪魔の仕業もあったろうが――依頼がきたんだろう?」
その疑問には、戻った村で感謝の言葉とともに村人が応えてくれた。
「そのキノコのとり方は独特で、カラスがくわえていることが多いので、それを石なんかで落として手にいれるのですよ」
「またカラス‥‥」
クァイが頭をかかえた。
とことんカラスにからまれた冒険であった。
飯屋のおやじは、そんな食材に満足をしてくれた。
そして、教えてくる。これはスクリーマーというキノコだということを。生でも食べることができるといことを。
でも‥‥と前置きをして、おやじは厨房に入っていった。
そして、出てくるときには鍋を両手でもちながら、
「うちの店では、こうして食べているよ」
と満面の笑みを浮かべていた。
冒険者たちに、そのキノコとコルリスの捕まえた野ウサギの肉のはいったスープがふるまわれた。ひきしまったウサギの肉は赤ワインにつけられていたらしく柔らかくなっているし、濃密なミルクの味にキノコの感触があう。また、ついでにと言って出された、ハーブをづけの店特製のワインの味も格別だ。
外では北風がふき、窓がかたかたと鳴り、暖炉の炎がぱちぱちとはねる。
そんな音以外ない冬の夜は、しかし、仲間達との愉快な話題とともにふけていった。女たちの酒気をおびた歓声があがった。
「乾杯!」