変態対決りろーでっど〜ナベ娘VS乙女心

■ショートシナリオ


担当:小田切さほ

対応レベル:2〜6lv

難易度:易しい

成功報酬:1 G 69 C

参加人数:8人

サポート参加人数:-人

冒険期間:10月03日〜10月08日

リプレイ公開日:2005年10月14日

●オープニング

 キャメロットに、とても対照的な二人の防具職人がいた。
 その一人は、イーヴといい、どこから見ても金髪の美青年に見えるが、本当は男装趣味のナベ娘。
 もう一人は、ゴルドワといい、どこから見てもいい年のおっさんなのに、なぜか心はとても女らしく、仕事をする時はそのいかつい体に、必ずフリル付のエプロンを装着しているのが常という男。
 いわば二人は、変態同士。
 そんな二人は、当然というべきか、意外にもというべきか――
 非常に仲が悪かった。
 今日も二人は、偶然同じ皮なめし職人の工房へ、皮を仕入れに来て鉢合わせ。壮絶なバトルを繰り広げていた。
「もぉ我慢できん! 今度こそ貴様をコテンパンに負かして、防具職人の世界から追放してやるーー!」
 イーヴが息巻く。
 対するゴルドワも負けてはいない。
「なーんですってー!? それはこっちのセリフだわ。今度の見本市でコテンパンに負かしてグウの音も出ないようにしてやるわ。そうすりゃ、あんたのゴツイだけの防具なんてだーれも買いやしないわ!」
「なにぃ!?」
「何よ!」
 ところでこの二人。もともと同じ防具職人でもあるし、ましてや世間から爪弾きにされがちな変態同士。肩寄せ合って励ましあうのが当然のような気もするが、なぜこんなに仲が悪いのだろうか。いや、もともとはこの二人、出会った当初は仲が良かったのである。
 そんな二人の仲を裂いた決定的な事件があった。
 時をさかのぼること、5年前。
 二人は共同見本市を開催しようと企画した。
 だが、その見本市に出す防具のコンセプトを何にするかというところで、意見がまっぷたつに別れたのである。
「人の体の一番美しいところを強調しよう」
 そこまではよかった。そこはすぐ意見が一致したのである。
 だが‥‥
「一番美しいところ、といえば」
 二人は同時に、回答を口にしたが、その内容は‥‥
「首すじから肩にかけてのラインだな」
「脚線よ」
 いかんせん、バラバラであった。
 一瞬二人は、沈黙したのち、互いを説得しようと試みた。
「や、やだなあ。何言ってんだよゴルドワ。うなじでしょ。うなじ」
「イーヴこそ、やあねえ。脚線よ、脚線」
「違う、絶対『うなじ』!!」
「『脚線』って言ってるでしょ、ドアホ!」
「『うなじ』だと言うとんじゃ、こるぁ!」
 次第にエキサイトしてゆき、やがて二人の間は決定的に悪化。
 現在に至る。
 というわけであった。
 
 さて現在――イーヴは、ゴルドワとぎゃんぎゃん罵りあったあげく、叫んだ。
「今度こそ、あの時の決着をつけてやるーー! 人間の体の一番美しい部分は脚線だなどという、貴様のセンスを粉々に打ち砕いてやる!」
「フッ、望むところだわ。こっちこそ、うなじがたまらないなんていう、貴方のだっさい感覚をうちのめしてさしあげてよ」
 オカッパ頭をかきあげて挑戦的な笑みを浮かべるゴルドワ。
 
 やがて、イーヴ&ゴルドワから、冒険者ギルドに依頼が出された。
「防具見本市にて、防具を着こなして『生きた見本』をつとめ、その魅力と美点を最大点に引き立ててくれる冒険者を求む。
 尚。
 イーヴ作の防具は『うなじ』にポイントを置いている。
 ゴルドワ作の防具は『脚線』を強調。
 各自、自分の自身のある部分を強調できそうな職人側の防具を選んで着てもらいたい。
 またイーヴは剛健さを、ゴルドワは華美さを重視する傾向にあるので、これも参考にされたい」
 二人の防具職人は、見本市の日を指折り数えて待っている‥‥。

●今回の参加者

 ea7163 セラ・インフィールド(34歳・♂・神聖騎士・人間・ビザンチン帝国)
 ea9840 シルキー・ファリュウ(33歳・♀・バード・人間・ノルマン王国)
 eb1155 チェルシー・ファリュウ(25歳・♀・ファイター・人間・ノルマン王国)
 eb1248 ラシェル・カルセドニー(21歳・♀・バード・エルフ・フランク王国)
 eb2288 ソフィア・ハートランド(34歳・♀・神聖騎士・人間・イギリス王国)
 eb2404 明王院 未楡(35歳・♀・ファイター・人間・華仙教大国)
 eb2744 ロイシャ・ヘムリアル(23歳・♂・ウィザード・人間・イギリス王国)
 eb2776 アリシア・ファフナー(27歳・♀・ジプシー・人間・ビザンチン帝国)

●リプレイ本文

●誘惑がいっぱい
 キャメロットの町の広場で、一組の変態がにらみあっていた。
「今度こそ、絶対に勝つ!」とイーヴ。
「ふっ、今度もアタシの勝利に決まってるわ」とゴルドワ。
 ゴオオオ! と二人の背中で燃える炎を背景に、変態対決防具見本市はスタートしたのだった。
 トップに文字通り踊り出たのは、ゴルドワ側の防具をまとったアリシア・ファフナー(eb2776)。薄い亜麻布製の胴衣とスカート丈を思い切り短くし、ぴったりしたブーツで脚線を強調した姿。得意の踊りの動作でターンし、演武風に軽いキックの動作をしてみせると、引き締まった脚線に男達がどよめいた。
「はぁい、アリシアちゃんでしたー! アタシの防具の感想を聞かせてくれる?」
 ゴルドワに水を向けられ、アリシアが汗を拭いながら、
「イーヴさんのも良いと思うんだけど、あたしみたいな軽やかな動きが身上なタイプだと一寸しんどいかな。それに少しでも綺麗にしたいのは女にとっての本能だし‥‥ゴルドワさんの方を良いと思う人は案外多いのかもね」
「そーのーと〜り!」
 勝ち誇るゴルドワに、イーヴが言った。
「ふっ、馬鹿な! 僕の防具をステキに着こなす美女、カマーン!」
 続いて、明王院未楡(eb2404)登場。セクスィーにも、胴衣は右肩から皮ベルトで吊り下げる形になっており、丸みのある艶やかな左肩剥き出しである。長い黒髪を高い位置で一つに束ねてあるので、長いうなじが映える。そんな姿で観客に後ろ姿を見せて立ち、憂いげな表情で振り返って見せる。
 イーヴが拍手しながらコメントを求めた。
「皆の衆、残念ながら彼女は人妻だー! 鼻血出した奴、拭いて来い! ‥‥失礼した。どうかな未楡ベイベー、僕の防具をまとった感想は? キミの美しさにのぼせてる観客がいるようだけど?」
「‥‥恐れ入ります。そうだとしたらこの防具のお蔭ですわ。私は、イーヴさんの防具の質実剛健さが好きです。防具は命を預けるものですから、不要な装飾を排し、機能を追及すべきだと思います。またその方が、より着る人本来の美を際立たせてくれるのではないでしょうか」
「クックク、聞いたかみたかゴルドワ!」
「ぬぁ〜! でっかい口を叩くのは、こっちの超〜美少女ちゃんを見てからにして頂戴! ラシェルちゃんのお出ましよ〜!」
「『超美少女』ってあの‥‥ゴルドワさん‥‥余計出づらくなっちゃいました‥‥」
 と、見本の立つべき場所である広場の中央に進み出るのをしり込みしているラシェル・カルセドニー(eb1248)。確かに華奢な美形だが、短ズボンを着せられ、ほっそりした脚線がほとんど剥き出しなのが恥ずかしい様子だ。もっとも布製のスカートを上に重ねており、完全にナマ脚ということはないのだが、スカートの布目が粗くて脚線が透けて見え、かえって悩ましい。
「いいから出てらっしゃい! 『恋のお手伝いがかなわなかった分がんばる』って言ってくれたじゃない」
「あっ‥‥きゃ!?」
 ゴルドワに腕を引っ張られ、ただでさえ硬くなっていたラシェルはつんのめって転倒してしまった。スカートが少々ずり上がり、目の保養をした男性見物客もいたようだ。
「あの‥‥私は戦士ではありませんが、ゴルドワさんは、女性の観点から、女性が動きやすく美しい防具を心がけておられると思います‥‥」
 ゴルドワに感想を求められ、半べそ顔でコメントしたラシェルだった。
 それに対抗して、イーヴが呼び出したのは、ソフィア・ハートランド(eb2288)。思い切り襟ぐりを広く開けたレザーアーマーからはかすかに胸の谷間がのぞきそう。おまけに首のガードは黒皮のチョーカーで、結い上げた髪と相まってうなじの白さ細さが印象的だ。ただしその他の部分はむしろ薄張りのプレートをつけたシンプルなもの。
「戦う良妻賢母って、やっぱこんな感じ?」
 凛々しく太刀をウーゼル流に構えた後、首筋に乱れかかる赤い髪をふわりと払って見せる。
「ありがとうソフィアベイベー。やあ凄い反響だ。結婚を前提にしたお付き合いを申し込むならキミのような、って、どこへ行くー!」
「この防具、気に入ったわ〜! 後は円卓の騎士を探すだけよー!」
 座右の銘は「目指せ円卓の騎士の妻」。恐るべしソフィア、見物客を左右へかきわけ、円卓の騎士を探して突っ走る。‥‥彼女の消息を知る人、連絡ください。
 次はゴルドワ側に姉シルキー・ファリュウ(ea9840)、イーヴ側に妹のチェルシー・ファリュウ(eb1155)の姉妹対決。シルキーは黒皮一色の胴衣と同色のロングスカート。スカートは深いスリット入りで歩くとちらりと白い脚線が見えるが、しっかり下には同色の短ズボンを重ねてある。チェルシーは襟ぐりの広い白シャツの上に首からリボンで吊り下げる形の白い皮製胴衣を重ね、さらに髪を結い上げ首筋を強調している。
 面差しの似た二人が目を見交わして微笑しながら登場する姿に緊迫した変態対決の空気が一瞬和らいだ。
「おねーちゃんと同じ依頼に出れて嬉しいです。えっと、防具の感想? こういうの着けて活躍したいなあ。大事な人を守るために‥‥」
 イーヴに感想を求められ、素直に語るチェルシー。一方、姉シルキーには、ゴルドワが少々意地悪な質問。
「どう? 今の姿、彼氏に見せたくない?」
「えっ! ‥‥それは、あの‥‥」
 照れて言いかけるシルキーに限りなく姉を愛するチェルシーが愛の横ヤリ。
「おねーちゃん、だめっ! あの人はおねーちゃんにふさわしくないよ! 頼りないしお酒飲ませるし」
「‥‥チェルシー‥‥!」
「おおっと、姉妹対決だー! 姉のにらみつけ攻撃に妹反撃! ほっぺたふくらませ攻撃だぁ〜! それに対抗する姉、出た、必殺! 『あんたなんかもう知らない!』背中向け攻撃ィ! これは無敵だ〜! 妹泣きながら姉の後を追う! 姉だ、姉シルキーの勝利だぁ〜!」
 ゴルドワがわけのわからない実況中継をしている。
「うわあ〜ん! おねーちゃんのバカー!(どかっ)」
「チェルシーベイベー、近所のお店の看板に八つ当たりして泣きながらスマッシュぶちかましちゃダメだあ〜! ‥‥気を取り直して次っ! 最後の僕側の見本、カマーン!」
 イーヴがチェルシーをなだめつつ、セラ・インフィールド(ea7163)を呼び出した。
 愛用の月桂樹の木剣を手に登場した彼は、周囲にいる見えない敵をなぎ倒すかのように軽々とそれをあしらうと、横向きにひざまづき、祈るように首を垂れ、うなじをさらす。背中半分を覆うマントの下は、皮製のシンプルなアーマーなのだが、皮製のそれは前部分が紐で編み上げる形になっていて、喉元から胸にかけての柔軟な筋肉の形が見て取れる。実はうっすらお化粧しているので、なんだか舞台役者めいた色気もあって、かなりの注目度である。
「イーヴ殿側の見本で男が私一人というのは意外でしたね。今更ながら自分は場違いなような気がしてきました」
 と、イーヴに感想を求められ、苦笑しつつコメントするセラ。お化粧までするノリノリっぷりに場違いとはこれいかに。謙虚だ。
「ま、負けないわっ。こっちの最後の見本ちゃんも強力よっ。いらっしゃーい!」
 ゴルドワに呼び出されて来たのは、ロイシャ・ヘムリアル(eb2744)。短ズボン姿で元気よく登場。重そうなベルトとがっしりしたデザインの兜が特徴だが、かえって少年ぽい肢体が強調され、なんとも初々しい。
「負けたらロイシャ、何されるか分からないの‥‥だから、皆さんロイシャを応援してねー!」
 子犬のような眼差しで客席に話し掛けつつ、足を前に出して舞台に座り、小首を傾げて見上げポーズ。
「はいはいー、踊り子さんには手を出さないで!」
 ゴルドワがいやに神経質に観客の前に手を広げロイシャを守る。事前にロイシャが、
「俺は若いっすけど、この生まれ授かったこの顔で、特定の趣味の男性の票を集めてやります!」
 明るく元気に宣言していたからだ。きっと周囲のいけない大人の言葉を覚えたのだろう。
「ど、どこまで意味わかって言ってんの‥‥? ダメよ、その顔じゃマジでヤバイ人たちが襲い掛かってくるわよー!」
 自身ヤバイ人なのに心配げなゴルドワであった。

●判定
 そして、お互いの全ての見本を紹介し終わったゴルドワとイーヴに運命の時が来た! 見物客による判定タイムである。
「では、ゴルドワ側の防具が良いと思う人はこのロープの右側へ! イーヴ側なら左へ移動してくださーい!」
 広場に張られたロープの左右へと、ぞろぞろと移動する見物客。そして結果。
 僅差ではあったが、イーヴ側が勝利!
「はっはっは! やはり僕の持論が正しかったなゴルドワ!」
「くぅー! 変態ナベ娘に負けたぁ〜!」
 勝ち誇るイーヴ、悔しさのあまり、ハンカチをかみしめて嘆くゴルドワ。
「これで、お互い一勝一敗じゃない。これを機会に二人が一緒に防具を作ったら? どんなに素晴らしいものが出来るか想像してみてよ?」
 シルキーがゴルドワを慰める。
「そうはいかないわ! あたしには納得できない! 今度また見本を集めて勝負を挑むわ!」
 宣言するゴルドワの背後に、なぜか海の波が「どどーん」と打ち寄せた。
  
「ええい、ラシェルちゃん、もっと飲みなさいよっ。ロイシャ、酌っ! シルキー、妹の心配よか、アタシを心配しなさいよっ! おらっ、アリシア、景気付けに踊りなひゃい!」
 ゴルドワのヤケ酒。暴れ出す寸前にラシェルのスリープで眠らされた。

「ふ。当然の勝利だ。セラ、キミのうなじに乾杯。未楡ベイベー、ご主人に飽きたらいつでも僕に乗り換えたまえ。チェルシー、泣くのはおよし。キミに似合うのは笑顔さ‥‥ふっ。円卓の騎士もいいが、僕ならキミ専属の防具職人になれるぜ、ソフィアベイベー」
 イーヴの勝利の美酒。

 それぞれに変態の秋の夜はふけ行くのであった。