京都良縁会の野望

■ショートシナリオ


担当:小田切さほ

対応レベル:フリーlv

難易度:やや難

成功報酬:0 G 65 C

参加人数:8人

サポート参加人数:2人

冒険期間:05月26日〜05月31日

リプレイ公開日:2006年06月04日

●オープニング

ある日、冒険者ギルドに依頼が持ち込まれた。
「『お嫁さん&お婿さんにしたい冒険者こんてすと』‥‥ですか?」
「へえそうですねん。冒険者さん、ゆうたら美男美女が多いですやろ?
 これ、地域振興のためのコンテストですんよ。
 ぱあっと華やかに京都の町を盛り上げてもらお、思うて、お友達と一緒に企画しましたん」
 依頼を持ち込んだのは、はんなりした紫の着物を着、一見上品な微笑を浮かべたおば‥‥いや、熟年婦人である。その顔に、一瞬だがちらりと邪悪な影がさしたことに、受付係の青年は気づいていなかった。
「地域振興ですか、なるほど。さっそく依頼を掲示しときますね」
「へぇ。よう見えるとこに貼っといておくれやす」
「お任せ下さい。きっと盛り上がりますよ」
 受付係はいそいそと筆を運び、依頼の掲示内容を書き上げた。
  
 誰も気づいていなかった。これが恐るべき悪の秘密結社「京都良縁会」の一端にすぎないということに。
 気をつけろ‥‥今日も奴らは動いている。
 ☆
 バリボリバリバリ。
 京都良縁会の秘密会合は、必ずそんな、せんべいやら干し魚やらをかじる音で幕を開ける。
 しかも大体、会合場所はそのへんの茶店の店先である。長屋町の井戸端というパターンも多い。
人数がそろったとみると、やおら首領格が立ち上がり、「ひいふうみい」と、ええかげんな動作で頭数を確認し始める。
「え〜と、大体集まらはったんかな。あれ、ヤマモトさん居てへんわ。どないしはったんやろ」
「ぎっくり腰やし」
「そうかいな。お互い年やねえ」
 そう、「良縁会」の主体をなすのは、ええ年のおばは‥‥げほっげほっ、もとい、「ある種の、非常にパワフルな熟年女性」達である。
 そして奴らの目的とは!
「独身者を一人でも多く結婚させること」
 ‥‥奴らは自分より若い誰かを見れば、「結婚しているかどうか」を異常なまでの情熱を持ってチェックし、既婚者であれば前世からの縁者と言うように、
「あらそう。お子さんいてはるのん? 今晩のオカズ何しはるん?」
 くだけすぎな会話を展開する。
 恐ろしいのは、相手がまだ独身だった場合である。
「えっまだ独身!? そらあかんわ。早よ結婚せなアンタ、子供生まれへんやないのっ! ちょっと、おばちゃんに任せてみ? 身元と経歴つきの肖像画、ばら撒いて結婚相手探したげるさかいに。何言うてんのん、遠慮せんかてええがな。ええがなええがな」
 かくておば‥‥いや熟年婦人は嫌がる独身者の肖像画をバラ撒き、もしその肖像画に興味を持つ者がいれば、それがモンスターであろうが昆虫であろうが、独身者と結婚させようとする。
 「その場の空気」の流れに逆らえず、「ま、いっか」と結婚してしまい、不幸にいたるカップルの多いことを、災難と言わずして何と呼ぼう。
 奴らはなぜか「独身」を蛇蝎のごとく忌み嫌う。
 なぜ独身がいけないのか。その理由は明確に語られたことはない。
 おそらくは、これは推測に過ぎないが、おば‥‥いや熟年婦人達は、
「これ以上は無理っ!!!」
 というほどに所帯じみた存在である。
 それゆえ、所帯じみていない、あるいは生活臭のない事象すべてに対し無意識のうちに敵意を抱くのやもしれぬ。
 奴らは干し魚をバリボリ齧ったり、オカズのレシピを交換したりと脱線しながら、カンカンガクガクの議論を繰り広げた。
「それにしても、 最近、独身でいたがる若い人が多ない?」
「せやねぇ、やっぱり結婚願望を持たさないとあかんねぇ。若い人らに」
 そこで、ある一人のメンバーがこう発言したのである。
「ほな、『お嫁さんにしたい女性ナンバー1』
 とか、
『お婿さんにしたい男性ナンバー1』
 とか言うのん、コンテストで選んだらどないやろ?
 それぞれステキな女性、男性をウチらが選んでやね、バーンと宣伝したら、皆結婚願望高まるんと違う?」
「それええやん!」
「ほなさっそく、アレせなあかんね」
「せやね。ナニをアレせなあかんわ」
 こうして生まれた陰謀の一端が、かの「こんてすと」依頼であった。
 何も知らず応募してきた冒険者は、一体どんな恐ろしい目にあうのであろうか。「一人見たら近くに30匹いや30人いると思え」と噂される、恐るべき増殖パワーを持つおば‥‥いや熟年婦人によってたかって‥‥想像するも恐ろしい事態が起こるのは、必至である。

●今回の参加者

 ea0050 大宗院 透(24歳・♂・神聖騎士・人間・ジャパン)
 ea0424 カシム・ヴォルフィード(30歳・♂・ウィザード・人間・フランク王国)
 ea1774 山王 牙(37歳・♂・侍・ジャイアント・ジャパン)
 ea5635 アデリーナ・ホワイト(28歳・♀・ウィザード・エルフ・イギリス王国)
 ea5984 ヲーク・シン(17歳・♂・ファイター・ドワーフ・イギリス王国)
 ea7578 ジーン・インパルス(31歳・♂・ウィザード・人間・イギリス王国)
 eb2257 パラーリア・ゲラー(29歳・♀・レンジャー・パラ・フランク王国)
 eb3983 花東沖 総樹(35歳・♀・浪人・人間・ジャパン)

●サポート参加者

テスタメント・ヘイリグケイト(eb1935)/ アレーナ・オレアリス(eb3532

●リプレイ本文

 コンテスト会場は、某料理屋の庭に設営された臨時舞台。審査員たる町内のご婦人達がやや化粧の濃い顔を揃えて冒険者達を待っていた。
 ジーン・インパルス(ea7578)は得体の知れぬ悪寒に襲われた。
「こ‥‥この放置しすぎた納豆にも似た粘い視線を俺は知っている……」
 ともあれ、コンテスト開始。
 一番手、カシム・ヴォルフィード(ea0424)が登場。線の細い美形でよく女性に見間違われる彼は、この場で「男らしさ」を周囲に認めてもらおうと、
「ウィザードのカシムです。誰かの、お婿さん!!!(強調)にもしなれたら、あ、あまりしてあげられることはないですけど、晴れた空を一緒に眺めたり、感動を共有するというか‥‥僕は古いタイプの、男!!!(強調)ですので、プレゼントなどモノより心のつながりを大事に考えていて‥‥」
 緊張気味の彼に、カシムの応援として会場にいるテスタメント・ヘイリグケイトが助け舟を出す。
「この通り、わが友カシムは欲が少なく、尽くすタイプだ。可憐な花嫁になること間違いなし。私が太鼓判を押すぞ」
 助け舟になってない。
 出番を終えたカシム、応援のお礼にテスタメントをトルネードで思いっきり飛ばしてあげている。
 「どこか遠い島まで飛んでって下さい!!」と。
 二番手がジーンの出番だ。おば‥‥いや熟年婦人の恐怖を知り尽くした彼は最下位を取る気満々である。
「え〜っと、ジーン・インパルスっす。京都でレスキューやってます。レスキューってのはこっちで言うと救命士っていうのかな」
 さわやかな挨拶とは裏腹に、ダークな自己紹介が続く。
「燃える家屋から人を助けたり、山で遭難した人を何日も探し回ったりして家に帰ることが全然出来ません!! 生傷も絶えないのでいつ死ぬかヒヤヒヤしてます。嫁さんは多分後家になります。助けを求める人が来たら即スクランブル! すがる嫁を突き飛ばし、駆けつけます! 家族と団欒を過ごす暇すらありません!! 無論家族を助けることもあります。でも身内は一番後回しだっ!」
 だが超ネガティブな自己紹介に水を差すつもりか、審査員が「救助が仕事なら、人工呼吸をやってみせて欲しい」と詰め寄った。
 追い詰められたジーンは、会場を見回し、抵抗の少なそうな相手に目をつけた。
「ごめんっ!」
 がしっと細身の腕をつかみ、抗う唇を捕らえ人工呼吸、実行。相手はカシムだった。
 ヲーク・シン(ea5984)が、いらぬ注釈を叫ぶ。人呼んで「解説の悪魔」。
 「触れ合う唇が新たな息吹を与え、奥深くに流れ堕ちて行く。離れる唇、漏れる吐息、新たな魂が吹き込まれたーっ! おおっと、カシムの友人テスタメントが怒って乱入! 三角関係勃発だーっ。男と男の嫉妬が炎と燃える〜!」
 理解不能の爛れた空気を清浄化するがごとく、山王牙(ea1774)が登場。ジャイアントならではの威風と折り目正しい着物の着こなしに、客席から嘆声が上がる。
「志士の山王 牙です、宜しくお願いします。僭越ながら考えまするに、ご婦人方は国の宝。京を愛し、神皇様に忠義を捧げ、愛を我が幸いの方へと注ぐ事こそ、生涯を掛ける目的と考えております。この通り、無骨者ではありますが、私の特技はいささか狩猟の術を心得ていること。ブレスセンサーを用いて冬山でも狩が行うことができ、またご婦人方を危機からお守りすることができようかと」
「いやっ。タイプやわぁ〜アカン、縁談紹介せなあかんのに自分が迫ってしまいそうやわ」
 訥々と語る真面目さ素朴さに、熱い吐息が審査員席から漏れたような。牙が突然不調を訴えた。顔と体に蕁麻疹らしきブツブツが出たのである。審査員の視線の当たっているところばっかりな気もされるが、多分偶然だ。
 次にヲーク・シン(ea5984)登場。家事の腕を生かし、家庭料理をお披露目する。
「家庭戦士たる審査員席のご婦人方には到底叶いませんが、ジャパンの主食、米にあうおかずを考えてきました!」
 と、いわしの身を細かく叩いて味噌を混ぜ込んだ漁師風惣菜、アカザの若葉の煮浸しなどを試食させ、好評を博したが、先ほどの魔の解説っぷりが完全に払拭できたかどうかは不明。
 続いてパラーリア・ゲラー(eb2257)がアレーナ・オレアリスに付き添われ、ちょこちょこと登場。ぺっこんと一礼して、自己紹介である。
「あたしが、お嫁さんだったら、毎日優しく耳元で囁いて起こしてあげるし、旦那さんのために靴を作ったり、赤ちゃんのためにお人形さんを作ったり、してあげるの♪ これ見て♪旦那さんが疲れないように、底がふわふわの靴なのっ」
得意の皮細工で作った靴や、マスコットの類いを並べてみせる。
「お料理はこれからだけど、猟師スキルで狩りとかもできるし、保存食とも作れるから生活には困らせないよぉ☆あとねっあとねっいっぱい、い〜〜〜〜っぱい愛情と幸せをふりまいて元気になってもらうんだぁ♪」
 審査員達が「やっと普通の人に出会えた」みたいな安堵感を顔に浮かべたところへ、満を持してアデリーナ・ホワイト(ea5635)が、会場奥から発した、「ドオォォン!」という爆発音を背負って華麗に登場。音への驚きはともあれ、純白のドレスをまとった美女の登場に、会場が「おぉっ」と沸いた。
「もし、わたくしを娶っていただけたら、炊事・裁縫・掃除と妻たるものの務めを、未熟ではございますが精一杯果たしたいと思います。先ほど調理場をお借りして料理を作ってみました。こちらは刺繍の作品でございますわ」
 と、手料理が審査員達に振舞われ、刺繍作品が回覧される。
「ちなみに、先ほどの爆発音は料理の際の粗相でございます。失礼いたしました」華麗かつ淑やかに一礼。
「あら、気合の入ったお料理やこと。このお肉、炭になるまで焼いてはりますやん。ほな一口‥‥ゴファッ!!」
 賞味した審査員がなぜか軒並み物陰に飛び込んでしばらく出てこなかった。
 そして刺繍作品。なぜか血まみれでもともとの模様がどんなだったかよくわからない。そしてえもいわれぬ血なまぐさい香り高い一品であった。審査員達もあまりの迫力にだろう、なんか非情に無口である。内密のうちに「見なかったことにしよう」という暗黙の了解が交わされたらしい。
花東沖総樹(eb3983)が、「あら、女将さん」客席からあがる声に、軽く会釈を返しつつ舞台に上がる。
「花東沖総樹よ。はい、湯屋を経営しています。旦那様に喜ばれる特技といえるかどうかわからないけれど、仕事柄、体にいいことは色々工夫してるわ。それに理美容の研究もね。今、見本をお見せします。髪のお手入れの他に、マッサージも着付けも任せてね」
 アデリーナに協力してもらって、彼女の長い銀髪を何本もの細い三つ編みに結い、それを束ねて冠のように結い上げたり、解いてまた猫の耳のように二つの団子状に結ったり。
「えらい器用やねぇ。さぞかしお料理も上手いんとちゃう?」
 審査員の熟年夫人がツッコんだ。
「今はまだヘタだけれど、これから少しずつ練習してうまくなるつもりなの。よかったら、審査員の皆様に練習中の鍋料理を試食していただこうかしら。旬の食材を贅沢に盛り込んだ、名づけて『イワシよもぎアジみょうがアケビ鍋』」
 長い間をおいて、「‥‥また今度な」という返事が審査員から返ってきた。
 大宗院透(ea0050)が登場。実は本来のコンテストの目的ではなく女装の訓練。忍びの訓練の一環として女装がどこまで通用するか。
 銀髪の映える、淡紫の着物を着付けて板に付いた女装っぷりである。
「旦那様に飽きられないように‥‥時々声色で‥‥別人を演じて楽しませます‥‥そして‥‥読唇術で‥‥独り言も聞き逃さず‥‥旦那様の心を常に細大漏らさずげっとします‥‥そしてコッソリ夜中に抜け出して‥‥旦那様が夜遊びしようとしたら‥‥優良聴覚で気配を聞きつけ飛び起きます‥‥そしてすかさずスタンアタックです‥‥」
 と、隠密行動能力を生かして、審査会場にいた男性を相手に実演してみせる。きめ細かな奥様っぷりは熟年婦人達をうならせる。実際全部実行したら怖いと思うが‥‥。と、そこへ一人のシフールが、シフール便を持参してきた。
「奥様の亜莉子はんから伝言どっせ〜。『透、超〜愛してるって感じィ』」
「なにっ!? 奥‥‥様!? あんた、男でしかも結婚してんかっ」
 ギラリと透を睨む熟年婦人達。
「『良縁』を組める様になるには『遼遠』の道のりです‥‥しゅたたたたっ(疾走の術)」
 クールに言い置いて走り去る透。これで透は棄権者とみなされ、残る犠牲者‥‥げふんげふん、参加者は7人だ。
「審査結果の発表でっす! 『お嫁さんにしたい冒険者ナンバー1』は花東沖総樹さん、『お婿さんにしたい冒険者ナンバー1』は山王牙さん!」
「あら‥‥困ったわ。だって私みたいな男勝りを花嫁に貰いたいなんて酔狂な人、いるわけないもの」
 照れ笑いを浮かべる総樹に、審査員達が迫る。ほなあんた、一生独身主義なんか? と。
「いえ、今日もとても楽しかったわ。実は、今日をきっかけに私も少しは結婚のこと、そろそろ考えようかしらなんて、ちらっと‥‥あっ!?」
 がしぃ! と腕を両側から審査員のおば‥‥いや熟年婦人につかまれた。ならば早速手近な男性と結婚させてくれようぞ、とズルズルと連行される総樹。
「ち‥‥違うっ! 私は何も今すぐなんて‥‥離して頂戴!」
 一方その横では、牙が「年上の女なんて嫌い?」と、審査員の熟女に意味ありげに尋ねられ、震え上がっていた‥‥
 今回熟年婦人達の魔の手を逃れた冒険者達もまた、京都良縁会のブラックリスト(別名『いつか洗脳するリスト』)にその名が掲載されたことを‥‥ある救命士は人知を超越した「熟年婦人探査能力」により気づいているかもしれないが‥‥知る由もなかった。
 京都良縁会恐るべし。奴らは今日も暗躍している。