【男子厨房に乱入!?】冬だけど草摘み
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■ショートシナリオ
担当:小田切さほ
対応レベル:フリーlv
難易度:やや難
成功報酬:0 G 65 C
参加人数:8人
サポート参加人数:5人
冒険期間:01月18日〜01月23日
リプレイ公開日:2008年01月31日
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●オープニング
京都の一角にある、小さな診療所。
そこの主は、丹波宗哲先生といい、薬草に詳しい老人である。
人当たりは悪くなく、貧しい患者には支払いを猶予したり、そっと薬湯を無料で届けたりと、優しい心も持ち、それなりに患者達からは慕われている。
髪は真白なご老人ながら、日ごろはかくしゃくとして元気なものだが、年末年始にちょいと羽目をはずしすぎたようで。
☆
「わ、わしとしたことが〜〜。う、うぅむ、こうしてはおれん。患者がわしを待っているというのに‥‥っ」
診療所の、いつもは薬草の仕分けや患者さんとの相談に使う奥の部屋で、布団に寝かされている宗哲先生。
畳の上をはいずるようにして起き上がろうとするが、
「いだだだ‥‥」
腰の痛みで、くたっとなってしまう。
つまりはぎっくり腰である。
「先生っ!」
思わず駆け寄る先生の弟子・エイシャ君。イギリス王国の生まれなのになぜか京都で診療所で病人食や薬湯を作る仕事にいそしんでいる人。
「お正月に浮かれてお屠蘇飲み過ぎるからですよ。さすがに徳利五本は多すぎです」
「何を言う栄作! わしゃ仮にも医者ぢゃ! 日ごろ患者達にやかましゅう節制を説くわしが、飲みすぎなどすると思うてか!!」
宗哲先生、目をむいて怒る。
ちなみに「栄作」とは、弟子の本名をうまく発音できない先生が勝手につけた、エイシャ君の京都風呼び名である。
エイシャ君は、申し訳なさそうにうなだれた。
「し、失礼しました、先生。でも、日ごろお元気な先生が、初詣の帰りに転んでぎっくり腰になるなんて、普通では考えられなくて、てっきりお屠蘇の飲みすぎかと‥‥」
「えぇい、わしが転んだのは飲みすぎなどではない、食べすぎぢゃ!!」
「‥‥はい?」
「いやー、つい寺田屋さんの餅が美味ぅての☆ついでに患者さんの家族からお節と新巻き鮭の届け物があったもので、早速焼いて飯を食うてしもうたのじゃ、三杯も」
「お茶碗にですかっ!?」
「‥‥いや、どんぶりに‥‥」
ボカッ。
鈍い音とともに、宗哲先生は布団にめりこんだ。
‥‥‥‥
ややあって、ガバッと身を起こした宗哲先生は叫ぶ。
「ハッ、こ、こうしてはおれん! も、もう薬草の在庫が切れてしまう‥‥! 栄作、わしに代わって薬草を採ってきてくれぃ‥‥」
「確かに、今は悪い風邪が流行っているし、畑にある薬草では、間に合いませんね」
心配そうにエイシャ君も、幾種かの薬草を植えてある庭を眺めやる。
庭にあるのは、咳止めや虫刺されに有効なオオバコ、婦人病やあかぎれ、冷えなどに役立つヨモギ。胃腸強化に役立つドクダミ、といった、一年を通じて繁殖してくれる身近な薬草たち。
だが、問題は解熱に役立つサルノコシカケや、眼病・肝臓強化に役立つメグスリノキ、胃腸薬となるオウレンといった、山で採取しなければならない植物たちの、在庫が切れつつあることだ(これらの植物は、寒い冬でも採取可能である)。
エイシャ君はすっくと立ち上がった。
「先生。心配ありません。僕が先生に代わって、採取してきます! 以前、薬草摘みに連れて行っていただいた場所の特徴は、ちゃんと覚えていますから!」
「しかし、その前にひとつ心配なことが‥‥」
「お弁当は持ちました!」
「いや、そうじゃなくてその‥‥」
「薬草を入れる麻袋も持ちました! 先生、どうか安心して待っていてください!」
「違う〜〜〜! わしゃ、お前の方向音痴が心配なんじゃーーーっ!」
宗哲先生の叫びは、燃えてるエイシャ君には届かなかったようだ。
「だ、誰か〜〜。あいつの後をおっかけて、道に迷わないように草摘みをする手伝いをしてやってくれい〜〜」
ちょうど、診療所の前を通りかかった豆腐屋さんが、宗哲先生の必死の伝言を冒険者ギルドに持ち込んだのであった。
※補足事項
●「薬草のある場所」の特徴はエイシャ君が覚えていますが、道順を覚えているとは限りません(むしろ方向音痴)。
●イメージ的には京都御所の北方面、鞍馬山とかあの辺になります(リアルまんまではありません)。
●上記以外にも、冬でも採取可能と思われる薬草を知っていたら、探してみましょう☆季節柄、風邪やお正月後の胃腸関係に効くものがベターです。
●サルノコシカケ(通称霊芝)はこの時代は天然ものしかなく、わりと希少です。採取できるかどうかは、植物知識スキルにより判断するものとします。メグスリノキは高い山に自生するものが多いらしいです。オウレンはあまり冷え込まない場所の木陰に自生するらしいです。
●エイシャ君も出来るだけ相談板には出るらしいです。何かご質問要望等あればそちらへお願いします。
●リプレイ本文
● 華麗なる旅立ち?
宗哲先生は、まだ腰痛がとれず布団の中で這いずっていたが、とても幸せそうだった。冒険者達の心遣いで、常盤水瑚、明王院未楡、白翼寺花綾と、タイプ様々な美女と美少女が看病に来てくれたからだ。
「助手殿の様には務まりませぬが、猫の手で宜しければ‥‥」と常盤。
「こんにちはー! シャオ・ヤンですっ! 先生に家事とか薬作りやら色々押し付けられちゃった」
草摘み一行に加わる予定の陽小娘(eb2975)も、湿布を作ったりとかいがいしい。
宗哲先生もそんな美女達の好意に甘え、
「先生‥‥お粥をどうぞ(にこっ)」
「うぅ〜食べにくいぃ〜口移しで食べさせてくれんかの〜」
「はいは‥‥ってそんなことするかあ!」
ドカッ。
「へぶっ!?」
で、腰痛がさらに酷く(オイ)。
●みんなで歩こう
「皆さん、防寒対策は大丈夫みたいですね」
エイシャ君が皆を見回して言う通り、皆バックパックから防寒着を取り出して身に纏ったり、逢莉笛鈴那(ea6065)は毛糸の靴下を履いたりと装備十分。そんな鈴那は、くんくん甘え鳴きしている子犬のニナを抱きつつ、
「あの、私は実は薬草よりは毒草が得意かな‥‥。オウレンやレイシの特徴とか、よく生えてる場所とか、教えてください」
ぴょこんとお辞儀する姿には、けなげオーラが満開だ。
「指先が凍えては、草取りに差し支えようからな」
と、浄炎は自ら作った懐石を仲間たちに配る。そして彼は暖をとるための酒の類を、背に背負っていたエレナの荷物を自らの馬・鋼盾に積み載せる。
「これはありがたい」
「いや何、女騎士殿にジャパンの景色は珍しかろうからな。ゆるりと眺めつつ歩くがよかろう」
と和やかムード。
百瀬勝也(ec4175)とエイシャ君も、
「微力ながらお力になれるかと思ってな、‥‥よろしく頼む」
「ありがとうございます。大勢で山歩きってなんだか楽しいですね」
と挨拶をかわす。
リュー・スノウ(ea7242)が絵を手に、そんな鈴那達に説明する。生業が絵師ということもあり、目標の薬草を図にしておいたのだった。
「どうぞ、この絵をご覧くださいませ。オウレンはこのように葉の形が複雑で、日陰の湿地によく群生しております。メグスリノキはこのような形で、葉の裏に茶色っぽい毛が生えております。霊芝は落葉樹の枯れ木が在る場所になりますので、雪など積んでおりましたら足元等には特に用心下さいませ。花びらのような形に木についていることが多うございます」
「えーと‥‥オウレンって、花は咲いているの?」
「いえ、今は花の時期ではありませんので、葉の見分けが肝要です。根に薬効がございますので、丁寧に引き抜くようにお願いしますね」
シルキー・ファリュウ(ea9840)の質問にもリューが丁寧に答え、皆が薬草の特徴を覚え、手分けして探す体制は整ったので、一行は歩き始めた。
ハルコロ(eb5061)が思いついたというように、エイシャ君に問いかけた。
「ロウバイの花はもう咲いておりますかしら?」
「京都でも、さすがに来月頃ですね」
「まあ‥‥」
蝦夷の地を離れて間もないハルコロは、京都の季節感がまだつかめないらしい。歩きながら首をかしげて植物達を見つめている。
「ハルコロ殿、シャオヤン殿、疲れはせぬか?」
百瀬が華奢なパラのシャオヤンとハルコロを気遣う。
「いいえ、何事もチュプンカミクルとしての修行です。それにこれだけの人数なら捜索も楽になりますわね」
とハルコロは楽しげだ。
シャオヤンは自ら連れてきたロバのシャオロンに荷を積み、元気よく闊歩し、エイシャ君に、抜かりなく道端の野草を摘みつつ質問。
「ねえエイシャさん、この『ハコベ』って食べられるんだよね? 夕食の材料になるかな?」
「そうそう、炒めても茹でても美味しいです。シャオヤンさんって若いのに、ベテラン主婦みたいに手際がいいんですね」
「ふふん♪ だって、こう見えてもあたしには旦那と娘が‥‥あー! さっきの聞かなかった事にして!」
わたわたと両手を振り回す。エイシャ君の頭は「?」マークで満杯だ。
「ほぉ、これが京都の山か‥‥ジャパン民の好きな『モミジ』とかいう木の見頃は、もう過ぎたのか?」
遠出の仕事は久々だという男装のエレナ・アースエイム(ea0314)は、景色を楽しみつつも大股にさっさと歩く。
「無理はしないで下さいね?」
「大丈夫さ。これだけ歩けば、後の酒が美味くなるというものだ」
「相変わらず、お酒が強いんですね」
苦笑するエイシャ君を後にエレナは颯爽と勾配を上る。そんなエイシャ君を見て、明王院浄炎(eb2373)がシルキーに、
「む、湿地が多いな。エイシャ殿が薬草に気をとられて滑ってはことだ。シルキー殿、エイシャ殿の手を取り気をつけてやってくれぬか」
「え? ‥‥あ、はい」
シルキーとエイシャ君は、ちょっと嬉しそうに手をつなぐ。
エイシャ君とシルキー夫婦の馴れ初めから知るエレナ、経験から大体察したシャオヤンは浄炎の思いやりに、にこにこ二人を眺めるが、百瀬は口を挟んだ。
「しかし明王院殿、それではシルキー殿が栄作殿の歩調に合わせて無理をしてしまわぬか? よければ私が栄作殿に馬を貸し申そう」
「百瀬さん‥‥もしかして時々『天然』って言われない?」とシャオヤンのツッコミ。
「???」
まああれだ、親切なのはいいことだ。
しばらく歩くうち、足元の地面にシダなどの湿地の植物が目に付くようになってきた。
「あ‥‥皆様、湧き水の音ですわ。エイシャさん、確かオウレンの採れる場所は水の傍でしはございませんでしたか?」
リューが嬉しそうな声をあげた。
「あ、そういえばこのクヌギの木‥‥宗哲先生の仰ってた、オウレンのある場所の特徴だわ」
鈴那が友達のヴァージニア・レヴィン、エリーヌ・フレイアに描いてもらった地図と、行く先の大木を照らし合わせて言った。
「ありました、これですわ!」かがみこんだリューが銀髪をかきあげながら薬草を指差した。
「リューさあん、これもオウレンかなあー?」
「ええ、そう。あ、鈴那さん、そこはぬかるみですからお気をつけて‥‥」
一行はオウレンの根の束を手に入れた。チャララ〜ン♪
●焚き火の宴?
やがて一行は、熊笹の群生する平地にたどり着き、テントを拠点に周辺を探し、後は速めに睡眠を取るということに。
「夜はお鍋にしたいよね! 暖まるし♪」
と張り切る鈴那は、寺田屋でゲットしたお餅を差し出した。
「だって、お餅って色々役立つでしょ? お鍋の締めにしても腹持ちがいいし、余ったお餅は懐炉代わり。また温めなおせば食べられるし」
と鈴那の配慮は結構きめ細か。この報告書が公開されたのち、鈴那の名は「ベストオブお嫁さんにしたい冒険者」の一人として広く知れ渡ることであろう。
そして鍋はシルキーの差し出す芋がら、シャオヤンの持参した新巻鮭を投入し、さらにリューが持参した魔法の杓子でかき混ぜて風味を増したりと、野営料理とは思えぬリッチな料理に。
料理が出来上がるまでの間、一行はエイシャ君の野草茶で温まる。お茶用の水は湧き水を汲み、リューがピュアリファイで清め、飲み水に変えた。
「この草、薬草なの?」
「熊笹です。これが美味しいお茶になるんですよ」
「へぇー‥‥勉強になるなー」
「こうやって火でカラカラになるまで炙って火を注ぐと、香りの良いお茶が出来るんです」
「血を浄化する作用もあるそうですから、ぜひたくさんおあがりなさいませ」
リューの太鼓判もあって、皆は熊笹茶を楽しんだ。
「他に食べられる野草ってあるかな?」
と鈴那は子犬を連れて、鍋の具材になる野草を捜し歩く。と、子犬のニナが茶色に枯れた長いつる草に絡まってじゃれている。
「こらっ、ニナ! ほどいてあげるからじっとして?」
それを見て、リューが明るい声をあげた。
「まあ、鈴那さん、それは『葛』でございますわ。根に解熱作用がありますので、寒い季節には何かと需要もありましょう」
「わあ、そうなんだ? 勉強になるなー‥‥きゃっ!?」
葛を採ろうとしゃがんだ鈴那の背中にペットの子犬が突進、前のめりになる鈴那。
「こら〜〜!」
その姿に笑いながら浄炎が短槍で地面を掘り崩し、続いて百瀬がスコップで根を掘り返すのを手伝い、葛の根を手に入れる。
一方エイシャ君は、細い木の若枝を折りエレナに差し出す。
「辛夷の小枝です。これをお酒に漬け込むと、香りが良くなって、しかも薬効で鼻風邪なんか一発で治りますよ」
「ほう。早速試すとしよう」
一方鍋はシャオヤン達の味見で完成。
「んー‥‥味付け、こんなもんかな?」
「ん、だしが効いて美味しい♪」
温かい湯気に包まれて、一行は鍋を味わう。エイシャ君はシルキーが野菜ばかり食べていることに気づいた。
「あれ、魚嫌いだっけ?」
「うぅん。そうじゃないけど、なんだか今は食べたくなくて‥‥」
(「ほえ? もしかしてシルキーさん‥‥」)
何かピンと来たシャオヤンだが、肝心のエイシャ君は相変わらずだ。
「歩き疲れだよ、きっと。早く眠って疲れを取らないと」
夜が更けるにつれて、冒険者達は飲める者は酒を飲み、そうでない者は子犬を抱いたりして暖を取る。百瀬の持参したどぶろく、シルキーの持参した天護酒を飲み比べ、エレナは嬉しそう。もちろん自ら持参したイギリス製発泡酒も皆に披露する。
冬の夜は長い。
「果実酒に向く薬草では、他にどんなものが?」
「そうですね‥‥イチイの実やアスナロなれば、男性向きのきりっとした風味になりましょうか」
エレナ&リューの、果実酒&薬草談義あり。
「もう、ニナったらいたずらばっかりで‥‥」
「百瀬さんの卵って、何になるんだろうね?」
ペット談義あり。
「で、その時俺が妻に花を差し出し‥‥皆、もう眠かろう。昔話はここまでにせぬか?」
「いいえ、全っ然☆ 勉強になるなー」
「それでそれで? 続きは?」
「う、うぬ‥‥」
浄炎がシャオヤン達乙女に、奥方との馴れ初めを自白強要され大汗かいてたり。
「一番シルキー・ファリュウ、歌います!」
「よっ、待ってました!」
「じゃあ僕は妻の唄に合わせて踊ります!」
「‥‥いらんいらん」
シルキー&エイシャ夫妻によるディナーショー? あり。
「‥‥その娘が振り返ると、その顔はのっぺらぼう‥‥」
「「「キャーーーーッ!!」」」
「伝承知識」を生かした百瀬の怪談あり。
深夜まで話し、笑い、歌い。一行は順次眠りにつき、体力を配慮して浄炎とエレナが交代で火の番を務めることに。
エレナは仲間たちの毛布を直しつつ、微笑と共に呟いた。
(「京都の冬も、悪くないな」)
◆
オウレンは手に入れたが、メグスリノキや霊芝が問題である。
「この辺り、修験者がよく荒行に行き来するらしい。なんとか道はついておるようだ」
と短槍で下草を払いながら、浄炎。皆、リューの提案で手ぬぐいに包んだ温石を足にくくりつけたり、鈴那の持参した餅を焼き懐に入れたりして、体を温めているが、
「でも冬の山はとても寒いよ。気をつけないとね‥‥特にシルキーさんが」
とシャオヤンは意味ありげな視線を送る。
「大丈夫、僕の愛はほぼマグナブロー状態です(はぁと)」
エイシャ君の返事に、ため息をつくシャオヤンと浄炎。
「‥‥エイシャさんの方が百倍心配かもー」
「実を申すと、俺もだ」
一行がたどり着いたのは、ほぼ山頂近く。メグスリノキは傾斜のきつい斜面に生えており、薬効のある樹皮をはがす作業は、百瀬と浄炎の持参したロープを、一方は道上の頑丈な木に結び、もう一方を百瀬が腰にくくりつけ、斜面を降りて刀で樹皮をはがす。そしてロープをたぐって道に戻った。
「これだけあれば当分、眼病の薬に不自由しません」エイシャ君の嬉しそうな声に、
「役に立てて何よりだ」と冷静な表情を崩さず、百瀬は汗をぬぐう。
そうして目的の薬草三つのうち二つは手にしたものの、最後の霊芝探しには、かなりの時間と手間を要した。道のりの途中で、リューが咳や止血の薬となるイタドリを発見し、それなりの収穫。
最終日になってやっと、リューたちの植物知識を頼りに松の林を見つけ、朽ちた木の幹にようやくサルノコシカケを発見。
「よかった‥‥皆さんのお蔭です!」喜ぶエイシャ君だが、最も植物に詳しいリューの表情は冴えない。
「傘の部分が少し褐色がかっておりましょう? 生きた茸ならばもっと白い筈なのですが‥‥使える部分は少ないやも‥‥」
だが、食糧の事情や皆の体力を考慮すれば、それ以上の探索は無理そうだ。一行は、収穫を手に、山を降りることになった。
● 家に帰るまでが冒険です
帰り道、一行が摘んだ薬草を届けがてら診療所へ立ち寄ると、宗哲先生は最初の洗礼以後は真面目に養生したらしくかなり回復して、腰を庇いながらも何とか歩ける。
「おぉ、お手柄じゃった。ほうほう、葛にイタドリまで見つけてくれたのじゃな、ご苦労ご苦労」
リューがサルノコシカケの傷み具合について心配を伝えたが、宗哲先生は、
「いやいや、これだけ採れたのじゃから、使える部分もあるはずじゃて。ゆっくり検分するゆえ、そう心配顔をするな。別嬪が台無しじゃぞ」
そんな様子を見て、シルキーが宗哲先生になにやら相談事をもちかけ、二人は奥の間に引っ込む。
やがて戻ってきた彼女は、嬉しそうにエイシャ君を手招きし、何事か耳元に囁き‥‥
しばらく後。
しゅたたたたた!!
「お守りお守り! 晒し布晒し布! ああっそれよりゆりかごゆりかごーーー!」
京の町を何かの準備に走り回るエイシャ君の姿があった。