彼女の目的

■ショートシナリオ&プロモート


担当:小倉純一

対応レベル:フリーlv

難易度:易しい

成功報酬:0 G 39 C

参加人数:8人

サポート参加人数:5人

冒険期間:09月22日〜09月25日

リプレイ公開日:2006年09月28日

●オープニング

 ここに、1人の少女が居る。
 名前をユニという。
 彼女は以前、冒険者達と様々な話をし、自分も将来冒険者になろうと心に決めた。
 そのためには色々な事を勉強しなければならない‥‥という事も冒険者達に諭され、知った。
 だが、彼女はまだ幼く、かわいい盛りでもあったため、家族は彼女を手放せず、ケンブリッジへ入学させる事もためらった。
 そのため現在は様々な事を吸収するべく独自で勉強中であるという。
 とはいえ、現時点での彼女の勉強内容は、得意の裁縫から始まり、ごく普通の生活を送るためだけのものだ。
「たまには、冒険に関係するような事をお勉強したいなぁ‥‥」
 小さく呟く彼女。
 そして‥‥彼女はひらめいた。
 冒険者ギルドに行って、また色んな冒険者達の話を聞いて、今後の参考にすればいいのだと。
「おかーさーん! ちょっと冒険者さんたちにお話聞いてくるねー!」
 家族に一言を残すと彼女はギルドへと出かけていった。
 
 昼下がり、ギルドの係員はぼんやりとしていた。
「おじちゃん! おじちゃん!!」
 足元から聞こえてきた声に、彼ははっとする。
 目を向けた先にはかわいらしい人間の少女が1人。
「どうしたんだい?」
 驚かさないように、なるべく穏やかに声をかける。
「あのね、私、ユニって言うの。冒険者さんたちの冒険のお話を聞きたくて今日は来たの。将来魔法が使える冒険者さんになりたいから、できれば魔法が使える人のお話がいいな」
 いまいち要領を得ないが、彼女は、どうやら冒険譚を聞きたいらしい。
 それも、出来ることならば魔法に関する事を、と。
「お願いできないかなぁ?」
 ユニはじっと係員の顔を見つめる。
 この様子だときっと満足するまで家に帰らないだろう。
「わかったよ。それじゃあ、冒険者の皆に、お話を聞いてみようか」
 係員は羊皮紙へと依頼内容を書きつける。
『ユニに、冒険に関する話を多少脚色しても良いので話してあげてください。また先輩冒険者として色々助言をしてあげてください。また、自宅へと送り届けてあげてください』
(「‥‥そういえば、以前もこんな事なかったっけ?」)
 係員はそんな事を思いつつ、羊皮紙を掲示板へと貼り付けた。

●今回の参加者

 ea3073 アルアルア・マイセン(33歳・♀・ナイト・人間・イギリス王国)
 ea3075 クリムゾン・コスタクルス(27歳・♀・ファイター・人間・イスパニア王国)
 ea5556 フィーナ・ウィンスレット(22歳・♀・ウィザード・エルフ・イギリス王国)
 ea7222 ティアラ・フォーリスト(17歳・♀・ウィザード・エルフ・イギリス王国)
 ea9957 ワケギ・ハルハラ(24歳・♂・ウィザード・人間・イギリス王国)
 eb3630 メアリー・ペドリング(23歳・♀・ウィザード・シフール・イギリス王国)
 eb4646 ヴァンアーブル・ムージョ(63歳・♀・バード・シフール・イギリス王国)
 eb6596 グラン・ルフェ(24歳・♂・レンジャー・ハーフエルフ・イギリス王国)

●サポート参加者

クル・リリン(ea8121)/ タケシ・ダイワ(eb0607)/ ヴェニー・ブリッド(eb5868)/ トシナミ・ヨル(eb6729)/ ルナ・ルフェ(eb7036

●リプレイ本文

「メアリーお姉ちゃん久しぶりー!」
 メアリー・ペドリング(eb3630)はユニに抱きつかれた。
「ユニ、お久しぶりであるな。息災であったか?」
 メアリーの言葉に、ユニは笑顔で頷く。
 ワケギ・ハルハラ(ea9957)がユニへと挨拶をする。
「僕は、ケンブリッジ魔法学校を卒業して、現在『ホンモノの魔法使い』になろうと勉強中なんです」
 いつかケンブリッジで勉強したいと思っていたユニにとって、ワケギは大先輩だ。
 アルアルア・マイセン(ea3073)はユニへ挨拶をし、言葉をかける。
「ユニちゃんはどんな魔法が使えたら良いと思いますか?」
「あのね、人を助けてあげたりしたいの」
 後ろで話を聞いていたクリムゾン・コスタクルス(ea3075)が成程、と一言頷く。
 何を話すべきかを考え込んでいたようだ。
「ユニちゃんこんにちは。ティアラだよ、よろしくね。ティアラも立派な魔法使いになるのにまだまだ勉強中なんだ。だから、一緒にお勉強しようね♪」
 話しかけてきたティアラ・フォーリスト(ea7222)にユニは満面の笑顔で返事をした。
 その様子をみてヴァンアーブル・ムージョ(eb4646)が笑顔を見せる。
「魔女っ子誕生なのだわ♪ 魔女界の将来は明るいのだわ♪」
 グラン・ルフェ(eb6596)も、笑顔のユニを見て、穏やかに微笑む。
「‥‥さて、それじゃあ、魔法が使われた冒険のお話をしようか」
 母に釘を刺されているし、わかりやすくしなきゃね、と彼は自らに言い聞かせた。

「じゃあ、俺から」
 グランが嬉しそうにユニへと話しかける。
 小さな後輩が出来た事が嬉しくて仕方が無いらしい。
 彼はユニにそっと耳打ちした。
「実は俺が一番こわ〜い魔法使いは、このメアリーさんなんだよ」
 ええっ? と驚くユニ。
 彼が話すのは以前メアリーが同行した依頼の事だ。
「俺よりもずっと小さな身体なのに、何十倍も大きなオーガを、魔法で転がす様子を見て『俺がオーガだったら堪らんな‥‥』と思ったよ」
 小さくてもそういう事が出来るようになるんだね、魔法って凄いねぇ、とユニは喜ぶ。
 様子をみていたクリムゾンが話はじめる。
「あたいみたいなファイターも、魔法のおかげで色々助かっているんだ」
 ユニはその言葉に瞬きをし、首を傾げた。
「お化けは、普通に攻撃しても倒せないんだ。そういうときは、武器に魔法をかけて貰って退治するんだ」
 アンデッドと言っても解らないだろうと、彼女はお化けと言い換えてみたらしい。
 クリムゾンは他にも魔法に助けられた例をあげる。
 素早くて捕まえられない相手は、魔法で動きを止める。敵に囲まれた時に、魔法で助けられた事もある、と。
「だけどな、魔法のおかげで全て成り立ってるわけじゃない。色々助けてもらってる分、あたいもこの剣や弓で、魔法使いを助けてあげるんだ」
「ちーむわーく?」
 首を傾げながら尋ねて来るユニの頭をがしがしと撫でてやりながら、彼女は笑う。
「そうだな。お互い助けあうのが大事なのさ。さっき、人の役に立ちたいって言ってたよな? 人の役に立てるって、気持ちいいよな! だから、魔法で人の役に立てるように、一生懸命努力するんだぞ」
 荒っぽい言葉だが、ユニにはそれがとても優しく感じられたらしい。
 一生懸命頑張る! とクリムゾンに誓うユニ。
 アルアルアがクリムゾンの話を受けて語り始める。
「それじゃあ、武器に魔法をかけて、悪魔を倒した時のお話をしましょうか」
 彼女の話は、悪い伯爵を追い、地下の遺跡へと向かった時の事。
「追い詰められた伯爵は、正体を現しました。伯爵は実は悪魔で、その鋭い牙で襲い掛かってきたんです。普通の武器では攻撃が効かず、私達は危機に陥りました‥‥」
 言葉の真実味に、ユニは手に汗を握る。
 その手を握り、アルアルアはそっとオーラパワーの魔法をかけた。
 何かの力が自分に宿った事にはっとし、ユニはアルアルアを見上げる。
 彼女は力強く頷く。
「でも、大丈夫だったんです。この力が宿った私達は、悪魔へと反撃しました。この力は通用したのです‥‥こうして悪者を倒したおかげで、たくさんの人に喜んでもらう事が出来たんですよ」
「ユニも頑張ったらこの魔法、使えるようになる?」
 アルアルアの目を見据え、ユニが話しかける。
「勿論です。一生懸命頑張れば、魔法はどんどん上達するので、まずはその基本になるお勉強もしっかりやりましょうね」
 にっこりと微笑むアルアルア。
 うん! と大きく頷いた後‥‥ユニは僅かに首を傾げた。
「魔法、上達したら、どんな事が出来るようになるの?」
 それならば、とフィーナが話を始める。
「私が使えるのは、風の魔法なのですけれどね‥‥」
 巨大なモンスターを風の刃が切り刻み、ストームが相手を吹き飛ばす。その威力は凄まじい。
「でも、怖い魔法ばかりではないのです」
 フィーナは話を続ける。
「空気とお話したり、冬場お部屋が暖まるまでの間、寒さを凌いだりする魔法もあるんですよ」
「やっぱり便利なんだねー」
 感心するユニ。
「とはいえ、力が尽きれば使えませんし、全てが解決するわけでもありません‥‥出来る事、出来ない事を学ぶことが、立派な魔法使いになる道だと私は思います」
 私もまだまだ道の途中ですけどね、と彼女は笑顔を見せる。
 様子を見ていたティアラもそれに続けた。
「フィーナさんも話してくれたけれど、優しい魔法、強い魔法、色々あるよ。ユニちゃんは、人を助ける魔法使いになりたいって言ってたよね?」
 神妙な表情で頷くユニ。
「ティアラは優しい魔法は使えないけど、危険な時には強い魔法が必要になるんだ。でも常に、優しい気持ち、忘れないでね。ティアラは大地の精霊さんの力を借りて、魔法を使うの。だから、ありがとうの気持ちも忘れないの。それに、仲間がいて、皆が助け合うから魔法も使える。だからこの力は皆の為にあるんだなって思うんだ」
 誰かを助ける為の力を持つ、優しい魔法使いになりたいんだ、と彼女が言い、ワケギもそれに同意する。
「魔法は他の方の幸せの為に使う事、所構わずに使ったり、頼り過ぎたりしない事、この二つを忘れずに、常に勉強する事、それをボクも心がけているんだ」
 魔法は確かに便利だと彼は言う。過去に、殺されそうになった者を仮死状態にして難を逃れた事もあるのだとユニに語り、聞かせた。
 だが、あえて魔法に頼りすぎてはいけないという例を彼は実演してみせた。
「これから使う魔法は、使い方によっては上手く効果が出ないんだ」
 何か持っている物を日陰に隠してみて、と彼は言う。
 ユニは自分の持っている熊のぬいぐるみを近くにある日の射さない壁際へと置いた。
 ワケギはサンワードを使い、ぬいぐるみの場所を尋ねるが‥‥結果は解らずじまい。
「この場合、自分で探した方が早いよね? だから、使う時と場合を選ぶ事も大事なんだよ」
 メアリーもその通りであるな、と言う。
「魔法は万能ではないゆえ、工夫して使わねば意味がないのだ」
 少しかくれんぼをしてみようか、とメアリーは言う。
 ウォールホールを使い、ユニの目の前に穴を掘りそこに彼女は隠れる。
「目を開けていいぞ」
 その言葉と共に、ユニはメアリーを探そうとした‥‥が、目の前の穴に彼女はいた。
「メアリーお姉ちゃん、隠れてない‥‥」
 ユニの言葉にメアリーは、うむ、ではもう一度‥‥と同じ事を行う。
 今度は自分の隠れた穴に布を張り、姿が見えないようにする。
 布の為か、見つけるのには少し時間がかかった。
「先ほどの穴と比べて探しにくかったであろう? 魔法はただ乱暴に使っても意味がないのだ」
 一生懸命頷くユニ。
「だがな‥‥実際にかくれんぼを遊んでいて誰かが魔法を使って隠れた場合ずるいと思わぬか? その結果、友達をなくすこともある。そういう意味では魔法は万能ではないのだ」
 そういう考え方もあるのか〜と、ユニは少し消沈する。
 だが、彼女に向かい、メアリーは穏やかに微笑んだ。
「急がずじっくり学んでいくことが大事だから、頑張っていくと良い」
 それを聞き、ユニは元気を取り戻した。

「ほら、ユニちゃん。魔法使いの格好〜!」
 ウィッチハット、魔法少女のローブ&枝、エチゴヤほうきを身に着けたティアラは、正に魔法少女というに相応しい。
 何故か沸き起こる拍手。
「で、でもね、これ、重いの‥‥身動きが取れないし、魔法も唱えられない‥‥」
 とっても魔法使いさんっぽいのにーと残念そうに言うユニ。
 そんな彼女に、フィーナが一本の箒を差し出し、話かける。
「一緒に乗ってみてくれますか?」
 ユニは言われたままに箒へと跨る。
 フィーナとユニの身体がふわり、と浮いた。
「こういう魔法の道具もあるのです」
 シフールのように自由にとはいきませんけどね、と彼女は語る。
 流石にそろそろ疲れてきたのか、ユニは眠そうに目を擦る。
 最後まで様子を見ていたヴァンアーブルがとても優しい話をはじめた。
「ある所に、風見鶏が毎朝東を向いてしまう不思議な家があったのだわ。何度直しても、翌朝には東を向いてしまったのだわ」
 それはきっと魔法かお化けの仕業だろうと、その家の男の子に頼まれ、彼女は見張りを行ったという。
 夜になり、闇に蠢く影を見つけ彼女は相手を捕まえた。
 正体はシフールの女の子で、彼女は親友の少女の想いに男の子が気づいてくれるようにと、毎晩、風見鶏を動かして「恋の魔法」をかけていたのだと。
「そのシフールの女の子、優しいんだね。お友達の為に、男の子の気を引こうとするなんて」
 ユニの言葉にヴァンアーブルが頷く。
 もしかしたら、魔法を使わずとも、魔法のような出来事を起こせるのだと、彼女は伝えたかったのかもしれない。
「そ・れ・か・ら〜」
 彼女は竪琴を爪弾きながら、スリープの魔法を使う。
「続きは、夢の中でということなのだわ♪」
 ユニはすやすやと眠りにつく。
 明日に続く優しい夢をみながら。