戦う!おばーちゃん!!

■ショートシナリオ&プロモート


担当:小倉純一

対応レベル:1〜5lv

難易度:普通

成功報酬:0 G 81 C

参加人数:8人

サポート参加人数:-人

冒険期間:06月24日〜06月27日

リプレイ公開日:2006年06月30日

●オープニング

 その日ギルドにやってきたのは1人のおばーちゃん。
「ぁぁ〜あたしも昔は剣を持ってモンスターを倒すファイターだったなも」
 懐かしそうに、そこにやってくる人々を見遣っている。
「‥‥そういえば、あたしが昔隠した宝はあのあとどうなっとるなも?」
 それが事件の発端だった。
 
 その日もギルドにはおばーちゃんがやってきていた。
 しかしいつものように冒険者を眺めるため、ではなく依頼をするために、だ。
「宝を回収して欲しいなも」
 おばーちゃんは唐突に言う。
 彼女の発言をまとめると‥‥昔、彼女が冒険者をやめる直前に、森の奥にある洞窟に宝を隠したのだそうだ。しかし、その洞窟には今はゴブリンが住み着いており、1人では回収できないという。
 ついでにそこにいくまでには、急斜面の坂道をのぼり、森の中も背の高い草が生い茂った場所を通らなければならないと言う。
「あれは‥‥大事なめもりーというやつなも。取り戻したいなも‥‥できれば自分の手で‥‥!! こうみえても昔はファイターとして名を馳せて‥‥はうっ!」
 興奮しすぎたのか、じーさん、じーさんやとうわごとを言いながら倒れるおばーちゃん。
「お、おばあちゃん、しっかりして!」
 よく見ると、もの凄い美少女がおばーちゃんに付き添っている。
 セミロングのさらさら金髪で、目がちょっと大きめ、その瞳はわずかに潤んでいる。
「お願いします‥‥おばあちゃんのお願い、聞いてあげてくれませんか?」
 どうしたものか、と冒険者達が悩むその横でもそりと起き上がるおばーちゃん。
 大丈夫ですか? とかいう間もなくおばーちゃんは喋りだす。
「んにゃ? あたしは何しに来てたんだなも? ‥‥ああ、そうそう、大事なめもりーを取り戻しに行くんだったなも。こう見えても昔は神聖魔法の使い手だったなも! しかも美少女というやつだったなも!」
 ‥‥さっきと言っている事が違う。
 しかも宝を取り戻しに行く事確定済み。
 でも、もし孫娘がそっくりだったら確かにおばあちゃんは美少女だったのかもしれない。
「あの‥‥」
 美少女孫娘がおずおずと、小さな声で言う。
「おばあちゃん‥‥ちょっとボケてるんです‥‥でも冒険者だった事も、宝があるらしい、って事も真実らしいです‥‥耳も遠いから、これくらいの声で話しても大丈夫なんですけどね。あと、興奮すると‥‥気絶するんです。さっきみたいに」
 冒険者達の顔に一抹の不安がよぎる。
 途中で倒れたらどうしたらいいんだ?
「大丈夫です‥‥すぐに意識を取り戻しますから‥‥」
「あたしは青春のめもりーを自分で取り戻すまで帰らんなも!」
 おばーちゃんは大きな声で主張する。
 かくしておばーちゃんは冒険者達に預けられたのである。

●今回の参加者

 ea3780 極楽司 花朗(31歳・♀・忍者・パラ・ジャパン)
 ea8466 ウル・バーチェッタ(26歳・♂・ファイター・人間・イギリス王国)
 eb0689 アクアレード・ヴォロディヤ(20歳・♂・ナイト・エルフ・ロシア王国)
 eb3630 メアリー・ペドリング(23歳・♀・ウィザード・シフール・イギリス王国)
 eb5288 アシュレイ・クルースニク(32歳・♂・神聖騎士・ハーフエルフ・ロシア王国)
 eb5393 ヴィクター・ハント(31歳・♂・レンジャー・人間・イギリス王国)
 eb5441 和泉 琉璃(30歳・♀・忍者・人間・ジャパン)
 eb5451 メグレズ・ファウンテン(36歳・♀・神聖騎士・ジャイアント・イギリス王国)

●リプレイ本文

●出発! おばーちゃん!
「‥‥大人しく家で待ってろ、つっても聞きやしねぇんだろうなぁ。いいぜ、人の助けだけじゃなく自分でも、って気概は俺も嫌いじゃねぇしな」
 アクアレード・ヴォロディヤ(eb0689)はため息をつきつつ苦笑した。
 彼の目の前には噂のおばーちゃんがいたりする。
 自称過去にファイターとして名を馳せ、神聖魔法の使い手だったりした彼女は、アクアレードに向かって穏やかに微笑んでいた。
「ね、ね。ファイターだっけ、神聖騎士だっけ。忍者やったことはある? どんな冒険したの?」
 元気に話しかけるのは極楽司花朗(ea3780)
「昔はこの辺りにデビルがおったなも。それをあたしが忍者として相手をざしゅ! っと暗殺して‥‥」
 自称ファイターだったり神聖魔法の使い手だったり忍者として‥‥なにやら過去の履歴が増えている。
 それに気づき、少し首を捻るウル・バーチェッタ(ea8466)に、メアリー・ペドリング(eb3630)がそっと耳打ちする。
「多少矛盾することを話していたとしても突っ込まぬ方が良いだろう」
 その言葉にウルも、そうだな、と肯き返した。
「それにしても」
 アシュレイ・クルースニク(eb5288)はおばーちゃんの瞳を見据え言葉をつむぐ。
 おや? おばーちゃんが少し頬を赤らめたような‥‥?
 少し離れて様子を見ていたヴィクター・ハント(eb5393)が大丈夫か? と呟いた。勿論、おばーちゃんに聞き取れない程度の声で。
「思い出の品ですか。それならこの依頼失敗するわけには行きませんね」
 彼はそんな様子も気にせずに言い切った。
 和泉琉璃(eb5441)が連れていた馬に乗るよう、おばーちゃんを促す。
「あたしはこの二本の足があるなも! 昔から馬などに頼らずこの足で歩いていたなも!」
 おばーちゃんの言葉にメグレズ・ファウンテン(eb5451)が穏やかにフォローを入れた。
「馬に乗るのは別に恥じる事ではありませんよ? ほら、よく英雄は馬に乗っているではありませんか」
 おばーちゃんは悩むそぶりを見せたが‥‥。
「そ、そういう事なら乗るなも‥‥別にあんたしゃんがたに言われたから乗るわけじゃないなも!」
(「このお婆ちゃんツンデレだ‥‥!」)
 一同は少し思ったものの、言葉にせずに飲み込んだ。

●行け! おばーちゃん!
「ねえねえ、宝物って何? おばあちゃんの年齢から逆算すると、千年もの熟成ワイン?」
 極楽司は無事馬に乗ったおばーちゃんへと話しかけていた。
 おばーちゃん千年生きてないだろ、という突っ込みはしてはいけない。
 おばーちゃんは穏やかに微笑む。
「そんなものじゃないなも。もっと大事な‥‥青春のめもりーというヤツなもー」
 そういいながらアクアレードに向かって流し目をする。
 背筋に走った寒気に耐えながらも彼はおばーちゃんに笑顔を送る。
 ‥‥すこし引きつってはいるものの、彼女はそんなこと気にしない。
(「こんなところで精神力を振り絞るなんて嫌過ぎる‥‥」)
 アクアレードの心の声が届いたのか、ウルがもそり、と彼に言った。
「本当に大丈夫なんだろうな、そのばーさん。微妙に不安なんだが‥‥」
 そんなウルの事も見ては頬を赤らめている。
 ヴィクターは幸運? にもメンバーの最後尾でおばーちゃんの様子を伺っているため、おばーちゃんの愛アタックEX(仮名)を食らわずに済んでいた。
 おばーちゃん恐るべし。
 愛に歳の差は関係ないのかっ!?
 おばーちゃんを阻む障害はないものかっ!?
「ところでおばあさん」
 そんな空気を読んだのかメグレズがおばーちゃんに話しかける。
「神聖魔法の使い手でいらっしゃったという事ですが‥‥よろしければコツなどをご教授願えませんか?」
 うーん、とおばーちゃんは唸り、思いついた様に言った。
「‥‥愛なも?」
 意味深、しかも疑問形。
「愛、ですか‥‥」
 メグレズは生真面目に、つられて悩み始めてしまった。
 この2人、気があうのではなかろうか、と、話を切り替えようとしたメアリーの目の前に急勾配の坂が現れる。
「普通に馬に乗ったまま登るのは厳しそうだな」
 山岳地帯の知識が豊富なメグレズが言う。
 おばーちゃんを馬から一旦降ろし、坂を登りはじめるが、5分も経たないうちにおばーちゃんは息を切らせ始めた。
「しばらくしか経っていないのに‥‥仕方ねぇな。俺におぶされ」
 案外? 面倒見の良いヴィクターはおばーちゃんを背負う。
「ありがとうなも、あんたしゃん、うちのじーさんの若い頃に似ておるなも」
 おばーちゃんの言葉にヴィクターはちょっぴり鳥肌が立つのを感じた。
 さっきまでウル達にに流し目を送ったりとかしていたのを考えると少し怖い予感がするのだった。
 
 坂を登りきる頃には日が落ち、一度目の野営となった。
 メアリーとヴィクターがおばーちゃんの世話をし、女性用にとアシュレイがテントを張る。
 おばーちゃんは耳が遠いため、時折聞き返したりもするものの、極楽司や和泉と会話をしている。
 ただ、和泉の、宝って何なのですか? という質問は、秘密なも、とかわしていた。
 そんな様子をウルとアクアレードが少し楽しそうに見つめる。
 メグレズは寝袋をおばーちゃんに貸し、自分は毛布に包まり眠った。

●戦う! おばーちゃん!
 野営地から暫く歩き、昼が近づく頃、深い森に到着した。
 情報どおり草が鬱蒼と茂っている。
「ヘタに歩けば迷ってしまいますね‥‥」
 森林の知識がなければ和泉の言うとおりになるであろう。
 だが、冒険者達の中には森林に詳しいメアリーが居た。
 おばーちゃんの証言を元に洞窟への道を探り、極楽司が下草を刈り、道を作っていく。
 メアリーと和泉が先行し、洞窟の様子を見た。
 確かに数体のゴブリンがウロウロとしている。
「あれがおばあちゃんの言う洞窟のようであるな」
 メアリーの言葉に和泉がうなずく。
「他のみんなに連絡をお願いします。私は罠を仕掛けてきますね」
 そういうと和泉は洞窟の近くの草を結び合わせ、簡単な罠を複数作り始めた。
 連絡にやってきたメアリーの言葉を聞き、ウルは手近なところで野兎を1匹狩る。
 洞窟で戦うのは不利であると彼らは判断した。
 そこで、アシュレイの発案で、あえてこの場所で野営をし、食べ物の匂いでゴブリンたちをおびき寄せ、叩こうという手に出たのだ。
 アクアレードは野営地の周りに足止め用の罠を仕掛ける。
「洞窟の近くに、罠を仕掛けてきました‥‥確かに10体ほどいるようです」
 和泉は罠を仕掛けるだけではなく、偵察も行ってきていた。
「それじゃあ、はじめるとするか」
 ウルが野兎を捌き、極楽司が火打石で火をおこす。
 しばらくして焼けた野兎が香ばしい香りを漂わせ始めた。
「ま〜さか、こんなところにゴブリンなんている訳ねぇ〜だろ」
 わざとらしく大声でヴィクターが言う。
「そうですねぇ! そんなものが住んでいるわけがありませんよ!」
 アシュレイも声を合わせ言い放つ。
 言葉こそただの旅人のようだが、得物は手から離さない。
 がさりという葉擦れ音とともにゴブリンが様子を見にやってきた。
 餌を見つけたと思ったのか‥‥それは何かを叫び、聞きつけた全てのゴブリン達がこちらに寄ってこようとしていた。
「おうおう出てきた、出てきた」
 ヴィクターの声とともに先ほどまでの気弱な様子とは打って変わり、皆が慣れた動作で身構える。
 だが、予想外の出来事が起こった。
 おばーちゃんだ。
「ゴブリンふぜいがこのあたしに‥‥おぴゃっ!」
 彼女はどうやら興奮して気絶した、らしい。
 敵も何事が起こったのかと唖然としている。
 その隙を見計らい、極楽寺が間合いを詰め、手持ちの忍者刀で敵をゴブリンを切り裂き、メアリーのグラビティーキャノンが敵に飛ぶ。
 魔法の重力波は敵の出足をくじき屠った。
「予想通りだな。馬鹿みたく突っ込んできやがって‥‥」
 ヴィクターのシューティングポイントアタックEXが敵の貧弱な身体を貫き、絶命させる。
 その後から続いていた敵は先ほどアクアレードたちの仕掛けた罠に足を取られ転びそうになったところを和泉に切り裂かれた。
「喰らえ! ゴブリンども! 俺の最高の技を!!」
 裂帛の気合を込めたウルのシューティングポイントアタックEXが更にゴブリンを貫き通す。
 アクアレードはスピアで敵を牽制しつつ刺し貫き、気絶したおばーちゃんを護る。
「牙刃、剽狼!」
 メグレズのバーストアタックEXがゴブリンを叩き潰す。
 ゴブリンの一体が無防備な状態のおばーちゃんを目指してくるが‥‥
「近寄らせはしませんよ!」
 アシュレイの叫びとともに急に敵の動きが止まる。
 コアギュレイトが発現したのだ。
 
 そして、周囲に血溜りが出来た頃‥‥。
「ば〜さん、い〜き〜て〜る〜か〜!!!」
 ヴィクターがおばーちゃんに向かって大声で話しかける。
「にゃも?」
 意識を取り戻した様子をみて、無事だ、と一同が胸を撫で下ろす。
 ゴブリンが殲滅させられたのを知り、おばーちゃんは叫んだ。
「いっけんらくちゃぁぁく!」
 
●美少女剣士だった? おばーちゃん!
 洞窟は小さなものだった。
 メアリーがウォールホールで様子を見るものの、特に変わったところはない。
 ランタンを持ったメグレズに連れられ、洞窟に入ったおばーちゃんは突然地を掘り始める。
「ここなも、ここに埋めたなも!」
 他の皆も必死で掘るのを手伝うと‥‥出てきたのは木で出来た箱。
 あけると中には、1枚の肖像画。そこには美青年剣士と女性が描かれている。
 美青年のほうは、そういえばあの孫娘に似ている気がする。
「これがあたしとじーさんの若い頃のめもりーなも」
 女性は‥‥なんというか、凡庸であった。
「ほらほら美少女なも? 若い頃はそれはそれは‥‥」
 
 無事おばーちゃんの宝を回収した冒険者達。
 その後、キャメロットの街に帰るまで延々おばーちゃんの惚気話を聞かされたという。
 合掌。