真冬の夜に走る者
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■ショートシナリオ&プロモート
担当:長 治
対応レベル:1〜5lv
難易度:普通
成功報酬:1 G 35 C
参加人数:4人
サポート参加人数:2人
冒険期間:01月15日〜01月20日
リプレイ公開日:2007年01月23日
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●オープニング
●寒中ランニング
年も明けて再開した冒険者ギルドに、いつものように依頼が飛び込んできた。
それは、深夜に徘徊する不審者をなんとかして欲しいとの要請だった。
「で、どんな奴らなんですか?」
係員が依頼人代表のベール氏にたずねると、彼は当惑した様子で、今までの被害報告を語り始めた。
●被害報告
『被害報告1 靴屋のベール氏』
「いやぁ、びっくりしましたよ‥‥」
その日、氏は夜中に目を覚まし、トイレにいこうとしていたらしい。
しかし、もの音を聞きつけ通りに面した窓を開けると。
「フン! ハッ!」
「フン! ハッ!」
荒々しい息継ぎの音が複数、通りを横切っているのが聞こえたという。
それが毎夜続き、氏は寝不足な日々を過ごしているようだ。
『被害報告2 パン屋のカトー氏』
「お、オレはもうイヤだ。もう走るのはイヤだ‥‥」
カトー氏はその日、飲んで帰る途中だったのだという。
ほろ酔い気分で道を歩いていると、後ろのほうから複数の人間が走ってくるのが見えたのだそうだ。
その人影は、覆面で顔を隠した男の集団だったという。人数は6、7人だったらしい。
氏は逃走を試みたが、彼らは氏を追いかけ、とうとう追いつかれた氏は‥‥
「わしらと特訓じゃー!」
覆面たちに服を無理やり剥がれ、ランニングに強制参加させたらしい。
氏は逃走しようとしたが、周りを男たちにかこまれ、何かされるのが怖くて朝まで走り続けたと証言している。
翌日、氏は風邪をこじらせて寝込んでしまったらしい。
『被害報告3 研ぎ師のジョニー氏』
「あれは悪夢だったぜ」
ジョニー氏は、夜帰宅途中でそれを目撃したらしい。
それは、覆面をした男たちだった。夜の街をランニングしていた彼らは、覆面とパンツ以外、着物を着ていなかった。ようするに、ほとんど全裸である。
真冬の寒空の下、月明かりに照らされたほぼ全裸の男がランニング。
氏は、しばらくランニングができなかったらしい。
●再び受付
「それははた迷惑ですね」
係員は率直な感想を言った。まぁ、確かに怪しい上に迷惑であることに間違いは無い。
というか、視覚的に精神に害を及ぼして‥‥いるような気がする。
「風邪をひいたり、睡眠被害にあっている人もいるので、懲らしめる程度でもいいですからお願いします」
とは依頼人の弁。
さらに詳しく聞くと、様々な情報が得られた。
曰く、上半身が裸で
「しかし‥‥どんな変人ですかそれらの人々は」
用紙に書いた特徴を書き直しながら、係員は嘆息した。
ともあれ。現に被害が出ているとあらば、受けないわけにもいかない。
そして、掲示板に一枚の依頼が増えた。
『依頼:
夜間、寒中ランニングを行っている迷惑な人を懲らしめてください。
お説教程度で止まるならそれでよし、そうでないなら実力行使を行っても問題ありません。
犯人の特徴及び行動
・目だし帽を被っている
・下を隠す下着一丁で上半身裸
・武装はしていないようですが、殴られると痛いでしょう
・不定期に街中をランニングしているらしい
・行動時間帯は深夜だと思われる
緊急の依頼ではありませんが、なるべく早く対処して欲しいとのこと』
●リプレイ本文
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草木も凍り、霜の降りた大地。しんしんと骨まで染み入る寒さの中を、一個の集団が走っていた。
その一個の集団のことを、一つ一つ解説しよう。
それは見るだけで寒くなりそうだ。
それは下にはフンドシを着込み、顔はマスクで隠れていて見えない。
それは、ぴりぴりと冷える空気の中で、暑苦しい空気をまとっている。
温かいとかそういう次元ではなく、どう考えても近寄りたくない空気も漂わせている。
「正直、関わりたくないな」
エルナード・ステルフィア(eb9675)の呟きが、冒険者たち全員の脳をよぎった最初の単語だった。
●
時は遡り、その日の日中。仕事を受けた冒険者たちは、早速被害者達や町の人に聞き込みを行った。
すると、早々と情報が集まってくる。
「そりゃそうだよアンタ、あんな奴らがおおっぴらに走ってたら、気づかない方がおかしいよ」
「ほう、そうなのか」
周辺住民に聞き込みをしていたヴァル・ヴァロス(eb2122)は、情報収集に確かな手ごたえを感じていた。
なにせ、夜とはいえ街中、しかも毎日同じ道を走るのだと言うから気づかれてもおかしくないだろう。
そのへんた‥‥馬鹿共は、大体月が傾き始めた頃に現れるのだという。そのあたりは、エルナードが実際に目撃者に話を聞いてきた。
「しかし‥‥聞けば聞くほど、寒くなってくるな」
寒さに体を震わせるエルナードが呟く。はたしてそれが、寒さによるものだけなのか。
神薙小虎(ea3857)や、「やりがいのある仕事です」と言っていたロッド・エルメロイ(eb9943)も、同じような情報を持ってきた。
話をしてくれた人の中には、既に精神がまずい状況まで追い込まれているような重傷者もいたのだという。
そりゃ、真夜中にそんなものを見れば、精神的外傷も負おうというものである。
話を纏めた結果。満場一致で待ち伏せ作戦が決行されたのであった。
●
時は戻って、月の見える夜。
「キャメロットの街を騒がす者は懲らしめねばいけないですが、この不安感は、一体‥‥」
件の集団を見て、滝のように冷や汗を流すロッド。彼の不安を感じたのか、ふと小虎が振り返った。
「これ。男児たるもの、このような事で怖気づくではない」
小虎さん、男児だから怖気づくんです。ついでに、たぶんここがイギリスだからなんです。ここでのお説教は勘弁してあげてください。
そんなこんなをやっていると、あれよあれよという間にランニング集団がやってくる。
近づけば近づくほど、暑苦しい空気が辺りに満ちてくる。正直、逃げ出したくなるような雰囲気だ。
だが、仕事を請けた以上しっかりと頑張らなければ冒険者としては名折れ。
「では、参りましょうか」
ロッドがフレイムエリベイションの呪文を各自に付与し、立ち上がる。
「おい、そこの変態共、止まれ!」
エルナードが、警告を発しながら集団の真正面に立ちはだかる。ここからが戦いだった。
●
「なんじゃ?」「なんじゃ?」「なんじゃ?」
突然現れた4人の人影を見ても、集団は立ち止まらない。むしろすり抜けて走り抜けようとする。トレーニング中に止まらないのは基本である。
「もしや」「仲間に」「なりたいのかのぅ?」
「いや、違う」
即答するエルナード。それはもうきっぱりと清々しい断り方だったと、後ろで見ていた人は後に語った。
そこにヴァルが立ちふさがる。そして先制の一撃を叩き込み、言い放つ。
「貴様ら! そんな事では、戦場で早死にするぞ!」
「くぅ! わしらの戦場は、競技場じゃい!」
厚い胸板でがっちりと拳を受け止めながら吼え返す覆面の男A。やせ我慢しているのが、覆面の上からでも見て取れるのはご愛嬌だ。
やせ我慢はしているが男達は足を止めない。
「突破じゃー!」
むしろ、数の暴力を頼りに、冒険者たちを押しのけて先へ行ってしまった。一瞬呆然としてしまう面々の後ろで一人、準備体操をする小虎。
「ふ、ワシの実力をなめておるようじゃな!」
「ちょっと! 何をするつもりですか!」
やおら走り出した小虎をロッドが追う。
「‥‥しまった、見逃したか」
「ふっふっふ、奴らは訓練が足りんようだな」
我に返った残りの二人も後に続く。が、ヴァルさん。変なスイッチが入ってませんか? 武器を置いていってしまった戦士を、冬の夜風が見送った。
●
全力で走り出した小虎は、全力で逃走を試みている集団にすがりつく。事前にルートを調べていたおかげで、容易に追いつくことが可能だったのだ。
くっついてきた小柄な影を見つけた、最後尾を走っている男が悲鳴を発した。
「何故邪魔をするんじゃー!」
「おのれら、そこに直れー!」
最末尾に追いつき小虎が指を鳴らす。すると、先頭を走っていた男の一人が凍りついていく!
高速詠唱の補助をかけたアイスコフィンが発動したのだ。
だが、集団というからに数はまだ多い。小虎の呪文で混乱はしているようだが、これだけでは持たないだろう。
「兄者ー!」「よくも」「兄者をー!」
それどころか、破れかぶれになって突撃を開始してきたところで、すぐ後ろに控えていたロッドが牽制に弓を放つ。
「援護します、何とか持ち堪えて下さい」
放たれた矢は正確に男の一人を捉え‥‥!
「こんな小枝一つでわしらは倒れんぐわあああ!」
しっかりと悶絶させることに成功した。弓の扱いに慣れていなかったのが幸いしたのか、死んではいないようだ。
そうこうしているうちに、遅れていたヴァルやエルナードも追いつき。
「貴様ら‥‥そういうつもりなら、俺が実戦というものを教えてやる」
ヴァルは、夜陰に紛れて一人ひとり拳で仕留め。
「抵抗しないほうが身のためだぞ」
「ぬぎゃー!」
あえなくお縄となったのだった。
●
実は。彼らは、非常に迷惑かつ力だけはあるが、所詮は素人の一般人の集団だったのだ。イギリスで噂になっている、あのての集団ではなかったのである。
そこで、冒険者たちは依頼どおりお仕置きにかかった。
ヴァルの指導の下、石を抱えてランニングをしている男が数名。
「まずは、重りを抱えてランニングだ! 戦場でそんな軽装でいられると思うな! 戦場では、裸になった奴から死ぬ!」
「へ、へい兄者!」
「返事はイエス・サー! だ!」
とまぁこんな具合だったり。むしろ喜んでやってるような気がしますよ、ヴァルさん?
小虎が、慣れないイギリス語で説教していたり。
「そもそも男児たるもの、女子どもに優しくあれという‥‥あー、こちらの言語ではなんと言うんじゃったかの」
「いや、わしらは知らんのぅ」
「‥‥ええい! じゃから、男児というものはじゃな!」
「さっきから同じ話を聞いているような気がするんじゃがのう?」
同じ所を繰り返し聞かされる拷問のような気もする。小虎さん。もっとイギリス語のお勉強をしてからの方が、お説教にも身が入るかも知れませんよ?
「あいつらもよくやるな」
エルナードはそうぼやく。彼は、気絶したものを一通り捕縛したり、運のいいヤツらに説教をしたりした後、火に当たっていたのだ。
「そうですね」
その隣で苦笑するロッド。彼も、エルナードと同じく事後処理に当たっていた。
「でも何とかなりました。これで、街の夜も安心です」
彼らが目を向けた先では、朝日が昇りつつあった。
ところで。
「こんな夜中に、むしろ奴ら以上に騒いでいてよかったのだろうかとふと思ったんだが」
エルナードは、最後にぽつりと呟いた。