【Evil Shadow】うっかり冒険者の忘れ物
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■ショートシナリオ&プロモート
担当:長 治
対応レベル:1〜5lv
難易度:普通
成功報酬:1 G 35 C
参加人数:7人
サポート参加人数:-人
冒険期間:09月30日〜10月05日
リプレイ公開日:2006年10月07日
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●オープニング
その日、冒険者ギルドは何時も以上の喧騒に包まれていた。
デビル達の出現、そして、各地で起こったアンデッドの大量発生。国から民衆からと大量の依頼が舞いこんで来ているのだ。そしてまた、一件の仕事が舞い込んで来る。
「ちょっと、ごめんね!」
受付の回りにいる人並みを掻き分け受付の係員の前に出て来たのは、近頃この辺りで仕事を受けているノルマンから来た新米冒険者。名前は確か、ハルと言ったか。肩で息をし、金色の髪の先まで汗でびっしょりと濡らしている。先日の仕事の報告だろうか?
「すみません、依頼の報告はまた後」
「違う! あたしも、依頼を持って、来たの! 村、が、モンスターに‥‥襲われてたの!」
振り下ろされた手と机がぶつかり、喧騒の中でも一際派手な音を立てる。
一瞬、場が静まり返る。
「なるほど。少しお待ちください。出来るかぎり早く、お話を聞きましょう」
苦々しく顔を歪めながら、とりあえず落ち着いて話をとその冒険者を諭す係員。
そして、彼女が呼吸を整えた後、係員は彼女の話を聞いた。
彼女の説明を簡単に要約するとこうだ。
彼女は依頼を受けてすぐに、件の村へと向かった。そして、村に辿り着いたはいいが、どうも村の様子がおかしい。気になって村人に尋ねてみたところ、夜な夜な死人が起き上がって、村人を襲い始めたのだ、と。扉を閉めていれば室内に入ってくる事は無いが、村の中をモンスターがうろついている状況では、安心して夜も眠れない。
そこで、冒険者に依頼をしに行こうとした所、彼女が村に来た、という事らしい。
「ズゥンビか、少なくともアンデッドである事は間違いなさそうですね」
「そこそこ数が多いらしいの。で、あたし一人じゃ対処できなさそうだから、味方の増援を頼みに来たの」
ちゃんと村長さんの依頼を受けて、ね? と付け加えると、水差しから杯に水を注ぎ、また一息で飲み干す。
「なるほど‥‥で、急いでいたのかもしれませんが、丸腰でこちらまで?」
あまりの事実に今しがた気付いた係員が、ほとんど装備をしていない彼女をジト目で眺める。
「急いでたから仕方なかったの」
ふと視線を外し、どこか遠くを見る。
「で、でも道案内くらいはできるし! 荷物も取りに行きたいから、一緒に行ってもいいかな?」
「仕方ありませんね」
『依頼内容:村を襲っているズゥンビらしきアンデッドを退治せよ
注意:丸腰の新米冒険者同伴』
●リプレイ本文
●道中
話を聞いてくれた冒険者はそれなりの数がいたのだが、最終的に依頼を受けたのは二人だけだった。
敵の数がわからないため、多少の不安はある。しかし、いざとなれば屋内への撤退という手もあると考えられたため、依頼を受けた二名と案内役の新米冒険者は、そろって村へと向かった。
「多分、なんとかなるって。それに、村の人が困ってるんだから放っておけないよ」
エムシオンカミ(eb6708)は、ロングボウを握り締めて宣言する。
「そうだね。ところで、ハルはこれからどうする? 案内をした後にキャメロットに戻るのかい?」
案内をする新米冒険者に問うサビーナ・ラミリーズ(eb7340)。
それに対して彼女は、きっぱりとした口調で言葉を返した。
「いいえ。最期までしっかりと行き先を見守りたいです。だから、報酬無しでも、しっかりとお手伝いさせていただきます」
「わかった。あなたの好きにしな」
こんな様子で、村までの道中を進む一行であった。
●村に着いたら
村に着いた後、村長宅に案内された冒険者達は、村長から改めて正式な依頼を受け、仕事に乗り出した。
村の人達が協力的だったおかげで、情報は簡単に集まった。
敵は夜、月が空の真ん中辺りに来る頃になると、墓地の方からやってくらしい事。
外見的特長を聞いた所によると、敵は恐らくズゥンビで間違い無く、数は3〜4体だという事。
そして、武装している様子は見られない、との事だ。
「これなら3人でもなんとかなるかな?」
再び村長宅に集合した一行。
仲間が集めてきた情報を纏めながら、エムシオンカミは、聞きこみ中に村人がくれた果物をぱくついている。
「だね。巡回しようと思っていたけど、手間が省けたよ」
まだ高い太陽の日差しに目を細めながら、サビーナも果物をつまんでいる。ただ、と彼女は言葉を続けた。
「もしかすると昼間に来るかもしれない。交代で警戒はしておく事にしよう」
「ん。わかったよ」
そうこうしていと、どこかに行っていたハルが戻ってきた。
「只今戻りましたっ!」
その表情はどこか嬉しそうであり、その腰には、古びた長剣が下げられている。おそらく、あれが彼女の忘れて行った武器なのだろう。
「で、作戦はどうするんですか?」
二人の顔を交互に覗きこむ彼女。
「それは‥‥」
一通りの作戦をハルに伝えると、冒険者達は夜に備えた。
●真夜中の訪問者
夜も更けたというのに、今日は月が出ているおかげで明るい。
柔らかい光を放つ月が、夜空の真ん中に上った頃。
「‥‥来たようだね」
サビーナの呟きと共に、村人から聞いていた通り、墓地の方から足音が聞こえてくる。
ばらばらに待ち伏せていた冒険者達は、その姿を確認する。
月明かりに照らされた足音の主は、人の姿をしたものが三人。真っ直ぐに村へと向かっていた。まるで、我が家に帰る者のように。
「三匹かー。思ったよりは少ない、かな?」
エムシオンカミは、こっそりとズゥンビ達の横合いに回りこむ。
生気の無い濁った瞳は虚空を映している。こちらには気付いていないようだ。
「ぼくが弓で引き付けて、二人は奇襲、だった、よね?」
誰にともなく問いかけながら、同時に二本の矢をつがえ、先頭を歩く人影に狙いを定める。
「作戦、開始っ」
立て続けに二射、風を切る矢の音。直後に聞こえた不死者の咆哮が、戦闘開始の合図になった。
●殲滅戦
「安らかに眠らせてあげるよ」
家屋の影からサビーナが姿を表し、走る勢いに任せてズゥンビに向けてフレイルを振るう。
「せいっ!」
武器の重量を乗せたサビーナのスマッシュが、ズゥンビの腕部を捕らえた。確かな手応えが伝わってくる。
しかし、かなりのタフさを持つズゥンビは、この一撃だけでは倒れない。
怨嗟の咆哮と共に、反撃を開始するズゥンビ。
「チッ、なかなかやるようだね」
三体のズゥンビが、近寄ってきたサビーナに向かって一斉に襲いかかろうとする。
彼女の力量では、三体纏めて相手をするのは困難だろう、が。
「そうは、させません!」
隠れていたハルが、一足遅れて参戦。薙ぎ払われた腐肉の破片が、辺りに散らばる。
怒りに駆られた一匹のズゥンビが、ハルの方に向かっていく。これで一対一と一対二だ。
「ちゃっちゃと終わらせちゃおー」
エムシオンカミは、二人を後方から弓で援護しつつ、誤射しない程度に距離を取る。
持ってきた矢をすでに四分の一程消費したが、まだ倒れる敵はいない。
「まだまだ、大丈夫」
再び矢を番え、放つ。飛来した矢は、的確に敵の体力を削って行く。
「ええい、このっ!」
再びフレイルが振るわれ、先ほど傷つけたズゥンビに叩きつけられる。
獲物を仕留めたときの手応え。
ぐらりと体を傾げ、一体のズゥンビが大地に転がる。
仲間が‥‥ズゥンビにそんな感情があればだが、倒された事をなど気にする敵はいない。
勢いを削る事無く、サビーナに向かって汚らしい腕を振り下ろして攻撃を仕掛けてくる!
「まずは一、くっ!」
受け切れずに、一歩後退するサビーナ。
追い討ちとばかりにもう一度腕を振り上げたズゥンビ。振り下ろされる寸前に、飛来した矢が不死者の胴を穿つ。
振り下ろされた腕は衝撃で狙いがぶれて空を切った。
「サビーナ、大丈夫?」
後方から聞こえる射手の声。
「わたしは大丈夫だよ、けど」
彼女は体勢を立て直し、また攻撃に移る。
ちらりと視界に捕らえたのは、必死になって一体を足止めしているハルの姿。
「エム、ハルの援護をお願い!」
「わかったよ」
返事をしながら矢を放つエムシオンカミ。
放たれた矢は、ハルに襲い掛かっていたズゥンビに吸い込まれて行き‥‥
また一匹、行動を停止した。
「ありがとうございます」
エムシオンカミに礼を言い、サビーナの援護に向かう
これで三対一。いかに耐久力が高くとも、敵は残り一体。三人でかかれば、手ごわい敵ではなかった。
●戦い終わって日が上り
遺体の処理が終わった頃には、既に日が昇っている状態。
ベッドに直行した冒険者達はそのまま一泊し、明朝、村人に見送られて村を発った。
依頼結果は可も無く不可も無く、普通にうまくいった。
その分として、お土産に帰りのお弁当と、そこそこの量の保存食を貰ったのだが‥‥
実は行きの時、保存食を忘れてきた二名が、サビーナにたかっていたのだ。
で、その分を補填して、差し引き無しという形で収まる形にしたのだった。
来た道を戻れば城下。一行は家路へと着く。
去り際に、エムシオンカミはハルに、一つだけ忠告しておいた。
「もう忘れ物しないようにねー」
「も、もう大丈夫ですよっ‥‥あ」
その腰には、なにも下がっていなかったとさ。