ボーイ・ミーツ・ア・トレジャー

■ショートシナリオ&プロモート


担当:長 治

対応レベル:2〜6lv

難易度:普通

成功報酬:1 G 36 C

参加人数:7人

サポート参加人数:2人

冒険期間:10月17日〜10月21日

リプレイ公開日:2006年10月22日

●オープニング

●御伽噺
 昔々あるところにな。悪ーい山賊がおったんじゃよ。
 その山賊達は何処にでもいそうな奴らじゃったが、強い奴らでな。村から食べ物を盗み、娘をさらった。
 他にも、行商人から金銀財宝を奪ったり、街道を行く旅人を襲ったり、たくさんの人々に迷惑をかけたんじゃ。
 じゃが、悪が栄えた試しはなくてな。その山賊も、とある勇敢な騎士様に退治されたんじゃ。

 ここからが面白いところでな。
 山賊達は山ほどのお宝を蓄えていたという話だったんじゃが‥‥その財宝は、何処にも見つからなかったんだそうじゃ。
 何処にあるのか、気になるようじゃの?
 お前達にだけ、特別に教えてやろう。この村の近くの洞窟に、隠してあるんじゃよ。

●宝探し!
 空に浮かぶ雲は夕焼けに染まり、子どもはそろそろお家に帰る時間。
 だが、そんな時間になってもまだ村に帰らず、森の中にいる少年が二人。
 二人とも背中には小さな背負い袋を背負い、手には猟師の家の嗜みとして弓が握られている。
「ダニー、もうやめておこうぜ? お宝なんてありっこない。全部あの爺さんの作り話だって」
「そんな事ない! 爺ちゃんは絶対にウソなんかつかない! お宝は、絶対にあるはずなんだ!」
 二人の少年は、村の爺さんの御伽噺を信じ、宝探しをしていたのだ。
 だが、ニールの方は宝探しに飽きてきていた。
 ダニーの方はというと、自分の祖父が嘘を吐くなどとは考えてもおらず、生来の好奇心の強さから、まだ宝探しを続けるつもりだった。
「ニール、キミが帰っても、僕はまだ宝探しを続けるよ。だって、誰かが先に見つけちゃうかもしれないじゃないか!」
「どうしたんだよダニー。早く帰らないとお母さんが心配するぞ? いいぜ、オレだけでも帰る‥‥あ」
 ニールと呼ばれた少年が、崖の一角を指差す。
 そこには、ぽっかりと穴が開いていた。
「ニール、よくやった!」
 ダニーはニールの背中をばんと叩くと、一目散に駆け出した。
「おい、待てよ。待てってば!」
 ニールも、ダニーを 追って走り出す。
 そして。
 二人は、暗い穴の中へと潜って行った。

●孫探し!
 その日、村では大騒ぎになった。なにせ、子どもが二人も帰って来ないというのである。
 母親は半狂乱になり、父親はうろたえるばかり。
 大人が他の子供達に聞いた所、村は更なるパニックに陥った。
 普段行ってはいけないと言われている森の方で見たと言う話が出たのだ。
 あの辺りにある洞窟には、巨大なコウモリが出るという話がある。
 実際見た者もいるが、村への被害もないため昔からそっとしておいた場所なのだ。
 子供達がそこに行ったのならば、かなり危険だ。
 子は宝という。まだ年若い村長は、子どもの安全を考え、決心した。
「町に行って冒険者を雇ってくるんじゃ」
 村が大騒ぎしている中、一人、冷静に事の次第を見ている老人がいた。
「ダニー、お前なら、見つけてくれるかの‥‥?」
 ぽつりと呟いたのは、村からギルドへの依頼が出された時の事だった。

 『依頼内容:子どもの捜索及び、大コウモリの駆除。
 人数は二人。どちらも男の子。
 森の中の洞窟に行った可能性高』

●今回の参加者

 ea6879 レゥフォーシア・ロシュヴァイセ(20歳・♀・クレリック・エルフ・イギリス王国)
 ea6880 フェルシーニア・ロシュヴァイセ(18歳・♀・クレリック・エルフ・イギリス王国)
 eb0207 エンデール・ハディハディ(15歳・♀・ジプシー・シフール・エジプト)
 eb1878 ベルティアナ・シェフィールド(30歳・♀・ナイト・人間・ノルマン王国)
 eb5188 ベルトーチカ・ベルメール(44歳・♀・レンジャー・人間・イスパニア王国)
 eb7109 李 黎鳳(25歳・♀・武道家・人間・華仙教大国)
 eb7721 カイト・マクミラン(36歳・♂・バード・人間・イギリス王国)

●サポート参加者

セリアゼル・スフィール(ea0550)/ 小 丹(eb2235

●リプレイ本文


●子供勇者の伝説
 レゥフォーシア・ロシュヴァイセ(ea6879)は、わなわなと震えていた。
「なんということでしょう。わずか7歳で冒険に出るなどと‥‥素晴らしい、勇者の資質がありますね」
「ああ、また、お姉ちゃんの『勇者探し』の病気が‥‥」
 隣で姉の天然に突っ伏しかけているのは、彼女の妹であるフェルシーニア・ロシュヴァイセ(ea6880)。
「まぁまぁ、いいじゃない」
 フェルシーニアが崩れるのを支えながら、李黎鳳(eb7109)は苦笑する。
 村に辿り着いた一行は、先行して情報収集をしていたベルトーチカ・ベルメール(eb5188)と合流した。
「ベルトーチカさん、あと話し聞いてないのってだ〜れ? 手分けして聞いてまわりましょう」
 カイト・マクミラン(eb7721)の問いかけに、彼女はとりあえず今わかってる事だけでも、と他で聞いた事を仲間に話した。
 それは、最初に聞いていた事を除けば、ダニーとニールは、村はずれに住んでいるお爺さんに懐いていた事。
 これを知った冒険者は、何か知っていそうな老人に会いに村はずれの家に向かう。
 冒険者達が移動する途中、一旦パーティーから離れていたベルティアナ・シェフィールド(eb1878)と合流した。
「そうですわね。こちらでも、同じようなお話を聞く事が出来ましたし」
 ベルティアナも、もう一人先行していた仲間から同じ話を聞いてたらしい。
 そのまま村外れの家に向かうと、お爺さんはしっかりと家にいた。冒険者達がお爺さんに事情を話すと、一行を中に招き入れる。

●お爺さんの昔話
「早速だけどお爺さん。洞窟についての言い伝えや噂があったら教えてくれないかしら? 子供たちが洞窟に行くきっかけになるような‥‥」
 ベルトーチカの真摯な問いかけに、老人はぽつりと答えを返した。
「そうじゃのう‥‥子ども達は、ワシの話を鵜呑みにしてしまったんじゃろうの」
 老人は、落ち着いた様子で話し始めた。
「おじいさんのお話があるデスか? どんなお話デスか? 宝物があるデスか! どんなのデスか、ねえねえどんなのデスか!」
「わかったわかった。話してやるからほれ、落ち着きなさい」
 立て続けに質問を投げかけるエンデール・ハディハディ(eb0207)に、老人は子どもをあやすように彼女を落ち着かせて、話しを続ける。
 それは、山賊を退治した騎士と、山賊の宝の話。全てを話し終え、老人は一拍置いた後また口を開く。
「じゃが、これは作り話での」
「じゃあ、洞窟には何も無いの?」
 クレスの問いかけに、老人は以外にも首を横に振った。 老人は、一同の顔を見渡し、やがて小さな溜息を吐くと、照れくさそうに話し始めた。
「‥‥昔、わしが子どもの頃に、あの洞窟を探検をした事があっての」
 老人は全ての事を彼らに話した。そして。
「なるほど、それなら‥‥心配は無用だったみたいね」
「そうね。ちゃんと『お宝』はあるみたいだし」
 くすくすと笑いながらベルティアナとカイト。
 そして冒険者達は、一通りの準備を終えると、その足で洞窟へと向かった。

●洞窟内の一人語り
 複数の明かりが、暗い洞窟の中を照らし出す。
「お爺さんは、コウモリは、奥にある大きな空洞にいるだろうって言ってたけど‥‥流石に、全部覚えてるわけじゃないか」
 抽象的な地図とにらめっこをしながら進むベルトーチカ。 お爺さんに洞窟内の構造を教えて貰っていたため、比較的楽に進む事はできる。が、なにせン十年前の話。記憶から抜け落ちている部分も多く、所々道が間違っていたりする。
 先は長い。

 ライトで照らしながらあちらこちらを探すエンデの視界には、暗い洞窟が映るのみ。黎鳳も大声で二人の名を呼ぶが、声は周囲の壁に反響して、消えていく。
「かなり奥の方にいるのかしらねぇ」
 洞窟に入る前にも、カイトはお爺さんの声真似をして子供達を呼んだのだが、声が聞こえなかったのか、返事は無かった。
「最悪の事態になって無ければ、いいけどね」
 先は、まだ長い。

 黎鳳が壁に印を付けたりしながら、一行は先に進む。
「私達探検隊は、この未踏の洞窟を進むのであった‥‥」
「子供達が先に来てるじゃない」
 フェルシーニアの妙な解説に、レゥフォーシアのツッコミが入る。
「しくしく」
 悲しみに暮れるフェルシーニアだった。
 先は、まだまだ長い。

 目的地の大空洞
 それでもめげずに解説を続けるフェルシーニア。
「そこで探検隊を待ち受けていた、恐るべき魔物の正体とは!? ‥‥あ、大コウモリ」
「はいはい。大コウモリが‥‥え?」
 またかと思って返事をすると、何か気になる単語が聞こえた。ついでに、こっちに向かってくる複数の羽音が聞こえてきた。
「おーい! オレ達はここだー!」
「に、ニール、顔を出しちゃダメだ!」
 更にオマケとばかりに、二人分の子どもの声も聞こえてきた。
「来るよ!」
 ランタンを地面に置いた黎鳳の掛け声と共に、戦いは始まった。

●戦いの歌
 敵はビッグサイズのコウモリ、ラージバット。名前そのままである。
 その数は三。急降下しながら別々の目標に攻撃を仕掛て来る。
 戦闘が開始した途端、カイトが後退する。
「荒事はおまかせするわ、ゴメンナサ〜イ♪」
 彼の攻撃手段であるムーンアローは、複数の敵がいる場合効果をなさない。故に後退という手段を取ったのだ。
「へへ〜ん、当たんないデスぅ」
 華麗に攻撃を回避したエンデール。
「でも、う〜ん、あたしの魔法は効かないデスぅ‥‥」
 確かに彼女の言う通り、コウモリは視覚でものを見るわけではないので、インビジブルを使用しても効果が無いのだ。
 そこに、レゥフォーシアとフェルシーニアの姉妹から援護の攻撃が飛ぶ。
「大いなる父タロン‥‥再現の神の力を以って、我、邪悪を滅する漆黒の刃を穿つ! ブラックホーリー!」
「慈愛神様の加護の力のもと、邪なる魂魄を退かせる純白の光の矢となれ! ホーリー!」
 連続的な魔法の攻撃。ラージバットは大きく生命力を削られ、二度目の攻撃が飛んできたときに空中から墜落した。

 ベルティアナは、持っていたたいまつを投げ捨て、発動させたオーラシールドでコウモリの爪を受け流す。
「戦乙女よ、我らを勝利へと導き給え!」
 自らの兜に振れ、祈りの言葉を囁く。そして、剣を構えてラージバットに一閃!
「これでも、食らえ!」
 その時、掛け声と共に一本の矢が飛来。ラージバットの皮膜の翼を傷つける。そのまま落下してくるラージバットを、ベルティアが振るった剣が捉えた!
「あとは、一匹」
 黎鳳が相手をしているラージバットに、視線を向ける。

「うわー!」
 悲鳴を上げるニール。ラージバットの爪が彼に届く前に、立ち塞がる黎鳳の影。
「子供達には、指一本振れさせない!」
 裂帛の気合と共に、渾身の蹴りを叩き込む。
 手に明かりを持ち、子ども達を守りながら戦っていても、積極的に攻撃を行わないせいで傷は少ない。
 周囲を見回し、仲間の動きを確認。
「残りは、こいつだけだね」
 上空を飛び回るラージバットをキッと睨みつけ、次の攻撃に備えたところで、カイトの声が響く。
「真打登場かしらっ!」
 ムーンアローが飛び出し、ラージバットを傷つける。と、当たり所が悪かったのか、ひょろひょろと頼りなく飛び始めた。
 黎鳳は、子ども達の方をちらりと見る。
 二人とも、、渾身の力を込めて弓を引いていた。
「暴れ狂える者、刻の束縛を受け、その活動を留めよ! コアギュレイト!」
 フェルーシアの術が飛び、コウモリは身動きが取れなくなり落下を始める。
「さぁ、トドメを刺しちゃってください♪」
「えいっ!」
「やあっ!」
 引き絞られた弦から矢が弾き出され、狙い違わずコウモリへと吸い寄せられ‥‥突き刺さる。
 地面に落ちたコウモリは、ぴくりとも動かなくなった。
「アンタたち、やるじゃないの」
 ベルトーチカが、子供達に向けて親指を立てていた。

「こうしてまた、一つの伝説が解き明かされた‥‥次に我々を待‥‥お姉ちゃん、痛ひ」
 フェルーシアの解説が止まり、本当に戦いが終わった。

●お宝の御伽噺
 幸い、子供達に大きな怪我はなかった。ベルトーチカが差し出した毛布と保存食のおかげで、今はすっかり元気になっている。
 もっとも、親が怒っている事を知ってニールは帰りたがり、ダニーはお爺さんが心配していると聞いて黙ってしまった。
 事情を聞くと、二人は洞窟に入った時にラージバットに襲われ、間一髪横穴に逃げ込み、そこで助けが来るのを待っていたという。
 だが、彼らはただ助けを待っていただけではなく‥‥
「冒険者さん。ぼく、お宝を見つけたんだ! 見てよ!」
 自身満々に言い放って、横穴に入っていくダニー。ニールはその後ろを慌てて追う。冒険者達は、何も知らないふりをしながらその後ろに続いて、狭い穴をくぐった。
 その先には。
「ね?綺麗でしょ?」
 一面の、花畑。
 黎鳳は、子供達に優しく語り掛けた。
「しっかりと目に焼き付けておくんだよ。いつかキミ達が大人になった時、自分の子供達にこの話を聞かせれるようにね 」

●未来の冒険者の伝説
 キャメロットに帰る前の事。
「もし将来、勇者を目指すのでしたら、その時は私達姉妹を訪ねてください。お供させて頂きます」
 少年達の手を掴んで宣言するレゥフォーシアでは、フェルシーニアが頭を抱えていた。
 少年達の方は乗り気で、その時は是非お願いするよと笑っていた。
 ベルトーチカは、お爺さんの元を訪れていた。
「お爺さん。あのお話、本当に嘘なの?」
「さてな」
 揺り椅子を漕ぎながら、老人は笑った。
「ああいう話は、自分が真実だと思う事が真実なんじゃよ」
「‥‥かもね」
 少なくとも、あの『お宝』は真実だったのだから。