冒険者の心得 〜新人レクチャー〜

■ショートシナリオ&プロモート


担当:長 治

対応レベル:1〜5lv

難易度:普通

成功報酬:1 G 35 C

参加人数:8人

サポート参加人数:-人

冒険期間:11月01日〜11月06日

リプレイ公開日:2006年11月09日

●オープニング

 それはある日の出来事。
 係員は、あるリストを見ていた。それは、近頃冒険者になった人達のリストだ。
 昨今の事件の事もあり、戦力の増強は確かに喜ばしい事である。
 ところが、新米達には、新たな環境に戸惑い悩んでいる者が多々いるのも事実。
 仕事の仕方がわからない者や、仕事を受けても何をしていいのかわからない者。
 その他、仕事のやり方がわからない者が多いのだ。
 知らない事は罪ではない。だが、このまま放っておいていい事でも無い。
 さてどうしたものだろうと悩んでいると、いつの間にか依頼人が来ていた。

 彼は、近隣の村の者だと名乗った。
 依頼内容は、ゴブリンの、小さな群の退治。できれば全て駆除して欲しいのだという。
 事の発端は、森の方からあいつらがやってきた事。
 その後しょっちゅう、家畜にちょっかいを出したり、作物を盗んで行ったりして困っている。
 敵の細かい情報について係員が聞くと、次のような事を話してくれた、
 数は、彼らが確認した所によると6体。一体だけ体格のいいゴブリンがいるらしく、そいつがいつも、群の後方から指揮をしているらしい。
 全員が棍棒で武装しており、体格がいい奴はどこで拾ってきたのか、小剣で武装している。
 住んでいる場所は流石にわからないが、ゴブリン達は夕方頃にやってくる事が多いらしい。

 依頼を申し込むと、よろしくお願いしますと言って依頼人は去って行った。
 毎度毎度、ゴブリンには悩まされる‥‥
 溜息を吐きながら張り紙に向かった時。ふと閃いた。
 そうだ。新人教育をやってもらうのもいいかもしれない。


『依頼:
 ゴブリンの群を退治してください
 詳細:
 この依頼は新人さん向けです。ですが、それと同時に、新人さんにレクチャーしてくれる先輩冒険者も募集しています。
 新人さんは、わからない事があったらまず、先輩に聞いてください。
 知らない事は悪い事ではありませんが、知ろうとしないでいると大変な事になったりします。
 そうなる前に、一通りの疑問を解消すべく、先輩にお話を聞いてみましょう』

『依頼:
 モンスター退治及び、新人へのレクチャー
 詳細:
 この依頼は新人さん向けです。ですが、それと同時に、新人さんにレクチャーしてくれる先輩冒険者も募集しています。
 先輩の皆様は、新人さん達に相談の仕方や、仕事のやり方などを教えてあげてくれませんか?
 少しですが、追加報酬も御用意しています』

『追記:なお、新人かそうでないかは、各自の自己申告とします。
    ベテラン冒険者でも、新人の振りをして、模範質問をする方も募集』

 こんなものか、と思って筆を置く。さて、どんな新人が来るだろうか?

●今回の参加者

 eb5995 キリシア・ミクタ(14歳・♀・レンジャー・シフール・イギリス王国)
 eb7706 リア・エンデ(23歳・♀・バード・エルフ・イギリス王国)
 eb8121 鳳 双樹(24歳・♀・侍・人間・ジャパン)
 eb8175 シュネー・エーデルハイト(26歳・♀・ナイト・人間・フランク王国)
 eb8187 イグニス・アルビエイム(22歳・♂・バード・エルフ・イギリス王国)
 eb8361 アスル・リグスワイス(26歳・♂・ファイター・ハーフエルフ・イギリス王国)
 eb8404 リンティス・サードアイ(27歳・♀・ウィザード・人間・イギリス王国)
 eb8614 クロイス・アストレイ(29歳・♂・レンジャー・人間・イギリス王国)

●リプレイ本文


●駆け出し冒険者の交流
 よーく考えてみればわかることで。駆け出し用に依頼を出せば、必然的に駆け出しの人が集まるわけで‥‥
 自己紹介を終えた後に気付く。事情により依頼を受けられなくなった者を除いても、集まったのは、経験の浅い者ばかりだった。
「では、わたくしがちょっとだけ先輩の様なので、皆様の纏め役をさせてもらいます」
 リア・エンデ(eb7706)は、ぺこりとお辞儀をした。
 なに、経験は少なくとも何とかなるものである。依頼に書かれていた内容とは、少しばかり違う形になるが。
「玄人になるためにまず初めにする事は、素人になることだ」
 そんな言葉をどこかで聞いた覚えがあるね、とイグニス・アルビエイム(eb8187)は皆に語る。
 真意はわからないが、おそらく、皆を落ち着けようとしての言葉だったのだろう。
「新人研修、そう、そういうのもわるくないわ」
 リンティス・サードアイ(eb8404)は、話を聞きながら呟いた。
 その後、リアはテーブルの上に一枚の紙を広げる。
「とりあえず、皆の意見を纏めましょう? 事前の準備は大切ですから」
 にっこりと笑うリアの先導で、自己紹介と、事前相談が始まった。


・わからない事があったら、まず聞いてみよう。
・自己紹介は忘れずに、相談はできるだけ参加してみよう。
・そして、自分の行動は最低限何か提示しておこう。

●駆け出し冒険者の道程
 村への道中。
 皆が少し緊張気味で、回りの気配をうかがっている時。
「ぼ〜くら〜なら〜きっと〜うまくい〜くさ〜。だいじょ〜うぶ〜そらも〜みて〜る〜」
 不意に、リアの歌声が空に響いた。
 硬かった空気が、少し和らぐ。
 皆の間で、歓談相談雑談が始まった。
「荷物、持ってもらってありがとうございます。おかげで助かりました」
 キリシア・ミクタ(eb5995)は、ついうっかり荷物を持ちすぎて、飛べなくなってしまっていた。
 そこで、シュネー・エーデルハイト(eb8175)が、荷物を持つのを手伝っていたのだ。
「気にしなくてもいい」
 そっけなく言い放ち、ふいっと顔を背けるシュネー。
 元々このような反応をする彼女だが、少し、照れたようにしている。仲間を持つのも悪く無いと思っているのかもしれない。
 ちなみに、お互い、うっかりと保存食を忘れてしまった時に話をした縁である。
 その問題については、リアが出発前に忘れ物の確認を取った時、餞別に、と係員からもらっていた保存食を渡され、事無き事を得ていた。

 一方。
「必要で、かつ正確な情報が必要だね。例えば彼等がどの方角から村に入り込むかとか、村で戦闘をする場合どの場所がもっとも村に被害を与えず、また効果的に迎撃できるか、とかね」
 イグニスが提案した意見を、リアが聞いていた。
「いいですね〜。それでいきましょう。あ、そうだ。他にも何か‥‥」
 アスル・リグスワイス(eb8361)はその言葉を静かに聞いていた。と、横からリアが顔を出した。
「アスル様? アスル様は、村の人から話を聞いて頂けますか?」
「わかった」
 その後も、誰が、何を得意としているかを再確認しながら、各人の立ち位置を確認するリア。
「あたし、獣の足跡を辿ったりとか、森の中を探索するのは得意だよ」
 鳳双樹(eb8121)が、元気よく手を上げる。
「鳳様はそんな事が出来るんですか〜。すごいです〜」
 いやみのない、純粋な褒め言葉に双樹は照れくさそうに頬を掻いた。
「他の方は〜?」
 その後も、作戦は慎重に練られた。
「では皆様、頑張りましょう」
 村はもうすぐだ。

・仲間とのコミュニケーションも計ってみましょう。
・冒険に出るとき、最低限必要な食料等は持って行きましょう。
・最低限動けるように、武装やアーマーの装備と、重量の調整も忘れずに。



●駆け出し冒険者達の探索
 村に着いた冒険者達。
 ある者は村人への聞き込みに、ある者はゴブリンの巣を探して探索に。
 それぞれの担当した仕事が終わったときには、日はすでに暮れかけていた。

 リンティスは今、非常に悔やんでいた。
 ゴーレムの作成には、色々と制約があるのをすっかり失念していたのだ。
 そのため、現地でのゴーレム作成は無理だった。
「ああもう、失敗したわ」
 悔しそうにしながら、焚き火に火をつける。
 周囲の暗闇が炎の明かりに押し出され、照らし出された光景は、回りにいる仲間の姿。
「誰にでも、失敗はあるものよ」
「火をお使いになられるのでしたら、回りに気をつけて下さいね」
 シュネーとリアの言葉に肩を落として頷いてから、リンティスは周囲を見回す。
 残りの面々は二手にわかれて、警戒に出ている。
 現在ここにいるメンバーは、有事に備えて休憩中だ。
 さて、話によると、ゴブリンはこのあたりの時間帯に来るはずなのだが‥‥
 そして、時は来た。
「皆ー! ゴブリンが来ましたよー!」
 警戒に出ていたキリシアが、文字通り飛んで来た。
 待機していた面々が一斉に動き出す。

 時をさかのぼる事僅か。
 暗い森から、小柄な影が複数体、村の方に歩いてきた。
「数は六。間違い無いな」
「そうだね。あの一匹だけ目立つのは、ホブゴブリンだと思うよ」
 アスルとイグニスは、ゴブリン達が村に向かっているのを発見し、そのまま後を付けていた。
 視界は悪いが、イグニスのしっかりとした視力のおかげで、なんとか見失わずにすんでいる。
 このまま真っ直ぐ行けば、双樹が仕掛けた罠にかかるはず。
「一旦、仲間と合流しようか」
「そうだな」
 二人は、一時撤退した。
 直後、鳴り響く鳴子の音が、夜空に木霊した。

・自分ができることは、しっかりと確認しましょう。
・更に、自分ができる事でも、詳しく調べておこう。思わぬ落とし穴があるかもしれませんよ。

●駆け出し冒険者達と戦い
 鳴子の音を聞いて駆け付けると、闇の中に何かがいた。
 棍棒を持った『何者か』と目が合う。間違いない。ゴブリンだ。
 双樹は、覚悟を決めて日本刀を構える。
「相手をしてあげるよ!」
 先手を取って、ゴブリンに突撃する。
 ギャアギャアと悲鳴を上げて逃げ出そうとするゴブリンを、ホブゴブリンが叱責する。
 その間に、敵との間合いに潜り込み、刀を一閃。
 切り付けられたゴブリンが、悲鳴を上げて倒れる。
 しかし、回りにはまだ五匹のゴブリンが今にも挑みかかろうと構えているし。
 倒れた一匹も致命傷にはいたらなかったらしく、起き上がろうともがいている。
 引くよりは迎え撃つ気持ちで、じり、とにじり寄ろうとした時。
「我らに敵対せしホブゴブリン。その小剣持つ統率者に、我、月の白羽を射かけん」
 呪文の詠唱と共に、イグニスの体が淡く光る。
 瞬間、月明りのように淡い光の矢が、ホブゴブリンに突き刺さる。
 痛みを感じて振り返ると、そこにはイグニスと、剣を抜いて走り出したアスルの姿があった。
 一息で間合いに踏み込んだアスルは、起き上がろうとしていたゴブリンを切り捨てる。今度こそ、そのゴブリンは倒れた。
「集団戦はともかく、こういうことには慣れている」
 アスルの言葉は、冷たく言い放たれた。理解はできなかったが、危険な雰囲気を悟ったゴブリン達は、ますます怯える。
「皆さん、無事ですか!」
 声と共に、先導してきたキリシアに続いて、シュネー、リア、リンティスが現れる。

 一瞬にして、形勢が逆転した。
 ゴブリン達としてはもう辛抱ならない。我先に逃げ出そうとして‥‥踏みとどまる。
 ホブゴブリンが、鬼の形相をして睨んでいたからだ。
 引くにも引けず、彼らには進むしか道が無かった。

 切り、突き、捌き、また斬る。
 ゴブリンの攻撃に耐えながら、剣を繰り出すシュネー。二体の相手は、正直きつい。が、仲間に被害を出さないためにも、ここで踏ん張らねばと気合を入れた。
 視線だけ動かして周囲を確認すると、双樹が一体と、アスルがホブゴブリンと戦っている。
 双樹は優勢だが、アスルは時折反撃する以外防戦一方だ。
 だが、それも彼の作戦である。ボスには後衛からの支援攻撃があるからだ。
 再び放たれるムーンアロー。今度はリアが加わっているため、二条の軌跡が描かれる。
 群れの中に一匹だけいる敵ならば、ムーンアローを正確に命中させる事は容易い。
「このまま行けば、なんとか〜 あっ!」
 次の魔法の詠唱に入ろうとしたリアに、残っていたゴブリンが走り寄って来たのだ。
 魔法は間に合わない。ゴブリンは真っ直ぐとこちらに向かって来て‥‥伸びてきた炎に焼かれて転がった。
 炎が伸びてきた方を見れば、リンティスが松明を持って満足げな顔をしていた。
「油断大敵、ってことかしらね?」
 誰に向かって言っているのかはわからないが、ともかく、ゴブリンはじりじりと焼き焦がされた。
 こんな様子で、敵はじりじりと体力を削られて行き‥‥
「とどめだ」
 急所をざっくりと切り裂かれ、ホブゴブリンは敗北した。
 直後、生き残ったゴブリン達は逃走。とりあえず、第一段階は終了した。

・戦闘時の作戦は、重要になるでしょう。事前の打ち合わせをしっかりしておくと、連携がうまくいくかもしれませんよ。

●駆け出し冒険者の後始末
 あの後。
 ゴブリンを追おうとしたものもいたが、夜中に追うのは止めようと一旦村へと引く。
 そして、翌朝。
 冒険者たちは、足跡を辿って洞窟の前にいた。
「この中にいるんですか?」
 キリシアが、足跡を辿っていた双樹に問う。
 双樹は、黙ったまま足跡を眺めている。
「何か、気になる事でもあるのか?」
 アスルの問いかけに、ぽつり、彼女は呟いた。
「もう、出て行ったあとみたい」
 洞窟の中からの気配も感じられず、真新しい足跡も残っているのだ。
 それは事実だったらしく、洞窟内を捜索していたイグニスとキリシアは、中には誰もいない事を確認して戻って来た。
「追う?」
 シュネーの案に、リアは複雑な顔をした。
「追い払っただけでもよいのではありませんか?」
「そうだね。無益な殺生は行いたく無いしね」
 イグニスもその意見に同意する。他の皆も、なんだかんだ言いながら納得し、冒険者たちは、報告のために村に戻った。

 村人にこの事を報告すると、たいそう喜んだ。迷惑をかける存在がいなくなったのだから、それをなしとげた冒険者には感謝の言葉が降り注ぐ。
 こうして、駆け出し近辺の冒険者たちの冒険は、幕を閉じた。

  ・自分がどうしたいのか、決めておくと楽でしょう。少なくとも、最後に自分の意見を言えるように。

●さ い ご に
 リアは今回の仕事はよくできたと思っていた。そのまま満足して帰ろうとすると、今回一緒に仕事をした冒険者達に呼びとめられた。
「なんでしょうか?」
 首を傾げて振り返ると、アスルが一歩前に出た。
「今回、皆を纏めてくれて助かった。代表して、礼を言う」

 今回の仕事は、やっぱり満足だった。