【目指す光の】 山賊退治を請け負って
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■ショートシナリオ
担当:小沢田コミアキ
対応レベル:6〜10lv
難易度:易しい
成功報酬:3 G 47 C
参加人数:10人
サポート参加人数:2人
冒険期間:09月20日〜09月29日
リプレイ公開日:2005年09月28日
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●オープニング
街道を行く若い侍の姿がある。馬に跨る青年の名は、藤道志郎。春の那須動乱の渦中に逸早く九尾の狐の陰謀に気づき、自らもまた義勇軍を率いて鬼の群を討った若き侍だ。数名の冒険者と共に那須の地を駆け巡った当時の活躍はギルドに記録が残されているが、その後の足取りを知る者は少ない。今、道志郎は藤の姓を捨てて出奔し、修行と見聞の旅に出ている。
伝ってきた汗を拭い、道志郎は街道のゆくえに目を凝らした。遠くに集落が見える。
「そろそろ日暮れ前だ。今日はこの村に止めてもらうとしようかな」
村の手前で馬を止めると、旅荷と一緒にくくりつけたズダ袋を大事に抱え上げる。外からも見て取れる無骨な重みの正体は百両箱だ。那須戦役で義勇軍を募るために実家の蔵を売り払って得たものと、一つは与一公から遣わされた報奨金だ。数百両の重みはとても彼一人で抱えきれるものではない。それを半ば引き摺るようにして道志郎は村へ足を踏み入れた。
ギルドでは、道志郎の兄による依頼が舞い込んでいた。
「道志郎の奴は随分とのんびりと旅をしているようですが、やはり気になるものですよ」
出奔したとはいえかわいい弟のことだ。これまでにも冒険者に依頼して彼の今の足取りは分かって入るが、やはりまだ心配は残る。彼の旅を見守り、彼一人の力ではどうにもならない障害があれば陰ながら手助けしてほしい。とはいえこれは彼の修行の旅、助力は必要最低限に留めてほしい。当然この依頼のことも本人には秘密だ。
「無鉄砲なところのある弟だから手を焼くかも知れませんが、その分の報酬はは大目に見積もります。どうか弟をよろしく頼みます」
さて、その道志郎だが。
「なるほど、村を荒らす山賊か」
「はい、お侍さん。山の祠に十人ほどのならず者が居ついて、村に貢物を要求しているのです」
武装した山賊どもは米や酒、あげくには村の若い娘を貢物として差し出すように要求し、聞き入れられなければ村へ危害を加えると脅しているという。村長が貢を出し渋ると、たちまちみせしめとして村の田畑を荒らし、手のつけようがない。
「民を苦しめる外道め。許せないな」
村長の話に道志郎は憤慨した様子だ
「こういう件ならば江戸の冒険者ギルドへ頼めばいい。この道に長けた腕利き達がたちどころに解決してくれるはずだ」
「それが‥‥」
この村は土地も痩せていて、裏の山も実りが薄い。しかも去年は作物が不作で、今年は自分たちがその日を食べていくだけでも精一杯の酷く貧乏な村なのだという。とても冒険者達に高額の報酬を払うことなどできない。それどころか江戸へ依頼を出しに行くだけの余裕すらないのだという。
「そうだったのか。すまない。何と言っていいやら‥‥」
ふと道志郎がズダ袋に手を掛けた。道志郎が目を伏せる。小さくかぶりを降ると、その手をどけて彼は村長へ向き直った。
「‥‥その話、この俺に預けてくれないか?」
「え、お侍さんが?」
村長は驚いて思わず聞き返した。侍の格好をしているが、まだどことなく幼さの残る風貌。彼一人で山賊どもを退治できるとは流石の村長にも思えないが。道志郎の瞳はまっすぐに村長へ向けられている。半ばその視線に引き込まれるようにして村長はこう答えていた
「お礼は何にもできませんが、引き受けてくださるのなら願ってもないことです」
「承知した。十人という数は正面から当たるとなると手強いが‥‥力だけが俺の道を決めるわけじゃない。まあ、何とかして見せるさ」
●リプレイ本文
山賊退治を安請け合いした道志郎。その彼の後を実はこっそり尾けている者がいることを、道志郎はまだ知らないようだ。馬君を連れて何やらこそこそとしているのはイリス・ファングオール(ea4889)だ。道志郎が村長宅を出たのを確認すると、入れ替わりに家を訪ねる。
「あの、いま出て行った人、実はこっそり追っかけをしている知り合いなんですけど‥‥どこに向かうって言ってたか知りませんか」
たどたどしい言葉であからさまに怪しいのだが本人は一生懸命だ。
「時々無茶をしようとするからとても心配で‥‥」
と言うと、なぜか村長も妙に納得した様子。特に隠すことでもないし、事情を話してくれた。
「お侍さんへは何だったら私から話を――」
「追っかけてるの見つかると恥ずかしいから、知らんフリしててくださいね♪」
道志郎が件の村にいると聞いた冒険者達は静かに動き始めていた。村を窺う裏山の木々に身を潜めるのは
風守嵐(ea0541)。
「那須動乱以降、どのように成長したのか、一見の価値はありそうだな」
彼は春に那須で行動を共にした冒険者。あの時の仲間も何人かがこの依頼に名乗りを上げている。グラス・ライン(ea2480)とクゥエヘリ・ライ(ea9507)もその一角だ。
「ライ、道志郎さんを助けような」
旧知の道志郎に会えるとあってラインの顔は綻んでいる。依頼を請けると話したらライもついてきてくれることとなり、江戸から旅して来たのだ。
「グラスさんが道に迷って道志郎さんに迷惑かけたらいけませんからね」
ライがそう口にすると、えへへ、とラインがはにかみ笑い。あの笑顔を見せられるとライとしては放っておけないのだ。結果、こうしていつも損な役回りに落ち着いてしまうようだ。
それにしても、とライ。
「道志郎さん頑張っているんですね」
(「うちのことは覚えているんですかね、まあ依頼としてはあう事はないはずなので関係ないのでしょうが」)
「理由はどうでも良いんや、ライ。また皆と冒険できるんや、何や楽しくなってくるな」
そしてこちらは。
「‥‥え、今回は忍ばなきゃだめ?」
所所楽石榴(eb1098)と、榊原信也(ea0233)のコンビ。
「‥当然だろう。道志郎に見つからないようにする必要があるからな」
「僕が『忍んでないくのいち』って知ってるよね、信也さん?」
石榴が詰め寄るが、信也は何だか面倒臭そうにため息をつく。石榴は少しふくれた様子だがこればかりは仕方がない。結局二人は山賊の根城へ先回りして手助けをすることにしたようだ。
やれやれとぼやきながらも、信也の唇にも笑みが洩れる。
「‥‥なるほど‥山賊退治を請け負ったか‥‥あいつらしいな‥‥仕方ない。一つ動いてやるか」
依頼を請け負った多くが、道志郎とは縁故の者。皆、彼の力になろうとして動いている。何だか父兄参観の様相を呈してきた気もしなくないが、こうして冒険はいよいよ幕を開ける。
一方、村では。
「我々は旅の冒険者、宿場に向かう前に日が暮れてきたので一宿お願いしたい」
馬を引いて村へ立ち寄ったのは神田雄司(ea6476)と陸堂明士郎(eb0712)の二人。旅の途中で立ち寄ったという二人は宿を借りれないかと村長の家を訪ねている。
黙って辺りを窺っていた陸堂が口を開いた。
「失礼だが、村長。何か村の様子が物々しいように感じるのだが」
「分かりますか‥‥」
と村長。
「それでしたら、お話しましょう。どうぞ中へ。丁度いい、ちょうどもうお二方もお見えになっております」
「「もう二人?」」
怪訝な声で問い返す雄司と陸堂。座敷へ招かれた二人が見たのは、夕食にありついている李焔麗(ea0889)と道志郎の姿。
経緯はこうだ。村のそばの街道で行き倒れかかっている焔麗を村の者が見つけた。話を聞いた道志郎がもしやと駆けつけ、焔麗は無事彼に保護されたと、こういう訳だ。
(「‥‥後悔はありませんが、正直ひもじかったですね。しかし、そのおかげで道志郎さんと接触が出来たのだと思えば!」)
と、タイミングよく腹の虫が鳴る。焔麗は何だか釈然としない様子だが、空腹には勝てない。無言で箸を口に運んでいる。ちなみに演技ではなく素で行き倒れてるところに注目。道志郎へ開口一番に食料をたかり、二人して村長の家に厄介になっている所なのだ。
「‥‥という訳ですお侍さん方。道志郎さん、こちらは旅の侍の‥‥」
「二人はひょっとして‥‥義勇軍に志願していた陸堂さん、それに同じ遊撃隊の神田じゃないか」
那須での経緯を覚えていたのか道志郎は思わぬ再会に喜色ばんだ。陸堂達も名を覚えられていたことに幾分か面映そうに表情を緩めた。
「こうしてまた会えるとは奇遇だな」
「ああ、あの時は力になってくれてありがとう。感謝してる」
「何やら難儀しておられるようだな。自分達で宜しければ力をお貸し致そうか?」
「それは願ってもない」
と答えたのは村長だ。道志郎も頷く。その彼と陸堂とを交互に見て、雄司も一緒に頷く。
「なるほど。道志郎さんと共に、村を荒らす山賊退治ですか。それも一興。村長さんへも宿を借りた御礼に力になりたいですしね」
と、焔麗が漸く腹を満たしたのか箸を置いた。
「ここで道志郎さんや村の人に会えなかったらどうなっていたことか。私も一宿一飯の礼と言うことでお手伝いさせて貰います」
雄司が座を見回して言った。
「決まりですね」
それに皆が頷き返す。
「となれば我らは同志! 道志郎さん、ささ、お酒でも」
こうして四人は山賊退治へと臨むこととなる。出発は明日。今夜は英気を養うささやかな宴だ。陸堂も江戸の旧知の者達の持たせてくれた弁当を開ける。ちなみに雄司の分も勿論用意してある。そうしていつしか夜は更け‥‥。
その夜。
「話があると聞いたが」
陸堂に呼び出され、道志郎は村の外れに顔を出していた。
「遅くに済まない。二人で話したいことがあってな」
陸堂が語るのは那須の情勢や与一公についての話だ。聞けば、陸堂は義勇軍解散後も那須の地で動いているという。
「話した事に他意は無い。ただ貴殿は那須に縁のある身であるし、何も知らないよりは知っていた方が良い事もあろうからな」
「なるほど‥‥貴重な情報をありがとう」
だが、と道志郎。
「俺はもう那須には未練はないんだ。今は小さな国に捕らわれずもっと大きな視野で日ノ本を見たいというか‥‥‥それより、今は山賊退治だ。また共に戦えることを嬉しく思う」
そして翌日。
「‥はぁ‥‥結構しんどかったな‥」
先回りした信也達は朝の内にあらかた仕事を終えていた。やれやれと嘆息しながら信也は両手を持ち上げた。その手を開くと、解除した罠の残骸がぼとぼとと地面にこぼれる。それを信也が茂みへ蹴り払う。
「伏兵の類はなし。見回りは――」
そう言って信也は足元に視線を落とした。そこには男が一人伸びている。男の腕を抱えて引き摺るように茂みに隠すと、信也は両手の泥を払った。
「一人だけ排除、と。やりすぎはよくないからな‥」
「それじゃ、ミッション第二ステージっ! 道志郎さんは‥‥あっちの四人組がそうかな」
山間から里を見下ろすとちょうど一行が出発する所のようだ。
「蝙蝠の術〜♪」
石榴が印を結ぶと辺りに煙が巻き起こる。研ぎ澄ました聴覚で道志郎達の様子を探ると‥‥。
「道志郎さん、上手くいきますかねえ?」
ふと呟いた雄司に、先頭に立った道志郎が振り返った。
「実はもう手は打ってあるんだ。――みんな、準備は言いか」
村を振り返って声を張り上げる。呼びかけに応じて現れたのは村の若い衆。それぞれ鋤や鍬を手にしている。
「昨日は昼間の内に村の若い者へ声を掛けて回ったんだ。やっぱり俺一人ではどうにもならないだろうし、他に策が思いつかなかった」
「俺たちの村のことだしな」
「村の若い衆が黙って見てる訳にはいかねえよな、やっぱ」
集まったのは若衆が6人。これでこっちも十人。数では互角だ。やがて山道へ差し掛かった一行は、山歩きに長けた雄司を先頭に歩を進める。
分け入って一刻ほど。遠くに人影。警戒しながら近寄ると、どうも地元の猟師のようだ。
「ああ、祠への道は知っているよ。なに、これからあの山賊を退治に行くと?」
話を聞くと山賊の根城はもう少し登った所にあるらしい。祠は古いもので岩場を削った洞穴になっているそうだ。
「なるほど、周囲は木々が茂っていて広く距離を取っては戦えないか」
「社には近寄らないほうがいい、もし行くなら無茶をするんではないよ。そうそう祠の側に依然しかけた罠がある」
そう言うと猟師は罠の目印を教えてくれた。山賊はそこそこ腕が立つらしいが、これで少しは有利に立てるかもしれない。
「ありがとう。お礼はできないが、必ず奴等を退治してみせるよ」
道志郎は深々と頭を下げ、先を急ぐ。その背が木々の向こうに消えると、猟師はひとり頷いた。
(「グラス様、道志郎様には手筈通り情報をお渡ししました」)
そう心中で告げると、音無藤丸(ea7755)は変装を解いた。彼は忍軍・闇霞に所属する忍び。今回は旧知のグラスの頼みで行動している。
グラスは道志郎に見つからぬよう離れた所で様子を窺っている。会話はテレパシーによるものだ。
『藤丸さん、ありがとな。タイミングもバッチリや』
(「と、言いますと」)
『ブレスセンサーで気づいたんやけどな、山賊が4人、動き出したんよ。今なら道志郎さんチャンスやな。ウチらはそっちの四人を倒して道志郎さんを手伝おうな』
「見張りはいないな。今が好機‥‥行くぞ!」
道志郎が声を張り上げる。こちらは半数が素人。狭い祠内で身動きを取れなくなるよりは陣を敷いて待ち受けるのも手だ。目論見通りに山賊が飛び出てくると遂に斬り合いが始まった。
「李!」
道志郎が声を掛けた時にはもう焔麗は飛び出していた。斬り込んだ道志郎とは対翼で村人を纏めて山賊を迎え撃つ。互いの戦い方を知る旧知の者同士の呼吸だ。戦場の一瞬の交錯、道志郎と焔麗の視線が合わさり、次の瞬間には道志郎が更に深く斬り込んだ。その間隙を縫うように焔麗が立ち回り、敵に陣形を作らせない。
「村人の皆さん、功を焦る必要はありませんよ」
「テメェら、冒険者なんざ雇いやがったな!!!」
「皆殺しだ、村ごとぶっ殺してやる!!」
その鼻っ面へ鋭く一閃。
「所詮は有象無象。私達がついています。恐れることはありません」
その焔麗の援護を受け、道志郎も山賊の一人と斬り結ぶ。傍らには雄司が控え左の死角を守る。横合いから道志郎を襲う剣撃を雄司が受け止める。
「ふっ、私としたことが」
鍔迫り合いで押し切ると引き際一閃。
「雑魚に初撃を許すとは、のんびりしすぎましたか」
引き胴が山賊の腹を薙ぎ、死体が転がる。敵が怯んだ。その一瞬の機を盗んで山間に陸堂の怒声が木霊する。
「我、死に挑み修羅‥‥外道共、寄らば斬る!」
道志郎の右に立ち、彼の盾となる。連携のとれた動きの前に山賊は徐々に数を減らしていく。
そして遂に最後の一人。
「民を苦しめるその所業、許せないな」
道志郎が切っ先を突きつける。先手を打ったのは山賊、道志郎が危なげなく受け止める。だが続け様の剣撃が道志郎を襲う。切っ先が彼を捉えようとした刹那、突如として滑空してきた鷹が二人の間を掠めて飛んだ。
「今だ!」
道志郎が果敢に反撃に出る。激しい打ち合い。山賊が一歩下がる。とその時だ。男は草に足を取られて体勢を崩した。男が倒れこんだ先には‥‥。
「畜生!何だこりゃ!!」
仕掛けてあったロープに捕われ、男は逆さ吊りにされていた。
「これにて一件落着だな」
その道志郎達を窺う木陰に。
(「畜生、奴ら俺らの仲間をよくも‥‥」)
山賊の一人が弓を手に隠れている。番えた矢の狙う先は、道志郎。
男が弓を引き絞り。そして。
ドサリ。
男が力なく斃れると背後に立っていたのは嵐だ。影ながら他の仲間達も仕事を全うしていた。
「グラス様、残党の処理、干渉しました」
隠密行動に長けた藤丸。山賊程度なら木陰を影に個別に仕留める等造作ないこと。遠目の利くグラスの指示で彼らは別行動の山賊を討伐した所だ。藤丸の報せを聞いてライも一息つく。
「無事に片付きましたね。これで――」
弓を引き絞り、そして。木々を縫って飛んだ矢は逃亡を図っていた最後の一人を貫いた。
「ありがとな、ライ。それに蒼穹もお疲れ様や」
「皆さんお疲れ様です♪ 私も怪我の治療しますね」
同行していたイリスがペコリと頭を下げる。と、そこへグラスが割って入った。
「回復はウチがやるから、先に村に戻っててええよ」
「え?」
にこにこと笑うグラス。
「道志郎さんに会いたいんやろ?」
事が終わり。夕刻。
「己の道を切り開くのは己自身‥‥後は彼自身が決める事だ」
「さて、我々も旅に出ましょう」
陸堂と雄司の二人、そして焔麗は江戸への旅路に着いたようだ。道志郎は彼らとは別の道へ馬首を向ける。と、その道の先に。
「‥‥こんにちは、旅の調子はどうですか?」
「い、イリス‥‥!」
「話は村で聞きましたよ。変わりないみたいですね」
物探しの依頼の途中だというイリス。道志郎も奇遇だと素直に再会を喜んでいる。
「こっちのは‥‥手掛かりは分ってても、簡単にはいかないみたいです」
そう言って道志郎の顔へ視線を移すと、イリスは目を伏した。
「‥‥もうそろそろ、少しずつ寒くなってくる時期だし、体には気をつけてくださいね♪」
再び向けた顔は笑顔。踵を返すとイリスはそのまま駆けていった。
そこから少し離れた林の中では。
「みんなお別れの挨拶してるねっ。道志郎さんとは那須からの旅の仲間だもんね♪」
石榴と信也が遠巻きに様子を窺っている。
「信也さんは行かなくていいの?」
「‥‥ああ。元気な姿も見れたしな‥」
道志郎の姿を遠く見遣りながら、信也は口元を緩ませた。そんな彼の横顔を見ながら石榴がぼそりと呟く。
「お父さんってこんな感じなのかな〜」
「‥まて、石榴‥‥俺とお前、歳は変わらんだろう‥それなのに何故父親呼ばわりする」
項垂れて信也。石榴と共に岐路に着く。そうして仲間達が去り、道志郎もまた次の旅路へ。
そこへ静かに嵐が姿を現した。
「先の戦いは、見させて貰った。加勢に加わっても良かったのだが‥‥それではお前自身の為にはならんのでな。話は変わるが」
淡々とした雰囲気から一転、低い声がこう告げる。
「北の地で、また何かが起ころうとしている‥‥あの時と同じ様に確証も何もないがな」
あの時――その言葉に道志郎が眉を動かした。
「これをお前に話した意味は、‥‥自分の中で答えを出せ」
嵐は踵を返す。それだけ告げると道志郎には背を向けて闇に消える。だが去り際に、嵐は確かにこう呟いた。
ギルドで待っている、と。
「北か‥‥」
見上げた天には淡く黒雲の気配。眉を潜ませ、道志郎は天を睨む。道志郎が馬を引く。行き先は江戸。その先に待つものは――。