【上州騒乱】 ヘタレん坊将軍!
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■ショートシナリオ
担当:小沢田コミアキ
対応レベル:フリーlv
難易度:やや易
成功報酬:0 G 97 C
参加人数:10人
サポート参加人数:5人
冒険期間:05月09日〜05月19日
リプレイ公開日:2006年05月21日
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●オープニング
上州大田宿の代官である松本清は元江戸の冒険者。その彼から依頼が届いた。大田宿の街作りの一環として、松本代官が城下町で一芝居打つ計画がある。その計画を影から支え、成功へ導いて欲しい。計画の概要は以下の通り。
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■設定
どこにでもいそうな町人の「遊び人のキヨさん」。金山城の城下町・大田宿界隈を流す遊び人。
城下の人々と共に飲み、食い、遊び(すべて自腹で)、泣いて、笑って、町人たちと心で触れ合う。
その正体は、上州金山城の代官・金山の清さん(松本清)。肩に『桜吹雪』と刺青が彫ってある(漢字で)。
■行動
城下で悪の臭いを嗅ぎつけて現場へ首を突っ込み、とりあえず悪事を失敗させる。
その際、ドサクサにまぎれて肩の刺青をちらつかせて帰ってくること。
■今回の悪役
油問屋の大黒屋。近頃羽振りを利かせている商人で、大田宿に屋敷を構える。
江戸から国抜けしてきた町人たちを裏で太田宿へ引き入れている。
だが、実はそんな江戸の町人たちを騙して人買い紛いのことを行っている。
■一件落着
悪事の現場を押さえたら、悪党を城へ呼び出して名代官「金山の清さん」として審議の場へ出席する。
その際肩の刺青を見せて『この刺青が全てお見通しよォ!』と啖呵を切ること。
遊び人のキヨさん=金山の清さんの正体を明かし、裁きを下す。名台詞を忘れないように。
(*悪人に裁きを申し渡すときまで、金山の清さんの正体はバレてはならない)
■目的
源徳に支配権を奪われた反上州連合の巻き返しのため、領民の信頼と期待を勝ち取り、今後の原動力とする。
上演後は『松本の代官がお忍びで悪人退治をしているらしい』と噂を流して領民の心をガッチリ掴む。
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松本清・技リスト
必殺技
・絶対無敵の微笑:パンチ連打
・往生スラスト:←溜め→+パンチ
・当たらなければどうってことないんだっぜ!:↓←↑+キック
・猛虎平臥ノ形:→→↓↑↓+土下座
・餓狼想吼牙:レバー1回転+ぴよぴよ
・雲竜尾旋脚:←←
超必殺技
・偽善使いの制限時間:→→→→↑+パンチ連打
・反転分離攻撃・鏡:←溜め→+PP(2conで)
・どうってことないんだっぜ改:↓←↑\ГИ/↓〜→+Σ(ノ 熊ァ?縫?
●リプレイ本文
「雲竜の如く出世街道を駆け上がり金山城主にまで成り上がった冒険者、松本清。どんな漢なのか‥‥」
アルバート・オズボーン(eb2284)ら冒険者の元へも清の英雄譚は風に乗って上州から流れてきている。
「今から会うのが楽しみだ」
大陸では龍を殺し、大精霊を従えた最後の英雄にして、上杉家が三顧の礼を持って迎え入れようとしたという地上最強の侍。難攻不落の金山城を民百姓の兵で攻め落とし、今や源徳の後ろ盾を得て一城の主。その清に招き入れられ、一行は本丸の天守へと案内される。
「薬屋さんから冒険者を経て今や代官っすか‥‥世の中には凄い方もいるんすねぇ」
清と謁見した以心伝助(ea4744)はそんな感想を漏らした。
「そのくせ、とっても偉い人って聞いてたのに随分気さくな方なんすねぇ。あっしらみたいな下々の者ともあんなに対等に‥」
噂とはかけ離れて風采のあがらぬ青年は、どこからどう見てもただの町人。清はいま鷲落大光(eb1513)と作戦の打ち合わせの最中だ。
「必要そうな物を見繕っておいたが、くれぐれも失くしたり忘れてきたりはするなよ、清?」
「‥わ、わかったっぜ」
正確には対等でもないのだが深くは気にすまい。
「承知しているとは思うが、逃げ出そうものなら幼光の餌にするぞ。何せ育ち盛りで食欲旺盛だからな」
そう凄むと、傍らのドラゴンパピーがかつかつと嘴を鳴らす。怯える清を他所にクリアラ・アルティメイア(ea6923)は金山に自分の教会を持つ野望に燃えている。
「はわー。野望さん第二弾ですよー。松本さんに頑張ってもらってー、計画の足がかりにするですよー。はいー」
さて。その横では義侠塾生の風羽真(ea0270)が腕組みして清へ値踏みするような視線を送っている。
「‥‥同期の連中から噂に聞いちゃいたが‥‥予想以上のヘタレっぷりだな」
小さく嘆息しながら鷲落と共にイカサマ賽や呼子笛などの道具を清へ手渡す。胡桃は物陰から悪人へ投げつけて颯爽と登場する小道具だ。ふと、横で見ていた伝助がぽんと手を打つ。
「これ被ったら勇気が出ると言ってこれ被せたら強気になったりしやせんかね?」
差し出したのは鬼の面。ふと微妙な完成予想図が脳裏に過ぎったが、なかったことにして。ポツリと鷲落。
「後は刺青だな」
伝助が顔を見合わせ、次いで清へ視線を移す。
「‥‥気絶でもさせやすか」
竦み上がって早速清が回れ右すると、後ろに立っていたシェリル・オレアリス(eb4803)へぶつかってその場でへたり込む。シェリルが片手を差し出しながら微笑んだ。
「刺青は痛そうだから、私が墨で字を書いてあげるわ。梵字でだけど」
梵字もアレだが、何より十日ほど体を洗えなくなるのは困る。三人が揃って頭を捻る。不安げに清が三人へ視線を彷徨わせると、目が合った伝助がニコリと微笑んだ。
「最後に格好よく活躍したらモテモテになることでやすし」
逃げようとする襟首を引っ掴んで。
「漢気を見せて貰うってことで一つ堪えて下さいやし」
天守から上がった叫び声が金山へ空しく木霊した。
○序幕
ででん!
――そんなこんなで始まりました、痛快活劇『ヘタレん坊将軍』。物語の主人公は大田の街を流す遊び人の清さん。その正体は大田代官、金山のキヨさん。町人に扮した代官が、いま大田の悪を暴く!
ででんでんでん!
「あんだけいた任侠裏方組も、とうとうこんだけか」
ここは城下の酒場。サウティ・マウンド(eb0576)が昼間っから浴びる様に酒を流し込んでいる。
「まぁ、俺はきっといなくなんねぇからな? 安心しとけよ、清?」
にっこり笑った顔も半ば脅迫だったりするのだが、清の肩をバンバンと叩きながらサウティが酒を煽った。縮こまっている清の向こう隣には戸来朱香佑花(eb0579)が無言で盃を傾け、二人に挟み込まれて随分居心地の悪そうな清。
清には居心地の悪い面子での遊び歩きはかれこれ三日も続いている。一昨日は賭場で大負けし、昨日は料亭で大宴会。今日は酒場で飲み食いし、居合わせたゴロツキにも奢っての大盤振る舞い。気前の良さをアピールして噂を広めるためだ。
「ま、清は金もってね〜んだろうから俺の財布からカンパしてやるぜ。もちろん出世払いだけどな」
「いつか返して貰うから」
と、領収書を切らせて香佑花。いまいち盛り上がりが足らぬと見ると。
「それより、清。‥‥もっと騒げ」
とアバウトな指示。
「も、盛り上げろたって俺、そういうの苦手なんだっぜ」(←本当は何をやっても苦手)
と、清がぐずりだすと。
ふわぁっと、清の鼻先を美しい金色の髪がくすぐった。流れる黄金の髪をかきあげて現れたのはシェリル。清の手を握って、じっと目を覗き込む。
「私清クンのカッコいいとこがみたいわ♪」
にこりと微笑んだ時には既に清は荒い鼻息。追い討ちにシェリルが耳元で甘く囁いた。
『お・ね・が・い』
「や、ややややってやるっぜ!!」
すっかり舞い上がった清はゴロツキどもの輪の中へ入っていくが、清が調子に乗るとそれはそれで香佑花は気にいらない。
「清、ちょっと」
と、呼びつけると振り向き様に鳩尾に強烈な一撃。ストンと落ちた清を一瞥すると事もなげに一言。
「酔い潰れたみたい」
「ったく、清もだらしねぇなあ! 水だけしか飲んでねえ癖に酔い潰れるたぁな!」
とまあ、そんなのは放っておいて同じ頃。
「‥‥って訳なんでさぁ、清さん」
「話は分かった。安心しな、この俺に任せておけ」
街にはもう一人清の姿。その正体はジェームス・モンド(ea3731)だ。町人達から事情を聞いてみると、大黒屋は随分と悪事を働いているらしい。
「俺はただの遊び人だが、それでも人の道は踏み外しちゃいねぇ」
「き、清さん‥‥」
「この俺の耳に入ったからにはもう心配はいらねえ。昔話だって最後はこういうだろ? 悪は退治されるんだってな」
にかっと笑うと偽清の白い歯がキラリと光る。事は順調に運んでいる。大黒屋内部の情報は伝助が掴んだ。江戸では情報屋だという彼の手にかかれば事前調査の裏付けを取るくらいは容易い。プリュイ・ネージュ・ヤン(eb1420)も大黒屋周辺の噂話を集め終えた所だ。内部にはアルバートが既に用心棒として潜入を果たし、下準備は全て整った。後は清を連れて踏み込むだけ。
ふと西の空を見上げると、厚い黒雲が垂れ込めている。
「さて、がんばってみましょうか」
ネージュの唇から詠唱が洩れ、次第にその身に淡く蒼い輝きが渦巻き始める。
「汝は気紛れなる移ろい。陰差す憂いの表情。空よ、我は汝の心を識(し)るものなり。我と共に泣き、共に涙せん。その心を委ねよ。今、雨つぶ大地を叩かん!」
俄かに黒雲が町をすっぽりと覆い、ぽつり、とネージュの肩を水滴が濡らした。それが合図だったかのように夕立が街を沈める。雨水に全身を濡らしながらネージュは宿へと走った。
○対決
ででででん!
そうとも知らず大黒屋。今日も屋敷で悪事に手を染める。
「ぐへへ。良いではないか」
「あーれー」
町娘へ大黒屋の魔の手が迫る!
ででんでんでん!
その時だ。不意に障子へ影が映る。面で顔を隠して薄衣を纏った清が静かに足を踏み入れた。
「一つ人の生き血を啜り、二つ不埒な悪行三昧‥‥」
お面は伝助の用意した鬼の面で代用だ。
「三つ醜い浮世の鬼を、倒して見せよう遊び人の清さん」
「お、鬼はお前だーー!!」
ごもっとも。
「おめぇ等の悪事。遊び人の清さんと、この桜吹雪がしっかと聞いたんだっぜ!」
清の横にはサウティ。そしてナーガに変化したクリアラが付き従う。
「自分は四千年の歴史を誇る華仙教大国から渡って来た古の龍の眷属で松本清の忠実なるしもべにして手っ取り早く言っちゃうとぶっちゃけ、竜。なので吠えますよ。ほら、がおー!」
というかクリアラ本人は実物のナーガを見たことがないのでいろいろテキトーだったりするが、勿論田舎の商人も見たことがある筈もないので無問題。
「‥‥悪事? はて、何のことやら? 何か証拠でもありますやら」
その時だ、庭の池から水音があがった。隠れていたのは『まるごといろこい』姿の真。
「一部始終はこの目で見させてもらった。それでもシラを切り通すってか?」
「ええい、曲者だ。殺れ!」
襖が倒れ、用心棒がなだれ込む。不意打ちを受けてサウティが切り伏せられた。
「き、清さん‥あとはたのんます‥‥(ガク)」
「サウティーーーー! 許さないんだっぜ。クリアラさん。風羽さん。懲らしめるじゃん?」
「任された!」
「がおー!」
といってもクリアラの変化はこけおどしなので吠えるだけだが、十人からの用心棒に囲まれた清。降り頻る長雨の中、庭の端まで追い詰められる。遂に用心棒の一人が清へ切りかかった。
「覚悟しやがれ!」
剣撃一閃。
「ぐ、ぐあああぁぁ。や、殺〜ら〜れ〜た〜‥‥」
倒れたのは用心棒。返り討ちにされてその場に転がる。オーラエリベイションを使ったアルバートの熱演だ。
「畜生ッ! ぶっ殺してやる!」
「う、うひぃぁ‥っ!」
今度は本物の用心棒が襲い掛かる。情けない悲鳴を上げてでたらめに刀を振る清。だが男はその場でどさりと倒れた。実は影からシェリルが魔法で援護しているのだが、お調子者の清はすっかり自分の実力と勘違い。
「見たかじゃん? これが俺の真の実力だっぜ!!」
刹那。どこからともなく煙が辺りを包んだ。ネージュの合図で仲間達が動く。この間に清を逃がし、後は偽清が片をつける。視界の利かぬ中、用心棒に紛れた鷲落と実は町娘に化けていた伝助が敵の頭数を減らして舞台を整える。そして真の叫び声。
「奥義・挑転自護魔!」
二刀の回転が煙を吹き飛ばし、そこに立っていたのは。
「「「大黒屋、観念するんだっぜ」」」
清へ変化した香佑花とモンド。そして調子に乗って逃げなかった清の三人。仰天する大黒屋、偽清も同じく仰天。香佑花がヤケクソで技をでっちあげて叫ぶ。
「秘技、反転分離攻撃・鏡【極】だっぜ!」
「ええい、何をしている。奴らを殺せ!」
「旦那様! 表に役人どもが‥‥!」
騒ぎを聞きつけたのか、屋敷へ迫る役人たち。いよいよ大詰め。屋敷の外ではネージュが最後の締めに取り掛かる。
「数多の雷光、闇に染まりし空を切裂け。天を焦がし地を揺るがし力を示せ。舞え我とともに。刹那。天地は我らのもの!」
ネージュが手を振り下ろしたのと同時に、黒雲から一筋の稲光が庭の木を直撃した。轟音と閃光。
「今だ清、クリアラ、裏口から逃げるぞ!」
「「「分かったぜ真、ずらかるんだっぜ!」」」
○終幕
ででん!
いよいよ大詰め。捕えられた大黒屋はお白州で天下の裁きを受けることに。
ででででん!
「あくまでも白を切り通す気じゃんか?」
清が逃げた後、大黒屋の背には「この者、人買い犯!」と書かれた短冊が張ってあり、役人は大黒屋を白州へと引っ立てた。まるで放浪の天才画伯の手で描かれたような癒し系タッチの貼り絵はモンドのお手製だ。
「はて。知りませんなあ。何より証拠が何もないではありませんか」
「意義あり!」
バーン!
「遊び人の清が証人なんだっぜ!」
(お約束の展開なので中略)
「おうおうおう!いい加減にするんだっぜ!この悪党ども! あの日あの夜あの場所で!見事に彫られた桜吹雪を、さか見忘れたとは――言わせねぇンだっぜぃ!」
「まさか‥‥その間違った桜吹雪の刺青と、それに何よりちょっとありえないその口調は‥‥!」
「市中引き回しに上、打ち首獄門!」
でででで、でん!
これにて、一見件落着!!
事が終わって。
「しっかし、清のヘタレっぷりは何とかならんもんかね実際」
「どんな大人物かと期待していたが、あんな小者のために道化を演じる羽目になるとはな」
真ら冒険者は城で一息ついている。アルバートも随分と落胆した様子だ。
「アレを矯正させる何かいい手でもないものか‥‥」
「いっそ義侠塾に預けちゃどうだ? 一から侠に叩き直してやるぜ」
さて、事のあらましはモンドの手で喧伝され、事件は金山の清さん伝説の一つとして大田界隈へと広まることとなる。伝助も
「大変でしょうけど、これからも頑張って下さいやし」
瓦版には、クリアラの手でジーザス教の広告もこっそり片隅に載っている。江戸の下町教会で培ったノウハウを活かして金山でも布教に臨む心積もりだ。
「この大田でも信者を獲得するのですよー。はわー」
ちなみに大黒屋の踏み込まれた現場へも、こっそり聖書を置いていったりとさりげないアピールも忘れない。そんな中、当の清はと言うと。
「いやー、巧くいってよかったんだっぜ」
大して働いてもいない癖に城で贅沢な料理にありついていた。食後は、診療所から来たサラ・ディアーナが膝枕をしながら魔法で傷を癒したりと、至れり尽くせり。
「こんなに怪我して‥‥頑張ったんですね清さん」
「えへへへサラちゃーん。もっと褒めて〜」
その隣にはシェリルが侍り、大層ご機嫌の様子。でれでれの清の耳元へシェリルがそっと顔を寄せる。そのまま耳たぶを甘噛み。そっと囁く。
「ご褒美よ。今日はおつかれさま♪」
〜次回予告〜
米問屋へ強盗が押し入り、一家全員が惨殺された。翌日、呉服屋の番頭平助が自首したことで事件は解決を見る。だが何か裏があると調査を始めた清さん。事件を調べ直す内、そこには同じく事件を嗅ぎ回る謎の影が――。次回、『キヨさんvs女ねずみ』、乞う御期待!