【上州騒乱】街作んだケド意見ある奴いる?

■ショートシナリオ


担当:小沢田コミアキ

対応レベル:フリーlv

難易度:易しい

成功報酬:0 G 97 C

参加人数:10人

サポート参加人数:10人

冒険期間:06月14日〜06月24日

リプレイ公開日:2006年06月25日

●オープニング

●松本清、上州に立つ!
 奥多摩の薬売りの出身である冒険者、松本清。清は上州の地で叛主・新田義貞へ戦いを挑み、これに勝利した。新田方最強部隊・四天王筆頭の篠塚伊賀守を下し、金山城を見事攻略。遂には源徳の後ろ盾を得て金山城大田宿の代官へと就任する。
「俺が城主となったからには、城下町の大田宿も大きな街にしてみせるんだっぜ! 安心するじゃん? 俺は上州の英雄・松本清! みんな、俺についてくるんだっぜ!!」
 こうして清の街作りがスタートした。んだけど。その実態はただのヘタレ。冒険者達に苛められながらも神輿兼使いっ走りとして日々慌しく街作りに従事している。
「清、南のキヨシ城の外装が出来上がったから」
「いつまで朝飯食ってんだ清! 急いで作業に取り掛かろうぜ」
「‥‥ちょっと待って頂けませんか」
 焼き魚を食べていた清は柄にもない台詞で冒険者を呼び止めた。箸を止めると顎に手を当てて神妙な顔で俯いてみせる
「その言葉遣いはどうにも頂けない。ワタクシはあくまでも金山の代官ですよ? せめて人前では敬語を使って頂かないと」
「誰だー、清に進化の干し魚食べさせた奴ーー!」
 キヨシは『優れた清』に進化したらしい。
 ●優れた清 成長:?
 清です。飼い主と他人の見分けがつきます。冒険好きの飼い主ならば、犬並の忠誠心を見せます。


●由良具滋は静やかに考える
 松本清率いる反上州連合が金山を新田軍より解放し、薬売りから身を立てた清は遂に金山の城主となる。だが、英雄物語の裏側はそう単純な話ではない。
 江戸の源徳家康はただちに清へ後詰の兵500を差し向けた。事実上、金山城大田宿の支配権は、圧倒的軍事力を背景に源徳方へ握られたのだ。これに対し、清の腹心である由良具滋はただちに一計を講じる。度重なる支配者の交替による民の政治不信を背景に、傀儡の城主と執政として、清と由良を立てるという策だ。連合は大田界隈の侠客組織と繋がりを持っている。連合の長である清を城主の位置に据えることで裏社会への影響力を確保し、土地の名家である由良家が執政となることで民の信頼を得る。
「首の皮一枚。今はまだ命脈が繋がっただけだが、このままでは――終わらぬ」
 大田の実権を握る源徳。そして連合を束ねる張子の虎、清。両者の間に渡された架橋は、たちまち踏み外してしまいそうに危うく細い。
(「現段階では我らが動く足場すら固まってははおらぬ。まずは力を蓄えねば‥‥」)
 由良政策の目玉は楽市楽座。
 だが、その為には乗り越えねばならぬ問題がある。一つは金山の治安。上州全体が戦で疲弊し、治安も悪化している今。行商人達も好んではこんな僻地へは来まい。そして二つ目は金山に既得権を持つ大田宿の商人達。彼らにメリットのないままでは民の信頼を失う結果となる。
「最低限、解決せねばならぬのがこの二点か」
 前者は自警団の組織で対策を立てる予定だが、計画の細部は白紙のままだ。後者は江戸から老舗を誘致するなどの手を考えているが、こんな田舎へ出店する店舗の当ては今のところ一つもなかった。そもそも根本的な解決には遠い。大田は江戸からの大きな街道からもそれており、交通の便が悪い。江戸への交通手段の獲得は急務。だが、その方途も資金もない。
 壁はまだまだ分厚いままだ。


●轟!義侠塾!!
「ワシが義侠塾塾長の雄田島である!!」
 金山に大音声が響き渡った。彼は武蔵国に私塾・義侠塾を構える塾長。武蔵の義侠塾舎では、この男の下で益荒男たちが日々真の義侠を目指して過酷な教練による研鑽を積んでいるという。
「塾長! 我らが悲願、義侠塾上州分校の開校の手筈、整っております!」
「うむ、大儀であった」
 鷹揚に頷き、雄田島は八王子山を見上げた。そこに聳えたつは風雲キヨシ城。先の連合兵の訓練でハリボテの城が出来上がっている。
「塾舎としては問題ナシ。うむ。これより我が義侠塾は金山分校舎、キヨシ城の建設に取り掛かる! ただちに塾生を呼び寄せい!」

●今回の参加者

 ea0270 風羽 真(36歳・♂・浪人・人間・ジャパン)
 ea0452 伊珪 小弥太(29歳・♂・僧兵・人間・ジャパン)
 ea1274 ヤングヴラド・ツェペシュ(25歳・♂・テンプルナイト・人間・神聖ローマ帝国)
 ea6381 久方 歳三(36歳・♂・浪人・人間・ジャパン)
 eb0569 小 道具(35歳・♀・武道家・ハーフエルフ・華仙教大国)
 eb0579 戸来朱 香佑花(21歳・♀・忍者・人間・ジャパン)
 eb1148 シャーリー・ザイオン(28歳・♀・レンジャー・人間・イギリス王国)
 eb2743 ヴェルサント・ブランシュ(36歳・♂・バード・エルフ・イギリス王国)
 eb3751 アルスダルト・リーゼンベルツ(62歳・♂・ウィザード・エルフ・フランク王国)
 eb3859 風花 誠心(32歳・♂・僧侶・人間・ジャパン)

●サポート参加者

風霧 健武(ea0403)/ ラン・ウノハナ(ea1022)/ レゥフォーシア・ロシュヴァイセ(ea6879)/ フェルシーニア・ロシュヴァイセ(ea6880)/ 仙 書文(eb0190)/ エルグ・ラム(eb0259)/ バーグ・バーボン(eb0261)/ エーディット・ブラウン(eb1460)/ アルディナル・カーレス(eb2658)/ エアニ(eb5014

●リプレイ本文

 金山の政治に早くから関わっていたアルスダルト・リーゼンベルツ(eb3751)らの他にもシャーリー・ザイオン(eb1148)ら新たな人員を迎え、冒険者達は大勢の仲間達に見送られて江戸を発った。
 金山までは江戸から北へ伸びる大きな街道を進み、途中で支道へ逸れて山中を数日。上野の南端に位置するため距離はそれ程ではないが、途中からは整備された街道ではなくなるため徒歩では中々厳しい道中となったようだ。ヤングヴラド・ツェペシュ(ea1274)ら、一行が金山城入りしたのは二日目の朝のことであった。
「むむ〜、前回は歓楽街建設を一応止められたであるなぁ。ま、先は長いのだ。じっくり腰を落ち着けてやるのだ。どうせ人間の煩悩は消えないものゆえ、歓楽街の需要はあるの。かの高名な義侠塾とかもやって来るであるし、キヨシ城建設も進むのであるな!」
 金山には雄田島の召集で義侠塾生が集いつつある。弐号生の久方歳三(ea6381)も上野入りしていた。
「‥‥今後の日ノ本の情勢は不透明でござる故、有事の際一人でも多くの益荒男が必要、義侠塾の必要性はいやおうなしに高まっている‥‥と云うのが拙者の所見でござる」
 京に滞在していた久方は畿内を震撼させた五条の乱をその目で見てきた。九尾の災禍は去ったとはいえ、日ノ本に騒乱の芽は絶えない。
「京都見廻役雇か、でかしたぞ久方弐号生。その評価に甘んずることなく、一層に励むが良い」
「押忍、塾長殿! ごっつぁんです!」
 同輩達も塾長へ金山分校設立の提案をした風羽真(ea0270)を始めとして続々と金山入りしている。
「さぁーてと、遂に義侠塾も分校ができるまでになったか‥‥感無量だねぇ。この勢いで何時かこの日ノ本全域に、義侠の旗を翻そうじゃねぇか」
 城へは伊珪小弥太(ea0452)が塾長からの挨拶状を持って訪問している。
「世話になるからにはこういうのはきちっと筋通しとかねえとな! 義侠塾の名折れだぜ。ってえ訳で、義侠塾弐号生伊珪小弥太、地頭殿にお目通り願うぜ」
「ご足労忝い。清殿は多忙ゆえ、この由良が承ろう」
 金井宿の街作りに忙しい清に代わり、執政の由良が書状を受け取って分校建設の正式な許可を下した。連合の実質的な指導者であるこの由良の下では、冒険者達が新政策の目玉である楽市楽座について意見を交換している。
 戸来朱香佑花(eb0579)は、清直属の精鋭部隊・隠密血風衆として連合設立当初から金山攻めに渡って尽力した、清の側近中の側近。この金山の新政策にも早い段階から取り組んでいる城内の中心的な人物だ。
「‥座の廃止はどうあっても動かせない。なら、既存の商人達には実を奪う代わりに名を与える」
 組合としての実利を解体する代わりに、新たに肩書きを用意する。香佑花はそれを仮に『金山商人連盟店』と名づけた。
「なるほどの」
 同じく座を連ねているアルスダルトが頷いた。
「理に適っとる。となると、肩書きに見合う特権を何にするかぢゃが――」
「‥金山城が買い上げる物資は、全て加盟している店としか取引しない。これで、行商人にはない特権になる筈」
「ぢゃが、の。それだけでは足らん。いっそ税の免除に踏み切ってはどうぢゃ?」
 破座による独占販売権や不入権の喪失と引き換えにするには、城との取引独占だけではまだ不釣合いだ。だがこれに非課税権も上乗せしては――?
 アルスダルトが提示した期間は20年。
「ここは思い切って長めに設定ぢゃ。旨みを持たせねば釣れるものも釣れん」
 視線を移すと、由良は思案げな顔で俯いている。一頻り考えを巡らせると彼は顔を上げて小さく頷いた。
「税に関しては我らの一存では何ともならぬ。だが、金山百年の発展を考えればこれは是が非でも通さねばならぬ策。私が源徳候の側の代表者の説得に当たってみよう」
 これに源徳寄りの考えを持つアルスダルトは内心でほくそえんだ。
(「これで金山と源徳軍は経済の面からも切り離せぬようになろう。新田寄りの態度を示す商人の懐柔にも使えるというものぢゃ」)
「目処はたったのぅ。ぢゃが事案はまだ山積みぢゃぞい」
「これからも頼りにしておりますぞアルスダルト老。だがその前に――」
 言葉を区切ると、由良は部屋の隅で会議を窺っていた小道具(eb0569)へ視線を移した。
「これは久しいな。私に何か御用かな? お話を伺おう」
(「‥‥清君、自分は戻ってきたっす。裏方組として、一人の想いを寄せる女性として‥‥もう、今度は逃げないっすよ」)
 真剣な面持ちの小を察した由良が人払いをすると、漸く彼女は口を開いた。
「犠牲を払いながらも連合は今や源徳の傀儡っす。由良殿はどう思うってるのかきっぱり言って欲しいところっす」
「腹を割って話すのもやぶさかではないが」
 そうもったいぶって見せると、由良はこう切り返した。
「清殿の側近の一人である小殿は、どうお考えなのか」
 小が言葉に詰まるのを見ると由良は席を立とうとする。
「待って下さいっす。自分達はまだ手を取り合える、そうは思わないっすか?」
 成り行きのせいとはいえ清は上州の情勢を形作る駒の一つとしてこの金山にあるのだ。
「自分達は清君を、由良殿は上州のことを」
「利害は一致していると?」
 小が頷く。
 内にも外にも敵は多い。劣勢を跳ね除けるのは困難だが、ひとまず由良はその力になるだろう。
(「‥‥でも、張子の虎をホンモノに変えるのは、自分達の仕事っす」)

 シャーリーが連合の兵を預かって界隈の盗賊討伐に赴いている。
「この分なら日暮れ前には城に戻れそうですね」
 ヴラドや他にも何人かの仲間が同行したが、金山攻めの以前から何度となく連合が兵を差し向けたことで、少なくともこの大田宿近辺では殆ど野盗の被害は最近では見られなくなった。塒まで突き止めて根こそぎにしてやろうと意気込んでいたシャーリーからすれば少々拍子抜けである。
「‥‥もっとも、大田界隈の治安をよくしても、江戸からの途上が危険なままでは根本的解決にはならないんですけどね。かといって安易に金山の外へ兵を差し向けるわけにもいかないですし」
 清自らも出陣して討伐に乗り出したと噂に流れ始めたことで、野盗は金山領内を避けて活動の場を移し始めたようだ。領内の治安回復には成功したが、近隣の治安が悪いままでは不安は拭えない。ヴラドは連合と繋がりのある裏社会の連中へ働きかけ様としたが、一部盗賊上がりの者もいるが殆どは侠客筋で、そちらとのコネクションはない。それも新田統治時代に酷く取り締まられ今は力を弱めているという。
「清殿の町は皆さんの力を必要としているし、何とかこの機会を有効活用して欲しいものなのだ」
 大田の街ではヴェルサント・ブランシュ(eb2743)が商人達へ働きかけている。
「こんにちは。湿気の酷い季節になりましたね。この間もオニギリにカビが生えてしまって‥。ふふ、すみません。関係のない話でしたね」
 楽市楽座という新しい政策にはまだ商人達も不安を覚えているようだ。
「確かに、商売相手は増えるでしょう。なにせ、賦役を免除されるわけですからね。でも、そのような近視眼的な見方では物事の本質は掴むことは出来ません」
 人が動く、と言うことはモノ・カネが動くことに他ならない。めぼしい特産物もない今の金山が潤うには人を動かすしかない。市が立ち、人が集れば、結果として各地の特産物も流通する。
「いかがですか? あなた方の手で、この町を変えてみませんか?」
 事実、既にこの街は変わり始めている。特に豪腕キヨシ村として再始動した金井宿は、建設中のキヨシ城の膝元として急速に発展を見ていた。
「キヨシ城建設の御助力、誠に感謝いたします」
 建設責任者である風花誠心(eb3859)は高台で雄田島塾長と面会していた。
「塾舎の件ですが塾生からの申し出が有り、キヨシ城の離れとして建設することになりました。設計図に関しては江戸の知人に頼んでいますのでしばしお待ちを」
「うむ。期待しておる。キヨシ城完成の暁には我が義侠塾生にも禍涯呪業(かがいじゅぎょう)として街作りと治安維持へ取り組ませよう」
 ただ問題なのは離れといっても適した場所が見当たらないことだ。急峻な岩山である金山には幾つもの尾根に跨って石塁が築かれて城郭群を成している。伊珪は真と共に八王子山近辺を歩き回ったが、それなりの塾舎を構えるには無理がある。山中は諦めて麓を選ぶしかないが。
「‥‥まさか人里の中に作る訳にもなあ?」
「だよなあ‥」
 伊珪が遠い目をして溜息をついた。義侠塾の厳しい教練を思うに、街中に塾舎を構えればどんな反応に遭うことか。キヨシ村を回った印象では今の所は住人からも歓迎を受けているようだし、余計な軋轢は生みたくない。
「しかし城の中が教練場じゃあ狭すぎるのも確かだぜ。早いトコどーにかしねえとな」
 だがその点に関しては既に誠心が対応策を講じていた。
「キヨシ城は、塾生の修練の場も兼ねた阿斗落所として建設する運びです」
 古代華国は漢の時代、劉備が配下趙雲は赤子の阿斗を抱え敵地の中を一騎で駆け抜けた。無事主君の嫡子を守り通した趙雲は武人の鑑と讃えられた。このことから誰も成し得ぬ数多の試練を抜けた場所を阿斗の落ちた所、阿斗落所と言うようになり、次第に試練そのもののことを指す言葉となったという。
「阿斗落所とは面白き趣向。よかろう。我が義侠塾も全面的に協力を約束しよう」
 どのみち少なすぎる予算ではまともな城郭は建てられる筈もない。依然として城はハリボテのままだが、城郭跡と地形を利用する形で、義侠塾の教練をモデルとした教練施設が建設される事となった。
 すぐに江戸から義侠塾舎兼阿斗落所を取り入れた設計図も届き、作業が始まった。誠心が金山の商人達から資材を買い上げ、現場へと搬入する。久方も愛馬そーじを連れて作業を手伝った。
「地元の皆さんとも協力して、大田宿の発展の為、尽力する所存でござるよ」
「俺達の学び舎だからな。立派なモンをこしらえねえと先輩方に顔向けできねえしなあ?」
 勿論、真や伊珪も人足として力仕事に精を出している。
「人手は足りねーようなら壱号生とか若いモン連れてくるってのもアリだよな。ついでに資材を運ぶのに適した道も作んねーと」
 領内の道路は新田時代に整備が進んでいるが江戸とを直接結ぶ大きな街道がないのは苦しい。既存の街道の拡大を図っても、そもそも領内に直接江戸へ通じる街道が走っていないのだから連結は不可能なのだ。
「拙者ら義侠塾の手で街道整備をとも思ったんでござるが、こればっかりは如何ともし難いでござるよ」
「やはりこの件は肝心ぢゃろうの」
 そこへひょいと顔を覗かせたのはアルスダルト。
「まあ、わしに腹案があるでの。どれ、地頭殿の説得にでもいくとするかのぅ」

 同じ頃。清は本丸天主で相変わらず酷い目に遭わされている。
「‥‥清、その喋り方、キモいから」
「ワ、ワタクシが口調が奇異とは、し、失礼な。撤回を要求します」
 何とか元に戻そうと香佑花が100貫はんま〜でドツき回したが効き目は見えず、香佑花は最後の切り札を投入する。取り出したのは禍々しい悪臭を放つ魚。箸で摘んで遠ざけながら清へ指しだした。
「キヨシ、‥‥とりあえず口開けて。今日の為に作った特製の『退化の干し魚』だから」
「ほ、干し魚って‥‥カビだらけじゃなですか。しかも『干し』とかいってる癖に半分液化してるし‥!」
「‥‥いいから」
 有無を言わさず香佑花。魔法少女の杖とローブでサクっと動きを止めると、口の中に直接放り込んだ。瞬間、口と鼻を塞ぎ、無理やり飲み込ませる。清は顔を真っ赤にして苦しそうにした後、表情を真っ青に変え、やがて蒼白となると土気色になった。
「まままま不味いンだっぜ〜!!!」
「やっと戻ったっすね。そのヘタレっぷりこそホントの清くんっす」
 現れた小がコホンと咳払いし、真剣な表情になる。
「‥‥自分、清君の事愛してるっすよ。だから、ずっとこのまま傍にいたいっす‥‥‥‥‥‥‥‥‥自分は、一生を清君のために捧げるつもりっす。貰ってくれますか‥?」
 不安げに揺れる瞳で小が見詰める。が、以外にも清はあっさりと答えを出した。
「勿論だっぜ」
「き、清くん。嬉しいっす。二人で幸せに――」
「やったっぜ。一人目げっとだぜ」
「「一人目‥‥‥??!」
 この後清がどんな目に遭ったかは置いておくとして、清がそんなことをしている間にも仲間達は着々と仕事を進めている。盗賊の討伐を終えたシャーリーは金山の山麓へ入り、植生調査を行って来た所だ。
「見込みはあり、といった所でしょうか」
 専門家ではないシャーリーでは詳しいことは分からなかったが、領内の森林資源は木炭への加工が可能だ。木工細工については現段階では特にめぼしい産業ではないが、地頭が城を上げて取り組めば或いは。だがまずは専門家の意見を待って、といった所か。
 金井宿の方でも動きがあった。金山に一大歓楽街を作りあげることを目論んでいたヴラドだが、それは思わぬ形で実現することとなったのだ。夜の金井に煌びやかな灯りが点る。街の外れの掘っ立て小屋に掛かった看板には『複合型宿泊施設「歓楽街」』の文字。ヴェルサントが
「手弁当で日帰りキヨシ城なんてのはさみしいですからね。キヨシ城の受付所として来場者を御持て成し致しましょう」
 一軒でも歓楽街。かなりハイセンスな名前である。
「飲んで泊まれて熱い夜を。キヨシ城はあなたの御来城をお待ちしています」
 この『歓楽街』にはキヨシ城の受付の他、伊珪の手で義侠塾広報課も置かれることとなった。入塾希望や問い合わせなどもここで受け付ける。
「という訳で、分校新入生第一号は清殿で決まりにござるな」
「絶対にいやなんだっぜーーー!」
 が、既に真が入塾願いを勝手に書いて提出した後。
「‥‥なぁに、真の侠になった暁にゃ、そりゃもう別嬪さん達から黄色い歓声が飛び交うくらい大モテだぜ?」
 などと耳元で囁くと、すっかり清は煽てに乗った様子だ。さて、その真の働きかけで、自警団には連合兵から推薦者を出していたのだが。計画として上がりはしていたものの具体的な事は何一つ決まらず、立ち消え寸前になっていた。その代わりにアルスダルトが取り組んだのは街道問題だ。直接の街道が引けぬなら移動時間を短縮するしかない。江戸までの宿場に駅を設けようというのだ。
「問題は金と馬ぢゃな。それから中継点に拠点となる宿も一つは確保した方がよいぢゃろ。武蔵のどこかによい宿場があればよいのぢゃがのぅ」
 アルスダルトはその才を認められ、清の補佐役として政治顧問の職を与えられた。冒険者を中心に金山は着実に復興しつつある。これは噂に乗って近隣諸国へ流れるだろう。戦を忌避した民草も上野へ戻るかもしれない。金山の街作りは次のステージを迎えようとしていた。