ドキッ☆ビキニだらけの水泳大会!

■ショートシナリオ


担当:小沢田コミアキ

対応レベル:フリーlv

難易度:易しい

成功報酬:4

参加人数:10人

サポート参加人数:1人

冒険期間:07月12日〜07月17日

リプレイ公開日:2006年07月14日

●オープニング

 もうすぐ夏本番。夏といえば浴衣美人。だがそれじゃあありきたりすぎる!
 と、言う訳で。
 大衆居酒屋・竹之屋後援、納涼イベント「大川水泳大会」開催決定! 冷たい川の水に体を浸し、火照った体をクールダウン。水練で体力を増進して夏バテを乗り切るのだ! 催しでは競泳大会や日焼けコンテスト、水着美人コンテストなども行われる上、参加は無料だ!
 しかも!
 今大会には水も滴る薄着の美人が大集合。胸と腰を布で隠しただけの半裸の美女が大川を遊泳するために江戸中から集う! 
 集え男たちよ!
 水着美女たちと共に、来るべき夏を謳歌するのだ!!



    ・
    ・
    ・
「って、男しかいねええーーー!!」


 そして当日。
 会場には、むわんと汗臭いにおいが立ち込めていた。噂を聞きつけ、会場に集った男、男、男‥‥! だが話に聞いていた半裸の美女たちなど一人も見当たらない。
 そもそもこの時代は娯楽・行楽としての水浴は定着しておらず、女性が人前で肌を見せて泳ぐなど考えられない時代だ。主催者側も江戸の呉服屋の梅之屋へ「水着を商売にしてはどうか」と持ちかけたのだが軽くあしらわれ、華やかなイベントのハズが一気に漢祭りへと変貌したのであった。
 参加者の一人が血の涙を流しながら拳を振り上げた。
「こうなりゃヤケクソだ! 俺たちだけでも泳ぐぞっっっ!」
 飛び込みざまに大川へ派手な水柱が立ち、それを狼煙に次々と男達が川面へと飛び込んだ。大川はさながら、あれ、なんだその。産卵期に川をさかのぼった鮭がぴちぴち跳ねてるみたいなヤツ。これが皆すべて半裸の美女であったなら男たちには大変嬉しい光景であったろうが、実際に水辺で跳ねているのが褌一丁の男どもなので、あまり夏場の暑い盛りに見たいものではない。でも催しは断行するよ。
 という訳で観客も来る分には拒まない。もっとも、男ばかりの水着コンテストや日焼けコンテストを見たいなら、ではあるが。

●今回の参加者

 ea0176 クロウ・ブラッキーノ(45歳・♂・ウィザード・人間・フランク王国)
 ea0270 風羽 真(36歳・♂・浪人・人間・ジャパン)
 ea0452 伊珪 小弥太(29歳・♂・僧兵・人間・ジャパン)
 ea0861 緋邑 嵐天丸(25歳・♂・浪人・人間・ジャパン)
 ea6381 久方 歳三(36歳・♂・浪人・人間・ジャパン)
 ea8917 火乃瀬 紅葉(29歳・♂・志士・人間・ジャパン)
 ea9861 山岡 忠臣(30歳・♂・志士・人間・ジャパン)
 eb2655 旋風寺 豚足丸(27歳・♂・忍者・人間・ジャパン)
 eb3797 セピア・オーレリィ(29歳・♀・神聖騎士・エルフ・フランク王国)
 eb4757 御陰 桜(28歳・♀・忍者・人間・ジャパン)

●サポート参加者

タケシ・ダイワ(eb0607

●リプレイ本文

●ウホッ♂男だらけの水練大会
 会場を訪れたクロウ・ブラッキーノ(ea0176)は、褌を締めただけの格好で素肌の上に豪奢なマントを羽織り、そしてなぜか靴だけは履いたままという、変態的、もとい個性的ないでたちである。残念ながら世の凡人たちには到底理解不能だが、その立ち姿は既に、極一部の好事家たちの生ける伝説といってもいいかもしれない。
 汗の臭いで咽返る様な会場に、熟成しきったブルーチーズの如きハードでディープなフェロモンを散布しつつ、好みの美少年や偉丈夫に舐めるよーな熱視線を投げかけてはウホッ。じゃなかったウフッ。そんな会場の隅では旋風寺豚足丸(eb2655)が竹之屋の屋台で昼時前からひたすら飯を掻き食らっている。
「竹之屋の味は初めてござるが、なかなかいけるでござるゾ。おかわりもう3人前お願いするでござる」
 ぼっちゃり系?の豚足丸は食欲に目が眩んでか、「参加者は弁当食い放題」との限りなく嘘っぽい噂にアッサリ釣られての参加だ。参加者分の弁当は無料サービスだが、オカワリ分は当然自腹である。
 セピア・オーレリィ(eb3797)は会場を眺め渡して、なかば感心した風に溜息を吐いた。
「‥‥よくも集まったわねぇ、男ばっかり、こんなに。ていうか途中で異常事態に気づきそうなものだけど。まあ面白いからこの方がいいんだけどね」
「っつーかさ‥‥」
 他のバイト店員と一緒に屋台で店番をしていた山岡忠臣(ea9861)が、深く溜息を吐く。
「いきなり挫折したぁぁぁ! ‥‥いや、目を閉じると際どい衣装のお千ちゃんが俺を励ましてる姿が‥‥」
 末期幻覚を浮かべながらガクガクしていたが、勢い立ち上がった。
「くっ、言い出しっぺが放り出したとあっちゃあ男が廃る! せめて体裁だけでも!」
「賑やかにございまするね、紅葉こういう雰囲気は大好きにございまする」
 火乃瀬紅葉(ea8917)は一見して可憐な乙女にしか見えないが、こう見えて実は義侠塾の塾生。今日は教練があると聞き、気合を込めて勝負褌を締め、なぜだか胸にはさらしを巻いたいでたちである。ともかくも人は集った。後は勢いだ。忠臣が声を張り上げる。
「これは『フンドシ祭り』と言って、大騒ぎする事で厄落としと健康祈願、商売繁盛を願う新しい行事なんだぜ! その証拠にホラ、みんな何かを吹っ切ったような笑顔で大騒ぎだ!」
 といって指した先にはクロウの押し殺したような不気味な笑顔。皆気味悪がって遠巻きに見ているだけだ。
「皆サンが近寄ってこないのはインテリヂェンスな私が真剣な顔をして『カッコよく蚊を倒す方法』という難しいテーマについて考えているからデショウ」
 気を取り直して忠臣。
「‥‥とにかく勢いでのりきるんだ! んじゃあ水着美人コンテストを始めるぜ!」
 その会場では、なぜだか年頃の娘が一人混じっている。御陰桜(eb4757)だ。
「美人コンテストなんて聞いたら参加しないと女が廃るってモノよね。勿論、優勝も頂くわよ」
 よく事情を知らずに紛れ込んだらしいが、即刻係りの者がつまみ出そうと駆け寄った。
「風紀の関係上女性の過度な薄着は禁じられてますので‥‥」
「はぁ?女が参加しちゃダメってどういう事よ。はぁ?このままイベントが盛り上がらなくてもいいの?」
 言うが早いか、桜は舞台へ飛び出した。事情は飲み込めたので流石に半裸の姿ではなく、来ていた浴衣姿でのエントリーだ。
「水着がダメって言うのならなら浴衣ならどう? これなら文句ないでしょ。あたしは桜、よろしくね」
 と、投げキッス。桜のメリハリの取れた体のラインは浴衣の上からでもはっきりと分かる。会場中の男から思わず大喝采があがる。もはや微妙に水着コンテストでもなんでもなくりつつあったが、桜に続いて豚足丸ら残りの出場者も川辺の舞台へとのぼった。
「ふっふっふ、モッチリ柔らかい霜降り肉のような拙者が一番美味しいのでござる」
 たぷたぷの腹は都合五人前超を平らげたせいでより一層大変なことに。褌からも肉が溢れんばかりだ。
「まさに優勝候補筆頭とは拙者の事でござるな」
 そんな出場者の中にはなぜか紅葉の姿もある。
(「さすが義侠塾の水練、何やら勝手が違うようにございまするね、準備体操でございましょうか?」)
 係りの案内のままに促され、巫女装束に千早の姿にされて紛れ込んでしまったらしい。促されるまま舞台上をぐるりと回り、最後に決めポーズ。観客席に向かって背を向けると、首だけで振り返ってニコリと微笑む。桜独走かと思われた中へ突如現れた強力な対抗馬に、再び会場中から喝采があがる。
「かっ、会場中から、何やら邪な視線を感じる気がいたしまする‥‥」
 慌てて係りの者が止めに掛かるが。
「紅葉は男にございまする!」
 顔を真っ赤にして抗議する紅葉。そこへ。
「甘いぜ壱号坊!」
 会場傍の木の上に、ギラギラの太陽を背に立つ男が一人。マスカレードのシルエット。煌びやかなローブの隙間から覗くはレースの褌。
「あ、あれは!」
「伊珪先輩!」
 魔ー畏武‥‥痲ー威鵡‥‥ 魔ー畏武‥‥痲ー威鵡‥‥
「あの技はまさか‥‥!」
「地が呼ぶ、風が呼ぶ、空が呼ぶ!義侠を見せろと人が呼ぶ! そんな古今東西、森羅万象、魑魅魍魎の要望に応え、義侠塾弐号生・伊珪小弥太(ea0452)、真の熱い魂まとってここに見参!存分に見さらせ!!」
 とうっ、と掛け声も勇ましく伊珪が舞台へ着地する。汗をほとばしらせながら披露するのは、暗黒流奥義、魔畏武痲威鵡(まいむまいむ)の形。義侠魂を暑苦しく燃え上がらせて、一足先に頭の中が夏真っ盛りでの登場だ!
 伊珪がローブを投げ捨てた。褌をなびかせ腰を入れて決めポーズ。左手を地にかざし、もう一方は天を指す。
(「き、決まったぜ‥‥」)
 本日義侠塾では大川の源流から海を目指す過酷な遠泳が行われている。しかもゴール地点までにいちどでも川底に足をつけようものなら、その場でまた泳いで引き返しスタートからやり直しという凄絶なルールである。上流から塾生が大挙して下ってきたのだが、行く手には多数の男たち。あえなく立ち往生となった。
 すいすいけろりん姿の久方歳三(ea6381)が岸の賑わいへ目を移す。
「久方ぶりの本格的な鍛錬、竹之屋も粋な計らいをしてくれるでござるな‥‥」
 なんだか微妙に勘違い。気を良くした久方はここで新技を披露した。

 座・我留怒・離魅鉄怒罵阿痔四(ざ・わーるど・りみてっどばあじょん)

 下らない洒落の力で時を止める秘技奥義、座・我留怒。その能力を限定することで時を止めずに涼しさ、ていうか寒さだけを得る事が出来るという、夏向きの妙技である。

 どこからか手斧を取り出すと、川で冷やした真桑瓜を手に取って一言。
「おのを用意したところで、おのおの方、準備は良いでござるか?」
 ちなみに、この技の最大の欠点は、失敗すれば相手の怒りを呼び逆に暑さを増してしまうことである。
「すっこんでろー!」
「帰れー!」
 観客からはブーイングの嵐。久方がガックリ肩を落とす。
「カエルだけに、すぐ‥帰るでござる‥‥」
 と見せかけて座・我留怒!
 その隙に密集地帯を泳ぎぬけようと試みるが。
「歳ちゃん感激ぃ〜っ!!」
 あえなく男たちに揉まれて哀れ水中へと消える。その様を同じく塾生の風羽真(ea0270)が立ち泳ぎしながら遠巻きに注意深く窺っていた。
「あの密集した中じゃ下手すりゃ接触して泳ぎがとまってしまいかねねぇ」
 突破力に長けた得意の回転必殺技・挑転自護魔も、水中では威力は半減以下。
「‥‥くっ‥こんな事になるんなら、逆立ちしたまま腕だけで回転力を得る『秘技:渦歩影螺(かぽえら)』も修得するべきだった‥!」
 その真の隣を、一匹の魚が涼しげに追い越していった。ごった返す大川を事も無げにスイスイとすり抜けていく。その様を瞳に映しながら、真ははたと気付いた。
「‥魚だ‥‥俺は魚になるのだっ!!」
 言うが早いか、頭の上にくくり付けていた衣服から『まるごといろこい』を即座に着込む。そのまま川魚のような身軽さで密集地帯を抜け、猛烈な勢いで海へと川を下っていった。
「流石だな真、俺も負けちゃいられねー! 俺の浸苦賂(しんくろ)を見せてやんぜ!」
「紅葉もお供致します! 準備体操(?)は終わりましたゆえ!」
 これに伊珪と紅葉が続く。水音が続けて二つ。川から伊珪が岸辺を振り返った。
「山岡壱号生! 教練の後は腹が減る、食いモンと飲みモンしこたま用意しとくよーに!」
「店のものなんで勘弁してクダサイセンパイ方(カクカク」
「景気よさそうねぇ、あたしにも奢って貰えないかしら?」
「桜ちゃんの頼みに答えてやりてーのはやまやまだが、最後までしっかり大会をやりとげねーとな。やっさんに、お千ちゃんと俺の仲を認めてもらうためにも! 次は表彰式だぜ」
 と、聞きつけたセピアが寄って来た。
「あら、それなら授与の役は私に任せて」
 コンテストを指を咥えて見ていただけで、このまま帰るのは味気ないと思っていた所だ。
「‥‥‥まあこれもここに集まった報われない男性たちの救済のため、ということで一つよろしく」
 忠臣へしなだれかかって耳元へ唇を近づける。
「お・ね・が・い」
「もちろんだぜセピアちゃん。やっぱ、可愛い女の子から貰った方がいいに決まってるしな!」
「ありがとう、それじゃ行ってくるわね」
(「これでもれっきとした聖職者なのに。我ながらちょっと悪女っぽかったかも」)
 内心でクスリと笑みを零すと、表彰台の前へ。
「という訳で、コンテストの結果発表を行うわ。がんばった人には私からご褒美よ。栄えある第一回水着美人コンテストの優勝者は、火乃瀬さんよ。『初代漢祭王者』の称号と、副賞の竹之屋お食事券と赤褌を贈らせてもらうわね」
「優勝って‥‥何胆威にございまするか?」
 続く日焼けコンテストでは久方が優勝を狙うも、すいすいけろりんのお陰で顔しか焼けておらずあえなく入選者なし。脱いでも凄くなかったようだ。ちなみに豚足丸は食べ過ぎで緩くなっていた褌が外れて失格。決まり手はモロだしとなっている。
「それから、艶やかな浴衣姿で会場を湧かせた桜さんには奨励賞として竹之屋のお食事券と副賞の竹之屋特製の水菓子を、今回一番暑苦しいパフォーマンスを魅せてくれた伊珪さんには『熱気(含湿気)の使徒』の称号をそれぞれ贈らせてもらうわ」
 こうして大会は終わった。クロウも腹一杯に吸い込んだ男達のスメルに満足したのか帰っていった。
「脳内会議の結果、デスをイチ推しという事で。ウフ」
 そして最終部門の水泳大会だが、入賞者は義侠塾生の風羽真。セピアからフンドシ大王が授与されようとしたが、勢い余って江戸湾から沖合いまで出てしまい行方知れず。猟師の網に掛かったところを救助されたとかされなかったとか。
 おしまい。