乙女の野望は彼方まで
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■ショートシナリオ&プロモート
担当:朧月幻尉
対応レベル:フリーlv
難易度:易しい
成功報酬:0 G 65 C
参加人数:6人
サポート参加人数:-人
冒険期間:12月25日〜12月30日
リプレイ公開日:2005年01月03日
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●オープニング
「ねえ、みんな。パーティーやらない?」
レートリット・ゲラルドが言った。
もちろん、授業が終わったあとだ。
「あ〜、それって良いじゃない。あたしも、参加する〜」
隣の席の女の子は乗り気で言った。
彼女の名前はチェン・ピシェット。人間の女の子だ。対して、レートリットはエルフの女の子。仲良しこよしの15歳。元気なお年頃である。
「楽しそうだからやるわ〜」
「じゃぁ、俺も」
次々とクラスメートが名乗りをあげてくる中で、レートリットは集まってきた皆に言う。先ほどバチルダ・レミントンが買い物に行くと言っていたので、それに便乗してパーティーを開こうということだった。
「どんなパーティー?」
「それはね、皆で持ち寄ったお菓子と夕飯をシェアして、聖なる日をともに過ごそうってやつよ」
「随分と真面目じゃない」
「なぁ〜に言ってるのよ。それは建前よ。まぁ、ふつうのパーティーだと思って正解。できれば誰かが演奏とかダンスとかして盛り上げてくれると嬉しいんだけど‥」
「あ〜、歌だったら任せて! あと誰か一緒に歌う人はいない〜?」
そう言って、名乗りをあげた少女が辺りを見回す。そうすると、同い年の男の子が手を上げた。
レートリットは小さな声で皆に言う。
「あと‥‥聖なる夜には気持が大事だと思うのよ」
「え?」
言われた意味のわからない皆は首を傾げた。
「だぁ〜から、意中の相手をこっそりと誘って最後に告白するの。自分の好きな場所で‥」
「な、なーるほど‥」
「気持が高揚した楽しい時にこそ、心からの言葉で告白したいと思わない?」
「び、微妙に説得はいってると思うけど‥‥言わんとしていることはわかるかも」
「楽しい学校生活なんだから楽しまなくっちゃね」
そう言ってレートリットは笑った。それにつられたようにチェンも笑う。
楽しいのは万々歳な学生としては是非とも参加して楽しむのが良いだろう。そう考えた生徒の何人かは同意の頷きをし、参加するといってきた。
「「じゃぁ、楽しみましょうね」」
異口同音に言ったレートリットとチェンは微笑んだ後、くるりと背を向けて皆にわからないようにニッと笑った。
他の皆には一切秘密だが、彼女らは同じ目的を心に秘め、ともに誓い合った同志なのである。そう、それは『人類補完ハーフエルフ化計画』
見目も麗しく可愛らしい、能力の高い種族(?)のハーフエルフを増やす事は、きっとこの世界を豊かにしてくれる事だろう。
そう固く信じている二人なのであった。
人間とエルフの生徒をいつか結婚に導いて、ハーフエルフを増やし、彼らが生き易い世の中を作るためならば彼女らは何だってやるだろう。
このパーティーは何より大事な記念日になる。そう思うと二人は笑いが止まらないのだった
●リプレイ本文
「じゃあ、何をするか決めちゃいましょ」
レートリット・ゲラルドは皆に向かって言った。
二人は美人の部類に入る。クラスでも、結構有名な二人組だが別な意味でも有名だった。
色々と変わったものに共感したりする、そう――クラスに一人は必ずいるタイプの『変わり者』なのだ。
さほど、授業に影響するような悪戯や質問を繰り返したりしないので、先生たちはあまり気にしてはいない。
「歌だったら任せて! あと誰か一緒に歌う人はいない〜?」
そう言って、名乗りをあげた少女が辺りを見回す。同い年の男の子が手を上げた。それを聞いたファム・イーリー(ea5684)はとっても元気な声で返事をする。
「あたし、歌を唄いまっす!」
とても明るくて、小さな彼女が大きな身振りで話す姿は可愛らしい。 制服からするとケンブリッジ魔法学校の生徒のようだ。
「あたしの歌のレパートリーをこれでもかと、お披露目するね♪」
「わぁ、ありがとう♪ 助かっちゃうわ」
チェンはにっこり笑って言った。
近くにいたスイフリィ・ハーミット(ea7944)はパーティーをしようという生徒が気になって覗き込みながら言った。
「この学園では、非常勤の教師を冒険者から雇い、本採用になると、研究室と研究費を支給してくれるという噂を聞いたのだが? さて、噂の真相は如何に、といった所かね」
「そんなの、生徒の私たちにはわからないわよ」
いきなり声を掛けてきたスイフリィの声に吃驚したレートリットは目を瞬かせながら言う。
「校長先生に聞いたほうが早いんじゃないかしら?」
もっとも適当であると思われる答えを言ったのはチェンだ。
「ってー言う事は貴方‥‥教師よね?」
レートリットの瞳がキラリ〜ン♪と光った。ターゲット・オン。狙った獲物は逃がさない。『おまけにエルフですよ、ラッキー☆』ってな感じでほくそえむ。無論、心の中だけで。
それを知らないスイフリィは質問を続けた。
「だが、一つ、疑問があるのだがね? パーティをするのに、報酬付きでパーティの参加者を募るものかね?」
多分、先ほどバチルダ・レミントンが買い物に行くと言っていたことに便乗してのパーティーなので、奢りと言う名の報酬をもらえるのだろうと思ったのだろうか。
レートリットは女の子。女の子というものは計算高いのがお約束。彼女もその例に漏れず、非情なほどに計算高かった。
レートリットとチェンは隣にいるエリス・フェールディン(ea9520)を見る。
彼女は錬金術のみを信じ、魔法を使うときは不満そうに使い、私的根拠をぶつくさ言う錬金術の教師だ。ハーフエルフ様なのだが、教師というカテゴリーに入った段階で二人の思考はスイッチ・オン‥‥だ。
「スイフリィ先生、お金貸していただけます? エリス・フェールディン先生も」
「「は?」」
「よく考えたら、私はケンブリッジの生徒ではないのですが、いいのでしょうか」
疑問に思ってエリスは言った。
「勿論ですよ。だけど‥‥買い出し用に出していただけないでしょうか? 心許ないの」
「しかし‥‥」
「だ〜いじょうぶですよぉ。今回のパーティーはボランティアも兼ねてますから、学校からも援助が出るの。でも、それまで時間が掛っちゃって‥」
そう言うことかと納得して二人は頷く。
学校側は出してくれるかも知れないが、ボランティアという事もあって募金を集めることだってありえるわけで。二人はそこらへんを加味していなかったようだ。レートリットは言葉巧みに言って二人から軍資金を巻き上げる。
「〜♪」
随分とご機嫌な様子で現れた人にちょっと吃驚して一同は振り返った。そこにはインデックス・ラディエル(ea4910)がいた。聖夜祭前なのでご機嫌なようだ。
「あれ、パーティーするんだって? それならクッキーを焼いて、パーティに出すね」
「いいんですか?」
チェンは目を瞬く。インデックスは頷いた。クレリックのインデックスはボランティアの手伝いならとクッキーを作ってくれる約束をしてくれたのだった。
カンタータ・ドレッドノート(ea9455)はレートリットたちのほのぼのとした雰囲気を素直に受け止め、異種族間であれほどまでに仲が良いのはステキだなと羨ましそうに見つめていた。
いつも姿勢がよく、背筋をぴんとしているカンタータはフリーウィルの生徒だ。ひっそりとレートリットたちは見蕩れる。
「私は、ミーシャ・クロイツェフ。最近、騎士学校に入学したばかりの神聖騎士だ!」
そう言ってミーシャ・クロイツェフ(ea9542)は大きな声で挨拶した。
実はハーフエルフの地位向上のためにロシアから来た。ここに人間とエルフで親友という少女達がいると聞いて、この教室にやってきたらしい。人間とエルフで親友というなら、きっと『ハーフエルフの者』にも理解を示してくれるに違いないと彼はふんでいた。
「レートリット殿、チェン殿。ハーフエルフの地位向上のため助力を願いたい!」
真剣な眼差しで、ミーシャはじっと見つめる。
その瞳とクールな様子、筋肉質な体型にチェンの胸は高鳴ってしまった。
(「まぁ、どうしましょう。好みかも‥‥」)
正しくその通りなのだが、表立ってそれを言うわけにいかない。わざと余所余所しい態度をとる。こーんな大きな声で主張されては首を縦に振るわけにはいかなかった。
「そ、そうなの? ま‥‥何かと世間は‥その‥厳しいようですし?」
とか言いながら、チェンの視線が泳ぐ。胸の高鳴りを抑えて微妙な笑顔を向けた。
「私は、祈りと、ちょっとした料理なら出来るぞ! パーティの飾り付けや料理の手伝いをするとしよう」
にっこりと笑ってミーシャが言ったことにうんうんと頷く。
(「ふむ、なにやら、陰謀の臭いを感じるな」)
ちょっと様子が変な生徒達を見てスイフリィは思う。スイフリィはレートリットとチェンに探りをいれてみた。
「レートリット殿、知っているかね? エルフは嘘をついたり隠し事をすると耳が動くという事を」
さて、どうだろう。探りを入れて、耳を触ったり気にしている素振りをみせたら、そのものビンゴ。しかし、彼女は一向に反応することなく、意味がわからないといった表情。
どうやらハズレのようである。そんな癖などエルフには無い。
「それはともかくとして、買い物してきて欲しいものってないかしら?」
「じゃぁ、料理の材料をお願いいたします」
カンタータのお願いにレートリットは笑って頷いた。
「了解。何を買ってきて欲しいの?」
「ボクはシナモンとナッツと‥‥紅茶葉が欲しいんですけど」
「し、シナモンッ? 無理無理! 高いわ〜」
チェンがとんでもないと首を振った。仕方なく、カンタータはそれ以外のものを買ってきてもらうことにする。
飾り付けでもしようと思ったのだろう、インデックスが小さなヤドリギを所望だったのだが、なんに使うのかとチェンは首を傾げる。生木は重いし、買うと高いから学校側で貸してくれた。そして、インデックスは紙で作った飾りを木の先に引っ掛ける。
カンタータに頼まれ、パーティ開始前に授業で使う竪琴を借りる。
教室を借りるための約束は、恵まれない人のために僅かなお金や物品を集める事だった。その後、お手伝い賃を渡すようにとレートリットは考えている。
綺麗に教室を飾り付けし、募金箱を作って綺麗にした。
一方、レートリットが買い物から帰ってくると、すっかりパーティー会場らしくなり、わりあい豪華な会場に変身している。
夕方過ぎになると、クラスメートや三校の生徒が集まってきた。結構入りは良いようで、あまり種族を気にしないようなタイプの生徒が集まってきていた。
パーティーが始まると、カンタータは他の人が歌うのに合わせながら伴奏程度に演奏しはじめる
。そして、ファムも元気に歌い始めた。
「鈴を鳴らして、キャンドルに灯り燈(とも)せば〜♪ 星がまたたき、雪が舞い降れば、HEY〜♪ 今宵は、聖なる夜♪ 木々に星が降り立つ夜♪」
随分と元気な歌に皆は手を叩く。それに乗ってファムは歌った。
「日の出るぅ、はるか東より来た漢ぉ〜♪ フンドーシ締めた、ナイスガイぃ〜♪ あいつの名前はミスタ〜・ジャパン〜♪」
「‥‥‥‥」
これは選曲ミスだったらしい。ちょっと派出にやりすぎたようで、皆はシーンとしていた。それからカンタータはゆったりとした音楽に切り替え、なかなかムーディーな雰囲気に変えていく。
レートリットたちは会場の端で期待しつつ見つめたが、良い感じになっていくグループは同じ種族同志である。期待が外れて二人は悔しそうな目で見つめていた。
「ところで、レートリット殿達。そこにいるミーシャ殿と交流を深めてみたらどうかね?」
不意に言ったスイフリィの声に二人が振り返る。
「「は?」」
二人は顔を見合わせた。
スイフリィの意図がわからないらしい。とは言え、計画がばれてはいけないので笑って誤魔化した。
気分が乗ってきたらしいカンタータが、次は自分に正直になろうという趣旨の歌詞で歌い始める。
(「自分に‥‥素直に‥‥?」)
チェンが悩んでいる横で、エリスが酔っぱらい、悪口ばかり言っていた。途中で狂化し高飛車になって笑っている。その後でインデックスが告白を聞いていた。
「告白をするんだね? ‥‥じゃあ、こっちに来て。ここなら、誰もいないから大丈夫」
そんな声が聞こえて期待して振り返れば、まったく想像していたのとは違う光景が見えた。
「‥‥さぁ、言って、あなたの『告白』を、そして共に祈り、懺悔しましょう。主は、きっと、あなたを許してくれることでしょう」
(「「それって罪の告白だしッ!」」)
良いムードのその裏で奇妙な事になっている。二人は諦め、途中から普通のパーティーに切り替えた。
そしてパーティー終了後、集まった募金を学校側に渡す前に、報酬分のお小遣いを取った。インデックスにはお布施として渡し、他の生徒には学校側からの手伝い賃として渡す。教師二人から借りたお金は教師だからと言う理由で返さなかった。