北の海から〜ソードフィッシュ戦〜

■ショートシナリオ


担当:朧月幻尉

対応レベル:1〜3lv

難易度:やや難

成功報酬:0 G 78 C

参加人数:8人

サポート参加人数:-人

冒険期間:01月27日〜02月01日

リプレイ公開日:2005年02月05日

●オープニング

 ざっぶ〜ん!
 荒波は今日も漢のロマンを連れて、その姿を漁師に見せていた。
 船の上でふんどしだけを身につけた、エリオット・タカハシは、今しがた登った太陽を見つめている。熱き40代前半男、彼女いない歴も40ウン年。海一筋人生を今、この戦いのために捧げているようなものだった。
 感慨に浸っていると聞こえてくる部下の声。
「きたきたきたきたァ!! 親分、来ましたぜ!」
「ばっきゃーろー! 船長って言えっていっただろうがァ!」
 ひい爺さんの頃ぐらいまで海賊だったエリオットは、家族の過去がどうであれ、今は船団の長なのだった。
 エリオットに報告する部下に一喝しつつも、彼は部下の指差す方を見た。荒波を掻い潜ってやってくる軍団はケルピーだ。負けてはおれないと、一同は武器を持つ。
 近付いてくるタイミングを見計らって、エリオットは船の速度を上げさせた。
「東の方向にケルピーの軍団発見、総員戦闘態勢に入れ! お前らはソードフィッシュを狙うんだ!」
 言われた船員は小さな船の方に乗ってソードフィッシュを迎え撃つ。
 向うもそう簡単にやられるわけもなく。
 しっかりエリオットは返り討ちに合った。勿論、ソードフィッシュを狙った船員もだ。
「ちくしょう! 今度はもっと人数を増やすぞ! てめぇら、助っ人呼んで来い!」
 そう言ったエリオットはくるりと振り返り、数人の男達に言った。
「お前らはソードフィッシュをまた追うんだ」
 さほど酷くは無いものの、エリオットも怪我をしていた。こんなものは屁でもないからお前らも頑張れと激励する。
 船員はエリオットの言葉に頷いた。
 男達は昔、ソードフィッシュを食ったことがあるという男から、その美味さを知ったのだ。最近、魚が取れにくくなったため、ケルピーと一緒になって現れるソードフィッシュを釣り上げようとしているのだった。
 今回の戦いで船団の方も痛手を負っている。これを再起にしたい。つぎの襲撃が来る前に冒険者を募ろうと、船員の一人は冒険者の集まる酒場へと向かうのだった。

●今回の参加者

 ea0322 威吹 神狩(32歳・♀・忍者・人間・ジャパン)
 ea0323 アレス・バイブル(30歳・♂・神聖騎士・人間・神聖ローマ帝国)
 ea1930 ヴァルト・グラベセン(34歳・♂・ウィザード・人間・ロシア王国)
 ea9267 鈴木 久遠(32歳・♂・浪人・人間・ジャパン)
 ea9272 風御 飛沫(29歳・♀・忍者・人間・ジャパン)
 eb0276 メイリア・インフェルノ(31歳・♀・神聖騎士・人間・神聖ローマ帝国)
 eb0846 ベルガー・ガングーニル(32歳・♂・ウィザード・ハーフエルフ・イギリス王国)
 eb0870 焔 王牙(23歳・♂・武道家・ハーフエルフ・華仙教大国)

●リプレイ本文

「ソードフィッシュってなぁ‥‥美味いのか‥‥よっしゃ、この依頼、受けるぜ。もちろん、俺も喰うためにな」
 にっこりと笑って焔王牙(eb0870)が言った。
「はぁ‥‥」
 威吹神狩(ea0322)は深い溜息をつく。
(「久しぶりの依頼で‥‥勘が戻るか少し不安だけど」)
 そんなことを考えつつ、ふと視線を他に向けると、アレス・バイブル(ea0323)は防寒着の上着を着たまま楽しげにしていた。それはまるごとメリーさんと言う、ぱっと見は羊の着ぐるみの防寒着だ。
「まぁ‥‥いいわ」
 神狩は見なかったことにするらしかった。しかし、相手の方はそんな彼女の気持に気が付いていない。
「神狩さん、ぬくぬくですよ〜♪」
 アレスはまるごとメリーさんを着たまま、神狩に抱きついてじゃれついた。これを着てじゃれつかれては恥ずかしい事この上ない。
「刺身で食ってみたいが‥‥醤油もワサビも無いんじゃ、旨さ半減かねぇ」
 そう言って、鈴木久遠(ea9267)は苦笑しつつ言った。皆の前でじゃれつかれて照れた神狩はモジモジしながら言う。
「食べることには、特に興味がないんで‥‥それは、いいんだけど‥‥それよりも、むしろ‥あの、アレス‥‥周りの、目が‥‥恥ずかしい、んだけど‥‥」
 和気藹々と話をする皆の前に一人の少女がやってきた。風御飛沫(ea9272)だ。
「え〜〜、現在。褌姿の暑苦しい漁師さんたちと一緒に、美味いといわれるソードフィッシュを捕獲して食べるために、私は極寒の荒波の上でお手伝いしていま〜〜〜〜す!」
 飛沫は楽しげに言っている。
 ざっぶ〜ん!!!!!
「寒っ〜〜〜!!」
 そんなことを言いながらも、飛沫は旅の相棒ドンキーは船着場に預かってもらい、まだ見ぬ味に出会うためにうきうき気分で乗船した。
「さらばドンキーちゃん。私は君の分まで海の幸いっぱい食べてくるよ」
 楽しそうに歩いてくる飛沫は皆の下にたどり着くと挨拶をする。ヴァルト・グラベセン(ea1930)はゆっくりと皆の下に歩いてきた。クールなヴァルトはエリオットの姿を見ると眉を顰める。
「そんな格好をしていると、変態と勘違いされギルドから退治依頼出されるぞ」
(「昨今は怪盗の出現に伴い、国全体として警備の目が厳しくなりつつあるようだからな。その格好について一言二言、注意をしておこうか‥‥」)
「やかましい‥‥男は褌だ。街中にはこの恰好で出歩いたりはせん!」
 エリオットはそう言って睨む。
「とりあえず見てる方が寒くなってくるので、何か服を用意してほしいものだが‥‥」
「戦いの前の正装だ、文句を言うな」
 エリオットはヴァルトの意見を全く聞き入れない。実際、町に買い物に行く時は褌のままでは出ていかないからだった。
 メイリア・インフェルノ(eb0276)はゆったりと優雅に歩いてきたが、荒くれ者の男達が鼻の下を伸ばすほどに魅力的だった。ナイスバディが眩しい。その後からベルガー・ガングーニル(eb0846)が歌いながらやってくる。
「おーまえーのー海はー おーれの海ー」
 ‥‥と鼻歌交じりに癖でリズムを取りつつやってくる姿は陽気そのものだ。
「船長と書いてキャプテンと呼ぶぞ、エリオットーっ♪」
 ノリ良く歌っているようだが、エリオットの方はというと、か〜なり機嫌が悪そうにみえる。他の冒険者に頼んで戦いを手伝ってもらわなければいけない手前、こんなに時間を取られてはいられないようだ。
 ベルガーは、先ず、ソードフィッシュの特徴や習性、能力などをエリオットらに教えてもらおうと思っていた。訊ねてみたがエリオットはあまり知らないようだ。それもそのはず。前回はケルピーの攻撃も同時に受けており、気を回している暇など無かったからだった。かなり危険な生き物だと教えてくれたが、情報が少なすぎてちっとも分からない。おまけに依頼に参加した人間の誰一人として、それに関する詳しい知識を持っていなかった。
 可能ならば、銛などの道具も借りれるかを聞いてみれば、エリオットは普段はあまり使わないそれを貸してくれるといった。
 これからどうすれば良いのかとエリオットは頭を抱える。そいうこうしているわけもいかず、明朝、日が昇る前に出立し、発見次第戦うという方向に話を進めていた。

 そして、次の日の早朝。
 眠っていた一同は叩き起こされ、船に乗って沖に出る。漁をするためだ。皆は毛布に包まったまま船に乗り込み、まだ暗い夜空を眺めていた。皆はエリオットとは違う船に乗る。しかし、エリオットの船の直ぐ傍だった。
 それから、間もなく、天気が悪くなっていく。さっきまで天気が良かったにも関わらず、風が強かったせいか、黒々とした雨雲を呼んできた。そして運の悪いことに遠くで嘶きにも似た声が聞こえる。波が高く低く揺れて船を揺らした。大きく揺れた後、マストの上にいた見張りの声が甲板に響く。
「うぅ‥‥」
「き、気持悪い‥‥」
 荒れ模様になったせいもあり、乗り込んだ冒険者の全員が船酔いを起こしていた。その中で特に酷かったのは、アレスと神狩の二人だった。
「前方に、ケルピー発見!」
「よし! 着たぞぉ! おい、お前達。役に立たなかったら海にぶち込むから覚悟しとけ」
「「「「「おう!」」」」」
 楽しげにいうエリオットの声に、船員は大きな声で答えた。さぁ、ケルピーをぶん殴りに行こうかと拳を振り上げる。
「今日こそ、殲滅! 手加減はするな!」
「「「「「おう!」」」」」
 向うの船からそんな声が聞こえてきた。一同はそちらの方に顔を向ける。
「ソードフィッシュにも気を付けろ!」
 エリオットは叫んだ。
「来たらしいな‥‥」
「気休めにしかならないかもしれないが」
 ヴァルトはそう言って、なるべく多くの仲間にバーニングソードを付与した。後は後方で待機して、援護の機会を伺う。
 神狩は水中に有効な遠距離攻撃は持ち合わせてないため、船の縁で水面を見張り、ソードフィッシュが姿を現したところを、刀で攻撃する。狙いを頭部にと思うがなかなか当たらない。相手の動きを鈍らせる狙いで、ひれや尾を攻撃した。
(「相手の動きが少しでも鈍れば、他の、遠距離攻撃を持つ人たちも狙いやすくなる‥‥」)
 船の縁から若干離れ、多少の揺れで落ちない位置にて、アレスは後方支援に専念していた。戦闘前に神狩の体にロープを命綱代わりに巻き付けていた。片側を自分が持ち、何があっても落ちない様にと必死になっていた。そのため、何度も二人して転倒する。
「きゃぁ!」
「わあ!」
「モグラ叩きならぬ、ソードフィッシュ叩きってな!」
 焔は楽しげに言って、水面を飛び出してくるソードフィッシュを打とうとした。
(「ソードフィッシュっつーぐらいだから、剣がついてるわけねぇと思うけど‥‥」)
 そう焔が思った刹那、ソードフィッシュが焔に攻撃を仕掛けてきた。焔は拳を握り、ソードフィッシュを殴ろうとする。一回目は避けられた。だが、ソードフィッシュが何かしらない彼に対して、次の瞬間に最大の不幸は訪れた。
「ぎゃああああああああああ!!!!!!」
 飛び上がったソードフィッシュの長い嘴が、焔の左拳共々腕を突き抜けた。馬が走るスピードに近いソードフィッシュの攻撃は恐ろしいもので、焔の肘から下が持っていかれるかのようだった。
「ぐッ!」
 勢い余って焔が甲板にぶっ倒れる。
「俺の腕があああ!!」
 夥しい血を流す腕を押さえて、焔は叫ぶ。
「焔さん!」
 アレスが叫ぶ。
 ホーリーでソードフィッシュを狙ったが、抵抗されてしまう。アレスは向き直り、焔の腕を見たが、腕を引き千切られかけていた。これでもっと大きなソードフィッシュだったら、再生できずにリカバーをかけることさえ出来なかっただろう。アレスは大急ぎでリカバーをかけた。
 鈴木はソードフィッシュが数匹だったため、現状のサイズでは無理だと判断し、レイピアに持ち替えた。だが、レイピアではリーチが短すぎて届かなかった。
「とりゃ〜〜!」
 飛沫はダーツで水面を狙い撃つ。しかし、ダーツではソードフィッシュを攻撃などできるはずもない。
 鈴木はソニックブームを打ち込んだ。運良く跳ね上がったソードフィッシュの尾ひれを切り飛ばし、ソードフィッシュは海面に沈んでいった。
「いくぞ!!」
「「「「「「「来たぁ!」」」」」」」
「焼き裂けろ!」
 手から火の玉が飛び出し、海面で弾けとんだ。眩しい光を放ってファイアーボムが衝撃を海面下にも与える。予めがファイアーボム撃つときに声かけることになっていたため、皆は避けることが出来た。
 ソードフィッシュが一匹だけ腹を見せて海面上に上がってきた。運悪く攻撃距離の中に入っていたらしい。
「俺では決定打にならない。とどめを頼む」
「任せておいて」
 メイリアは水面のソードフィッシュをミミクリーの呪文を唱えて攻撃した。倒したソードフィッシュが水面に浮いていたが、嵐が酷くなってきていて手を伸ばして取ることができない。
「届かないわね〜」
 メイリアはのんびりと言った。
 一方、ベルガーはファイヤーバードで飛び立ち、海鳥のように海上から借りた銛で狙う。
「海のー漢ーなら船長ーぅ 銛一本に命張りー」
 謎の海の漢らしい歌でリズム良くソードフィッシュを穿とうとするが、突っ込んでしまえば自分も海に転落する。そのこともあり、不安定な体勢では思ったような攻撃が出来なかった。
 おまけに暴風は雨まで呼んでくる。ベルガーは高波を見たと思った瞬間には海の中に落下している。
「ベルガーさん! 蝦蟇ちゃん、助けてあげて!」
 飛沫は大ガマを呼び出したが、召喚したものの視野に立って動かせるわけではない。やっとベルガーを捕まえたと思ったものの、自分も同じ運命を辿ってしまった。
「きゃぁ!」
 飛沫の悲鳴も波に攫われる。体当たりしてきたソードフィッシュの嘴が船底に穴を開けた。浸水に気を取られている間に高波は船を飲み込んでいく。
 大破した船の破片に掴まることが出来た人間は幸いだったが、殆どの人間が海に沈み、皆も波ににもまれたが幸いにして助かり、力尽きた時には浜へと打ち上げられた。

 明朝。海に打ち上げられた人物の中に集った冒険者たちがおり、助かったことを互いに喜び合った。船団の生き残った者は浜辺に座り込んでいたが、打ち上げられたソードフィッシュを肴に海に消えた命を称えて、密やかな酒盛りをしたという。