誘惑の桜
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■ショートシナリオ
担当:相楽蒼華
対応レベル:1〜3lv
難易度:難しい
成功報酬:0 G 65 C
参加人数:8人
サポート参加人数:-人
冒険期間:01月16日〜01月21日
リプレイ公開日:2005年01月20日
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●オープニング
江戸から少し離れた町に一本の綺麗な桜があるという。その桜は今はまだ季節外れなのだが何故だか毎年この時期になると綺麗な桜を咲かせているという不思議な桜だった。
そんな桜を見て、一人の青年が呟いた。「この桜は呪われているんじゃないか?」と。
その話がギルドに持ち込まれたのはつい先日の事。その呪われたと言葉を紡いだ青年である。
「あの桜、毎年この時期になると綺麗な桜が咲くって聞いてたから少し見に行ってみたんです。そしたら何か・・・変な違和感みたいなのものを感じて・・・。聞いたところその桜が咲く頃に、決まって若い男達が行方不明になるって聞いたんです。おかしいとは思いませんか?」
懸命にギルド員に語る青年。ギルド員をその話を少し不気味に思いながら話を聞いていた。
調べてみた所、消えた若者達は皆あの不思議な桜の付近で姿を消してしまったのだいう。本当に呪われた桜であるのなら、このままほっておく訳にもいかない。そして、青年達がどうなったのかも調べないとならないだろう。
「どうか、あの桜を調べてください!もし、危険であるようでしたらその時は仕方がありません、切り倒してください!自然も大事ですけど、人の命もやっぱり大事ですから!」
青年は勢いよく頭を下げた。
●リプレイ本文
依頼を受けた冒険者達は、まずはどんな桜なのかと真昼の間にその桜がある場所へと足を運んだ。そこには人だかりが出来ており、子供連れから恋人同士まで様々な人々で賑わっていた。
「こんな桜に本当に死霊なんているのかな?だって、こんなにも綺麗なんだよ?」
「ジャパンの桜ってやっぱり綺麗だネ。でも、きっと何かワケありかも知れないからサ。気を引き締めていこーネ?」
不安げな御子神夕(eb0154)をライル・カーライル(eb0156)が安心させるように言う。相棒として仲がいいのもあり、行動は二人でとる事となっている。
「さぁて・・・・情報でも集めないと何も出来ないだろ。・・・・失礼、あの桜の事についてお聞きしたい」
灰原鬼流(ea6945)が家族連れの男に軽く声をかける。男は首を傾げながらも質問には応じるようだ。
「あの桜の事?あぁ、確か爺さんからは昔、この町が作れられた頃に植えられた桜だって事は聞いた事あるな。夜になると紫の花弁を咲かせ、舞わせるらしいがこの話は最近になって聞くようになったな」
「・・・・紫の、花弁?あの桜に、何か言い伝えのようなものでもあるのか?」
「そんな話は聞いた事ねぇなぁ・・・・。が、見れば見る程美しい桜だ。夜に舞う紫の花弁ってのも見てみてぇよなぁ・・・・」
男から聞けた話はそれだけだった。その間に別の情報を聞きに回っていた月陽姫(eb0240)が慌てて集合場所である桜の前まで走ってきた。
「どうだった?何かつかめたか?」
「それがね・・・・今までの行方不明者は10を超えてるのよ!」
「10を超えてる・・?それは・・・・」
「それに、桜がらみの事件についても調べてみたんだけどこれもまったくといって収穫はナシ。あの桜、この町が出来た頃に植えられたものだから、昔の世代の人で知ってるっていう人も少ないのよ・・・・困ったわ」
陽姫が溜息をつくと、鬼流は舌打ちをする。この現状、どう見てもやばい事になりつつあるからだ。
夜になり、結局お坊さんを呼ぶという作戦も「修行がまだあるばかりか、お経を部外者に貸すなどという事は出来ない」という事から残念にもダメとなった。
桜の木の周りには夕とライル。そして囮にもなっている雨宮零(ea9527)。それを守るかのように陽姫、鬼流、無姓しぐれ(eb0368)がつく。太丹(eb0334)は真昼の食いつぶしが効いたのか、ぐつすり眠ってしまっているようだ。
「綺麗な桜・・・・か。本当に綺麗だけど・・・・」
零がゆっくりと桜に近づいた瞬間。桜の辺りの雰囲気が一瞬にして変わった。鬼流の目の前に落ちてきた花弁の色は・・・・紫・・・・。その瞬間、鬼流はハッとして視線を零へと移す。零の後ろに二匹の死霊が近づいているのが見えたからだ。
「零、後ろだ!ライル、早く魔法をっ!」
「えっ・・・・!?」
素早く身構える零よりも早く死霊が先に動き出す。このままでは危ないという所をライルが放ったホーリーが死霊へと命中する。ゆらりとたじろく死霊は、ライルを見つけるとすぐさまそちらへと移動を始める。それを夕がなんとか防衛に入る。が、物理攻撃が効かない死霊相手に手出し出来ないままでいる。
「当てれねぇ受けれねぇ此処まで無力だと笑うっきゃねぇな」
鬼流が苦笑混じりにそう吐き捨てると同時に、背筋が少しひんやりとし始めていた。しかし、それに気付く者はいない。夕達は死霊相手に必死なのだから。
「貴方、いい顔してるじゃない?その分だと相当美味しいのでしょうね、貴方の血・・・・」
「なっ・・・・!?」
鬼流の振り向くという選択肢が間違いだった。鬼流の後ろには綺麗な着物を着た美しい女性。しかもその女性は精吸い。振り向いたと同時にチャームをかけられ、抵抗する間もなく鬼流は精吸いの手に落ちる。夕達が それに気付いた時には鬼流は傷だらけになっており、血を微かに啜られた状態にあった。
「鬼流さん!?くそ・・・・っ!」
「無駄な抵抗はやめなさい?貴方達が例えその死霊を倒したとしても・・・・私は倒せないわ。貴方達の、知識のなさを恨みなさい?」
精吸いが鬼流を開放するも、鬼流の意識は既にない。武器も通じない。相手に通じるのはライルの魔法ホーリーだけ。しかし、ホーリーだけで倒せる相手ではない。
「この桜は咲き続けるわ。永遠に・・・・。切られても、枯れる事なく・・・・ね?」
精吸いの言葉と同時にまた死霊達が動きだす。魔力も底をつき始めてるライルにとって、死霊を倒すだけで精一杯だろう。そうして死霊をなんとかしようと慌てるうちに零、太丹が精吸いの手へと落ちていく。結局残った女性陣は奮闘の末、死霊はなんとか倒せたものの精吸いだけは取り逃がしてしまった・・・・。
傷だらけとなった冒険者は寺と治療を受けながら町のその後の事を耳にした。どうやら、桜には精吸いが取り付いており、死霊達は男達を引き寄せる囮だったという。そして、行方不明になった男達の骨がその桜の傍らで見つかったというのだ。精吸いは血を吸うのと同時に桜にも血を与え、咲かせていた。だから夜には赤とピンクが混じった紫の色の花弁が舞っていたという。
結果的に木は切り倒され、依頼者は残念そうな表情を浮かべていた。依頼は、失敗に終わった・・・・。