お江戸戦隊出撃せよ!?

■ショートシナリオ


担当:相楽蒼華

対応レベル:フリーlv

難易度:易しい

成功報酬:0 G 65 C

参加人数:8人

サポート参加人数:-人

冒険期間:01月30日〜02月04日

リプレイ公開日:2005年02月01日

●オープニング

 この江戸のギルドに一人の尼さんが立ち寄った。それは、ちょっとしたお茶目な依頼であった。
「実は、私達の寺では身寄りのない子供を預かっているんです‥‥。」
「ほう、それでは子供達の世話も大変でしょう。で、依頼の内容とは?」
「それが‥‥。何時も私達を気遣い、励ましてくれる子供達に少しでもお礼をと思いまして‥‥男の子の夢みたいなものを見せてあげたく思いまして‥‥」
 尼さんがそう言い出すと、ギルド員は少し苦渋の表情を浮かべた。
 何しろここは冒険者が集うギルド。子供達の為だからといって芝居をやる人がいるかどうか分からないのである。しかもカッコイイ時代劇というのがミソなのであろうか。

「男の子が多いので、どうしてもそういうものに憧れてしまうらしくって。月道を使って来た人達から話を聞いて見たいと申しておりますの。でも、私達尼ではそんな事出来ないのです」
「それで、依頼に?」
「はい。ジャパンですと冒険者達やお侍さん達がかっこよく見えていると思うのです。お願いします、どうか子供達のお願いを叶えてください‥‥!」

 ギルド員は断ることなく、溜息をついて依頼を受け入れた‥‥。

●今回の参加者

 ea0270 風羽 真(36歳・♂・浪人・人間・ジャパン)
 ea0780 アーウィン・ラグレス(30歳・♂・ファイター・人間・イギリス王国)
 ea1472 聖津 亜玲(32歳・♂・忍者・人間・ジャパン)
 ea1569 大宗院 鳴(24歳・♀・志士・人間・ジャパン)
 ea2445 鷲尾 天斗(36歳・♂・侍・人間・ジャパン)
 ea3914 音羽 でり子(30歳・♀・浪人・人間・ジャパン)
 ea6072 ライラ・メイト(25歳・♀・ナイト・シフール・イギリス王国)
 ea8545 ウィルマ・ハートマン(31歳・♀・ナイト・人間・ロシア王国)

●リプレイ本文

 冒険者達は依頼をくれた寺へと早朝に辿り着く。そこには尼さん達が今日の劇の為にと準備をせっせと始めていた。
「あ、依頼を受けてくださった方々ですか?今日はどうぞよろしくお願い致します」
「いえいえ、此方こそ♪楽しい劇にしてみせますので♪」
「では、準備が整うまであちらの部屋で控えていてくださいな。子供達はもう外で待っております故」
「よし、じゃあウェルマさん。頼んだぞ?」
 鷲尾天斗(ea2445)が笑顔でそう言うと、ウィルマ・ハートマン(ea8545)は小さく頷く。

 子供達の前にザッと立つウィルマ。その姿には何処か威圧感すら感じられる。子供達は少し目をパチクリさせていた。
「わたしが子守のハートマンである。話しかけられたとき以外は口を開くな。小うるさい口を開く前と後に“サー”と言え 分かったか、ガキども!」
「サー、イェッサー!‥‥ってなんでだよ!」
 ノリツッコミにも対応出来る子供は今時珍しいというのだろうか。しかしハートマンは言葉を続ける。
「俺は厳しいが公平だ。親がなんだと差別は許さん、俺は見下さん。すべて‥‥平等に価値が無い!己の価値は常に己で勝ち取れ!」
 ‥‥ここは何処の軍隊だ。という心のツッコミを子供達は炸裂させる。言う事を聞いておかねばただではすまない。そう直感する子供達でもあった‥‥。

「‥‥へっへっへ♪この依頼‥‥なぁんか妙にウキウキすんなぁ?」
 そんなコトになっているとはつゆ知らず、風羽真(ea0270)が準備をしながら含み笑いを浮かべる。こういう依頼は滅多にない為、楽しみなのだろうか。
「張り切るのはいいけど、怪我だけはしないでくれよ?」
 鷲尾天斗(ea2445)が笑いながらもそう釘を刺す。分かってるよ、という風なそぶりで真は対応する。そして外は賑やかになってきた。どうやら準備は出来たようである。
 さぁ、そろそろ華やかな舞台へといざ参らん‥‥?

 作られた舞台の傍に子供達とハートマンが座っている。どうやら子供達も何が起きるか楽しみなようでついついはしゃいでしまう子供もいる。
「皆ーーおはこんばんちわー!でり子お姉さんやぞー!」
舞台の上で子供達より元気のいい声がキーンと通る。子供達もやっと始まると思い、静かになる。とことこと音羽でり子(ea3914)が舞台に上がると子供達はもう既に体育座りだ。
「今日は見に来てくれてありがとうなー!でり子お姉さんもこれから何が始まるか、結構ドキドキやねん!」
 そこに悪役担当のアーウィン・ラグレス(ea0780)が舞台に姿を見せる。子供達はそれが主役だと思いこんで歓声をあげる。
「俺はお江戸戦隊ミツルギだ!今日は新しい仲間を探しにここに来たんだ。さて‥我がミツルギに入隊したい、って言う根性のある子はいねぇか?」
 子供達はやはり揃って手を挙げる。我先にと押し合いながら。この光景はまるで関西のおばさん並である事は確かだ。その頃でり子はやっと見つけた台詞を書いてある紙を取り出して安堵の息。
「皆、そんな奴らに騙されたらアカン!本物はそんなダサい格好なんかしてへん!‥皆で本物のお江戸戦隊を呼ぶで!せーの、助けてー大江戸剣士オジャパメーン!」
 ‥‥シーンと広がる静寂。そして舞台裏では真が腕で違う事を示すのを見てやっと気づいたでり子は慌てて
「あ、ごめん間違った!助けてーお江戸戦隊ミツルギー!」
 その台詞に間髪入れずにそれぞれの笑い声が木霊する。遂に現れるかお江戸戦隊!ここはお約束と言わんばかりにまずは綺麗な桜色の衣を纏った聖津亜玲(ea1472)が華麗に登場する。
「ふっふっふ‥‥お江戸の華ことピンク参上ー!」
 ゴーンと鐘の音が鳴る。尼さん達の演出だ!これで気分も盛り上がる!続いて出てくるのは青の衣を羽織った真だ。イカサマ賽「六」をアーウィンの手に投げつけてクールに登場だ!
「旋風(かぜ)の刃が悪を斬る!ミツルギブルー、風と共に我来たり!!」
 ここまではカッコイイ。ここまでは予定通りだ。
 そして次はいよいよ天斗の番‥‥そこにまた悲劇が待っていた。
「天呼ぶ地が呼ぶ人が呼ぶ、悪を叩けと俺を呼ぶ!江戸の外道を叩いて砕く、お江戸戦隊ミツルギ参上!とおっ!」
 オーラボディを施して寺の屋根から飛び降りる天斗。しかし着地地点がズレて亜玲の真上に大きな音共に落ちる。これには子供達も大笑いである。
「イタタ‥‥ちっと失敗したか」
「天斗さん、痛いですよ‥‥‥貴方の愛が」
 真顔でそう言い放つ亜玲に真がさり気無く頭を一発ぶん殴る。無論、子供達には見えないように。しかし亜玲の嬉しそうな顔は変わらない。

「とにかく、続けるぞ?」
 見兼ねたアーウィンがそう告げると、天斗達も続行の為ポーズを決める。そして見計らったかのようにライラ・メイト(ea6072)が姿を見せる。
「‥‥お江戸戦隊が般若。ただいま参上‥‥。大人しくしてもらいましょうか‥‥この会場は、我ら『暗黒お江戸軍』が占拠した‥‥!!」
「くっ!悪の手先め!これ以上は好きにはやらせんっ!行くぞっ!」
おうっ!という掛け声と共に戦闘が始まる。子供達は楽しんでいるようで歓声を懸命にあげる。そして応援の声も段々と強まる中、予定通りお江戸戦隊が押されていく。全ては演技、しかし迫力が出るようにと演出を全て手がけたのは天斗である。
 しかしおかしなコトに、敵役の攻撃は皆亜玲に飛んでいく。ぼこられてるのを真も天斗も助けず眺めてる。いいのか、それで!?
「皆、ミツルギが負けへん様にミツルギが喜びそうな言葉並べて応援や!せーの、一攫千金・一石二鳥・豚も煽てりゃ木に登る!」
 子供達に何を言わせるのかと思ったらもうそんな言葉。それでもでり子の言う通り叫ぶ子供達も子供達。そしてそんな言葉で元気になるミツルギもミツルギだ。
ここまでとんとんと予定通りに進んでいる。そんな中でもこっそりと活動しているのが大宗院鳴(ea1569)である。やはり衣装の下に服をもう一枚着る、というのはやはり動き難いものなのだろう。

「あっはっはー、私は長いものには巻かれろ主義なんですよーー!!」
 突然亜玲がムクリと起き出してそう告げる。裏切りのシーンが開始されたのである。
「大変や!お江戸ピンクが裏切り始めたでっ!」
「‥‥手前ェ!前から思ってたが、マジで日和見主義だなぁっ!?」
「何とでも言いなさいっ!私は殴られるのも気持ちいいと思いますが虐めるのも気持ちいいんですよっ!」
 ‥‥もはや子供に聞かせる言葉ではない。されど子供達は意味も分からず楽しそうに見ている。子供心はいい気なもんだ。
「くそっ!こうなったらブルー!二人で悪を叩きのめすぞっ!」
「仕方ねぇ、やるっきゃねぇなっ!」
「やれるもんならやってみやがれっ!こっちは幹部もついてんだっ!」
「その程度の相手に負けないわ‥‥!」

迫力ある展開になってきた。ここまで来れば子供達も興奮のあまり立ち上がっての応援だ!
「ぐっ‥‥!やれやれ、あとちょっとだったのに……そうそう上手くはいかないな」
「お〜ぼ〜え〜て〜ろ〜〜〜〜〜〜〜!!!!」
「あれ〜、ですわ〜っ」
 戦闘の中、次々にミツルギにやられていく悪役達っ!中には一部戦闘で本気を出していたのはいたが相手には怪我はないようで何よりだ!‥‥しかしそんな中子供達は見逃さなかった。
 何故か天斗と真の手にはネギと大根。お百姓さんに怒られますよ!?
「流石伝説のネギソードと大根ソード!悪役もひとひねりだっ!」
「これも全てお百姓さんの力だな」
「‥‥大根とネギにやれるってのもいい気はしねぇよなぁ」
「仕方ありませんよ、劇なんですし‥‥」
いや、そんなコト言われても有難味に欠けてます、おにーさん方。そうツッコミたい尼さん達を置いて、亜玲の魔の手がでり子に伸びるっ!既に飛びつく形になってるのは気の所為だろうか?
「あっはっはー!やっぱり信じるべきは自分ですよねー!でり子さん、覚悟してくださ〜い♪」
「イヤン何すんねん、こんな子供の前で★」
 でり子の鉄槌が亜玲のどたまに直撃、沈む。そしてそれを好機と思ったのか突然天斗がスッと構える。
「‥‥使えるっ!おい姉ちゃん、人手が足りねェんだ!悪いがたった今からアンタが二代目ミツルギピンクだっ!!」
「へ?ええよ?うちがやれるんやったら♪」
「よし!三人揃った所でトドメだっ!」
「‥‥っは?確か打ち合わせではここで終わりじゃあ‥‥」
「こういうノリになったらトドメ技が必要だろうがっ!」
熱く語る天斗。それを後押しするかのように子供達の輝く目。期待されてるぞ!どーする、ミツルギ!?
「でも技なんて考えてねぇだろ?」
「せやせや、どないするん?」
「だからな‥‥‥」
こせにょごにょと何やら内緒話の後、三人は頷いて構える。
「悪にトドメを刺すぞ!いくぞ、ブルー、ピンク!」
「「おうっ!」」
「行くぞ!スーパオクトパスアターーック!」

‥‥気合抜ける技名だ。しかも、この技。
どかどかばきべすごすごき。
‥‥どー見てもタコ殴りにしか見えない。
ボコられてる亜玲の顔は気持ちよさそうだ。

「おぼえてらっしゃーーーい!!」
そう言い残して退場する亜玲を見送り、三人の戦士達は寺の屋根まであがり夕日に向かって決めポーズをするのであった!
「‥‥暫くはガキ共の目があるから、バカやれないねぇ?」
「ホントに子供達の為か、俺‥‥」
「何や楽しかったからええか♪」

後、子供達は逃げた亜玲をひっ捕まえて馬をさせたり、髪引っ張ったりと大変喜び賑やかであったと尼さんはギルドにそう告げる。そして亜玲は暫くその寺から帰してもらえなかったとか‥‥