果てしなき悪夢の中に

■ショートシナリオ


担当:相楽蒼華

対応レベル:1〜3lv

難易度:やや難

成功報酬:0 G 65 C

参加人数:6人

サポート参加人数:-人

冒険期間:01月29日〜02月03日

リプレイ公開日:2005年02月01日

●オープニング

 ギルド員は冒険者を集めると一つの資料を手渡した。そこには今回の依頼の内容が書かれているとの事。冒険者達は目を通しながらもギルド員の言葉に耳を傾ける事にした。
「今回の依頼はとある村を焼き払う依頼だ。焼き払うっていっても問題は無い、その村の住人はダレ一人としていない。とある時期を境にぱったりと人気がなくなった。更にはアンデッドの住処ともなりつつあるらしい。これを重くみたお偉いさん達からの依頼って事になる」
 ギルド員は淡々と言葉を続けた。その様子を伺いながらも、冒険者達はやるせなさをかんじていた。人がいないからといって村を焼き払うというのは気持ちのいいものではない。しかし、これも一つの仕事だ。

「その村に住み着いているのは死人憑きが4匹程。そして‥‥怪骨が二匹だ」
「どうしてその村に住みついたんだ?」
「どうやら誰かがそういう手引きをしたのか‥‥もしくは勝手に流れ込んで来たか。そういう情報は沢山耳にするがどれが真実か?というのは分からない。その原因の追究も兼ねて、焼き払ってくれとの事だ。二度とそんな事が起きないように、な?」
 その一瞬の時だけギルド員の言葉が和らいだような気がしたのは気の所為ではないだろう。

「もし村にまだ生存者が残っていたという状況の時は迷わずその生存者を確保、救出してくれ。死人どもは残さず退治してくれると有難い」
 ギルド員は冒険者達にそう言い残すと、資料を片手に奥へと戻っていった。

●今回の参加者

 ea8763 リズ・アンキセス(23歳・♀・ウィザード・ハーフエルフ・ビザンチン帝国)
 ea9853 元 鈴蘭(22歳・♀・武道家・ハーフエルフ・華仙教大国)
 ea9947 周 麗華(29歳・♀・武道家・ハーフエルフ・華仙教大国)
 eb0112 ジョシュア・アンキセス(27歳・♂・レンジャー・人間・ビザンチン帝国)
 eb0487 七枷 伏姫(26歳・♀・侍・人間・ジャパン)
 eb0808 春夏秋冬 志緒(33歳・♀・浪人・人間・ジャパン)

●リプレイ本文

「ボクが‥‥ボクが悪いんじゃないんだ‥‥!」
 何処かの暗闇の中で頭を抱え込み、座りこんで青年が何度も何度も繰り返す。
 その言葉は死人憑きの呻き声にて掻き消され、村を不穏な空気にさせる。
 そんな村の前に立っている冒険者達。凄まじい死肉の臭いと不気味なまでの雰囲気。まるで村全体が死人の村かのようだった。

「どこまで‥‥やれるかな‥‥」
「とりあえず手はず通りにやりましょう。早くしないと死人憑きが仲間を作ってしまいます」
「‥‥行こう」
 周麗華(ea9947)と元鈴蘭(ea9853)が村の中に足を踏み入れる。それと同時に何かが呼応したかのように「ヴァー‥‥」と呻き声をあげる。多分、死人憑きの声だろう。
足を踏み入れて行く二人についていき、死人憑きの説明などをしているリズ・アンキセス(ea8763)が遠くに人影を発見する。
「皆さん、何か居ます‥‥死人憑きのようにも見えましたが」
「リズ、本当に見たのか?」
「とにかく相手はアンデットでござるよ。まずは其処から片付けていくべきでござろう?」
 ジョシュア・アンキセス(eb0112)の肩を叩き、七枷伏姫(eb0487)がそう告げる。春夏秋冬志緒(eb0808)はそんなコトに興味も示さずただ目の前の敵を探している。
「多分死人憑きは中よりも外にいるかも知れません。骸骨がいるのですから、それ相当の統率力はあると思います」
「‥‥死肉の臭いが近い‥‥来るぞ!」
 志緒が声をあげたと同時に現世に生きし冥府の者達の群れが押し寄せる。‥‥そこは村長宅前。第一波である。

 すかさずリズがウィンドスラッシュで死人憑きを切り刻む。腕、足、そして首。ここまでしないと起き上がってくるのが厄介だ。
「‥‥飛天相破‥‥!」
「伏姫様、志緒様!骸骨の方をお願いしますっ!」
「生きていようが、死んでいようが、関係ない。私の前に立てばどんな相手だろうとただの木偶だ。一匹残さず‥‥斬り、刻んでやる‥‥!」
 ガキィンという音が響く。‥‥盾だ。
 怪骨は盾と刀を持っている為、その初撃を防ぐ。その後のジョシュアの弓すらも盾にあたり、体に当たっても骨である為効き難い。
「ならばこうするだけでござるよ!」
 伏姫がオーラソードを発動させ、二刀流となる。そのオーラソードで怪骨に切りかかる。ダメージは大きいようだ。少しカタカタと音をさせながら揺れるとまた立ち直ろうとする。
「今ですっ!」
 その瞬間を狙ってのリズのウィンドスラッシュが怪骨に命中し、怪骨はバラバラになって地に落ちる。
「まずは一団体撃破、ですね」
「しかしもう一団体が残っているはずよ。調査しながら調べる必要性があるわね」
「なら、ブレスセンサーで‥‥‥‥あ。一人誰かいます‥‥!」
 ブレスセンサーを駆使して探し出したリズがそう言う。方角はどうやら北。村の奥にあたる位置だ。
 そこには一つだけ洞窟が存在している。薄暗い洞窟で見た目的にも何かがいると感じさせる洞窟だ。
「とりあえず行ってみましょう!生き残りの人がいるのならば助けないといけませんっ!」

 洞窟の中は薄暗く湿っていた。狂化防止の為か、鈴蘭がランタンを用意して視界を確保する。これで少しは洞窟の中も見渡せる。
「ひゃー‥‥。本当にこんな所に人がいるのかよ?」
「ジョシュア殿、油断は禁物でござるよ?誰もいなさそうな所に誰かいるという可能性は捨てきれないでござる」
 志緒は退路確保の為に洞窟の外で待機している。先程の戦いぶりを見ていれば一人退路確保に回っても平気だろうと考えたからだ。
 洞窟の中は少し長めだった。少し広くなった所でカタカタという音がまた鳴り始める。
「骨の音ね‥‥近くにいるわよ」
 麗華がそう言いながら一歩踏み出した瞬間、横から刀が振り下ろされる。回避を試みるものの薄暗いのもあり、まともに腕に傷を作らせてしまった。
「大丈夫ですか、麗華様!?今リカバー致しますから!」
「薄暗い‥‥視界がまともにない此方の不利。外に誘き出すでござるか?」
「いや、それじゃあこの狭い洞窟の中を走る事になるぜ。明かりを少し掲げてくれ」
 ジョシュアに応えるようにリカバーで治癒を受けている麗華がランタンを翳す。おぼろげに視界に映るのは不気味な死人憑きの姿。
 ゆっくりと狙いを定めて弓を放つ。死人憑きに命中すると、治癒が終わった麗華がすぐに戦線に復帰。ダブルアタックとストライクで死人憑きを地へと沈めていく。
「後は骨だけでござるな!」
 オーラソードを念の為出しておいた伏姫が怪骨にタックルをし、体勢を崩させてからオーラソードで盾を持つ腕を飛ばす。そしてリズのウィンドスラッシュで最終的に首を飛ばし、なんとか撃退する。

奥で声が聞こえた。それを聞き取ったのは麗華だ。優良聴力で聞き取れたのだ。
「‥‥の所為じゃない‥‥ボクの所為じゃない‥‥」
「誰か一人奥にいる。何かに怯えているみたいだが生存者のようね」
「行きましょう。生きている人がいるのなら早く助け出さないと!」
 麗華達は奥へと進む。声のする場所へと辿り着くとそこは何とも異端なる場所。祭壇のようなものが設置されており、そこで青年が一人怯えるように蹲っている。
「あの、大丈夫ですか?」
「き、君達は‥‥?」
「わたくし達は冒険者です。この村の死人憑き退治を任されていましたがもう退治は出来ました。後は逃げるだけです、さぁ行きましょう?」
 鈴蘭が手を差し伸べると青年はその手すら振り払う。そして怯えた目で鈴蘭達を見つめた。
「ボクは悪くない!ボクはただ聞こえる声に従っただけだ!ボクは悪くない!」
「従った‥‥?まさか、貴方がこの村をこんなにしたのですかっ!?」
 リズが尋ねると、青年は小さく頷いた。
 青年の話では、毎晩見る夢で聞こえる声の通りにこの祭壇を作り、ずっと祈り続けていたらしい。
 結果、何処からともなく死人憑きが現れ、村人数人を食い殺していったという。そして最後には怪骨までもが何時の間にか増えていたというのだ。多分墓地から生まれてしまったのだろう。
「なんてこと‥‥!」
「ボクは悪くない!夢の‥‥悪夢の所為で‥‥!」
「とにかく外へ行きましょう。話はそれからよ」
 麗華が無理矢理青年を立たせると、洞窟を急いで走り出す。道は大体把握している。暗闇にも慣れたのか薄っすらとは視界が見える。

 丁度洞窟の半分をいった頃、後ろからカタカタと音が響き始めた。倒したと思っていた怪骨が生きていたのだ。だとすると、外に一人で待機している志緒が危ない。
「急ぎましょう!志緒様を何時までも一人にしておくわけにもいきませんし、この人の事もありますから!」
 洞窟を抜けた頃には志緒は既に油を撒き始めていた。嫌な空気を感じたのか、そういう行動に出たのだという。
「早く外へ連れて行け!私が火をつける!」
「ではお願いします!わたくし達は村の外へ!」
「拙者も手伝うでござるよ!怪骨がまだ生きているでござるから、一人では危険!」
 二人は油をどんどん村へと撒いていく。結局この村を焼き払うしかなかった。危険がない。そうは言い切れなかったから。
 油を撒き終わると二人も村の外へと出、そこから火を投げ入れる。村は轟音と共に燃え上がった。
「あ‥‥村が、燃えて‥‥?」
「仕方がないの。この仕事はこの村を焼き払う事だったんだから」
「ボクは‥‥ボクは‥‥」
「さぁ、帰りましょう?例え貴方が犯した罪でも、生き残った村の人が待っていますよ?」
「‥‥‥うあぁぁぁっ!」
 青年は大きな雄叫びをあげると、リズと鈴蘭の静止を振り払い村の中へとまた戻っていった。
 連れ戻そうにも火の回りが油の所為で速く、入り口すら火に飲まれていた。
 ‥‥見送るしかなかった。追い詰められ、自分の責を逃れようとした青年の末路を。


 冒険者達はギルドにこう報告した。「生存者は、村へと帰った」と。
 ギルド員も何か事情があるのを察して
「仕方ないな。生存者はいなかった、そういう事にしておこう」
 と、戸惑いながらそう呟いた。

 冒険者達は思った。
 自分達は彼を救えなかったのか。
 どう彼に接すればよかったのか。
 全て彼の責任だったのだろうか。

 その後、聞いた話では。あの青年はその村で迫害されていた者だったという。
 恨みの強さ故に夢を見て、悪い言葉を信じ込み、実行に移したのだろう、と。