死人の想い

■ショートシナリオ


担当:相楽蒼華

対応レベル:1〜3lv

難易度:普通

成功報酬:0 G 65 C

参加人数:4人

サポート参加人数:-人

冒険期間:11月09日〜11月14日

リプレイ公開日:2004年11月12日

●オープニング

昼下がりのギルド。慌ただしく働いているそのギルドに一人の男が慌てて駆け入ってきた。
息切れを整えようとするもなかなか落ち着かない。
仕方がないのでギルド員はお茶を差し出し、落ち着かせた。

「た、大変なんだ!死人憑きが、死人憑きの群れが‥‥!」
 男は焦りで言葉が微妙に飛んでいる。
 ギルド員は宥めながら、どういう依頼なのか訪ねた。
「俺がすんでる村‥‥山に入っていったとこにあるんだが‥‥そこで死人憑きが暴れてやがるんだ!」
 大声で主張するその姿を見て、ギルド員は小さく苦笑を浮かべていた。
 それを見た男は少し感じ悪いと思ったが、村の無事とは変えられない。話を続けた。

 話によると、どうやらその村は死人憑きが出てくるまではのどかで田舎といった村だという。
 しかし、その村の過去は「戦の戦火に巻き込まれて消えた村」だという。
 多くの人の死骸があったが、それを土に埋めてやり埋葬し、そして村を築き上げたのだとか。
 しかし、ある夜の日に死人憑きが姿を現したらしい。

 数人の村人は犠牲になりはしたが、その他の村人は皆無事村の外に逃げれたらしい。
 その時、一人の幽霊が姿を人の形へと変え、悲しそうな目で見つめていたという。
 そして、その幽霊が消えた地面には‥‥
『アノヒトハ・・・・ドコ・・・・・?』
 と、ジャパン語で書き記されていたという。

「んなこと言われたって、俺達には「アノヒト」なんてわかりっこねぇ。それに何時までも死人憑きが居座られてもこっちが迷惑するだけだ!」
 なんとかしてくれよ!と付け加え、男がギルド員にすがりつく。
 戦火に飲まれた後、必死で築き上げてきた村だ。
 これで廃村になるというのも悔しいものだろう。
 ギルド員は「受けましょう」と短く返事をして、男をまた落ち着かせる。

「あぁ、そうだ!幽霊は女の姿をしてたっていうのを見た奴が言ってたぜ。死人憑きの数は5匹で、避難した村人達を目指して進んでたのを遠くから見たんだ!こ、こんな情報でも役に立つか!?」
 男の言葉に小さく頷くと、ギルド員は冒険者募集の張り紙を出した‥‥。

●今回の参加者

 ea7873 朝基 狂馬(33歳・♂・志士・人間・ジャパン)
 ea8191 天風 誠志郎(33歳・♂・侍・人間・ジャパン)
 ea8303 双子 小次郎(32歳・♂・浪人・人間・ジャパン)
 ea8308 シアン・カカリ(23歳・♀・ウィザード・エルフ・ビザンチン帝国)

●リプレイ本文

 今回の依頼に集まった冒険者は4人。どれもまだ駆け出しの冒険者ではあるが、「村を救う」という事を果たしてくれるだろう。移動は馬を使っての移動となった。シアン・カカリ(ea8308)は天風誠志郎(ea8191)の馬の後ろに乗って移動する事となった。

●怯える者達
 村まではそんなに遠くなかった。が、状況は酷いものにあった。村の入り口まで辿り着くと、そこには老人と女子供だけが死人憑きに怯え、寒さに震え、どうしようもなく集まっていた。
「この様子では、村人からの話は死人憑きを何とかしてからでないと無理みたいですね」
 朝基狂馬(ea7873)が苦笑混じりにそう呟く。そも、死人憑きが近くにいて、怯えているのにどうやって話が聞けようか。狂馬達は、死人憑きの群れを優先する事にした。
「あんた達はここを動かないようにしててくれよ?でないと死人憑きに喰われるぞ」
誠志郎が村人達に言う。こうでもしておかないと、あまりの怯えで山の中に逃げてしまうかも知れなかったからだ。
 そして、一同は村の中へと馬を進めていった‥‥。

●さまよう死者達
 村の中に入ると、死者達の呻き声が聞こえていた。それは悲痛にも似た声。死して尚、戦う事となってしまった者達の声。しかし、彼らに意思などない。生きる者に引き寄せられるかのように、死人憑きの群れは方向を冒険者達のへと転換させて進む。それを遠くから見た狂馬が小さく呟く。
「少数の人間のエゴが起こした争いのツケが、今になって返ってきましたか」と。
 冒険者達は、人数で負けていながらも一匹ずつ退治する事にした。
「いつまでも現世にしがみ付く醜き者たちよ、私が黄泉へ送って差し上げましょう‥覚悟しなさい?」
 馬から降りたと同時に、狂馬が死人憑きに向かってマグナブローを打ち込む。死人憑きの身体は炎と共に宙に舞い、地にぼとりと落ちる。が、焼きただれたのは片腕と、足だけ。まだ這いずって狂馬達へと近づく。それのトドメを刺すかのように、シアンの魔法アイスブリザードが死人憑き二匹を襲った。
「わたくし、あまり肉体労働は好かないのだが‥‥」ぼやくように呟きながら、シアンは死人憑きへと魔法を続ける。
 残る死人憑きは3匹。誠志郎が素早く日本刀を抜いてうち一匹にスタンアタックを仕掛ける。が、死人憑きには効果が見られず、尚も襲い始める。それを見て、双子小次郎(ea8303)がシュライクで斬り倒す。そして、距離をとって戦っていた狂馬が再度詠唱を始めて‥‥。
「もう、二度と戻ってこないで下さい‥‥!!」
 死人憑き二匹巻き込んでのマグナブローは豪快に決まった。戦闘にて村に被害は出なかった。これで安心して「アノヒト」を探す事が出来るだろう。
「ん?これは‥‥?」
 死人憑きが倒れた辺りに一つの首飾りが落ちていた。それは花をあしらったような、古くて綺麗なものだった。誠志郎は、誰かのものだろうと思い、懐にしまい込んだ。

●想いを持った死人達
 これでようやく村人から話を聞ける状態になった。残るは一人の女幽霊。姿はまだ現していないのだが‥‥。冒険者達は、情報を集める事とした。
「はて‥‥あの女幽霊の情報のう‥‥?」村の一番の老人である男が首を傾げる。覚えているのか、うろ覚えなのか。定かではないが、次の言葉が出るのを待った。
「そう言えば、昔の事を綴った書物が保管庫にあったはずじゃ。これを見せれば開けて貰えるじゃろ」
 老人から手渡されたのは一つの手形。それは保管庫を開けて貰えるカギだと言うのだ。
 皆が保管庫へと向かう中、誠志郎は思い出したかのように老人に先程拾った首飾りを見せた。
「老人、これは村人の落とし物か?」
「‥‥?にしては古ぼけておるのぅ‥‥この村では見た事はありゃせんよ」
 誠志郎は、もしやと思い保管庫へと急いだ。ありがとう!というお礼を老人にかけながら。そして、4人は保管庫へと辿り着き、手形を見せて中へと入れて貰う。中にはかなりの本が並べられていてどれだか分からない。手分けして探しているうちに、狂馬が一冊の書物を見つけた。その書物には、この村近辺で起こった戦の犠牲者たちの事が鮮明に書かれていた。そして、その書物から分かった事はただ一つ。「生存者など、存在しない事」‥‥。
「よほどの惨劇だったのでしょうね。だからこそ、「アノヒト」を強く想い出てきたのでしょう。遺品か何かがあればいいのですが‥‥」
 狂馬が少し悔しそうに呟く。すると、その一冊の書物から、女幽霊の姿が突然浮かび上がってきた。まるで、誰かを待つかのような表情で。
『アノヒトハ‥‥ドコ‥‥?』今にも消えてしまいそうな声で女幽霊が呟く。狂馬達は少しずつ言葉を選びながら声を出す。通じるのかどうか、怪しみながらも。
「貴方の待ち人は、もうこの世には居ませんよ。貴方がここで待っている間に、黄泉へと戻ったかも知れません」
『アノヒトハ‥‥』通じているのだろうか。いや、通じていて分かってもいるのだが、信じたくはないのだろう。すると、誠志郎があの首飾りをそっと差し出した。
「多分、これがその人の所持品だと思うのだが、確かめては貰えぬか?」誠志郎の声に、女幽霊は一歩ずつ近寄る。そして、首飾りを暫し見つめ一粒の涙を流した。それと同時に、保管庫に立っていられない程の風が吹き荒れ、消えた頃には幽霊も、その首飾りも。そこには、なかったという‥‥。

●供養
 後から聞かされた話では、あの女幽霊はこの付近に前あった村の村人であり、「アノヒト」とは戦火の飛び火を防ごうとして戦った勇敢な武士だという。二人は恋仲にあったものの、身分の違いというのもあり叶わぬ恋だったのだ。しかし、その武士は最後まで女を守ろうとして、死を遂げたという‥‥悲しくも、冒険者達が斬った死人憑きの中に、その武士の死骸が混じっていたのだろう‥‥。しかし、女は成仏した。冒険者達は、言いようもない複雑な気持ちを胸に、死人憑き達を埋葬し、供養をして帰路へとついた‥‥。