惨劇の歌声
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■ショートシナリオ
担当:相楽蒼華
対応レベル:1〜4lv
難易度:難しい
成功報酬:1 G 0 C
参加人数:6人
サポート参加人数:-人
冒険期間:02月14日〜02月19日
リプレイ公開日:2005年02月15日
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●オープニング
酒場にて。一人の男が語っていた。
「俺は今一人の女性を探してる。幼馴染だったんだ。俺はその女性に言伝を頼まれていてな。江戸にいるという情報を掴んできたんだけれど、消息がつかめなくて」
「だったらギルドにでも頼んだらどう?冒険者達に頼めば居場所も分かるかも知れないよ?」
「江戸より北にいるという事だけは分かってるんだ。‥‥冒険者‥‥無茶な事をして危険を自ら招く者もいると聞いたけど」
「それは一部にしか過ぎないわ。お役所に頼むより、いいんじゃない?」
酒場にいた女にそう言われ、半信半疑で男はギルドへとやってくる。
「俺の幼馴染を探して貰いたいんだ。江戸より北にいるって事だけは確かなんだ」
「江戸より北…確かに村は存在していますが。その方の名前とかは?」
「女性の名はラヴィア。ジャパンには月道で渡ってきていると思うんだ。イギリスの‥‥」
そこで何故か男性はどもる。何か暫し考えてから再度口を開く。
「イギリスの、エルフだ。髪は銀。瞳が真紅と銀という色違いだから目立つと思うんだ。とは言っても何時もフードを被っているからあまり顔は見られていないかも知れない」
「エルフの女性ですか。‥‥貴方の名前は?依頼を受けるにあたって聞いておきたいですから、こういう類は」
「夕凪彩斗。イギリスで今までレンジャーをしていたジャパン人だ」
「‥‥では、ご依頼はその女性捜し‥‥という事でよろしいですね?」
「あぁ。でも最近人にとりつく死霊が珍しく出てきているという話を聞いてる。行くなら俺も一緒に連れていって欲しい。その方がきっとラヴィアに危険もないと思う」
「では、そういう方向で依頼を作成しましょう」
「それと。‥‥幾ら冒険者でも、ラヴィアに害を成すようであれば‥‥報酬は払わない」
男がそう言うと、ギルド員は了承したのか小さく頷いた。
どうやら彩斗は冒険者不信でもあるようだ。
●リプレイ本文
彼の情報による村へはおよそ二日で辿り着いた。
それまでは平穏だった。何事もなく、ただ彩斗と話をしながら歩いていたのだから。
「とりあえずそのラヴィアというお人を探さなければいけませんね」
ステラ・シアフィールド(ea9191)が村を見渡しながらそう呟く。
「ラヴィアは人里を嫌ってる。だから多分人里から離れたようなそんな場所にいると思うんだ」
「だとしたら、あそこかねぇ?」
高澄凌(ea0053)が村はずれにある小さな森を見やる。
怪しい雰囲気は何もない。だが、何か嫌な予感だけはするのは確かだ。
「あんた達、あの森へ行くつもりなのかい?」
「あぁ、そうだが?何だ、何かマズイ事でもあんのか?」
「あの森は犬鬼が住み着いててねぇ‥‥あたし達も困り果ててるんだよ。それに珍しい‥‥人にとりつく霊がいるっていう噂でね?」
「その噂なら俺達も聞いている。だから俺達冒険者が来た」
セルジュ・リアンクール(ea9328)がそう答えると、村人も何処か安堵した様子を見せた。
「そういやあの森に一人、住み着いてたねぇ。顔はあんまり見えなかったけど、綺麗な目をしてたさね」
「‥‥綺麗な?ラヴィアかも知れない‥‥!」
「これで情報も揃った‥‥な?」
白翼寺涼哉(ea9502)の言葉に冒険者達は頷く。
そして、覚悟を決めるとゆっくりと森へと足を踏み入れた。
森の中は薄暗い。そして何故かシンとしている。
「おかしいですね‥‥鳥の声が、聞こえません‥‥動物の声も‥‥」
その時、微かな声をステラの聴覚が捕らえた。
「女性の声です!此方から聞こえました!」
ステラが足早に冒険者達を案内する。
彩斗は後からついてくるように、と凌が伝えている為後方からやってくる。
幾つかの茂みを超えると、そこにはコボルトが三匹。
人を一人取り囲んでいる状態にある。
「黒いローブの人‥‥?もしかして‥‥」
「話は後だ!とりあえず犬鬼を片付けるぞ!」
セルジュと凌が駆けだすと同時にステラの詠唱が始まる。
涼哉は守りの為に彩斗の傍に居る
掛け声と共に凌の日本刀が犬鬼の首を飛ばす。
セルジュの日本刀も犬鬼の腕を切り落とす。
こうなると相手も戦意喪失。逃亡した。
「ラストですねっ!」
ステラのグラビティーキャノンが発動すると同時に彩斗がギリッと弓を引く。
大きな爆発音を上げて逃げようとする犬鬼を襲う。
それと同時に風を切る音がし、矢が犬鬼の喉に突きたてられた。
「大丈夫か、そこの人?」
「あ、ありがとうございます‥‥本当に助かりました」
人影が冒険者達へと振り返る。
黒いローブ。銀髪。そして何よりも決め手となったのは真紅と銀のオッドアイ。
冒険者達が探していたラヴィアだ。
「ラヴィア!こんな所にいたのか!?‥‥どうして勝手に町を出ていったりなんかしたんだよ!」
「アヤ、ト‥‥?でも、あの町に私の居場所がない事ぐらい、貴方も知ってたじゃない‥‥」
「だからって一人で行くバカが何処にいるんだよ!一声かけてくれれば、俺だって‥‥!」
「ごめんなさい、アヤト。でも私は‥‥‥」
その時だ。ラヴィアの背から何かがとりついたのを涼哉は見逃さなかった。
「彩斗、離れるんだ!」
「え‥?何いって‥‥!」
「今ラヴィアに何か黒い影がとりついたのが見えた!下がれ!」
「死霊がラヴィアに?そんな事あるわけが‥‥!」
凌も納得したかのように彩斗の腕を掴みラヴィアから引き離す。
「ニンゲン‥‥ニクイ‥‥。ワタシタチカラ、スベテヲウバッタ‥‥ニンゲンガ、ニクイ‥‥!」
「どうやら、ハーフエルフの女性か何かか?‥‥厄介だな」
「アノセイジャクヲ‥‥ワタシタチノコエヲ‥‥カエセ‥‥」
「彷徨えるは‥‥哀れなる魂。行き場を失い‥‥夜に微睡む望むのは‥‥安らぎか永遠の贖罪か。選ぶのもまた汝自身」
セルジュがゆっくりと言葉を紡ぎ始める。
ギルド員に聞いた所によると、この死霊の女性は「歌」を聞くと退く場合もあるという話を耳にしていたからだ。
「わずかなりとも心あらば、今は退け。道を開けよ。忘るるな、光は常に汝の傍らにある。黄泉の国まで響け、この楽よ。常世の果てまで届け、この想いよ‥‥」
ラヴィアにとりついていた死霊の動きが止まる。
「ウタ‥‥ワタシタチノウタ‥‥ウタ‥‥!」
「私達はラヴィアさんを傷つけたくないんです‥‥!」
冒険者達の思いが通じたのか、死霊の影が段々と薄くなっていく。
消え去る前の一瞬。綺麗なエルフの女性の姿が見えたのを、冒険者達は逃さない。
‥‥静かに祈りを捧げた。
彼女が黄泉へと戻れるように、と。
「大丈夫か、ラヴィア?」
「彩斗さん、私にラヴィアさんとお話しをさせてくださいませんか?大丈夫、危害は加えませんから」
「‥‥ラヴィアを助けて貰ったんだ、それを信じないなんて真似は流石に出来ない。‥‥いいよ」
彩斗がそう言うと、ステラはお辞儀をしてラヴィアに近づいた。
そんなステラを見て、ラヴィアは小さく怯えた。
「あの‥‥失礼かとは思いますが、フードをとって頂けませんか?‥‥私はハーフエルフです」
「!‥‥あっ、貴方もハーフエルフ、なの‥‥!?」
「同族、ですね。私でお役に立てるか解りませんが、思いを話すだけでも少しは楽になれますよ」
「私‥‥イギリスの孤児院で彩斗と一緒に居たの。でも、居場所がなかったの!何時も、監視されている気がして‥‥!」
ステラが同族だと知って安心しきったのか、ラヴィアは言葉を紡ぎ始めた。
どうやら彩斗は彼女がハーフエルフであるという事を知っている様子だった。これと言って変化はない。
「彩斗が懸命にかけあってくれてたの、知ってた!‥‥でも、私‥‥ダメだったの、耐えれなかったの!」
「ラヴィア‥‥」
「私は、私でありたかったの!種族なんてどうでもいいの、私であれたらただそれだけで良かったの!」
「そんな時、ジャパンの話を聞いたのですね?」
ステラの言葉に、ラヴィアは小さく頷いた。
ハーフエルフへの差別は、ジャパンではそんなに過激ではなかったのだ。
「みんな憎かったの!私を私として見てくれないみんなが!アヤトもそうなんでしょ!?」
「‥‥!?まずい、感情が高ぶってる‥‥!」
「まさか‥‥!」
「ラヴィア、落ち着いて‥‥!」
「来ないで、来ないでよぉっ!」
彩斗が駆け寄ろうとすると、ラヴィアの詠唱が始まる。
ステラ達が彩斗を退きとめようとすると、ラヴィアの魔法サイコキネシスが発動し、コボルト達が持っていた武器が彩斗の腕に突き立つ。
「遅かった‥‥!」
「ラヴィア、落ち着いて!俺はお前がハーフエルフだったからって変わるわけないだろ!?」
「アヤト‥‥!」
「イギリスに帰ろう。‥‥俺が話をつけてやる、だから!‥‥俺と一緒に、我慢しよう‥‥?」
彩斗の言葉に冷静さを取り戻してきたのか、ラヴィアの狂化は次第に解かれていく。
しかし、そんな隙に罠があった。
ラヴィアはクリスタルソードを呼び出すとそっと彩斗に持たせた。
「ラヴィア‥‥?」
「ごめん、アヤト‥‥アヤトの気持ち、嬉しいよ?嬉しいけど‥‥私、もうダメなの‥‥」
「やば‥‥!」
止めようとして走る冒険者達。そんな中でも、ラヴィアの行動に変わりはない。
呆然としている彩斗にラヴィアは思いきり抱きついた。
‥‥鈍い感触がクリスタルソードより伝わる。
そして手に生暖かい感触を感じる。
彩斗はラヴィアを呆然と眺めていた。
「ラヴィア‥‥!ラヴィア、どうしてっ‥‥!」
「何故こういう結末をッ!?彩斗さんは貴方の思いを受け止めてくださったのに!?」
「私、アヤトが大好きだから‥‥愛してるから‥‥。だから、アヤト‥‥巻き込みたく、ない‥‥」
「死ぬなんて‥‥逃げてるだけじゃないか‥‥!」
セルジュも思わず怒鳴り声になる。
目の前で人の思いを受け止めてくれた人がいるのに、その思いを無駄にしようというのだから。
「アヤトには、ニンゲンとして普通に生きていて欲しいから。一緒に‥‥歳も、とってあげられない‥‥。同じ時間の流れ、過ごせない‥‥」
「時間の流れなんて‥‥私は些細な事だと思うんです!心があれば、それだけでも‥‥!」
「ステラ、さん‥‥でした、っけ?‥‥私は、欲張りだから。心があると‥‥時間も共に、した‥く‥て‥」
ステラにそう言いかけるとラヴィアの腕がガクリと落ち、地に触れる。
冒険者達にはラヴィアの声が微かに聞こえているのをカンジとれた。詠唱、だ。
「ラヴィア!ラヴィアッ!」
森の植物がザザザ、と動き始める。
それは、ラヴィアが最後の力を振り絞って詠唱し、完成させた魔法‥‥。
『サヨナラ』
植物が描き出した文字だ。
「プラントコントロール‥‥か」
「こんな結末しか、本当になかったのでしょうか?私達には、まだいっぱい選択が残されていたのに‥‥」
「ラヴィアは相当精神的に参っていたみたいだな、あの様子だと‥‥」
「‥‥依頼人。ハーフエルフを見た感想は?」
「‥‥ハーフエルフだからって何だよ‥‥!俺達と何が変わるんだよ!?歳行く月日か!?心は‥‥同じはずだろ‥‥?」
そう、ニンゲンとハーフエルフなんて変わりはしない。
どんな種族でも、持つ心は同じなのだから。
後日、依頼の料金はシフール便でギルドに送られた。
あの後、彩斗はあの森の一番高い場所にラヴィアを埋葬したらしい。
自然溢れるあの森を見渡せるように、と。
‥‥ラヴィアを探した。そして見つけた。
依頼としては成功であるが冒険者達にとっては後味の悪い事だろう。
しかし、冒険者にはこういう事もつきものなのだ。
成功の裏側には、大きな犠牲もある。
冒険者達は垣間見たのかもしれない。
「想いが大きい故の誤選択」を。
記録者の一人として願う。
この過ちを垣間見た者達の糧となる事を。
この時既に、黒い影が彩斗を狙っているというのはまた別の話である‥‥。
【To be continued】