≪おいでませ♪≫喧嘩屋と宴会in白華亭

■ショートシナリオ


担当:相楽蒼華

対応レベル:フリーlv

難易度:普通

成功報酬:0 G 65 C

参加人数:8人

サポート参加人数:-人

冒険期間:02月19日〜02月24日

リプレイ公開日:2005年02月20日

●オープニング

 朝のギルドに一人の青年が駆け込んできた。
「す、すみませんっ!冒険者のお方いらっしゃいませんかっ!?」
 何をそんなに慌てているのか、少し息切れした様子の青年はそう告げる。
「どうかしましたか?」
「あ、あの!俺、この江戸に留めたい人がいて‥‥!でも俺一人じゃ無理だから‥‥その、手伝って欲しくて!」
「留めたい人?何方の事なのです?」
「結城左之っていう喧嘩屋だ!あの喧嘩屋に俺、憧れてて!どうしても江戸に残って貰いたくて!そうすれば、江戸の喧嘩の小競り合いも少なくなるでしょうっ!?」
 結城左之。その名前は今江戸の一角では有名になっている名前である。
 以前江戸の小川で冒険者達とサシで連戦勝負をしたツワモノである。喧嘩も強く、女性に人気があるという事。
「でも留めるってどうやって留めるおつもりなんですか?」
「『白華亭』っていう宿で歓迎会の貸し切りを予約してあります!冒険者の皆さんで彼を楽しませ、江戸はいい所だと思わせれば‥‥!」
 お願いします!と頭を下げる青年を見て、ギルド員は溜息をついて頷き張り紙を出す。
 この歓迎会で両者共に疲れを癒せたら。そう思うのであった。

●今回の参加者

 ea1462 アオイ・ミコ(18歳・♀・レンジャー・シフール・モンゴル王国)
 ea1628 三笠 明信(28歳・♂・パラディン・ジャイアント・ジャパン)
 ea2034 狼 蒼華(21歳・♂・武道家・人間・華仙教大国)
 ea2557 南天 輝(44歳・♂・浪人・人間・ジャパン)
 ea2988 氷川 玲(35歳・♂・浪人・人間・ジャパン)
 ea9164 フィン・リル(15歳・♀・ジプシー・シフール・ノルマン王国)
 eb0356 高町 恭也(33歳・♂・浪人・人間・ジャパン)
 eb0813 古神 双真(47歳・♂・浪人・人間・ジャパン)

●リプレイ本文

依頼を引き受けた冒険者達はそれぞれの思いで白華亭へと向かう。
そこには既に依頼人である青年がそわそわと何かを待っているように白華亭の前に立っていた。
冒険者達を見つけると勢いよく駆け寄ってくる。
「きっ、来てくれたんですねーっ!?」
「勿論なんだよっ!左之っていう人、私もみたいんだよ♪」
シフールのアオイ・ミコ(ea1462)は氷川玲(ea2988)の肩にちょんと座ってそう話す。
それを聞いて青年の表情もみるみる内に笑顔になっていく。
其れほどまでに憧れているその左之という人物。早く会いたいという気持ちの者もいるだろう。
「で?その喧嘩屋は?」
「はいっ!もうお部屋に案内して貰ってます!皆さんが来るちょっと前にいらっしゃって‥‥」
冒険者達にそう話しながら、青年は中へ入るように促す。
そこからは女将さんに案内をバトンタッチして貰い、左之の待つ部屋へと急ぐのである。

●これが噂の「喧嘩屋」だ!
「此方です」
女将に案内され、部屋に入る冒険者達。
その部屋は結構広い、宴会用の部屋なのだろうか。
襖とかは破られたりしたら大変という事で外されている。
その部屋の窓際で一人の男が窓の外を見ながら酒を飲んでいた。
見覚えのある白法被で一部の冒険者は誰であるのか分かったようだ。
「応、お前達か!俺の酒の相手してくれるってぇのは?」
ニィと笑みを浮かべながら冒険者達の方を向いて手を振る。
「佐之、久しぶりだな。元気でやっていたか?」
「誰かと思えば恭也じゃねぇか!応、俺はこの通りよ!」
高町恭也(eb0356)の問いに自分の胸をドンッと叩いてにんまりと笑みを浮かべる。
それを見た恭也も微笑ましいのか少し笑って見せた。
「おう、左之。久しぶりだな」
「へぇ、お前さんも俺の酒に付きあいにきたのか。お前とはこの前の勝負の決着を‥‥っと言いたいところだが、ここに迷惑かける訳にもいかねぇからな。今日は楽しもうぜ?」
「無論、俺もその為にここに来たんだぜ、左之?」
「わー!いっぱいお料理並んでるよーっ!これすっごく美味しそうなんだよっ!」
そんな話の間を割るようにアオイが並んでいる料理に目を輝かせる。
これには左之もけらけらと笑って加減してアオイの頭を撫でた。
「っしゃ!メンツも揃ったんだ、とっとと楽しもうぜ!」
こうして、宴会へと突入していくのである。
その声に、裏方のお手伝いさん達は忙しさを覚悟するのであろう‥‥。

●料理・話・音楽も!楽しめ宴会!in前半
「なぁなぁ、左之兄ちゃん!左之兄ちゃんは今までどんな奴と喧嘩してきたんだっ!?」
「お、それは俺も聞きたい所だな」
狼蒼華(ea2034)と玲が左之に尋ねる。周りは南天輝(ea2557)とフィン・リル(ea9164)の演奏と踊りで盛り上がっている。
アオイも色々と軽業を披露しており、左之もそれを楽しそうに眺めていた。
「んぁ?どんな奴と?そりゃあ、色々だな。志士の奴ともやりあったし、侍の奴ともやった!役人ともやったんだぜ?」
「うわー!すっげー!この前の喧嘩とかどうだった!?俺、ギルドから見せて貰った記録しかわかんねぇからさっ!」
「あぁ、あん時はそこにいる恭也と双真ともやりあったんだ。あいつ等、結構いい腕してやがったぜ?」
けらけらと笑いながらも得意気に話す。
因みに巷での彼の噂はこうだ。
『打たれ強くて喧嘩っ早い、単細胞の阿呆、でも、気のいいたよれる兄貴』
だからこそなのだろう。依頼人のような青年が憧れてしまうのも。
そして、蒼華も憧れ始めているというのも無理はない。
そうこうしているうちに音楽も終わり、皆それぞれ疲れを癒し、楽しんでいるようだった。
「おーい、手伝いさん!お酒足りてないからお願いー!」
既に左之、玲、古神双真(eb0813)の三人により多くあった酒は既に空っぽになっていた。
その三人はと言うと‥‥。
「お前とは何か他人とは思えないぜ」
「お?お前もそう思うか?」
「お前等二人ともダチっていうよか魂の友だぜ、俺から言わせれば!」
「‥‥出来上がってる?」
「似た者同士、類は友を呼ぶ‥‥ですか」
三笠明信(ea1628)が苦笑を浮かべると、アオイも物を頬張りながらうんうんと頷く。
フィンも出された料理を食べながらアオイと共に目を輝かせている様子。
「それじゃあそろそろ準備しましょうか?」
「あぁ、そうだな。完全に出来上がる前にやらねぇと、な」
輝がお手伝いさんが持ってきた酒を受け取りながらそう答えると、明信はいそいそと準備を始めるのであった。
その準備の為か、類なる三人は隅っこに追いやられる事となったのは言うまでもない。

●腕相撲大会開催っ! キミも左之さんと握手!
部屋の真ん中に用意されたのは卓袱台。そして座布団。
そして、何をやるのか聞かされた左之はさも楽しそうにニィと笑う。
「腕相撲たぁおもしれぇじゃねぇか!活きな計らいしてくれんじゃねぇの、江戸の奴等はよ」
「勝ち抜き戦だからねーっ!左之さん、頑張れっ!」
「へへっ、どれだけ強くなったか試したい奴もいるしな?」
双真と恭也に目をやる左之に、二人も小さく頷いて応える。
二人はこの前の左之との喧嘩で恭也は負けを。双真は引き分けをくらっている。
そのリベンジをここでと望んでいるのである。
「よしっ!まずは俺とやろうぜ、左之兄ちゃん!」
蒼華が左之に引っ付きながらもそう言う。目は憧れの目から、勝負の目へと変わっているのを見て左之も乗ったとばかりに立ち上がり、座布団に正座する。
そして、明信が左之には茶碗一杯の酒を。輝が蒼華に盃一杯の酒を渡す。
「へへっ‥‥酒も飲めて、飯も食えて、オマケに楽しめるときた。やっぱいいとこだな、江戸ってのはよ?」
「左之兄ちゃんと喧嘩でなくてもこうやって力比べ出来るんだっ!嬉しいな、俺っ!」
そう言って二人は一気に酒を飲み干す。審判として明信が配置につくと、開始の合図が告げられる。
「二人とも頑張るんだよーっ!」
「頑張って〜♪」
踊りながら応援するフィンを余所目に試合は白熱していた。
まずは一本目。小さいながらも力を入れて、何とか蒼華が押さえ込む。
「よしっ!まずは一本目っ!」
「よっしゃ、次は負けるつもりはねぇぜ?」
腕にかかった蒼華の力を少し実感しながらも次は左腕をずいっと出す。無論酒は飲んでいる。
その間にも双真は‥‥。
「拳1つで〜腹を決めろよ〜何にも使わなきゃ,本当に、腐ってく〜♪」
そんな歌を歌いながらまだ一口も呑んでいない輝と恭也に酒を呑ませている状態。
本当にいいのか、外野がこんなんで!?‥‥きっと記録者である自分も呑まされているのかも知れない。
「準備はいいですか?それでは、二本目っ!」
「小さくたって‥‥やり方次第で‥‥っ!」
「お前のそういう意気込み、俺ァ好きだぜ?」
ニィと左之が笑う。腕には力が入っていてなかなか蒼華も動かせないでいた。
少しずつ。少しずつではあるが動いている。
「結構白熱してるんだよー!ね、フィンさん?」
「うん!あたしああいうお兄ちゃん好きだよ♪」
女性陣は和やかなもんだ。試合を見ながら料理を頬張り楽しんでいる。
大半の料理はこの二人の胃に収められただなんて誰が信じるだろうか。
ダンッ!と音がした瞬間。蒼華がコロコロと転がっていく。
どうやら勢いよく倒した所為で転がってしまったらしい。それにも負けず、蒼華は酔っ払いながらも迎え酒という手段に出る。
‥‥余計に酔わなきゃいいんだけども。
「む、座布団から落ちましたね‥‥失格として左之さんの勝ちです」
「へぇ‥‥やるじゃねぇか。俺は最後にしてくれや。いっちょ最後の華ってのを飾りたいからな」
そして、間髪いれずに恭也がどっかりと座布団に座る。そして、左之の枡盃に酒を注ぐ。
自らも酒を片手に。
「佐之‥‥勝負だ!」
「恭也、手前のその面構え忘れちゃいねぇぜ。あれからどれだけ力つけたか、見せて貰おうじゃねぇか」
「この前の喧嘩での借り、ここで返す‥‥!」
「そう言われちゃこっちも全力で相手しねぇと‥‥失礼だよなぁ」
少し頬をポリポリと掻きながらも酒をグイッと飲み干す。そして手をパンッと鳴らすと右腕を卓袱台へと差し出す。
その頃、類のうち一人は‥‥。
「よーし負けた連中!肝臓潰れるまで飲むぞ飲みつくすぞオラァ!」
「双真の後ろに般若が見えるの俺だけ!?」
無論、そんな双真の犠牲になったのは負けた蒼華である‥‥。

「それでは、二人とも準備はいいですね?始めっ!」
「っと‥‥!結構力ついて来たじゃねぇか、恭也?」
「お前に負けてから‥‥力つけ始めたからな‥‥っ!」
「やっぱお前は俺の見込んだ通りの漢だぜ」
そんな左之の言葉に驚いたのか、恭也の気が一瞬緩む。
その瞬間を見逃さず、左之は一気に恭也の腕を押さえ込み、ホールド。
「ふ‥‥流石に強い‥‥。しかし、試合中にあんな言葉は‥‥」
「本心ってのはやりあいながら伝えるもんだぜ?」
そう言う左之の笑みは、何処かしら頼れる者に見えていて。
そして、恭也は二本目が終わった後に酔いでダウン。アオイに介抱されるものの、双真の酒飲ましの生贄となる。
「さってと‥‥俺から指名していいか?」
「え?指名ですか?それは、構いませんけど‥‥」
信明がそう言うと、左之は玲に視線をやり、卓袱台に右腕を乗せる。
「やろうぜ、玲?お前と俺、同業ならやっとかねぇと気が済まねぇ」
「喧嘩屋からのご指名なら仕方ねぇな。相手するぜ」
類その1と類原因の試合となる。そうとあっちゃあアオイもフィンも真剣な眼差しでその行く末を見守る。
「お二人とも、準備はいいですね?」
「お前、まさかこの前の件だけで満足したわけじゃねぇだろう?こっちには、お前がしらねぇ強者もまだまだ居る。少しはこっちで落ち着いてみたらどうだ?」
「こっちって‥‥江戸でか?」
試合開始前の言葉に少し考え込むも、今は目の前の事に集中するという事になる。そして試合開始の合図が出ると同時に白熱した戦いが繰り広げられ始めた。
まさしく一進一退。どちらも腕は押さえ込むものの、ホールドまでが上手くはいかない。
卓袱台にミシミシッという音が聞こえる。
「も、もしかして卓袱台ー‥‥」
「壊れちゃうかも〜?」
フィンのその予測は大当たり。バキリという音と同時に卓袱台は真っ二つになってしまった。
「あっちゃあ〜‥‥これじゃ腕相撲の続行は無理だねー‥‥」
「ワリィ、加減するの苦手で忘れちまってたわ。この卓袱台の持ち主誰だ?俺が直してやっからよ」
噂通りだ。人様の迷惑になろうもんなら自分で修理するか弁償していく。
そんな彼だからこそ人望があるのかも知れない。

●帰り際
宴会もやっとこ終わり、冒険者達を表まで左之が見送りに来ていた。
「とっても楽しかったんだよー♪」
「応、手前等のお陰で俺も楽しめたぜ!」
「なぁ、左之兄ちゃん!江戸に残れよっ!そんでもって俺と今度は腕相撲じゃなくて喧嘩で勝負しようぜっ!」
そう言って、拳を前に突き出す蒼華の言葉に少し唖然として聞いていた左之もやれやれと溜息をついて自分の拳を蒼華の拳にくっつける。
「そん時は互いに楽しんで喧嘩やろうぜ?」
「それじゃあ、江戸に留まるの?」
フィンの言葉に大きく頷くと、左之はにんまりと笑う。
「俺ァ江戸が気に入った!手前等みたいな物好きな奴もいるわけだしな?」
「俺はお前の様な奴は好きだな‥‥出来ればたまに会い何かをしてみたい気がする」
「輝っていったっけか。‥‥俺はお前をダチとしてみてっからな?だからまた俺と遊ぼうぜ」
そして全員が帰路へとつこうとする時。恭也だけが少し立ち止まり、チラリと左之を見る。
「今度は佐之の得意の喧嘩で勝てるようになってやる‥‥。その時まで消えるなよ」
「おうよ。その時は‥‥俺も本気だぜ?」
漢と漢の約束が交わされ、宴会は友情育むものとなって終わったのである。