【喧嘩屋】共同戦線?濡れ衣を晴らせ!
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■ショートシナリオ
担当:相楽蒼華
対応レベル:1〜5lv
難易度:やや難
成功報酬:1 G 35 C
参加人数:8人
サポート参加人数:-人
冒険期間:02月26日〜03月03日
リプレイ公開日:2005年02月28日
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●オープニング
冒険者達の働きのお陰で江戸に残る事になった結城左之。
暫くは江戸のボロ長屋に住み着く事が決まったらしいのだが‥‥。
「大変、大変ッ!」
シフールの男の子がそう言いながら空を駆け抜けて行く。
縁側で昼寝をしていた左之は少し気がかりになって話しかける。
「応、そこの坊主?どうしたんだ?」
「大変なんだよー!町の子供達が遊びにいって、街道に出ちゃって!悪漢達に追われてるんだっ!」
「んだとぉ?また江戸で面白そうな事やってンじゃねぇか!何処の街道だっ!?」
「西に出て少し北にいったとこの森だよっ!」
シフールの少年がそう言うと、左之は一目散に提示された場所へと急いだ。シフールの少年もギルドに急ぐ。
左之が現場についた頃にはもう日も暮れかけていた。
子供達の鳴き声が聞こえ、その場へと向かうと三人の子供が怯えるようにして隠れていた。
「おい、手前等!大丈夫か!?」
「お、お兄ちゃんはあの人達の仲間じゃ、ない?」
「応よ。手前等の事を聞いてちっとばかし楽しそうだったもんで‥‥ってこりゃ不謹慎か」
口を滑らせてしまったかの如くそうぼやいていると森の外に明かりが見えた。どうやら村の役人なのか、侍らしき男が町の男を引き連れて何かを探している。
「どうやら迎えが来たみたいだぜ。おい、立てるな?」
「う、うんっ!」
怖がる子供達もなんとか左之にひっつきながら立ち上がり、四人で森の外に向かうが‥‥。
「いたぞ、あいつが子供達を捕まえてるぞ!」
「っは‥‥?ちょいと待て、俺はただ‥‥。ほら、手前等もとっとと親の所へ‥‥ってオイ‥‥?」
どうやら子供達に気に入られてしまったのか、子供達は左之から少しも離れようとはしない。
遠巻きながらでも左之の外見はどう見ても悪漢。しかも「喧嘩屋」という名前とその知名度からはタチの悪い悪漢と勘違いされてもおかしくはない。
「あの男を捕まえろ!どんな手段をとっても構わん。子供だけは傷つけるなよ?」
「ち、ちょ‥‥!人の話を聞けと言ってるのにーーーーーっ!?」
結局左之は子供達三人を抱えて森の中に逃げ込むしか方法はなかった。
その次の日に、左之に事情を伝えたシフールがギルドにやってくる。
「大変、大変ーーーっ!」
「次はなんなんですか?」
「左之さんが!左之さんがお縄にされそーっ!」
そう叫ぶと、シフールの少年は一部始終をギルド員に話した。
左之が子供三人を保護している事。勘違いされて侍達に追われている事。
「ふむ‥‥それはそれで一大事ですね。流石に誤認捕縛を役人達にさせるわけにもいきませんし‥‥」
「悪漢達は三人。今も江戸の何処かにいるらしいんだけど、さっぱりわかんなくって」
「追ってる侍の数は?」
「一人だよ。でも、結構腕のたつ侍って感じがしたんだ。ねぇ、左之さんを助けてくれるよね?」
シフールの少年のその言葉に、ギルド員は急いで張り紙を作成、提示した。
●リプレイ本文
森の中。雨が降り始めていた。
その中に左之はいた。子供達に自分の白法被を被らせて雨を凌がせている。
「こりゃちっとばかしマジィな‥‥どうしたもンかねェ‥‥」
四人はただ、その場に留まるしかなかった。ヘタに動けば見つかってしまう為である。
●侍の足止めをせよ!
冒険者のうち二人が左之が逃げ込んだという森の手前まで辿り着く。
その頃には小雨だった雨もすっかりとあがっている。
そこには数人の下っ端役人がどたばたと走り回り、左之の姿を探していた。
そして、森の前には一人の侍。雨具も何もつけず、ただ森を眺めている。
「こんな所で役人達が何してるの?」
「あァ?アンタ等は‥‥ギルドの奴か。お前達に言う義務はないだろう」
「何か探しているのなら手伝ってあげる」
「ちっ‥‥ギルドの奴等の手を借りなくてもいいンだが。借りとは思わねェからな?」
由加紀(ea3535)の強引さに侍も呆れたのか、すんなりとそれを許す。
その行動を天風誠志郎(ea8191)は少し不思議に思っていた。
(「冒険者が嫌いみたいだが‥‥それにしてはすんなりと。‥‥しかしこれで妨害はしやすくなった、か」)
少し不穏な空気を気にする事はそれ以降しないようにしようと心の中で誓うと、二人は侍と共に森へと入っていった。
●悪漢を追え!
「やれやれ…これはまた厄介なことだ」
呆れたように霧島小夜(ea8703)が呟く。
「確かに厄介だ。あの喧嘩屋はよほど騒動に巻き込まれるのに好まれているらしい」
陸堂明士郎(eb0712)もそうごちる。
とりあえず二人は博打場へと向かう事にした。
博打場は少し江戸から外れた場所に位置していた。中は漢達の熱気でむわっとしておりある意味暑苦しい。
「そこのにーちゃん達。ここに何の用だい?ここはアンタ達が来るような所じゃないんだけどねぇ?」
「捜し人をしている。別にここを眺めていても問題はないだろう?」
「ふぅん、捜し人かい。こっちの商売の邪魔しないっていうんなら見ていくといいさね」
女主人は小夜にそう言うと、煙管をふかして奥へと戻る。
博打場にいるのは客の男5人と金換金の女が一人。そしてそこで働いているであろう中年の親父が二人程いる。
「この中から目星をつけないといけないか‥‥ここは私がやろう。明士郎は合流してくれ」
「あぁ、ここは任せたぞ」
明士郎が出て行くと小夜は一人の客の男に近づいた。
「なんだい、ねぇちゃん?俺に何か用か?」
「尋ねたい。ここに女一人、男二人でよくつるんでいる者はいないか?
「‥‥さぁねぇ?」
男はにやけながらそう答える。求めるものは金。それもそうだろう。
自分達の情報を冒険者ごときにタダで教える悪漢はいない。
小夜は幾らかを布で包み、バレないように男の懐に入れる。すると男も上機嫌で情報を提供する。
「確かにこの博打場に出入りしてるぜ。あの換金場の女とそこの中年親父二人だ。もっぱら何かアクドイ事してるって評判だ」
「名前は分かるか?」
「女は夢女。こいつが筆頭っていう噂だぜ?男二人は斗没卦と鈍十郎だ。夢女の手下だな」
「‥‥気の抜ける名前だな‥‥」
小夜は小声で呟くと、換金場の女を見やる。外見は町娘と思われるが‥‥。
「人は見かけによらず、か」
小夜は暫く接触せず、監視する事にした。
●左之との接触。結末は‥‥?
「さて、時は金なりといいますが‥‥この度の時間は金に変えられぬ佐之殿の命に直結します。急ぐとしましょう」
「任せたぜ、グリューネ!俺達もとっとと行こうぜ。早く見つけないと大変だ!」
グリューネ・リーネスフィール(ea4138)が白鷹に返信して宙へと舞う。
視力がいい鷹を選んだのはいい選択ではあるが、流石に探すのも苦労がある。
なんせ森は人が隠れられる程広く、深い森なのだから。
「左之はどこにいるのか‥‥。侍より先に見つけねばな‥‥。子供連れているようだし‥‥そんなに動いてはいないとは思うが‥‥」
森の中を散策しつつ、高町恭也(eb0356)が溜息をつく。
それを聞いて古神双真(eb0813)も苦笑を浮かべる。
「何かしら騒動に巻き込まれてやがるのな、アイツって?」
「でも、左之兄ちゃんの事だからきっと助けようとしてのトラブルだと思うんだ!だから、左之兄ちゃんも被害者‥‥!」
慌ててそう弁護する狼蒼華(ea2034)を双真が頭を軽く叩いて分かった分かったと苦笑を浮かべる。
「見つけた‥‥!
それから数分後して、グリューネが左之達らしき人物を見つけた。
子供は既に寒さで震えており、左之が宥めている状況だ。
グリューネルは一度旋回して他の人に合図を送ると、左之の前に降り立つ。
「あの、大丈夫ですか?」
「どわっ‥‥!?びっ、びっくりさせンじゃねェよっ!」
「そ、それはすみませんでした。左之殿、ですね?私は冒険者ギルドから救援を依頼されて参りました」
「ギルドからか!?そりゃァ助かったぜ!この三人のガキもこれ以上寒さには耐えれねェンだ。どうにか出来ねェか?」
「残念ながら今はどうにも。もうすぐ他の冒険者の方々も此方に駆けつけてくるかと思います。それまで、我慢出来ますか?」
グリューネが子供達に問うと、子供達も渋々頷くしかなかった。ここで駄々をこねても無駄だと察していたからだろうか。
「とりあえず私は旋回して彼等に合図を送っておきます。ですからもう暫くここで耐えていてくださいね?」
その頃侍達も左之を捜しに森へと踏み入っていた。
誠志郎がふと空を見上げると白鷹の羽がふと視界に入った。
(「グリューネル殿、見つけられたか‥‥しかし、後はどうやってこの侍を反らすか、だ」)
しかしそんな誠志郎の思考も、一つのアクシデントによって止められる事となる。
侍が左之がいると思われる地点に近づいていたのだ。
「紀殿‥‥!」
「ガマ、おいで」
しかしその選択がアクシデントへと繋がる事となった。
紀が体長3mの大ガマを召喚した瞬間。
「いやあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!おっきいかえるうぅぅぅぅぅぅっ!!」
子供のうち一人の女の子が大ガマを見て悲鳴をあげたのである。
これにも流石の役人達も反応する。
「しまった‥‥!?」
「今の声、子供の‥‥!?」
「まさか、左之兄ちゃん達見つかった!?」
「急ぐぞ!」
蒼華達も役人を避けながら左之の元へと急ぐ。グリューネもこの自体にびっくりして地に降りようとするがミミクリーを解くと衣服等もはがれてしまう。
その為、役人達に見つかると厄介な事になり兼ねない為降りれないのだ。
「っだぁぁぁ!折角黙らせておいたのにこれかよっ!?」
「左之兄ちゃん!」
「佐之‥‥お前は一体何をやっとるんだ」
「双真に蒼華か!?すっげぇ助かった!ガキども頼めねェか?こいつ等が居ちゃァ喧嘩も楽しめねェ!」
「行きつく所は結局はそこか‥‥」
恭也が少し呆れると、左之はへへっと笑いながら群れ来る下っ端の役人達へと突っ込んで行く。
誘導しながら森の外に出させようという魂胆らしい。
蒼華達は子供の子守を頼まれたものの、仲間と思われたのか下っ端達に囲まれていた。
ブラインドアタックでの居合いを決めながら双真は小さく溜息をつく。
「やれやれ。俺は役人ってのは嫌いなんだがなぁ‥‥」
「この状況じゃそうも言ってられないだろ?」
「とりあえず、左之兄ちゃんを追わないと!」
そう言って蒼華達も子供をそれぞれ一人ずつ抱きかかえ、走り出す。
その光景を見つけた侍も踵を返し森の外へと歩き始める。
「お前達には感謝している。奴を見つけてくれたんだからな」
そう言い残して。誠志郎と紀は少し呆然としているが、急いで蒼華達に合流すべく森の外へと走った。
●騒動の末
「おらおらァ!人の話聞かずに喧嘩売ってきたわりには手ごたえがねェじゃねェか!」
「あ、あのお兄ちゃん、大丈夫なのかな‥‥?」
「佐之兄ちゃんの事好きか?」
「左之っていうんだ、あのお兄ちゃん?うん、好きよ♪」
「俺も大好きだっ♪だから‥‥お前達を襲った悪い奴らを見たら、侍のおっちゃんにそいつらが本当に悪い奴で、佐之兄ちゃんは悪くないって事を言って欲しいんだ‥‥」
「もうすぐ小夜が此方に連れてくるはずだ」
「佐之兄ちゃんを助けてやってくれ‥‥頼む!」
蒼華が真剣に頼み込んでいるのを見て、腕の中にいた子供はにっこりと笑って頷く。
そしてそれと同時に小夜が三人のゴロツキをズルズルと引きずってその場に合流した。
「こいつ等が例の奴等らしいのだが‥‥どうだ、見覚えはあるか?」
そう言いながら男二人、女一人をぽいっと侍の前に投げ捨てる。
「あ゛っ!」
「このおじさん達だよ!お腹がすいたから何かくれっていって追いかけてきたのっ!」
「特にそのお髭のおじちゃん、面白い顔してるからよく覚えてるのっ!」
「!‥‥このスカポンタン!やっぱりアンタの顔じゃないかっ!」
「それは酷いですよ、夢女様〜‥‥」
既に半べそかいてる状態な男一人。
「これで分かったよな!?左之兄ちゃんは犯人じゃないって!」
「犯人じゃなかったにしても、そこの鳥頭は役人をぶン殴ってるワケだが。鳥頭に免じて許してやる」
「誰が鳥頭だ、誰がッ!?」
「箒頭の方がよかったか?‥‥何にせよ、この三人をひっとらえ‥‥」
その時である。大きな地響きが冒険者達に近づいて来る。
振り向くとそこにはジャイアントな浪人の姿があり、三人をひょいと捕まえると踵を返す。
「おい、手前!待て‥‥ッ!」
「こいつ等は脅しただけで「未遂」なんだべ?なら引き取っても問題ねぇべ?」
ジャイアントの男の言葉に言い返せない役人達と冒険者達。
「お前達、何時も何時もこんな面倒かけさせやがって‥‥お仕置きだべ!」
三人のゴロツキ達は棒に手足を結わえられ、まるで「豚の丸焼き」状態にしされて連れ去られてしまった。
一気に気力がガクリと抜ける。
「やれやれ。これでやっと俺も長屋に帰れるぜ。助かったぜ、ありがとな?」
「しかし、左之‥‥危ないところだったな。お前との再戦を約束したのにいきなり出来なくなるところだったぞ‥‥」
「俺だって好きでやってンじゃねェ!でも、ま。これで長屋に戻れるんだ、何時でも再戦してやンぜ?」
「おい、待て。お前は役場で事情聴取が残っている。ついてきて貰うぞ?」
「へっ。なんで俺が事情聞かれなきゃ‥‥ったく、面倒だぜ‥‥」
渋々白法被を着なおし、侍についていこうとする左之の裾をクイクイッと蒼華が引っ張る。
「お?どうした?」
「なあなあ佐之兄ちゃん‥‥兄貴って呼んでいいかな?」
「手前も物好きな奴だぜ‥‥好きにしろ。別に悪い気はしねェ」
左之の言葉に蒼華は狂喜乱舞のご様子だ。
そして侍は左之の背を押し、煙管を片手に呟いた。
「礼を言うぞ、冒険者ども。何時かまた会う日が来るやも知れん。その時には是非‥‥やりあいたいものだ」
こうして冒険者達は子供達を親御の元へと返し、一息ついたのであった。