【喧嘩屋・番外編】盗賊団の頭の恋の行方
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■ショートシナリオ
担当:相楽蒼華
対応レベル:1〜5lv
難易度:やや難
成功報酬:1 G 35 C
参加人数:8人
サポート参加人数:-人
冒険期間:02月27日〜03月04日
リプレイ公開日:2005年03月01日
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●オープニング
「はぁ‥‥」
とあるアジトみたいなボロ家で小さく溜息をつく一人の少女。歳は18といったところか。
膝裏まである長い髪を指で弄りながら何かに耽っているようだ。
「お頭ーーーー!大物とってきましたっ!」
「見てくださいよぉ〜馬二頭と金目の道具でしたよぉ〜♪」
「少し脅せば出すなんて、ちょろいですよ!」
「煩いなぁっ!少しは静かにしてよねっ!?」
少女が怒鳴ると3人の女はビクッ!として黙りこむ。
体つきはしっかりしているものの、どうやら彼女には頭が上がらないようだ。
「綺螺の姐御、最近元気がないねぇ‥‥」
「あの喧嘩屋って奴が来てからじゃないかなぁ?」
「だとしたら俺達の姐御をとるつもりなのかもしんないわよ!?」
何処をどう捻ってそうなったのかは分からない。
が、部下である男達はやる気満々のようだった。
「よし!こうなったら立派な悪事を働いて姐御に見直してもらうのよ!そうすれば姐御もとられないわっ!」
「そうだっ!あんなのより男らしい所を見せればいいんだよ!」
「私達はぁ〜女ですよぉ〜?」
「喧嘩屋左之‥‥僕の好み〜‥‥」
「‥‥そんなわけで。今回の依頼は今巷で騒ぎになっている紅蠍を捕まえて欲しいのです」
「紅蠍?」
「はい。女だけで構成された盗賊団という珍しいものでしてね。今この江戸で色々な騒ぎを起こしているのです」
ギルド員が冒険者にそう説明すると、冒険者達もはぁ‥‥と頷く。
「メンバーはある程度把握出来ていますが、どれも下っ端のようです。頭についての情報はまだ得られていません。貴方たちで見つけてくれると嬉しいのですが」
「しかし、どうやって‥‥?」
「直接部下を捕まえればいいと思います。方法は貴方たちに任せますから、よろしくお願いしますね?あ、資料は後で手渡しますから」
そういうと、ギルド員は冒険者達に深礼をする。
●リプレイ本文
「いい、茜、藍?私達が頑張ればやれない事はないわ!」
「そうね、碧!あたし達が頑張れば!」
「綺螺の〜お姉様にぃ〜認めて貰うのですぅ♪」
少女三人、結束は固い。目指すは獲物。
そしてそれは戦いへと発展していく。
●情報を得るべし!
「今巷で騒ぎになっている紅蠍?……そう言えば聞いたことがありますね。名前だけは」
神田雄司(ea6476)が暢気にそう言いながら空を見上げていると、野乃宮霞月(ea6388)が小さく溜息をつく。
「とりあえずまずは情報が必要だろうな」
「襲われた状況と手口を聞き出すが得策ネ」
マハラ・フィー(ea9028)の耳を隠しながら羽鈴(ea8531)がそう告げると、陰山黒子(eb0568)が一礼すると、素早く情報収集へと向かう。
「じゃ、私達も行きましょうか」
「あたしはマハラの手伝いをするわ。その方が言葉も通じるでしょう?」
瓜生勇(eb0406)の言葉に、マハラは喜んで頷いた。
その頃、霞月と雄司は酒場へと情報を集めに走っていた。
「邪魔するぞ?」
「ん?何だい?アンタ達、客じゃないみたいだけど‥‥」
「紅蠍って知ってるか?今そいつ等を追っているんだが」
「紅蠍?あぁ、有名だよ、そんな。ここら辺じゃ義賊だっていう話さね」
意外な情報である。盗賊と言う話をギルドから聞いていたのだが、義賊という情報が出てくるとは。
「しかし、ここ最近紅蠍はここを騒がせているとか聞いたんですけど‥‥」
「あぁ、それはね。確か三人娘がやってる事だって話は聞いた事あるねぇ?なんでも、商人単体を狙わずその屋敷を狙うんだとか」
「そういや、女将。さっきもそこいらでまた押し入られたって話だったんじゃねぇか?」
「そうそう!今もお役人が走り回ってるさね!」
女将がそう言うと、雄司と霞月は顔を見合わせ、現場の場所を教わり酒場を後にした。
マハラと勇は奉行所での聞き込みを実行に移していた。
最初はなかなか受け入れられなかったのだが、ねばり強さに負けたのか、情報を提供してくれる事となっていた。
「本当は冒険者なんかの手助けなんかいらないんだがね」
「まぁまぁ…そういわずに教えてくれるわよね?」
「紅蠍は元々義賊だという話でな。その頭である女は賊にするには勿体無い程の武を持っているっていう話だ」
「義賊ねぇ‥‥?それでも人の物を盗ってる事には変わり無いじゃない‥‥」
「自らの武を探しての事だろうとは思うがこのままのさばらせる事も出来ない。情報をくれてやるんだ、少しは役にたたれよ」
役人の刺々しい言葉が冒険者二人に突きつけられる。
結局めぼしい情報というものはなかなか得られなかったようだ。
狙う人に関して、特徴も何も無かった。
そして、全員が情報を持って集まったその時に。
その三人娘は現れたのだ。
●三人娘の脅威!
「きゃー!紅蠍よーーー!」
町に女性の悲鳴があがる。それを聞いて咄嗟に走り出す冒険者達。
そこにいたのは三人の娘。
「やったね、藍、茜!」
「はぁい〜♪やりましたぁ♪でもぉ、お客さんみたいですぅ〜?」
「粋な人ってのはね、泥棒なんてしないものよ」
百目鬼女華姫(ea8616)が三人娘の目の前に立ちはだかる。
その後ろからマハラから弓で藍に狙いをつける。
流石は忍といった所だろうか、ピクリと茜が反応して冒険者達に突っ込んで行く。
「藍、碧!防御体勢に入って!コイツ等、話し合い装ってやる気よ!」
「うわ〜卑怯さんですぅ〜!」
「いいから、離れるわよ、藍っ!」
「なっ‥‥単体で突っ込んできた‥‥!?」
勇がその攻撃を受け止めようとするが狙いは反らされた。
茜は素早く印を結ぶと、茜中心に竜巻が起こる。竜巻の術だ。
冒険者達は防御する間もなく上空に飛ばされた。
「しまっ‥‥!」
ドサリと地に落ちて、立ち上がろうとする冒険者達の目の前に藍が立ち塞がる。
その手に持たれた得物は斬馬刀。まさかあの少女がこのような得物を扱うとは思いもしなかっただろう。
「粋な人っていうけど!あたし達はこうでもしないとご飯食べれないんだからっ!」
「貴女達みたいに冒険者やって食べていくのにも抵抗あるしっ!」
「お姉様以外の人には命令されたくないのですよぉ♪」
藍がそう言うと、体勢を立て直した霞月がゆっくりと三人に歩み寄った。
「勿体無いね、若い娘らが闇に手を染めてるなんざ。望みは何だ?ちっとお頭に話があるんだが、いいか?」
「う?お頭とお話がしたいの?だったら最初からそう言ってくれればいいのにー!」
「そうだ、そうだ!いきなり人狙って弓射ろうとするなんてさ!」
碧と茜が少し口を尖らせる。その前で藍は相変わらずにっこりとしている。
警戒は解かず、得物はまだ手にしたまま‥‥。
●女頭と対話!
「そこのっ!ちょっと待ったあっ!」
その騒ぎを聞きつけて綺螺が駆けつけてきた。
長い髪を靡かせながら三人娘の前にズサァッと立ちはだかる。
「茜!藍!碧!これ、どういう事なんだよっ!?」
「アンタがお頭かい?」
「ん?君達は‥‥あ、冒険者の人かぁ」
綺螺がそう言うと、三人娘も警戒を解いたのか得物をしまう。
冒険者達もそれに習うのが普通だろうという事。戦意を消した。
「そーだっ!冒険者なら知ってるよね!?結城左之の事!噂だけでも聞いた事、ないかなぁ?」
「噂だけは聞いています。何でも江戸に留まるそうですよ」
九十九刹那(eb1044)がそう答えると、綺螺は笑顔を浮かべた。
「そ、それよりも盗んだものだけでも返して貰えませんか?困ってる人もいるので‥‥」
「‥‥へ?」
「だから、盗った物を‥‥
「極道が光って見えるのはね、どんなに苦しくてもお天道様のあたる道の際から外れないから。意地を通して際で踏みとどまっているからよ。さ、返して頂戴?」
女華姫の言葉に何があったのか察する綺螺。三人娘の方を見やると溜息をつく。
「君達‥‥誰が何時仕事しろっていったのさーーーーー!?」
「きゃー!?ごめんなさい、お頭ーっ!」
「だ、だってお頭、左之って奴に取られると思ってぇぇっ!」
「お姉様から離れたくないのですぅ〜‥‥」
この三人娘。よっぽど綺螺がお気に入りなのか口々にそう言う。
よく見ると涙目になっているのが分かる。綺螺はもう一つ溜息をつくと、碧が持っていた盗んだと思われる箱を取り上げ、冒険者達に渡した。
「それ、返しといてあげてよ。僕、こんな事しろって頼んだ覚えもないものだし」
「き、綺螺さんが話の分かる人でよかったぁ‥‥」
「でももう盗賊なんてやめた方がいいぜ?冒険者でもやりゃあいいじゃないか」
「ん、そう言ってくれるのは嬉しいんだ。僕もそうしたいとこなんだけどさ‥‥」
綺螺が何か言い難そうに口ごもる。そこに藍がひょっこり顔を出して言う。
「綺螺お姉様はぁ〜勘当されてるのでぇ‥‥あまり冒険者になって各地行くわけにもいかないんですよぉ〜」
「こらっ、藍!?」
「それに、あたし達もそうなんだ。親に捨てられて今までお頭に育てて貰っててさ」
「義賊の真似事するっていうから付き合ってるの。だってお頭っていい人だもん」
茜と碧がそう言うと、にっこりと笑顔を浮かべる。
そして、その騒ぎから数時間立っている所為で役人達も集まって来ているのが見えた。
「左之が江戸にいるっていう事が分かったんだ。それだけでもお手柄だよ。さ、そろそろ逃げるよ♪」
「ちょっと、待ちなさい!盗んだ罪ぐらい償って‥‥!」
「君達の武。未だ磨きが薄いと見た。僕と対峠するにはまだ役不足だよ。やる時はまた別の場所でね♪」
「お姉様〜いきますですよぉ〜♪」
斬馬刀を一気に振り上げて藍がソードボンバーを放つ。しかも陽動の為に。
そこに砂煙が立ち、冒険者達も後を追うのは不能となり、綺螺達を取り逃がしてしまう。
「何にしても、盗まれたものが戻ってきたっていうのはよかったわね」
「それでも、今回の分‥‥だけですけれどねぇ‥‥」
「あの綺螺っていう娘とはまた何処かで会える気がするな‥‥」
霞月の言葉に、冒険者達もそんな気を感じながら盗まれた品物を持ち主に返し始めるのであった。