【魔女一家】ニャンコ達の仁義無き戦い

■ショートシナリオ


担当:相楽蒼華

対応レベル:1〜5lv

難易度:やや難

成功報酬:1 G 35 C

参加人数:8人

サポート参加人数:-人

冒険期間:03月09日〜03月14日

リプレイ公開日:2005年03月11日

●オープニング

 場所は江戸から二日いった場所にあるとある村。そこには何故か西洋風の建物が一軒だけある。
 しかしその姿は少し崩れて見えている。
 そこには魔女一家が住んでいるという噂があった。

「マジョリーヌ様、そろそろ食料が底をついてきてるのニャ」
 猫耳のヘアバンドをつけた少女がそう言う。
 服装は西洋風で、まるで魔女みたいな格好をしている。手にはステッキが持たれていて、後ろには二匹の猫又‥‥といっても半人半獣だが。それを従えている。
「食料がかい?ジャパンに来てからロクな物とれてないからねぇ」
「そろそろ補充した方がいいと思うニャ。どうするかニャ?生贄探すニャ!?」
 ワクワクしながら尋ねる少女に、マジョリーヌが首を横に振る。
「そんな事したら面倒じゃないか。ニャンコ達にやらせればいいんじゃないかい?」
「まっ、また僕達ですかニャ!?」
「当たり前ニャ!何の為に雇ってるのニャ!?」
「分かったらさっさといっといで!村に行きゃ何かあるだろうしっ!」
 マジョリーヌの言葉に一目散に走り出す猫又二匹。

 そして川原で途方に暮れる。
「マジョリーヌ様は人使いが荒いニャ‥‥」
「人っていうか僕達は猫ニャよ‥‥?」
「就職活動、そろそろするニャ?」
 一匹がそう言うともう一匹もコクコクと頷く。
 しかし、その姿を見ていた草むらに隠れている猫又二匹がクスクスと笑う。

「ニャンコが就職活動だニャ!」
「これを妨害するとご褒美貰えるかもニャ!?」
 どうやらこの二匹の敵であるらしい。

「ねぇねぇ。さっき不思議なの見たよ〜?」
 シフールの男の子がギルド員にそう告げる。不思議なものを見慣れているとはいえ少し興味惹かれたギルド員は作業の手を止める。
「なんかねー…体半分だけ人間って感じな猫又?うん、そんな感じのが川辺で就職活動だー!とか」
「‥‥まさか、まだロクに化ける事が出来ない猫又ですか?しかし、そんな状態では就職活動だなんて‥‥」
「でもやる気満々みたいだったしー‥‥あ、他にも!その猫又を妨害しようとしてる猫又もいるみたいだったよ?やる気出てるのに削がれちゃうの、可哀想だよ?」
「‥‥確かに。無駄だと分かっていてもやりたいのでしょうしね」
「確か、あの猫又達‥‥マジョリーヌっていう魔女の下っ端だったと思うよ?思いなおさせてあげるのも手かもね?」
 そう少年に言われてギルド員も少し可哀想になったのか、張り紙を出す。
『猫又二匹の就職活動の手伝い。又は説得』
という文字と共に。

 こうして、ニャンコ達の就職活動の抗争が始まるのである。

●今回の参加者

 ea0660 鎮樹 千紗兎(36歳・♀・浪人・人間・ジャパン)
 ea1542 ディーネ・ノート(29歳・♀・ウィザード・人間・イギリス王国)
 ea5148 駒沢 兵馬(56歳・♂・浪人・人間・ジャパン)
 ea5480 水葉 さくら(25歳・♀・神聖騎士・人間・ジャパン)
 ea9490 拝峰 黒音(35歳・♀・僧侶・人間・ジャパン)
 ea9491 拝峰 巫女乃(29歳・♀・僧侶・人間・ジャパン)
 eb0188 ゲオルグ・バンガード(15歳・♂・バード・ハーフエルフ・ロシア王国)
 eb1172 ルシファー・ホワイトスノウ(30歳・♀・神聖騎士・人間・イギリス王国)

●リプレイ本文

 猫又を就職させる為に依頼を受けた冒険者達。
 しかし、ロクに変身出来ず顔だけ猫の彼等を何処に転職させるのかが問題でもある。
 顔が猫の為、普通の場所では就職出来ないだろう。
「冒険者達が来てくれたニャ。どうするニャ?」
「仕事口探すしかないニャよ〜」
「でもマジョリーヌ様、怒らないかニャ?」
「きっと僕達の事なんて気付かないニャ」
 猫又達がそう話しているのをルシファー・ホワイトスノウ(eb1172)が微笑んで言葉を紡ぐ。
「貴方たちには幸福を追求する自由があります。幸せを望むのなら私たちが力になりますよ。まず外見が猫ですから、子供にウケるかもしれませんから、保父とか子守りとか。あと、鼠を捕るとか? …鼠は生がお好きですか?」
「でも、それは難しいと思うニャ〜‥‥」
「人間は僕達を嫌うニャ。普通の子供の親なら不気味に思って引き離されてしまうニャ‥‥」
 そう。彼等はただの猫ではない。
 猫又という『妖怪』なのだ。普通の人間に雇って貰えるわけが無い。
「バードなればどこでも仕事ができますから、それにどこでも誰でも何かを感じる『心』は同じですから」
 ゲオルグ・バンガード(eb0188)は猫又達に歌を教えようとしているようなのだが‥‥。
「ぼ、冒険者なんかは‥‥ど、どうでしょう‥‥?」
「それは僕達も考えたニャ」
「でもギルドの人達は『妖怪なんか冒険者として認めていると仕事が来なくなる』って怒られたニャ‥‥」
「やっぱりマジョリーヌ様のとこしかないのかニャ‥‥」

 その時、水葉さくら(ea5480)が物音に反応してブレスセンサーを発動させる。
 辺りを見回すとそこに二つの反応が見えると、ごそごそとさくらは着替え始めた。
「こ、これなら‥‥きっと‥‥!」
 丸ごとネズミーに着替え、簗染めのハリセンを片手に囮となって待機する。
「ニャ!ネズミニャ〜〜!」
 予想通り猫は誘きだされる。そして、ネズミーなさくらに飛びつこうとした瞬間、ハリセンが一閃される。
「ニャーーーー!痛いニャーーー!」
「貴方達があの二匹を邪魔しようという猫さん達だね?」
「あ゛っ!あの二匹の猫は違うのニャ‥‥!」
「あの2匹の鼻をあかせば、ご主人様のまじょりーぬさんに褒めてもらえるかもよ〜」
 鎮樹千紗兎(ea0660)が提案するが、別の猫又二匹はふるふると首を横に振る。
「その二匹はマジョリーヌ一家の者でも俺達は違うニャ!」
「そうニャ!マジョリーヌに褒められても嬉しくないのニャ!」
 そう言い残して姿を消してしまう。
 これでは結局邪魔されてしまう。
 しかしそれでも優先は猫達の就職である。
 ‥‥しかし、詳しい就職先が提案出来ないでいる冒険者達。
 どうすればいいのか。
 とりあえずしらみ潰しによる面接であろうか。

 そんなとりあえずを信じてその村の道具屋なりしらみつぶしに捜し始める冒険者と猫又達。
 途中で変身し直したりと頑張るものの、やはり顔だけ猫である。
 ディーネ・ノート(ea1542)も周りに妨害する猫又達がいるかも知れないという事で猫じゃらしを手に持ち、フリフリさせながらだ。
 駒沢兵馬(ea5148)も猫又達に色々話を聞きながらである。
「つまみ食いとかせぬのなら料亭なりいけるのじゃが‥‥」
「我慢しようと思えば出来るのニャ!」
「でもお魚の匂いはどーしても我慢出来ないのニャ」
 結局猫の本能が邪魔してしまうようだ。
 これで料亭の仕事もダメとなってしまった。
「やはり猫又の就職は難しいのでしょうか」
 拝峰黒音(ea9490)がポツリと呟いたのを拝峰巫女乃(ea9491)の木刀が黒音の頭を小突く。
 この姉妹、まともに依頼を受けているように見えるのはきっと妹の方だけだろう。

「さてさて、あの猫又二匹がどう就職するのか楽しみニャね♪」
「俺達猫又がまともに働けてるのは魔女のお陰って知らないからニャ、あの二匹は?」
「じゃあどうするのニャ?」
「あのまま動けば保健所行きニャね♪とりあえず妨害するニャ♪」
 冒険者と猫又二匹はある程度の店の面接を受けたのだが‥‥。
「猫又!?ダメダメ!そんな妖怪が店にいたら客が寄り付かないわ!」
「妖怪を雇わせようとするなんてアンタ達どっちの味方なんだ!?」
「妖怪なんかがいたら子供が泣いちゃうわ。ダメに決まってるでしょ?」
 と、この有様。
 流石にロクに変身出来ない猫又の就職は難しい。
 猫の顔をお面と言っても、「それを脱げ」と言われればオシマイだった。
「本当にどうしましょう‥‥?」
「このままなら私の寺小屋で雇うという手もありますが‥‥」
 しかし、千紗兎の寺小屋に通う子供達もまた普通の人間の子供である。
 もしそこに妖怪が雇われていると聞けば、その親達は確実にその寺小屋から子供達を遠ざけるであろう。
 そうなったら生業にもなりゃしないのである。

「あーっ!見つけたわよ、猫又ッ!」
 一人の女性が猫又二匹に走り寄ってくる。
 しかも怒りの表情。何が起こったのか、猫又二匹は分からないでいるようだ。
「アンタ達でしょ!?あたしが焼いてたお魚とったの!?」
「え、とってないニャ!!」
「そうニャ、無実ニャ!」
「何が無実よっ!アンタ達そっくりっていうかアンタ達そのものな猫又があたしの魚取っていったの見たんだからね!?」
「まさか‥‥」
 ディーネはすぐに察する事が出来た。
 邪魔してくるというあの猫又二匹だ。
 女性はとてもご立腹。町中で色々悪戯している所為なのか、二匹の就職はこれで確実に無理なものとなってしまった。
 猫だからといって猫じゃらしや猫まんまといったものに少し頼りすぎたのかも知れない。
 実力行使が好ましかったといえるだろう。
「やっぱりマジョリーヌ様の所に戻るニャ‥‥」
「人使いが荒くても、お給金はちゃんとくれるしニャ‥‥」
「全く!何処に行ったニャ!?仕事頼んでもこなせない猫又ニャんて情けないニャ!」
 遠くからそんな声が聞こえると、猫又二匹はビクッと背筋を震わせた。
 どうやら雇い主らしい。

「ほら、これを持っていきなさい♪」
 ディーネがまとめておいて自分達の食料を手渡す。
 猫又二匹は嬉しそうに頷いてその主人の下へと駆け出して行った。
「お?お前達そこにいたニャ?お仕事はどうだったニャ?‥‥でかしたニャ!今日のお給金はお魚にしてやるニャ!」
 遠くから聞こえるそんな会話。
 やはり猫又達は魔女の下でなら働けるらしい。
「‥‥でも、就職させてあげたかったですね」
 そうは言っても、具体的な就職先を出してあげれなかった冒険者達。
 それを少し悔やみながらなのであった‥‥。