【喧嘩屋】決闘?喧嘩屋vs盗賊娘
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■ショートシナリオ
担当:相楽蒼華
対応レベル:2〜6lv
難易度:難しい
成功報酬:1 G 69 C
参加人数:8人
サポート参加人数:-人
冒険期間:03月18日〜03月23日
リプレイ公開日:2005年03月22日
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●オープニング
「左之‥‥僕はやっぱり会ってみたい!」
綺螺の突然言い出す言葉に近くにいた三人娘もビクリと背を震わせる。
遂にこの時が来てしまったか、と。
ここは紅蠍がねぐらとしている誰も住んで居ない廃寺の一角。
そして綺麗螺は紅蠍のお頭だ。
そもそも紅蠍というのは今巷を騒がしている盗賊団だ。義賊という話ではあるのだが。
「お姉様、何を言い出すのよ!?」
「そうよ!左之って奴もきっとくだらない男ですよ!」
「それでも僕は会ってみたいんだ!会って、その武が本物かどうか見極めたい!」
「本物なら〜どうするおつもりですぅ〜?」
「‥‥嫁入りを考えるッ!」
『えぇぇぇぇっ!?』
突然の言葉に驚愕の声を出す藍、茜、碧。
この三人娘は綺螺の部下とも言える娘達である。
驚くのも無理はない。それもそのはず。
会って、決闘して、本物なら嫁入りとか言い出すのだから。
綺螺が大好きな三人にとってはとてつもなく嫌な事この上ない。
「とりあえず!決闘って言ったら決闘だよ!藍、茜、碧!とっとと支度して!」
そして次の日、喧嘩屋、結城左之の元に一通の文が届いたという。
そしてそれを持って左之は冒険者ギルドで溜息をつく。
「見てくれよ、コレ‥‥」
『冒険者をも唸らせるその腕が本物であるかどうか確かめたい。明日、町外れの荒野まで来られたし。そこで汝の武、見極めん 紅蠍』
ギルド員が読みあげると、左之は大きく頷く。
「決闘を申し込まれるなんざ喧嘩屋やってちゃあンま珍しくはねェンだ。ねェンだが、流石に派手過ぎる喧嘩ってェなると役人が何かとうるせェだろ?」
「確かに‥‥」
「それに紅蠍っていやァ、女が頭だろ?女と喧嘩なンざァ俺は好かねェンだよなァ‥‥」
「紅蠍という事は、彼女達もきっと来るんでしょうねぇ‥‥」
一枚の報告書を読みながら溜息をつく。
街中で派手な技・術をぶっ放してくれたわんぱく少女三人組だ。
「でもよ、俺としては‥‥真正面から売られた喧嘩だ。買いとりてェンだがそのわんぱく三人娘がちょっかい出してきやがると思うンだ。そいつ等を冒険者に食い止めて貰いてェ」
左之がそう言うと、ギルド員も納得してギルドに張り紙を出した。
●リプレイ本文
「応、来たか!今回は護衛、宜しく頼むぜ?」
「‥‥お前とことん人災呼ぶよな」
第一声をかけたのは古神双真(eb0813)である。過去数回この左之関係で依頼をしている冒険者だ。
今回も双真と同じような冒険者が数人混じっている。
「毎度毎度、色んな厄介ごとに巻き込まれるのが好きな奴だな‥‥お前も‥‥」
「だぁぁ!俺は好きで巻き込まれてるワケじゃねェッ!」
地団駄を踏みそうな彼、結城左之を宥め、冒険者達は指定された荒野へと急ぐ事にした。
その道中、待ち構えている者達がいるとは知らずに‥‥。
荒野へと向かう道。街の外に出て暫く歩く。
何事もない静けさ。左之も少し欠伸をする。
「何も、起きませんねぇ‥‥?」
「このまま、何事もなければ良いのですが‥‥」
その時だ。ケイン・クロード(eb0062)と風月陽炎(ea6717)の前に一本の矢が勢い良く突き刺さる。
ふっと辺りを見回すと、そこにあの三人娘‥‥藍、茜、碧が立っていた。
「これ以上そこのヒトを行かせるわけにはいかないのっ!」
「私達だって、姉様が好きなんだからっ!」
「今回はぁ〜本気でぇ、いきますよぉ〜♪」
「やっぱりきたネ!」
「あぁ、俺達だって本気で行かせて貰おうッ!」
こうして、荒野前の闘いが始まるのであった。
●斬馬刀娘!藍の陣!
「前回は仲間が失礼をしたネ許して欲しいネ。今回はどの様な用件でこの場に来たね?私達は喧嘩に水をさして欲しくないだけネ。妨害で無いなら私と一緒に華見をしながら団子でもどうネ。3人の分もアルね」
「わぁ、お団子ですぅ☆」
「藍!しっかりやんないと後でお仕置きよっ!?」
「ふえぇ!?おっ、お仕置きはイヤイヤなのですぅっ!」
羽鈴(ea8531)の誘いに乗ろうとしていた藍に、茜の渇が飛ぶ。
流石に藍も茜が怖いのか、すぐに戦闘体勢に入る。しかしその姿はおっとりとしていて隙がある。
「来たか‥‥。斬馬刀‥‥あいつの相手は俺だな‥‥。行け、左之。あいつの相手は俺たちでする‥‥」
「うぅ〜!こうなったらやっちゃうのですよぉ!」
ズシリと重い、その得物を軽々と持ち上げる。それなりの力は備わっているようだ。
「人は見かけによらないとは言うが‥‥その言葉どおりの奴だな‥‥。まあ‥‥それでも油断できる奴ではないな‥‥」
「いっきまぁ〜すっ♪」
大きく振り上げると、藍のソードボンバーが大地を揺らす。その衝撃波に高町恭也(eb0356)はかわし切れずダメージを食う。
しかし、鈴はと言えばそれを身軽に避け、藍の懐へと飛び込む!
「お姉様以外に命令されたくはないとこの間は言ったネ。なのに三人揃って綺螺姉さんの喧嘩の願いを妨害する、面白いネ。3人の中では一番冷静に見えるね、返答願いたいネ」
「これとそれとは別なのですぅ〜!お姉様がぁ‥‥大好きだからぁ〜‥‥だからぁ!時には命令違反してまで守りたいのですよぉっ!」
今までとは違う気迫を鈴は間近で感じ取った。
大切な者を、自分達の手で守ろうとする事。悪い事ではない。しかし、望んでいるものを妨害するのもどうだろう‥‥。
「貴方にだってぇ〜‥‥譲れないものがあると思いますぅ!」
接近してきている鈴を見て、得物を素早く大地に突き刺し、隠していた小太刀でブラインドアタックを仕掛ける。
流石に予測外の攻撃の為、鈴も少し呼吸を乱しかすり傷を負ってしまう。
「くっ‥‥こうなったら槍でなんとかするネ‥‥!」
「させないですぅ!」
藍が得物を大地からもう一度抜き取り、槍と斬馬刀が相殺する。
流石に斬馬刀を軽く扱える程の力がある藍により、短槍は軽く欠けてしまう。
「我が斬艦刀に斬れぬものなし!‥‥でしたっけぇ?あれ、違いましたぁ〜?」
首を傾げて少しとぼける藍。
「確かに譲れないものはある。そして、それが奪われかけた時、俺もどういう行動をするか分からない。だが‥‥」
「‥‥ッ!」
「そいつが望むものを奪う権利は、誰にもないはずだ」
得物を手にしていた藍の手から、得物が落ちる。背後から仕掛けられた、恭也のディザームだ。
藍は小さく項垂れると、少し寂しそうな顔をしていた。
「‥‥やれやれ。さてと‥‥左之はどうなった、か?」
一人目。藍撃破。
●封じろ、旋律の矢!碧の陣!
「藍ッ!?んもぅ!あの子ったら余計な事ばっかり!」
「うおぉぉぉぉ!」
太丹(eb0334)が一気に碧へと矢を受けながらも駆け抜けてくる。
その凄まじさに碧も少したじろくが、逃げずにまた弓を引く。
「通常がダメなら‥‥!」
「むっ?何するっ気スかね?んでも接近してしまえば‥‥!」
「弓師だからってぇ‥‥ナメんじゃないわよッ!」
シュンッと音をたて、矢が丹に飛来する。もうすぐ捕まえれる!という位置でもあった為避ける事は不可能。
そして、その矢は‥‥丹の片足に綺麗に刺さる。シューティングポイントアタックだ。
「ぐっ‥‥!これしきの事で‥‥!」
「まだ動くの‥‥!?」
弓が捕まえられると同時に、碧はもう一度矢を放つ。次はもう片方の足に命中する。
それと同時に弓はへし折られてしまった。
「んもぅ!その弓、高かったのにどーしてくれんのよ!?」
「厄介な技を持っていますねぇ‥‥報告書にはなかったのですが、なるほど‥‥」
「絶対にあたしは退かないわよ!あたし達は姉さんを渡したくないんだからッ!」
「その熱意に対して、全力でかからなければ失礼にあたりますねぇ‥‥」
構える陽炎を見て、緑は矢をぎゅぅっと握り締める。弓はもうそこにはない。残るものは、矢のみ。
「いきますよ!」
碧の懐に飛び込み、スタンアタックを繰り出そうとする陽炎のその攻撃を碧はギリギリでかわす。
そして、その肩に握り締めた矢をすれ違い様に突き刺す。
弓師というだけあって身軽なものだ。
「くっ‥‥!いい加減に終わらせてしまわないと、被害が大きくなりますからね!」
「しまっ‥‥!」
ダブルアタックを仕掛けようとする陽炎を見て、碧は思わず歯をギリッと食いしばる。
その姿を見て、陽炎はその攻撃をすんでの所でピタリと止める。
「流石にもう戦意はないようですし‥‥これぐらいにしておきます。藍さんを見てやっていてください。とても、寂しそうですから」
「‥‥完敗、だわね‥‥」
二人目、碧撃破。
●疾風の忍!茜の陣!
「藍!碧!ぅぅ‥‥私だけになったって、諦めないんだから!」
「‥‥下らねぇな、あいつは満足行く喧嘩を出来れば良い、邪魔立てしても手前の頭は喜ぶと思ってんのか?」
「アンタ達はそれでいいかもしんない!でも私達にとっては‥‥下らなくなんか、ないっ!」
その言葉に後ろで守られていた左之がピクリと動く。何かを感じたのだろうか、前に出る。
「だっ、ダメですよ、左之さん!」
「大人しく後ろでいて貰わないと‥‥!」
天風誠志郎(ea8191)が静止しようとした瞬間の出来事だ。物凄い速度で茜が左之へと走り出していた。
「しまった!左之兄貴、逃げて!」
「疾走の術か‥‥!」
「こっのおぉぉぉ!」
印を結ぶ茜を見て、狼蒼華(ea2034)は回りの冒険者に目で合図をする。
双真も地面に刀を刺し、耐久の体勢へと変える。
その直後、茜の竜巻がその場を包む。
誠志郎とケインが左之を庇うようにしてなんとか耐えているが、その身体は傷だらけ。
後、ケインのポーションが役に立ったので、無事ではあるのだが。
「人が本気の思いで戦うってんだ、それを邪魔する奴はゆるせねぇ!ましてやそん人が本気で大切ならちゃんと目ぇそむけずに、その人の思いの決着を見届けてやるのも大切なことだぜっ!」
蒼華が茜に向かってオーラショットを放つ。それを援護するかのようにケインと誠志郎が退路を断つ。
茜はまともにオーラショットを足に喰らうと、少しよろけて地面に座りこむ。
「私だって、見届けたいよ!でも‥‥でも‥‥こうやって何かで決着つけなきゃ!私達の心の整理、出来ないよぉ‥‥!」
涙を見せる茜を見て、ケインの罪悪感がズクリと痛む。
「もう、これぐらいにしませんか?彼女達も邪魔する事はこれでないんですから‥‥」
「ま、それもそうか。左之、行くぜ!お前達三人も来いや。ケジメとして勝負、見届けてやれや」
双真の言葉に、三人娘も小さく頷いた。
三人目、茜撃破。
●最終の陣。武の衝突
荒野になんとか辿りつくと、そこには既に綺螺が待ちうけていた。その目は、真剣な眼差しで。
「やっと来たね。逃げられたんじゃないかと心配したよ」
「逃げるだ?俺が?へっ!楽しそうな喧嘩だ、逃げるわけねェだろ?」
左之のその言葉に綺螺は少し嬉しそうな表情を見せ、そして構える。
「君の武‥‥僕に見せて貰いたいッ!」
「さて、俺達は観戦といくか‥‥」
数刻後。左之と綺螺、二人の勝負はついた。
綺螺も格闘家。左之と互角の戦いを繰り広げていた。
そんな光景を、蒼華はとても大はしゃぎで見ていたため、他の冒険者達は蒼華を止めるので精一杯だった。
「僕の、負けだね‥‥スタミナが君に追いつけていない‥‥」
「ンな事ねェよ。お前の喧嘩、しっかりと見させて貰ったぜ?楽しい喧嘩だった!」
「やっぱり‥‥僕は君に惚れた、よ」
「がるるるるる!」
綺螺が左之に言葉をかけた途端、蒼華が綺螺に威嚇する。まるで嫉妬の塊を表に出しきってる状態だ。
「な、何、この子?僕だって諦められないんだからねーっ!?」
「左之兄貴は俺のだーっ!」
「くぅっ!早くもライバルー‥‥!?」
賑やかな二人を放置して、他の冒険者達はやっと一息つけていた。
「何にしても、決着がついてよかったよかった‥‥」
「さて、左之さん。次は私と勝負して頂きましょうか」
「へ?」
「申し訳ありませんが、私の喧嘩、買って頂きたい。そう言ってるんです」
「や、やっぱりこうなるのか‥‥?」
半分頭痛、半分涙で誠志郎が溜息をつく。
その喧嘩により、冒険者達が帰路についたのはすっかり日が落ちてしまった頃だったという‥‥。