小さなプレゼント

■ショートシナリオ


担当:相楽蒼華

対応レベル:フリーlv

難易度:易しい

成功報酬:0 G 65 C

参加人数:6人

サポート参加人数:-人

冒険期間:11月10日〜11月15日

リプレイ公開日:2004年11月16日

●オープニング

昼下がりのギルドにその場にそぐわない子供がいた。
まるで何かを探すかのようにキョロキョロと辺りを見回して。

冒険者達は不思議そうに眺めていたのだが、暫くするとその子供と目が合った。
子供は嬉しそうに、でも内心オドオドしながらも近づいてくる。

「冒険者さんに、お願いがあるの!」
勇気を振り絞って出した声なのだろうか。少し震えている。
冒険者達は顔を見合わせてから子供に視線を向け、優しく首を傾げる。
話を聞いてみよう、というのだろう。

「あのね、もうすぐアタシのおにーちゃんの誕生日なの!それでそれで、贈り物に困ってて‥‥その‥」
もごもごと少し言葉を濁らせる。冒険者が集うこのギルドに
誕生日の贈り物の相談に来た、という事らしい。

自分で考えてはみたものの、結局決まらず。
泣きながらこのギルドに来たというのだ。

「き、きっとおにーちゃん達ならどんなのがいいか分かると思うの!だから、だから‥‥一緒に考えて欲しいなっ?」

子供は柔らかい笑みを冒険者達に向けた。

‥‥子供の笑顔も時には武器となる。

●今回の参加者

 ea0050 大宗院 透(24歳・♂・神聖騎士・人間・ジャパン)
 ea0085 天螺月 律吏(36歳・♀・侍・人間・ジャパン)
 ea1569 大宗院 鳴(24歳・♀・志士・人間・ジャパン)
 ea2557 南天 輝(44歳・♂・浪人・人間・ジャパン)
 ea3547 ユーリィ・アウスレーゼ(25歳・♂・バード・エルフ・ロシア王国)
 ea8078 羽鳥 助(24歳・♂・忍者・人間・ジャパン)

●リプレイ本文

 子供の依頼を引き受けてくれた冒険者達。その冒険者達を見て、子供はにっこりと笑ってくれた。
 冒険者達はそれぞれの案を持ち寄り、一人ずつ子供に提案・町を歩いてみることにした。

●タイのお頭とタイの子分?
「迷子になったらだめなのだ〜オイラと一緒に歩くのだ〜★」
 ユーリィ・アウスレーゼ(ea3547)が少女と一緒に手を繋いで歩く。少女もユーリィの面白い変わった話し方に警戒心を解かれ、一緒に「なのだ、なのだ!」と言って歩いている。
「オイラ、贈り物はモノだけじゃないと思うのだ★だから、子供ちゃんも気持ち渡してみてはいかがなのだ?」
 ユーリィが歩きながらさりげなく提案する。少女は小さく頷いて、それでもまた悩み始める。
「でも、お兄ちゃんには何時もお世話になってるから、何かあげたいの!役に立つもの、あげたいの!」
 必死に手をぶんぶん振って話す少女は、言った後に首を傾げた。
「お兄ちゃん、お兄ちゃんも協力してね?渡す時、ちょっぴり恥ずかしいなの‥‥」
 ちょっぴり頬を赤らめて、少女はユーリィにそう伝えた。ユーリィは微笑ましい行動を見せる少女ににっこりと明るい笑みを向け、大きく頷いた‥‥。

●頼もしいお兄ちゃん
「可愛い奴だな。俺は南天輝だ、俺には一回りほど離れた2人妹がいてな同じ様に悩んだ事があるんだ」
 南天輝(ea2557)が少女の頭を撫でて、肩車をする。少女は嬉しそうにキャッキャッ♪と笑っている。
「そういやぁ、お前の兄貴は何が好きなんだ?」
「あのね、お兄ちゃんはね、お侍さんが好きなの!」
 ‥‥お侍が好き‥‥。確かにこの時代の江戸の子供は、皆侍に憧れる時がある。それと同じなのだろう。
「へぇ、侍が好きか。侍にも優しい心っていうもんが必要だからな、プレゼントは花なんてどうだ?なんだったら、俺も一緒に行ってやるよ。それと俺にゃ、報酬はいらないからな?お前がプレゼントを買う時用にでも使ってくれ」
「ホント!?じゃあ、お花摘む〜っ♪」
 簡単に決めてしまう少女。輝の事を気に入ったのだろうか、肩車からもなかなか降りようとはしない。仕方なく、そのまま花を摘みにいく事にした。小さくて、可愛い一輪の花を‥‥。

●プレゼントは笑顔
「ん、まずは名前を聞かせてもらってもいいかな?」
 少女の目線の高さまでしゃがんで微笑を浮かべる天螺月律吏(ea0085)。少女はチラチラと律吏を見ながら答える。
「優衣‥‥っていうの」
「優衣か。私は天螺月律吏。律吏、とでも呼んでくれ」
 まずは名前の交換をした二人は、ゆっくりと町の中を歩き出す。
「ところで、優衣の兄上殿は何歳なのだ?」
「うんっとね‥‥両手の数なのっ!」
 つまりは10歳。少女はその兄を誇りとも思っているようだ。
「確か、輝殿の時には侍が好きとか言っていたな‥‥では、寺院のお守りというのはどうだろうか?冒険者がよく世話になっていてな」
 微笑を浮かべ、律吏がそう告げると少女は大きく頷いて、一緒に買いに行く事になった。律吏は少女を抱きかかえ、寺院へと向かう。寺院に足を踏み入れると、そこは参拝者達で賑わっていた。
「ほら、これだ。お金は‥‥優衣、ちゃんと持ってるか?」
 律吏の声に、少女は首からぶら下げていた巾着袋を取り出す。少女がお守りを買うと、律吏は抱き上げたまま、仲間が待つ場所へと急ぐ。
「こうしていると、思い出すよ。私にも弟と妹がいてな。二人が笑っていてくれれば私は幸せだったよ」
「じゃあ、優衣も笑ってあげたらお兄ちゃん、喜ぶかな?」
「どんな兄でも、妹の笑顔は宝物になると思うぞ?」
 律吏の言葉に、少女は安心したかのような笑顔を見せた‥‥。

●大将、苦悩する
「うわ〜。か〜っわいいな〜!優衣っていうんだっけ?」
 律吏とバトンタッチした羽鳥助(ea8078)が少女を見て嬉しそうに笑っている。
「歳も10歳っていうし、手作りの玩具とかどう?俺、一緒に作ってあげるよ!」
「ホント?ありがとうっ♪でも、どんなの作ればいいのかな〜‥‥?」
 その言葉を待っていたのか、助は少女の手を引いて町の外れにある林へと連れて行く。この林は町からそんなに離れてはいない為、子供達の秘密の遊び場やらがあるらしい。優衣もどうやらこの場所の事は知っているようだ。
「よし!じゃあ二人で一緒にピカピカのどんぐり探そう!」
「ピカピカのどんぐり?どんぐりさんを探せばいいなの?」
「とれたら俺のとこに持ってきてな?作り方、教えてやるから♪」
 ‥‥まるでこの二人が兄妹に見えてしまう。歳が近いからだろうか?
 少女はいっぱいとれたぴかぴかのどんぐりを助に差し出して笑って見せた。
「んじゃな、この爪楊枝をどんぐりにこう刺すんだ。ほら、駒が出来た♪これを数個作って‥‥後は、そだなぁ、綺麗な石でも探すか?綺麗な石を布で包んで、優衣のお祈り込めて渡すんだ♪」
 侍を夢見る少年への小さな気配りだろうか。助も苦悩の末に出した提案に、少女もそうする、と言わんばかりに河原へと向かい、助と遊びながらプレゼントを集めたという‥‥。

●洒落たプレゼント??
「全く何を送ればいいのかわかりません‥‥」
 他の冒険者達が少女を連れ回している間、ずっと考えていた大宗院透(ea0050)が口を開いた。小さい頃から忍として生き、女装して正体を隠しているのだとか。一歩間違えれば女装癖有りの危険な人だ。
「貴方の兄というのはどんな人なのですか‥‥?」
「んっとね!優衣を守ってくれるお侍さんなの!」
 ‥‥子供の発想力には恐れ入る。自分のお侍という事を、遙はどうやら理解出来なかったらしい。
「わたくしも兄がいるのですが、一緒に考えましょう」
 大宗院鳴(ea1569)が少女のお願いに共感して、一緒にプレゼントを考え始める。
「お兄様はどの様な物、または事が好みなのですか?」
「お兄ちゃんは、お侍さんが好きだから竹刀とか大好きみたいなの。何時も手に持ってるんだよ〜?」
「わたくしはどの様な物でも愛しい人からの贈り物は嬉しいと思いますが、手作りのものなどはどうでしょうか。自分の思いを添えるなど、いいと思いますわ」
「なら、駄洒落の本はどうでしょう?売ってないと思いますし‥‥自分達で作れば‥‥」
 自分で作るプレゼント。子供にとっては、それも自分で楽しめるようになるかも知れない。
 鳴もそれなら賛成だ、と四人で駄洒落の本と詩集の本を作り始めた。質の悪い紙ではあるが、手に入っただけでも幸運ものだ。
 作り終えると、少女はありがとう。とお礼を言って、神社へと走り出した。

●贈り物
「お兄ちゃん!」
「優衣!?ドコいってたんだよ、心配したじゃないか!」
 腰に竹刀を差して、まるで侍を真似るかのような姿をした少年が走ってきた少女に少し怒ったように言う。
「まぁ、怒らないでやって欲しい。優衣も悪気があって彷徨いていたわけではないのだし‥‥」
「それに、俺達がちゃんと面倒見てたから心配すんなよ」
 宥めるかのように輝と律吏が少年に言う。少年は、安堵の息をついてぺこりとお辞儀を冒険者達へとする。
 少女は、恐る恐る兄である少年の服の裾を引っ張った。
 少年は少女を見下ろして首を傾げる。
「ん、なんだ?」
 すかさずユーリィは用意していた三味線を、輝は横笛を取り出してさりげなく演奏して雰囲気を盛り上げてやる。
 少女は、その気遣いに感謝しながら、少年に今まで集めてきたプレゼントを差し出す。
「これは‥‥どんぐりの駒と、花‥‥それに小石と、お守り?こんなにも一体、どうしたんだ?」
「お兄ちゃん、あのねあのね‥‥?お、お誕生日おめでとうなのっ!」
 少女が勇気を出してそういうと、少年はハッとしてプレゼントと少女を見やった。自分の誕生日が近いのを忘れていたようだ。
「これ、にーちゃんにくれるのか?それにこの駒なんか、手作りじゃないか!怪我、しなかったか?」
「大丈夫だよっ。助お兄ちゃんが一緒に作ってくれたの〜♪」
「本当にありがとうございます。皆さんにはなんと言っていいか‥‥!」
「いい妹チャンもったなのだ★これからも仲良くしていって欲しいのだ★」
 三味線を弾きながらも、ニカッと笑うユーリィを見て少年も大きく頷く。
 そして、何かを決意したかのように、貰ったプレゼントを両手で抱きしめた。
「俺‥‥絶対立派な侍になってみせますっ!その時、皆さんのように弱い人達の助けになって、妹やみんなを守れるようになりますっ!」
 そして、二人の兄妹は手を繋いで夕暮れの町へと帰っていく。
 それを見送る冒険者達は、二人の背を微笑ましく思っていただろう。
 そして、自分達の妹や弟、兄の事や大切な人の事を思い出し、胸にして次の冒険へと旅立つのである。
 ‥‥冒険者にも、こういった安らぎがある事を願って‥‥。