【子供達の受難】消えた訳
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■ショートシナリオ
担当:相楽蒼華
対応レベル:フリーlv
難易度:易しい
成功報酬:0 G 65 C
参加人数:7人
サポート参加人数:-人
冒険期間:04月02日〜04月07日
リプレイ公開日:2005年04月08日
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●オープニング
今日も賑わう江戸の街。しかしそんな江戸の片隅では不思議な事件が起こっていたのだ。
「あ、あれ?かなみちゃんは?」
「そういえば、いない‥‥おかしいなぁ?昨日は来るーって言ってたのにー‥‥」
「これで何人目?昨日だって、風馬くんがいなくなっちゃったし‥‥」
「やっぱり大人の言う神隠しって、ホントなのかな!?」
‥‥子供達が心配している神隠しというのはここ最近この山小屋の子供達がいなくなるというのだ。
子供達はそれを不安がっているのだという。
「子供達は皆不安がってるわ‥‥」
「このままじゃ安心して寺小屋へ預けられないな」
「でも子供達は寺小屋で遊ぶのを楽しみにしているのよ?」
「こうなったら、先生にギルドへ届けて貰うしかないな。役人達は子供の事なんかなかなか聞き入れてくれないだろうし、依頼料は私達のへそくりを出し合えば‥‥」
そんなこんなで子供の親達は、明日寺子屋の先生に頼んでギルドに向かわせたのである。
「ちょっといいかしらぁ!?」
「うわぁ‥‥!?なっ、何か御用ですかっ!?」
その声に驚いたのはギルド員の方である。目の前にいるのはジャイアントと見られる女性‥‥と見せかけた男である。念入りなる厚化粧。そこから見てとれる雰囲気は「邪悪」。
「最近私の寺小屋の子供達が消えてるのよぉん!原因追求して貰えないかしらぁん!?」
「あ、あの‥‥まずはその涙をなんとか‥‥。で、子供達の神隠しの事件の原因調べ、ですか?」
「そうよぉん!大変な事になってたら困るじゃなぁい!?私の可愛い可愛い教え子達なのよぉん!」
ギルド員はその瞬間、脳裏で逆に可哀想にという言葉が浮かんでしまったのは言うまでもない。
「消えた子供は三人よぉん。かなみと風馬と佐奈っていうのよぉん」
「その子達を探せばいいわけですね?」
「そうよぉん。無事つれてきて貰えると助かるわぁん♪」
ギルド員は思った。神隠しって、別に言う救出している意味なんじゃないのかと‥‥。
●リプレイ本文
「少年も神隠しに会いましたか」
「そうなのよぉん。でも今の所神隠しにあってるのは子供だけなのよぉん」
甲賀銀子(eb1804)が真剣に考えているのを遮るかのように教師である彼女?が近寄る。
彼女の顔はとてもゴツイ。もう女なんて言えない、見たまんま男。
顎髭の手入れっていうか剃り残しすらちゃんと処理出来てない。それでも乙女と言い張るこの教師の名は似合わずおハナという。
「子供達の特徴を教えてください‥‥」
「そうねぇん‥‥かなみちゃんは可愛い女の子だったわぁ。とっても小さくて、長い髪がとても似合う物静かな子なの。それから風馬はやんちゃっ子。鼻の上に布を巻いてると思うからすぐ見つかると思うわぁ」
そんなおハナの返答を聞きながら大宗院透(ea0050)はおハナの様子を伺う。これといって普通の女性?だ。
「で、最後は佐奈!大人じみた子で結構ツンケンしてるのよねぇ。他の子達よりもちょっと背は高いからすぐ分かると思うわぁん」
「子供達に話を聞きたいんだが、いいか?」
「あらっ、いいオトコ♪それは勿論よぉん。ちゃんと探して見つけだしてくれるならねぇん?」
おハナのその声と顔に流石の南天輝(ea2557)も後ずさる。
唯一平気でいてられるのはユーリィ・アウスレーゼ(ea3547)ぐらいだろう。
「なぁ、最近宝探しとか秘密基地みたいなのは作ってなかったか、その三人?」
「うぅん。風馬ちゃん達ってあんまり一緒にいる所見た事ない組み合わせだよね?」
「うん。だって性格も全然バラバラだから‥‥逆に合わないって思ってたもん」
「じゃあ隠れて飼ってる動物とかはいないか?」
「うーん‥‥前までは子猫がいたけどぉ‥‥」
「母猫が見つかったからって持っていかれちゃったんだよね」
子供達が口々に質問に答えていく。
子供達もそれなりに心配しているのだろう。
「じゃあ最近子供達の間で流行ってるもんとかそういうんないか?」
「えっとねぇ‥‥色々して遊ぶよね」
「うん。でも最近、風馬ちゃんったらかなみちゃんの事気にしてたよね」
一人の子供がそう言ったのをグラス・ライン(ea2480)は聞き逃さなかった。
その子供に目線を合わせると肩を軽く叩く。
「気にしてたって、何を気にしてはったんや?」
「最近になってかなみちゃん、よく何かに怯えてたよね」
「うん。それを風馬ちゃんが心配してたの。佐奈ちゃんは別に気にしなくてもいいっていってたんだけどぉ‥‥」
子供達が顔を見合わせる。余計に心配になってきたのか少し泣きそうな様子だ。
「よし!じゃあ子供ちゃん達の帰り道をオイラに教えて欲しいのだ〜♪」
「うんっ!でもお兄ちゃんと先生って、仲良しなの?」
「オイラも綺麗なお兄さんになるのが夢なのだー♪だから興味も思考もばっちり合っちゃったのだ♪」
‥‥本当にいいのか、それで?と思った記録係。しかも逃げ出したいと思えるぐらいなのだがこれも仕事。 こういう仕事しか回ってコナイ事に涙する。
「じゃあこっちだよ!ついてきてっ!」
ユーリィと輝、そして子供達が帰り道を辿る。
辿っている間に夕暮れが近づいて来ていた。
「かなみちゃん達は何時もここを通って帰ってるの」
「お兄ちゃん、何か分かる?」
子供の声に、三味線を鳴らしユーリィはバーストでその日の様子を探る。
子供達がいなくなった日数は、依頼者であるおハナから聞いていたため、簡単ではあった。
「むむむ〜?」
「どうした‥‥?」
「ちょっとおかしいのだ〜‥‥かなみちゃんは風馬くんに連れられて何処かへ行ってるのだ〜!」
「は?」
思わず輝も声を上げる。
神隠しと思われていたのが、風馬が手を引いてかなみを連れて行ったというのだ。
「とりあえずこの事をみんなに知らせて手分けして探すしかないのだー!」
「‥‥あ!一つ思い出したの!」
「ん?なんだ?」
「あのね、かなみちゃんにはお気に入りの場所があるのっ!この近くの広場によくいるのを見かけるわ」
情報を提供してくれた子供達を軽く撫で、輝はユーリィに子供を任せて皆が待つ寺小屋へと走った。
「何か分かりましたか?」
「それが‥‥どうやらそのかなみという子供は風馬という子供に連れていかれたらしい」
「どういうことだ?」
思わず鶴来五郎太(eb1755)が聞き返す。
「つまり、だ。何か思惑があってかなみを連れ出したのかも知れないという事だ。かなみが何かに怯えていたという情報も気になる」
「かなみちゃん怯えてたのぉん!?そぉいえば、アタシの顔見て結構ビクビクしてたわねぇん‥‥?」
冒険者達はその時思った。
もしかしたら全部こいつが原因なんじゃないのか?と。
「とりあえず手分けして探すしかなさそうだな」
「俺はユーリィと二人でかなみのお気に入りだという場所へいってみようと思う」
「せやったらうちと遥は佐奈を見つけてみるわ。大人びた子やねんやったら色々と行くとこは限られてそうやしな?」
「じゃあ俺と銀子は風馬を探してみるか。こりゃあ大変な事になりそうだ」
こうして三つに分かれて子供達を捜索する事になった。
おハナは子供達が戻ってくるかも知れないからという事で寺小屋に残る事となった。
「確か情報ではここだったはずなのだー」
「ほぉ‥‥花畑か。こんな所にもまだこういう場所があったんだなぁ‥‥」
「あ、ダメっ!」
輝が一歩踏み出そうとすると、少女の声が辺りに聞こえる。
思わず辺りを見回すとそこには誰の姿もない。しかし、ユーリィがしっかりと一つの影を捉えた。
「うん〜?そこにいるのは誰なのだ〜?」
「あ‥‥」
「大丈夫なのだ〜怪しいヒトじゃないのだっ♪」
ユーリィが懸命に説得する。しかし少女は怖がって草むらから出てこない。
すると、輝が笛を取り出し音色を奏でる。
それはとても綺麗な音色で辺りに響く。
「き、れい‥‥」
「ほーら、大丈夫なのだ♪」
恐る恐る出てくる少女。白い着物を纏っており、綺麗な黒の長い髪。
どうやらこの少女がかなみのようだ。
「かなみちゃんなのだ?」
「うっ、うん‥‥」
「一体どうしてこんな所に隠れていたんだ?」
「それは‥‥その、風馬ちゃん、が‥‥」
やはり原因は風馬にあるらしい。しかしかなみはそこで黙り込む。
どうやらまだ不安は消えていないらしい。とりあえず二人は残りの二人が見つかるのを待つことにした。
「大人びた子やねんやったらこういう町中におりそうやねんけどなぁ‥‥」
「それらしい人物はまだ見当たりませんね‥‥」
「さっきそこにおった猫とかにテレパシーで聞いてみてんやけど、ここら辺や言うてたのになぁ‥‥」
グラスがぼやいていると遠くに大きな赤いリボンをつけた少女が見えた。
もしかしたら佐奈かも知れない。二人は一気に走り、少女の肩を叩く。
「なっ、なんですの、いきなりっ!?」
「間違いやったら悪いんやけど、佐奈ちゃんか?」
「何故私の名前を知ってるの?まさか‥‥!私を誘拐しようとしてるんじゃあっ!?」
「違いますよ‥‥貴方を探してくれと頼まれて‥‥」
「じゃあやっぱり誘拐なんじゃないっ!?」
何処までも誘拐に拘る佐奈を何とか説得し始める二人。
これは苦戦しそうだと思いながら、集合場所である寺子屋へと佐奈を連れて行く事にした。
「さて、わたくし達で何としてでも風馬という子を見つけないといけませんね」
「そうだな。しかしやんちゃ坊主と聞いたからには色々と注意をだな‥‥」
町中を歩いていた五郎太の頭にいきなり水がバシャリとかけられる。
思わず上を向くとそこには一人のやんちゃ坊主。鼻の上に包帯をしている。
風馬の情報と一致している。どうやら手当たり次第に悪戯をして回っていたらしく、町のヒトも風馬を見つけた途端に怒り出す。
「ちょっと‥‥これはマズイ事になってますよ!」
「何としてでもあの子供を捕まえないと!」
「へへっ!俺がそう簡単に捕まるもんか!」
子供というものは流石に素早い。逃げ足だけは速い。
銀子と五朗太も翻弄されっぱなしではあるものの、数分後にはやっとの事で風馬を捕縛していた。
寺小屋。外でかなみ、風馬、佐奈が正座させられている。
やはりかなみは何かに怯えているようで、輝の着物から手を離そうとはしない。
「やっと見つけてきてくれたのねぇんっ!心配してたのよぉん、貴方達ぃ!?」
「や、やだ!痛いですわよっ、そのお髭っ!」
毎日こんな攻撃を喰らってるのかと思うと同情すら思い浮かんでくる。
「で。どうしてずっと逃げ隠れしてたりしていたんだ?」
「それは‥‥その‥‥」
「風馬とか言ったな?どうしてかなみを連れ出したりしたんだ?」
「別にいっだろ!?お前達には関係ねーじゃんっ!」
「だからといって‥‥!」
五朗太が怒鳴ろうとすると、それをかなみが一生懸命首を横に振って止める。
「違うの!風馬ちゃんは悪くないのっ!風馬ちゃんは私の為を思って‥‥!」
「理由、話してみるのだ。オイラ達で力になれる事があったらなんでもするのだ!」
「私‥‥その‥‥おハナ先生が、怖くて‥‥」
その場に冷たい空気が流れ、静寂が訪れる。
どうやら最大の原因はおハナ先生である事が発覚したのだ。
かなみがおハナ先生を怖がっているのを見た風馬は暫く寺小屋に行かなくていいように神隠しを装ってかなみに隠れていろといっていたらしい。
「私は止めたんですのよっ?とばっちりを受けただけですわっ!」
と、佐奈は主張。
そして、そのかなみが逃げた原因であるおハナはと言うと‥‥。
「アタシの事怖がって逃げてたのぉん?アタシ、そんなに恐ろしい程の美貌持ってたのねぇん♪」
「‥‥頭痛がしてきた‥‥」
「とにもかくにも、これで一件落着‥‥ですよね?」
安堵した銀子はそう呟くと、風馬と一緒に立ち上がり帰路を駆けていく。
かなみはどうやら輝がお気に入りになってしまったようなので輝が家まで送る事となった。
佐奈は一人で帰れる!とツンケンしながらも。
そして、当の依頼人は‥‥
夜明けまでユーリィと「綺麗なお兄さんについて」という議題で話し合っていたという‥‥。