冒険者のいろは

■ショートシナリオ


担当:相楽蒼華

対応レベル:2〜6lv

難易度:普通

成功報酬:1 G 69 C

参加人数:5人

サポート参加人数:-人

冒険期間:06月06日〜06月11日

リプレイ公開日:2005年06月09日

●オープニング

 冒険者。それは日々事件を追いかけては解決し、そうして金を貰う者達。
 危険がその身に降りかかろうが、あえて飛び込む人の事。
 ‥‥どっかで認識間違ってそうだけど。

 そんな冒険者達が集まる場所が、ギルドだ。
 ギルドには日々色々な人からの依頼が入ってくる。
 魔物を倒してくれ。とか
 調査をしてくれ。とか
 それはもう様々なもので‥‥。

「だからって、何でこういう仕事しか回ってこないんです?」
 ギルド員が米神押さえて大きな溜息をつく。
 そのギルド員の目の前には小さな子供達が五人。
 最初は見学かと思ったらしい。
 しかし、依頼したいという話だったので、中に入れたのだが‥‥この人数だ。
「い、一体どういった依頼なんですか?」
「俺達、冒険者になりたいんだ!」
「だから俺達を冒険に連れて行って欲しいんだ!」
 そんな危険な事、出来るわけがない。
 しかしこれは依頼だ。相手が誰であれ仕事なんだ。
「わ、分かりました。とりあえず冒険者の皆さんを募集してみます。もしこれで集まらなかったら、あきらめてくださいね?」
 苦笑交じり。
 それでも子供達は納得したようで。
「‥‥子供達のお世話、任せて大丈夫なんですかねぇ‥‥」

●今回の参加者

 ea5944 桂 春花(29歳・♀・僧侶・人間・華仙教大国)
 ea6201 観空 小夜(43歳・♀・僧侶・人間・ジャパン)
 ea7394 風斬 乱(35歳・♂・浪人・人間・ジャパン)
 ea9555 アルティス・エレン(20歳・♀・ウィザード・ハーフエルフ・イギリス王国)
 eb1276 楼 焔(25歳・♂・武道家・ドワーフ・華仙教大国)

●リプレイ本文

●未来の冒険者達
「この子達が護衛する子供達ですか?」
「はい、どうぞよろしくお願いします。あまり危険な冒険はしないと思いますが」
 ギルド員が苦笑する。
「皆さん、宜しく御願いします」
 桂春花(ea5944)が優しくにっこりと笑って子供達にそう挨拶する。
 子供達も嬉しそうに元気に返事をする。元気だけはあるものだ、子供は。
「坊主、嬢ちゃん、冒険者になりたいか?」
「うん、なりたいっ!」
「頑張ってなるのっ!」
「各も少年時代の夢はいつも眩しいものだ」
 青春を思い出して一人苦笑する風斬乱(ea7394)は子供達の頭を撫でる。
 まだ知らぬ冒険者の現実。それを結局自分達の手で教えなければならないのだ。
「ふぅ〜ん、あんた達かい。死にに行きたいって奴等は。いいねぇ。そういうの、あたしは好きじゃん。きゃははっ♪」
 アルティス・エレン(ea9555)が子供達に葉っぱをかける。
 しかし、これが彼女なりの優しさというもの。今ここでやめておけば冒険者の真実に触れる事はないのだから‥‥。
 それでも揺るがない子供達の決意。冒険者達も決意して、いろはを教える事となる‥‥。

●まずは質問!教えて、冒険者さん!
 こうして、冒険者達は子供を連れて街道へ出る事にした。
 これは既に冒険と偽ったピクニック。だが、ギルドからの情報では鬼豚がいるらしい。
 二匹程度というのだが、それでも警戒はした方がよさそうだ。
「冒険に出ると御飯が食べれない事もありますからね。必ず食料だけは持ってこないと駄目ですよ?」
 春花は優しくそう教えながら子供達に保存食を分け与える。
 そうだ、冒険者たるもの携帯食を忘れてはいけない。つまりは、腹が減っては戦は出来ぬ、だ。
「そうですね、冒険しながらでもお話をする事にしましょうか。何か質問はありますか?」
 観空小夜(ea6201)が笑ってそう問いかける。すると子供達の手は一斉にあがる。
「ねぇ!妖怪倒す時ってどんなカンジがするの!?」
「そうだな、妖怪も魔物の一種だからな。実は結構怖かったりするぜ?」
「怖いの?」
「そうだ。妖怪の中には俺達より強いやつもいる。そういう時に頼りになるのが仲間だ」
「依頼を一つ受ければその時私達は仲間になるのですよ」
 乱の答えに小夜が付け加える。子供達は熱心にその話を聞いている。
 自分達が弱い者であることを認識しなくてはならない。自覚しなくてはならない。
 それでも尚、子供達の目は輝いている。
 これが青春というものなんだろうか‥‥苦笑する冒険者達であった。

●襲い来る敵。大きな背中。
 そんな話をしていると、小夜のブレスセンサーに反応があった。
「乱さん、春花さん、アルティスさん、焔さん。反応がありました、二匹‥‥近くにいます」
「俺達とは‥‥別のか?」
 楼焔(eb1276)が静かに尋ねると、小夜は小さく頷く。春花は二人の子供達を背に隠す。
 乱は残り三人の子供を自分の背に隠す。子供達は少し戸惑いながら冒険者達を見ている。
「怯えるな。敵が近くにいても怯えを表に見せるな。怖い心は心の中に隠してしまえ。お前達は常に一人ではない、仲間がいる。今は俺達が守ってやる」
「私達冒険者にはこの恐怖はつきものなのです。貴方達が感じてるその恐怖、忘れてはいけないのです」
 乱と春花がそう諭す。子供達はまるで感動しているかのようにその言葉に聞き入っている。
 仏のような言葉だったのだろうか、コクコクと頷いては涙を拭う。
 冒険者の真実を知って尚、子供達は目指し続けるのだ。

「来るよ!」
 アルティスがフレイムエリベイションを自分にかけながら、他の冒険者に声をかける。
 それと同時に豚鬼が二匹。息を荒くしながら草むらから出てくる。
 大きな体。醜いまでの姿。子供達にとっては、その外見だけでも恐怖だ。
 しかし、逃げ出す子供達はいなかった。
 ‥‥‥大きな夢を心に抱いているのだから。それに誇りを持って。
「ガアァァァ!」
「‥‥!」
 子供に向かって咆哮をあげる豚鬼。
 それを止めるかのように焔がダブルアタックをぶちこむ。
 その隙を見て、小夜はもう一匹の豚鬼の動きをコアギュレイトで止める。
 連携が全てを動かしている。子供ながらもそれは理解出来ているようで。
「豚鬼忘れるな、人を襲えばそれがお前の死だ」
 乱の太刀がよろけた豚鬼の首を飛ばす。
 残酷と思えることでもやらなくてはならない。それが冒険者。
 たとえそれが魔物でも、人でも。

「大丈夫ですか?」
 震える子供達に笑顔でそういう。子供達は小さく頷いて尚も涙目のままである。
 春花は「強いですね‥‥」と呟いてからディストロイでサポートに入る。
「あんた達危ないよ。死にたいならそこにいなっ!」
 前衛に声をかけたアルティスはゆっくりと詠唱を始める。
 豚鬼はコアギュレイトの所為で動けない。
「ガキ共、見てな。これが炎の恐ろしさじゃん!」
 ゴオッと炎が豚鬼を包み込む。ファイヤーウォールだ。
 その炎は豚鬼の全てを焼き尽くして消える。
「冒険ってさぁ、相手との生き死にじゃん。軽い気持ちで出て行ったら死ぬよ?あんた達」
 時に見せる優しさと、厳しさ。子供達はアルティスのそんな優しさにも気づいていた。
 そして、大きく頷き、理解を示す。
 春花は死に行く鬼豚達にも祈りを捧げる。
「この方々も生きているんです。生きているからこそ、生き残るために戦う。戦いとはそういうものです。結して格好良いものではないのですよ?」
「あ、そうそう。‥‥火遊びは、おねしょの元だから大人になってからにしなよ?」
 アルティスのけらけらと笑う冗談が春花の言葉を少しゆるくする。
 そんな行動もきっと冒険者達の気遣いの一つなのだろう。

 子供達は今日勉強した事は忘れはしない。
 努力して冒険者になるという事を誓い、家へと戻っていく。
 そんな子供達を見て、冒険者達は何を想うのだろうか‥‥。