【噂ハンタージャジャ】ドラゴン見物
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■ショートシナリオ
担当:sagitta
対応レベル:1〜5lv
難易度:普通
成功報酬:1 G 48 C
参加人数:6人
サポート参加人数:-人
冒険期間:07月27日〜08月02日
リプレイ公開日:2008年08月04日
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●オープニング
ドラゴン――数多あるモンスターたちの中でもその知名度、恐ろしさ、そして憧れといった点ではおそらく頂点に立つのではないだろうか。見上げる小山のような巨体、剣さえも跳ね返す金属のように強靭な鱗、雄大な翼、力強い鉤爪、耳のあたりまで裂けた巨大な口からのぞく短剣のような牙。そしてその口から、あらゆるものを焼き尽くす炎を吐き出す‥‥。
そんな怪物中の怪物とも言うべきドラゴンだが、その目で見たことがあるものはそう多くはない。ドラゴンそのものが希少な存在であり、遭遇率がそれほど高くないことと‥‥ドラゴンに出会ったものが無事に帰ってこられないことも多いからだ。
ドラゴンには非常に多くの亜種が存在し、中には友好的なものや、知能の高いものも少なくないようだが、それでもドラゴンたちが人間たちの恐れ(或いは畏れ)の対象であることは間違いない。
「ということで、ドラゴンを探しに行く同志を募ろう! という依頼だ」
偉そうに胸を張って言ったのは、ジャニー・ジャクソン。人呼んで噂ハンターのジャジャ。派手な格好に芝居じみた言動で一部のご婦人方に人気を誇る、変人だ。
「またドラゴンですかぁ? この前みたいにただのクロコダイルだったりするんじゃないでしょうね?」
思いっきり疑わしそうな眼で受付嬢がジャジャを見つめる。彼女がそう言うのも当然で、キャメロットにドラゴンが出た、と散々騒いだ挙句、その実正体はクロコダイルだった、という前例がジャジャにはあるのだ。
「そ、そんなことはない! ‥‥たぶん」
「はいはい。で、本当にドラゴンだったとしたら、どうするつもりなのですか? 正直に言って、ジャジャさんがドラゴンを倒す! とか言うのは無謀すぎると思います。それにドラゴンだって邪悪なものばかりではないのですから、『探し出して倒す』というのは賛成しかねますね」
真剣な表情になって言った受付嬢に対し、ジャジャは首を振ってみせる。
「それは心得ているとも! 倒すことが目的ではないからな。ドラゴンをしっかり見てきたら、あとは一目散に逃げてくるさ。このジャジャ、逃げ足だけは超一流だからな! はっはっは!」
自慢になるのかならないのか微妙なことを偉そうに言って、ジャジャは胸を張る。
「私はドラゴンをこの目で見て、この手で触れてみたいのだ! ふふふ、それこそが一流の冒険者の証というべき‥‥」
「いや、だから触れるとかそういうのは危険ですってば‥‥」
受付嬢のあきれたような言葉も、妄想の世界に没頭するジャジャの耳には、届いていないようだった。
●リプレイ本文
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「ある〜日♪ 森の中♪ ドラゴンに♪ 出会〜った♪」
でたらめな歌を歌いながら、ジャジャが森の中を行く。リース・フォード(ec4979)もウェーダ・ルビレット(ec5171)もノリノリで、ジャジャの歌に合わせて合唱までしている。
「ドラゴンか〜見たことないなぁ〜。会えるといいよね、ジャジャ♪」
「私、ドラゴン探しってのも初めてなんですよ。すっごく楽しみです♪ ジャジャさんは、前からドラゴン探しとかしてたんですよね! そういう情報ってどうやって手に入れるんですか? いつから探そうと思ったんですか?」
興奮した様子で尋ねたウェーダに、ジャジャが偉そうにうなずいてみせる。
「ふはは、私は真実を追い求める者だからな! いろいろと特別な情報筋があるのだ。あらゆる真実を追いかけることが、私の物心ついたときからの使命なのだ!」
「ドラゴンは、僕も知識では知ってますけど、見たことはなかったですからね、楽しみです」
そう言ったのはジャジャとは顔馴染みの神名田少太郎(ec4717)だ。
「う〜ん、ジャジャさんのことだから、本当にドラゴンだっていう可能性は低いかもしれないなぁ」
同じくジャジャとは馴染みのクリス・メイヤー(eb3722)が、ジャジャには聞かれないようにつぶやくと、シャロン・シェフィールド(ec4984)もうなずいた。
「キャメロットからこんなに近くにいるとなれば、もう少し騒ぎになっているんじゃないかとも思いますしね‥‥でも、ダメで元々、頑張りましょう」
「しかし、もし本当にドラゴンだとしたら、冒険者家業をやっている間に一度は見てみたいものだな」
強い憧れをにじませた口調で言ったのは、ジョン・トールボット(ec3466)だ。
それぞれの期待を胸に、ドラゴン探索隊は森をゆく。
●
「ジャジャ殿は詩人なのだろう? もしよければ、詩を詠うときのコツを教えてくれないか? 実は私は、詩が趣味なんだ」
野営のための焚き火を囲みながら、ジョンがジャジャに話しかける。
「うむ。私は詩人とは言っても、普通の詩はやらないのだ。いろいろなところへ行って見聞きした出来事を物語にして語る、全く新しい形の詩人だな」
偉そうに言ったジャジャの姿に微笑みながら、クリスがうなずく。
「ジャジャさんの語りは、何度か見させてもらったよ。ジャジャさんみたいな人は、人々を楽しませるっていう意味で不可欠だと思うんだ。おいらたちが日常生活に忙しい人々の笑顔のために協力できるなら、嬉しい限りだよ」
「ねぇ、ジャジャ。せっかくだからさ、今までの武勇伝を聞かせてよ」
リースの言葉に、ジャジャは心底うれしそうに――でも、できる限りかっこつけて、大きくうなずいてみせた。
「そこまで言うなら仕方ないな。私が霧の悪魔どもをばっさばっさと斬り伏せた話を聞かせてやろうではないか!」
そう言ったジャジャは、すでに腰を浮かせている。
「すごい、悪魔を倒したこともあるんですか?」
はしゃぐウェーダに、まんざらでない様子のジャジャ。シャロンも穏やかな笑顔でそれを眺めている。
こうして、森の中での暑い夜は更けていった。
●
「あれが問題の洞窟だ」
ジャジャが、森の奥を指差す。確かに、そこには真っ暗な洞窟が口を開けていた。
「真打は最後に登場するものでしょ。ジャジャさんは後ろに」
クリスがそう言い、さりげなくジャジャを護る体制を敷く。
「中に入る前に、何か痕跡がないか調べよう。記念として持ち帰れるようなものがあればいいな」
「証拠があった方が、ジャジャの話にも真実味が増すってものだからね」
ジョンとリースがそう言って、あたりを見回し始める。
「ドラゴンだけでなく、別の動物の痕跡も見落とさないように。というかむしろ‥‥別の動物の痕跡が少ないことが、ドラゴンのいる証明になるかもしれませんね」
言ったのはシャロンだ。
しばし、全員であたりの地面や草むらを調査する。
「‥‥どうやら、それらしき生き物がいる可能性は高そうな気がする」
興奮を抑えきれない調子で言ったのはジョン。リースとシャロンも、それにうなずいた。
「持ち帰れるようなものはなかったけれど、足跡やら爪の痕、それに尻尾を引き摺ったような跡。かなり大きいし、おそらくは‥‥ドラゴン、じゃないかな」
「それにやっぱり、このあたりだけ他の動物の足跡なんかが少なくなってます」
「洞窟の中に、生き物がいることは間違いない。しかもかなり大きいな‥‥6、7メートルくらい?」
魔法で調査して、クリスも言う。
「よし! すぐにでも突入しよう!」
興奮した口調で言うのは、もちろんジャジャ。
「本当にドラゴンだったらとても危険ですし‥‥。できれば洞窟に入らずにおびき寄せてみましょう」
シャロンが言い、リースもうなずく。
「あの茂みのあたりに隠れて、様子をうかがうことにしよう」
ジョンも賛同し、突入したがるジャジャをクリスと少太郎が説得する。
鍋を叩いてみたり、大声を出してみたり。リースが魔法で洞窟付近の地面を攻撃してみたり。思いつく限りの方法でドラゴンを洞窟から出させようとする冒険者たち。
「‥‥うーん、ドラゴン、出てこないですねぇ」
「中に生き物がいるのは確かなんだけどね‥‥寝てるのかな」
「やはり、突入するしかない!」
ジャジャが言う。今度は、誰も反論しない。
「ジャジャさん、触りに行くというなら僕も行きます!」
「ドラゴン! 見ずには帰れないです〜」
「会えるかなぁ、ドラゴン」
「冒険者冥利に尽きる、といったことになればいいが‥‥」
少太郎、ウェーダ、リース、ジョンが口々に言う。
「依頼人はあくまでもジャジャさんなんだから、安全確保は最優先でね」
「不安はありますが、それしかないようですね」
クリスとシャロンもそう言い、冒険者たちは恐る恐る、けれどわくわくしながら洞窟に足を踏み入れるのだった。
●
見上げるほどに大きな、小山のような姿。岩のような緑褐色の肌。太くて強靭な六本の脚。鱗と棘に覆われた長くて太い尾。ダガーのような牙がびっしりと並んだ大きく開いた顎。洞窟の中で寝息を立てているその生き物は、見る者を圧倒させる、まさしくモンスターの中のモンスターだった。
「フォレストドラゴン――通称『鎧竜』か」
「毒ガスのブレスを吐きますが、比較的温厚なドラゴンですね。‥‥とはいえ、あくまでもドラゴンの中では比較的、という話ですが」
リースと少太郎が、その姿を見て興奮した様子で分析する。
「これがドラゴンなんですねぇ‥‥感動ですっ‥‥!」
そう呟きながら、ウェーダはすでに逃げ腰だ。
「本当にいたんですね‥‥さぁ、起こさないうちに洞窟を出ましょう」
「も、もう少し! せめて触るだけでも‥‥」
すっかり興奮したジャジャは、シャロンの言葉も聞かず、ドラゴンに近付いていく。そして。
「うわっ、と!」
お約束のように洞窟内の石につまずき、たたらを踏んでジャジャがその足を踏み出した先にはドラゴンの尻尾が‥‥。
「グギャァアアアアアアッ!」
思い切り尻尾を踏みつけられたドラゴンが、怒りの咆哮をあげながら目を覚ました。起き上がる勢いで、洞窟がぐらぐらと揺れるほどだ。
「うわあああ〜、じゃ、ジャジャさ〜ん! に、逃げましょう〜!」
「私が殿を護る! ジャジャ殿は早く先へ行け!」
少太郎が叫び、ジョンが刀を抜き放つ。
「ジャジャさん、に、逃げますよ!」
ウェーダがジャジャの手を取って走る。クリスとリースがライトニングサンダーボルトを放ち、ドラゴンを威嚇する。
「これで気をそらせば!」
シャロンが用意しておいた生肉を、包んでいた匂い消し用のハーブを取り去って、洞窟の奥の方に向かって放り投げた。強烈な匂いが放たれ、ドラゴンは思わずそちらに顔を向ける。
ドラゴンの気がそれているうちに、冒険者たちは走る走る。全力で洞窟の出口に向かって撤退するのだった。
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「ふぅ、何とか‥‥助かった‥‥」
洞窟を出て、地面にへたり込んだウェーダが呟く。
「でもさ‥‥おもしろかったね‥‥」
リースが息も絶え絶えながら、嬉しそうにほほ笑む。
「しかし、証拠となるものを何も持ってこれなかったな‥‥」
悔しそうにジャジャが呟くと、少太郎がパチン、と指を鳴らした。彼はさっきから紙とペンを取り出し、何やら熱心に描いていたようだ。
「ジャジャさん、任せてください! 見てきたドラゴンはこの通り描きとめてあります!」
少太郎の言葉に、みんなが紙をのぞきこむ。そこには、なかなかリアルに描かれたドラゴンの姿。
「よし! さっそく街に帰ってこの偉業を皆に伝えなければ!」
すっかり元気を取り戻して、ジャジャが宣言した。
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「そこにいたのは、見るも凶悪な、怪物の中の怪物! 岩山が生命をもって襲いかかってきたような『鎧竜』の恐ろしさ!」
ジャジャのよく通る声が、キャメロットの広場に響き渡る。彼がさっと取り出したのは、少太郎が描いた絵だ。リアルなその姿に、観客は歓声をあげる。
「その牙は剣の如く! その尾は槍の如く! そして瞳は炎の如し!」
ジャジャと掛け合うように吟ずるのはジョンだ。彼は自分から、ジャジャの語りに協力したいと申し出ていた。
「我々はその怪物と、一歩も引くことなく対峙した!」
ジャジャも叫び、ジョンと、舞うような演武を繰り広げる。観客の歓声は、やまない。
「‥‥さすが、今までで一番盛り上がってるね〜」
観客に混じっているクリスが、感心したように呟く。
「今回のは本物ですからね」
少太郎が苦笑する。
他の三人は、初めて見るジャジャの語りを楽しそうに見つめている。
「やはりドラゴンは、偉大な獣だ! その迫力は、実際に見てみないと決してわからない! 我々はこの体験を、決して忘れることはないだろう!」
ジャジャのセリフに、冒険者たちは思わずうなずくのだった。