【黙示録】Fama volat
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■ショートシナリオ
担当:桜紫苑
対応レベル:11〜lv
難易度:難しい
成功報酬:16 G 29 C
参加人数:8人
サポート参加人数:-人
冒険期間:12月06日〜12月16日
リプレイ公開日:2008年12月16日
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●オープニング
●時は来たれり
神に仇なす者たちの死の足音が鳴り響く。
それは、破壊と悪徳を刻む足音か。
黙示録の時、来たれり‥‥。
なれど今、それを知る者は少ない。
ただ、感じるのみ。闇の訪れを‥‥。
メルドンの壊滅以後、皮肉にも一時期静まりを見せていた北海は最近再びその牙を人々に向け始めていた。
増加する海難事故。犯罪者の激増。そして‥‥
「キャアア!」
海洋モンスターの出現数と被害もまた増加の一途を辿る。
街を破壊するもの。船を沈め、海を荒らすもの。人々を攫い、傷つけ、殺すもの‥‥。
人々は噂する。
『奪え! 破壊せよ! 愚かなる神の子らにこの世の真の支配者が誰か思い知らせるのだ』
その影にはいつも一人の『人間』の姿があると‥‥。
冒険者ギルドに北海の異変を知らせる報が届けられたのは、王宮よりの来訪者の登場とほぼ同時であった。
「パーシ卿?」
銀の鎧を纏った円卓の騎士パーシ・ヴァル
「やはり、北海からの事件が急増しているようだな‥‥」
掲示板に張り出されつつある依頼を目で確かめると、パーシは係員の方を向きマントを翻すと
「これら依頼に仕事を追加したい。勿論、報酬は支払おう」
真剣な顔で告げた。
「現在、メルドン近郊ではギルドにも届いているとおり海洋モンスターによる騒動が増加している。そしてメルドンで復興支援に従事している騎士からの報告によれば彼らを指揮する者の存在が確認されたそうだ。証言によるとその人物は黒髪、黒眼、体格のしっかりとした男性だ。年のころは中年から初老、というところらしい。船乗りの服装をしているので便宜上彼は『船長』と呼ばれている」
「パーシ卿‥‥それは‥‥」
ギルドの係員は彼が言う特徴の人物を知っている。
先にメルドンに現れ、自らを海の王と名乗り、海に消えたという人物と同一であろう。
そして彼‥‥『船長』‥‥はパーシにとっては育ての親とも言える人物であった筈だ。
「海洋モンスターを指揮する者『船長』を見つけ出して欲しい。恐らくこれらの事件に姿を見せる可能性はかなり高いと思われる」
いつもと変わらぬ表情と、顔つきで彼はギルドに来た理由を告げる。
『船長』の所在調査と、可能であれば確保。
それを冒険者に頼みたかったのだ。と。
だが『彼』は神出鬼没。どこに出現するか解らないし、どこにいるのか手がかりも当然無いに等しい。
だからパーシは先に届いた依頼、そしてこれから出る依頼にその人物『船長』の捜索という目的を追加する、というのだ。
「パーシ卿は‥‥お出にはならないのですか?」
依頼を確認しながら係員は問う。
元より神出鬼没はパーシの代名詞。今まで何か事件があれば誰よりも先に飛び出していった雷の騎士が今度に限って何故‥‥と。
「まあな。‥‥今回、俺は動かない方がいいようだから」
頷きパーシは肩を竦め、笑って見せた。
「『彼』は俺を呪われた悪魔の子であると告げた。その事もあって‥‥いろいろ煩くてな。俺は当分城下から出ないと誓っている。まあ、成り上がりの辛い所さ」
秘めた微笑。それに込められた思いに頷き係員は依頼を受理する。
現在、イギリス各地でも異変が相次いでおり、北上していると思われるデビルも確認されていた。
「何故奴らが北の海に集いつつあるかは定かではないが、『船長』が今回の異常事態に関与している可能性は極めて高い。早急な事態把握が必要だ。よろしく頼むぞ。北海の‥‥ひいてはイギリスの平和の為に‥‥」
かくしてパーシ・ヴァルは去り、冒険者に願いと祈りの込められた依頼が託されたのである。
●明け方の庭園にて
いつものように明け方の東の庭で、部下のシフールから報告を受けていたトリスタン・トリストラムは、眉を寄せた。
そうすると、物憂げな表情を浮かべた絶世の美女に見える‥‥と、部下は心の内だけで呟く。その外見のせいで花嫁にされかけたという事を、ひそかに気にしていると知っているので。
「『船長』‥‥か。パーシは動けないと言ったのだな?」
「え? あ、はい。それで、冒険者に依頼をお出しになられたご様子で」
トリスタンは、深く考え込む素振りを見せた。
同じアーサー王の円卓に名を連ねる騎士として、トリスタンも気になるのだろうか。
そおっと、彼の顔を覗き込んだ。
うすぼんやりとした朝の光が、彼の整った顔立ちに影を落とす。
「‥‥ギルドに」
「はっはいぃ!?」
声が裏返ってしまった部下を不思議そうに見遣って、トリスタンは言葉を続けた。
「冒険者達に依頼を」
●「円卓」の名
「じゃじゃーん♪」
ひらりと目の前で広げられた布を乱暴に奪って、冒険者はそれを見直した。
白い布に、模様が描かれている。それは、お貴族様が掲げる旗印によく似ていて‥‥。
「‥‥紋章?」
誰の?
と聞くまでもない。
「げげっ!?」
彼は、トリスタンの紋章が描かれた布の皺を慌てて伸ばした。
紋章の取り扱いは要注意だ。
何しろ、紋章は騎士の身元を示すもの、転じて騎士本人を表すものとして扱われる。名誉や体面を重んじる騎士の中には、紋章を粗雑に扱われたとして決闘を申し込んだ者もいるという。
「いい? その紋章をいーっぱいつけた船で、海に出るのよ!」
ぴたりと、冒険者の動きが止まった。
「‥‥「これ」をつけた、船?」
今、海は荒れている。
ここしばらく、急激に増えた依頼がそれを物語っている。
その海に出ろ、とは。
「つまり?」
紋章入りの布を取り返して、シフールの少女はひらひらと振って見せた。
「つまり、こんな感じ?」
「‥‥円卓の騎士、ここにありーって感じ?」
はあ、と息を吐く。
トリスタンの紋章入りの布を大量にはためかした船は、さぞかし派手になる事だろう。
そして、その船は「円卓の騎士」の船として認識される。
「そう上手くいくのか?」
「上手くいかせてって、トリス様はおっしゃっているんじゃない」
あんのやろう。
キャメロットに戻って来たら、上等な酒を奢らせちゃる。
そう心に決めて、彼は椅子をひき、どかりと腰を下ろした。
「で?」
「んーとね、名前で釣られる奴らを一掃‥‥しちゃう?」
何で疑問形なんだ。
口元を引き攣らせつつ、冒険者は壁に貼ってある依頼の山と、トリスタンの紋章とを見比べた。
北上するデビル 、事件が頻発する北海。そして、増えた依頼。
北の海は、さぞや賑わっている事だろう。
「‥‥なるほどね」
円卓の騎士は、デビルの標的にされる事が多い。
アーサー王の剣と盾として、イギリス内外にまで名を知られた「円卓」に属しているのだから、当然だろう。
「頭がいい奴は、警戒して寄って来ないだろうが、それでも「円卓」に釣られるとしたら、そこそこ考える力を持った奴になる」
腕を組み、考え込む。
釣れるモンスターの知能程度にもよるが、本人不在の船でどれほどの敵を引きつけられるだろうか。
「どうせやるなら、北の海を出来る限り綺麗にしたいよなぁ」
「あ、そうだ。あのね、トリス様が」
思い出したように声をあげたシフールが慌てて口を押さえた。
声を潜め、冒険者の耳にそっとトリスタンから預かった伝言を伝える。
「必要なら、お屋敷に置いてあるトリス様の鎧や盾を使っていいって」
トリスタンの屋敷で埃を被っているであろうそれは、きっと、派手派手しく紋章入りなんだろうナ‥‥。
冒険者は、乾いた笑いを浮かべて明後日の方向へと視線を向けた。
●今回の参加者
ea0018 オイル・ツァーン(26歳・♂・レンジャー・エルフ・ノルマン王国)
ea0042 デュラン・ハイアット(33歳・♂・ナイト・人間・ビザンチン帝国)
ea0424 カシム・ヴォルフィード(30歳・♂・ウィザード・人間・フランク王国)
ea2562 クロウ・ブラックフェザー(28歳・♂・レンジャー・人間・イギリス王国)
ea4675 ミカエル・クライム(28歳・♀・ウィザード・人間・ビザンチン帝国)
ea9669 エスリン・マッカレル(30歳・♀・ナイト・人間・イギリス王国)
eb5885 ルンルン・フレール(24歳・♀・忍者・ハーフエルフ・イスパニア王国)
ec3981 琉 瑞香(31歳・♀・僧兵・ハーフエルフ・華仙教大国)
●リプレイ本文
●出航準備
よいしょ、とクロウ・ブラックフェザー(ea2562)はそこに置かれてあった木箱を担ぎ上げた。トリスタンの船宛に届いたエチゴヤからの荷だ。何が入っているのか分からないが、そこそこ重い。ともかく船に積み込んでしまえと、クロウは空いた手でもう1箱抱えた。
「あ、ありがとうございます! クロウさん」
駆け寄って来たルンルン・フレール(eb5885)が手を差し出す。片方の手に抱えた木箱を持とうとするルンルンを、クロウは首を振って押し止める。
「いいさ。女の子に重い荷物を運ばせるわけにはいかないだろ?」
茶目っ気たっぷりに片目を瞑ったクロウに、ルンルンは大きな目をさらに大きく見開いた後、ゆっくりと花が綻ぶように笑った。
「ありがとうございます。あ、船はこちらですよ」
「重そうな荷ですね。僕も手伝いましょうか?」
声を掛けたのはカシム・ヴォルフィード(ea0424)。困ったな、とクロウは眉尻を下げる。残る木箱は3箱だ。だが、女性に力仕事を手伝って貰っては男の名折れ。
「ありがとな。でも、女の子の仕事じゃないし」
柔和な笑みを浮かべたまま、カシムが黙り込んだ。不自然な間に、クロウとルンルンは足を止める。
「男ですから、僕は‥‥」
にっこり笑ったカシムに、クロウは思わず木箱を落としかけた。
男か女かなんて、直接尋ねる機会はなかったし! てか、普通は尋ねないし! 頭の中を様々な言葉が駆けめぐるが、逆に体は動かなくなる。
「‥‥カシム、残りの箱を運んでくれないか」
溜息混じりの別の声が、彼らの間に割り込んで来た。達観したような表情を浮かべたオイル・ツァーン(ea0018)は、木箱を2つ抱えてルンルンへと視線を向ける。
「で、この中には何が入っている?」
「矢です。あと、ポーションとかソルフの実とか。トリスタン様が経費を出してくれるそうですから、それに甘えました」
えへ。
小さく舌を出したルンルンに、オイルは小さく「そうか」とだけ呟いた。
「ジャパンの諺では「備えあれば嬉しいな」って言いますしね」
違うだろ!
クロウの突っ込みを聞き流して、ルンルンは船へと足を向ける。
「ルンルンちゃん、皆、こっちこっち!」
ミカエル・クライム(ea4675)が彼らに気付いて手を振った。その傍らで羊皮紙を覗き込んでいた琉瑞香(ec3981)も顔をあげて、小さく会釈を送って来る。「トリスタン卿」は、既に船に乗り込んでいるらしく、姿が見えない。
何気なく、ミカエルと瑞香の後ろに視線を移して、オイルは硬直した。
「‥‥これはまた‥‥凄い船ですね」
カシムの呟きに、ミカエルは自慢げに胸を張る。
「でしょー? トリスタン卿の性格を考えて、派手さは敢えて抑えてみたのよ。でも、仮にも円卓の騎士の船だし、滲み出る煌びやかさが欲しいと思わない?」
「確かに滲み出てるな‥‥」
請求書を受け取ったトリスタンの家令はひっくり返るのではないだろうか。しっかりとした木組みの実用性を重視した船は、舳先の女神像や紋章や、そのところどころが金色に光っていた。ぴかぴかと派手な金色ではなく、艶を抑えて上品にまとめられているのは、ミカエル達のセンスの良さか。
「うわ‥‥矢盾まで金色‥‥」
弓や魔法の使い手が多い特性を活かす為に矢盾に出来るものを‥‥との要望を出していたクロウが、驚き半分呆れ半分に声を上げた。
「あなたの注文通りに頑張ってみたわ」
頑張る方向が間違ってる。そう思ったが、口には出さない。
賢明である。
●麗しのトリスタン号
北海を渡る霙混じりの風がデュラン・ハイアット(ea0042)の体に容赦なく吹き付けて来る。
寒い。半端なく寒い。
ふと視線を上げると、白い風の中に美しい女性の姿が見えた。
ー雪の精霊‥‥か?
薄い衣を纏っただけの女性が微笑んで手を差し伸べて来る。その手を取る為に腕を動かそうにも、どうにも体が重くて言う事を聞かない。
ーああ、駄目だ。すまない、もう眠‥‥い‥‥ん‥‥だ‥‥
「しっかりしてくださいッ! もう湾を出ましたから中へ! デュラン殿? デュラン殿!」
呼びかける声に、デュランは目を開けた。
心配そうにデュランを覗き込んでいたエスリン・マッカレル(ea9669)が、デュランを支えようとして小さく悲鳴を漏らす。
「冷た‥‥」
多くの船が行き来する湾を出るまでの間、甲板で「トリスタン」として振る舞っていたデュランの鎧は、北海の風に冷やされて氷のように冷たくなっていた。このままでは、デュランも危ないのではないか。危機感を覚えて、エスリンは再度腕を伸ばす。
「デュ、ラン‥‥殿、な‥‥かへ」
デュランの体を押して船内に戻ろうとするが、重たい鎧は動かない。
「デュラン殿! 足を動かして下さいっ」
半分魂が抜けかかっていたデュランは、言われるがままに足を動かす。右足、左足、右足。そうしている間にも、雪風は激しさを増していく。船内へと続く扉まで辿り着く前に、エスリンも一緒に遭難しそうな様相を呈していた。
「‥‥下は大変そうだなあ。なあ、フォルスタン」
んみゃぁッ!
懐に入れた猫がじたばた暴れている。
「あんまり暴れるなよ。隙間が出来て寒くなるじゃん」
ふぎゃーッ!
更に暴れ出した猫に、仕方ないなぁとクロウは用意していた魚を取り出した。
けれども。
「あ、凍ってる」
みぎゃッ!
がりっと頬を引っ掻く爪を、クロウは平然と受け止めた。
「ははは。感覚無くなってるんだから、痛くもなんともねーよ」
ふと考え込む。
「駄目じゃん」
体に外套を巻き付けると、クロウは猫を抱え直す。いざという時に体が動かないのでは話にならない。
そうして、彼は目を凝らした。雪で視界が悪くなったが、帆柱の上からなら、接近される前に発見出来るだろう。
「‥‥荒れて来ました」
湾を出た途端に、波が大きくなった。外海に出たせいもあるが、この天候にも原因があるだろう。瑞香の表情に緊張が走る。
「港で流した噂がデビルに届くまでには、まだ時間があるだろうが、いつでも対応出来るようにしておく必要がある」
そう呟くオイルは、出航前、仲間達と共に「円卓の騎士の船」の噂を流すと同時に、北海での情報を出来る限り集めて来た。
「分かりました。船は私に任せて下さい」
頷いた瑞香に頼むと言い置いて、オイルは船室に向かう。
そろそろ、救助したデュランとエスリンが解凍されている頃だった。
●見えない船
「カシムちゃん! 任せたよ!」
「はい!」
襲って来る波に飲まれそうだ。フレイムエリベイションで自分を奮い立たせると、ミカエルはその波に向かって走り出した。被った波の向こう側に、瑞香がいる。
ミカエルを援護するように、カシムはウインドスラッシュを放つ。
2艘の小型船に乗っているのはスカルウォーリアーとズゥンビだ。魔除けの風鉾の効果か、接舷出来るほど接近しては来ないが、指輪の石に刻まれた蝶が激しく羽ばたいている。近くにデビルがいる証だ。
「皆さん、気をつけて下さい! 近くにデビルもいるはずです!」
「分かった!」
デュランが呪を唱える。手から迸った鋭い光が、死霊の船を撃つ。それを合図に、弓を使う者達が矢を放った。
放たれる彼らの攻撃が、次々に船のアンデットの数を減らしていく。
「おかしいよね。あの船にはもう‥‥。でも、蝶はまだ羽ばたいている」
呟いたカシムに、ミカエルがはっと顔を上げた。
「瑞香さんっ! アンデットの気配は!?」
「海の上で気配が動いています」
船縁から身を乗り出し、目を凝らしたエスリンが不意にぐらついた。
「危ない! おい、どうしたんだ? いきなり」
その腕を取り、デュランがエスリンの体を揺する。
「え? あ‥‥私は一体」
おかしい。考え込んで、ミカエルはあっと声をあげた。
「ニパス! 確か、そんな名前の、幻覚を使うデビルがいたはずよ!」
「幻覚? もしかすると‥‥。皆さん、掴まっていて下さいね」
瑞香の指示で船が大きく揺らいだ。方向転換したのだ。
「きゃっ」
「‥‥っ!」
ミカエルを片腕で抱え込んだデュランが船縁を掴む。
「瑞香!?」
「我々は、船がいない幻覚を見ているのかもしれません。ならば、アンデットの気配のある場所こそが見えない船という事です!」
「そうか! よし、ワールウィンド、行くぞ!」
木箱に残っていたホーリーアローを鷲掴んで、クロウがペガサスに飛び乗る。エスリンも、ヒポグリフの手綱を取った。
「クロウ達を援護するぞ!」
オイルが指し示した場所は波が立つ海だ。だが、ルンルンは躊躇う事なく神弓の弦を引き絞った。素早くソルフの実を飲み込んだカシムとデュランも、海に向けて術を放つ。
「ぶつけます。掴まって!」
緊張した瑞香の声が響く。同時に激しい衝撃が船を襲った。
船尾に舳先を突き込まれ、見えない船はようやく姿を現したのだった。
●悪魔が集まる島
道化に似たデビルとの戦いは互いの力を削ぎ合う持久戦となった。
油断をすれば幻覚に囚われる。さしもの冒険者も現実と幻覚との境では一瞬だけ判断が遅れてしまう。そこを突かれて、次第に防戦一方となっていった。
デビルが幻覚で惑わせる事に固執したのは冒険者にとって幸いだった。食虫植物が獲物を捕らえるように、無抵抗となった彼らをゆっくり始末するつもりだったのだろうか。
ともかく、用意されていた矢を使い尽くし、ソルフの実で回復しながら術を使い続けた長い戦いの末、彼らは勝利を得た。
「あ、ありゃ何だ!?}
疲れ果て、満身創痍の状態で冷たい甲板に倒れ込んだ彼らの耳に、船員達の叫びが届く。
「何事だ?」
身を起こした彼らの目に、まるで生きているかのように蠢く島が映る。
悪魔が、島を覆い尽くさんばかりに群がっているのだと彼らが気付くまでに、さらに数瞬の時が必要だった‥‥。