約束
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■ショートシナリオ
担当:桜紫苑
対応レベル:1〜5lv
難易度:普通
成功報酬:1 G 62 C
参加人数:8人
サポート参加人数:-人
冒険期間:08月31日〜09月07日
リプレイ公開日:2004年09月08日
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●オープニング
その男がギルドの扉を叩いたのは、灰色の雲の合間に見えるくすんだ空が急速に明度を失っていく時刻であった。
机の端に服を引っ掛け、椅子に足を取られ、体をあちこちにぶつけても気に留める事もなく、彼は真っ直ぐに受け付けへと向かっていく。
「今すぐ! 今すぐ、力を貸してくれる冒険者を!」
だん、と受け付け台に叩きつけるかのように手を置いた彼が発した声は、焦りを含んで震えていた。
「今すぐ、ですか?」
「今すぐだ!」
青年の様子を観察していた冒険者が1人、席を立つ。興奮気味の青年の肩を叩いて椅子を勧めた彼の手は、しかし、乱暴に振り払われた。
「おい、落ち着けよ」
見かねた別の冒険者が宥めに入った。だが、その言葉も、青年の気持ちを静めるには至らなかったようだ。
「一刻も早く村に帰りたいんだ! 出来るなら、今夜中に山を越えたいっ!」
告げられた山は、キャメロットから少し行ったところにある、モンスターが多く出現するという噂がある深く険しい山だ。今夜中に越えるのは、出来ないわけではないが、かなり無茶をしなければならないだろう。勿論、モンスターの襲撃が無い、もしくは最短の時間で処理すれば、という条件がつく。
「どうしても、今夜中に山を越えたいんだ!」
必死に言い募る青年に、冒険者達は顔を見合わせる。
そんな彼らの戸惑いを誤解したのか、青年は身を翻した。
「もう頼まない! 1人でも行ける!」
「ちょっと待ってよ!」
飛び出そうとする青年の服を掴んで、女冒険者が受け付けと仲間達を振り返った。
「あたし、ちょっと行って来るから! 依頼、受理しておいて!」
「おい!」
青年の後を追いながら、彼女は答える。
「何か、時間無いみたい。後で正式に依頼を出し直して貰えるように頼んでおくから、とりあえず、仮受け付けしておいてよ」
ええい、と何人かの冒険者がタンガードを置いて席を立ち、外へと出ていく2人を追った。彼らを放っておけないと思ったのだろう。
「‥‥仮受け付けはいいんだけどさ‥‥。依頼料金はどうするんだ‥‥?」
残された者の呟く声に、濡れた鴉の羽根のような色の髪を持つ青年が、やれやれと腰を上げ、受け付けへと向かった。
「俺が立て替えといてやるよ」
規定の依頼料金を払い、青年は溜息をつく。
「全く、お人よしが多いよな」
「あなたも人の事は言えませんよね」
ですが、と銀髪の青年は笑う。
「珍しく賭けに勝って手に入れたお金ですしね。飲むよりも人助けに使った方がよろしいかと」
賭け事で稼いだ金を浄めろと言いたいらしい従者に、青年は肩を落とし、再度息を漏らした。
「絶対、返して貰うんだからな」
あくまで立て替えているだけだと言い張る主人に、従者は苦笑を浮べたのであった。
「友達が?」
キャメロットの門が閉じる前に準備を整え、何とか外へと出た冒険者達は、歩みを緩めそうにない依頼人から、ようやく詳しい情報を聞き出す事に成功した。
険しい表情で、依頼人は星の見えない空に黒く聳え立つ山を見据えて頷く。
その手の中には、小さな卵型をした小瓶。
突如、倒れた友人の為に、キャメロットのエチゴヤへ駆け込み、手にいれたポーションだ。
「俺は約束したんだ。必ず、薬を手に入れて戻ると」
村の床屋に血を抜いて貰っても、快方に向かわない。
それどころか、顔色はますます悪くなり、起きあがる事さえも出来なくなった。一縷の望みをかけて、彼は村からキャメロットまでの道程を一気に駆け抜けたのだと言う。
「ポーションは手に入れた。それから、毒が原因だった時の為に解毒剤も。だけど、村への帰り道が土砂に埋もれて通行止めになった」
復旧を待つか。
それとも、別の道を行くか。
いつになるか分からない復旧など、待てるはずもなかった。
「それで、この山を越える事を選んだのね」
山を迂回するのも可能だが、それでは何日も余分に時間が掛かる。危険を承知で山を越えるしか方法はなかったのだ。
冒険者達は唸った。
彼の事情は分かった。
今回の依頼が、彼を早く村へ戻す事だというのも分かった。
しかし。
向かう山は真の暗闇に閉ざされている。
歩く足の先さえも見えない闇の中では、いつ、どこから何が現れるか分からない。獣であればまだいい。モンスターだった場合、下手をすると致命傷に近い打撃を被る。
「山に出没するモンスターについて、何か知っているか?」
尋ねる声に、戸惑いの気配が満ちた。
「色々、としか。特定のモンスターではなく、山に棲むモンスター達が頻繁に人を襲っているみたいです」
モンスターの特定が出来ない。つまりは、対応の手段も決められないというわけか。
「なぁんだ。大した事はないじゃないか」
それまで黙っていた者が、わざとおどけた声を張り上げた。
「山に棲む奴らだけだろ? 水ン中や砂漠ン中にいるようなモンスターは出て来ない。そいつらへの対策は考えなくてもいいって事だ」
彼の一言が、緊張を抱いた冒険者達の心を軽くする。
モンスターとの戦いをいくつもこなして来た彼らに、僅かながらの余裕が生まれた。
「‥‥そうだな。出て来るかどうか分からないモンスターを案じていても始まらない。モンスターは、その時々で対処するか」
とはいえ、警戒を怠るわけにはいかない。
何が出て来るか分からないのは厄介だが、出来得る限り備えておくべきだろう。
「後は、いかに早く山を越え、村に辿り着くか‥‥だな」
焦りから、自分の足下さえ見えていない様子の依頼人と、彼が交わした約束の為。
そして、村で彼の帰りを待つ友人の為に、冒険者としての誇りにかけて。
●リプレイ本文
●岐路
風のない空からどこまでも続く、濃くて深い闇を見下ろして、カファール・ナイトレイド(ea0509)は身を震わせた。静まり返った暗い世界に、ただ1人で取り残された心地がする。
広がる闇から目を背けて、足下に揺れる光を探した。生い茂る木々が意地悪をするかのように手を広げる中、漏れ零れる温かな色に安堵の息をついて羽根を広げる。枝に引っ掛からないように体を捩らせたその時、彼女の目の端にソレが映った。
「また来たよ〜」
カファの知らせに、紅天華(ea0926)小さく息を吐き出すと数珠を手繰り寄せる。ランタンの光に、紅の色をした彼女の瞳が艶やかに煌めいた。
「犬程度が7つ、この先から近づいて来ているようだ」
「また、か。こう頻繁だと面倒だよね」
最後尾を歩くヒースクリフ・ムーア(ea0286)の呟きに、クラリッサ・シュフィール(ea1180)も同意を返す。
「この先はまだまだ長いですし、体力は温存しておいても損はないと思います〜」
そうと決まれば、とベアトリス・マッドロック(ea3041)はカファを手招く。
「先に行く2人に知らせとくれ。ちぃとばかし難儀だけど、迂回して、下の道を行くよ」
「ちょっと待ってくれ! 俺は出来るだけ早く村へ帰りたいんだ! このまま行ってくれ!」
迂回だなんて、とんでもない。
声を荒げた青年に、天華の頭の上から飛び立とうとしていたカファが動きを止める。
「焦る気持ちは分かるけど、モンスターに襲われて迷子になっちゃったら余計に時間が掛かるし、お兄さんが怪我したら、お友達もきっと悲しくなっちゃうよ」
小さな少女に言い諭されて、青年は項垂れた。
「友の為に危険と分かっていてる夜の山を越える。賢い判断だとは言い難いが、そういう話は嫌いではない。力を貸すと言った私達の言葉を信じろ」
慣れない山越えの疲れもあるのだろう。気ばかり急く青年の様子を注意深く観察していたジラルティーデ・ガブリエ(ea3692)は、ベアトリスに目配せをした。彼の意図を酌み取ったベアトリスが、先行するルカ・レッドロウ(ea0127)と遊士燠巫(ea4816)への伝言をカファに託す。
「近くに水場があるはずだ。あたしらは先にそこで一息入れてるよ」
「は〜い!」
元気良く答えて飛び出した少女を見送り、ジラルティーデは不満そうな青年に手を差し出した。
「なんだ?」
「荷物。‥‥辛いなら持ってやろうか」
ジラルティーデの手を乱暴に弾くと、青年は何も言わずに斜面を降りて行く。慌てて、クラリッサがその後を追った。
「やれやれ。無理をして万一の事があれば、友人も助からないのだと‥‥分かっていないようだね」
ランタンの灯りに顔を近づけ、ヒースはそっと火を吹き消した。
●友情
「思っていた以上にモンスターが多いな」
カファが広げた簡単な地図を見つつ、ルカは疲れた表情を見せた。山に入って、精々が数時間しか経っていない。だか、既に彼は両の手では足りぬ数のモンスターを倒していた。
「真っ暗な山ん中じゃ、灯りはいい目印になる」
闇の中での行動に慣れた燠巫の指摘に、ルカは渋い顔をする。
「でも、仕方がありませんよねぇ」
ルカのランタンから火を貰い、クラリッサはもう1つのランタンを灯した。山道、夜、モンスターと、その全てに慣れぬ者が一緒なのだ。灯り無しではとてもではないが動けない。
彼らの会話に察する所があったのだろう。
青年は、強く唇を噛んだ。
「焦るなよ。人間、冷静になりゃ火の中からでも帰還する事が出来る。運命ってのは、勇気ある者に味方するってコトさ」
ルカの言葉に頷いたものの、青年の表情は晴れない。体を休める事で、今度はあれこれと考える余裕が戻って来たのかもしれない。
「考える余裕が出来るってのも善し悪しだねぇ。‥‥ところで、アレクの坊主もいいところがあるじゃないか」
不意に、ベアトリスが笑い含みに呟いた。
突然に話題を振られ、何の事だと顔を見合わせる仲間達に、彼女は肩を揺らす。
「素直になれない所がまだまだガキだけどね」
「いーや。まだまだどころじゃない。アイツは正真正銘、お子様だ」
ちらりと青年を窺い見ると、燠巫はベアトリスの話に乗っかったフリをした。黒髪の青年の話題で思い出すのは、ギルドでのやりとり。
『なあなあ、俺と漢の友情、深めない?』
銀髪の青年に語りかけた途端に、彼はテーブルに突いていた肘を払われた。顔を打つ寸前で体勢を立て直した燠巫に、ヤツは涼しげに言い放ったのだ。
『すまないな』
「‥‥謝ったんだろ?」
それのどこがお子様なのだ。怪訝そうなベアトリスに、燠巫は悔しげにぎりぎりと拳を握り締める。その時の腹立たしさが蘇って、彼はフリを忘れた。
「目だ! 目が笑っていた! おのれ‥‥思い出すだけで腹の立つッ」
自分の従者に近づいたのが気にくわないのだろう。まるで息子と変わらぬ‥‥いや、息子の方がまだ聞き分けがある。
「よし、キャメロットに戻ったら何か奢らせちゃる!」
「乗った!」
「‥‥酒がいいな」
口々に同意を唱える冒険者達に、青年は呆気に取られた様子だ。
「う〜ん‥‥結果良ければ全て良し? でも、アレクの意思は無視なんだね‥‥」
ぽりと頬を掻いたヒースに、ベアトリスは深く息を吐き出す。依頼人の気を逸らす為とは言え、ほんの少しばかり罪悪感が過ぎる。
「なんか、アレクの坊主に悪い事をしちまったね」
「‥‥それよりも」
黙って話を聞いていた天華がぽつりと呟いた。
「漢の友情とは何だ‥‥?」
一瞬、言葉を失った冒険者達の耳に届く虫の音が、やけに虚ろに響く。
「駄目ですよ、天華さん〜? 友情が友情以外に何の意味を持つって言うんですかぁ?」
さりげなく言葉のそこかしこが強調された気がするのは、思い過ごしだろうか。ジラルティーデが空に向けた視線を追いかけて、ヒースは小さく微笑んだ。
「友情、か。己の身を顧みない事こそ、真の友情‥‥なのかもしれないね」
彼の声は、仲間達に届く事なく闇夜に吸い込まれていった。
●急襲
ちっと舌打ちすると、ルカは素早く周囲の状況を確認する。モンスターの急襲に、咄嗟の判断で依頼人を逃がしたものの、これ以上長引くと不利になる。
「天華、どうだ?」
「右手から3つ、背後に5つ」
言いざま、天華は再び数珠を握った。彼女の詠唱が終わると同時に放たれたのは‥‥。
きゃんと甲高い鳴き声と鈍い音。
弾き飛ばされたモンスターが木にぶつかったのだろうか。
「‥‥ねぇ、すこし、てかげんを‥‥」
「出来ない」
掠めそうな程近くを抜けていった天華のディストロイに、さすがのヒースも僅かばかり頬を引き攣らせた。せめて問答無用のディストロイではなく、邪悪ではない者には効力を持たないと言われるブラックホーリーにして欲しかった、が。
「ま‥‥待て待て待て!!」
次に狙いを定めた天華に、燠巫が慌てた様子でその場を離れた。一拍ずれて、彼が居た場所へと襲い掛かったモンスターがもんどりうって倒れる。
ぞぉ、と彼らの背に冷たい感触が通り過ぎて行った。
だがしかし、ここは一刻も早くモンスターを片づけ、先に行かせた者達に合流せねばならない。
「じゃあ、僕も頑張りますか」
念を集中させたヒースを淡い光が包み込む。そのまま、宙から自分の間近まで忍び寄ったモンスターを真っ二つに叩き斬る。
「足下、気をつけろよ!」
冷静に状況を見ていたルカの鋭い声が走る。
彼らの周囲を照らしていた灯りは、同時にモンスターを誘き寄せる目印にもなる。仲間達から離れた場所でランタンを掲げ、煩く飛び回るモンスターを叩き落とすと、ルカはちらりと背後を見た。灯りを持たず先に行った者達は、どれだけ進んだだろうか。
「早めに追いつかないと‥‥な」
乾いた唇を舌で潤して、ルカは更に高くランタンを押し上げた。
朧な光が、戦う仲間達の足下を照らすように、と。
その光が届かぬ闇の中、ジラルティーデは間近に迫るモンスターの気配を感じていた。モンスターを足止めしている仲間達を信じていないわけではない。だが、依頼を完遂する為に、何よりも友の為に危険を承知で進む依頼人を、彼を待つ友の救う為には万全を期すべきだ。
「先を行け」
小さく囁いたジラルティーデに、クラリッサは依頼人の手を取った。
慣れている彼女達でさえも緊張する状況、戦いの経験を持たぬ依頼人はどれほど恐ろしい思いをしているのか。握った手が汗ばんでいるのを感じ取り、クラリッサは弾む息を抑えながら、明るい声を上げる。
「大丈夫ですよ〜。モンスターは皆が倒してくれますからぁ」
それに、とクラリッサは空いた手でマントの下に吊した剣の柄を叩いてみせた。
かしゃり、と金属の触れ合う音。
「私も、ナイトですし〜」
「おいらだって、モンスターが来たら、えいって蹴り飛ばしてあげるよ!」
青年の側に付かず離れずで飛んでいたカファールも元気良く護衛の名乗りを上げる。
「言ったろ? 友達の為に危険を顧みない勇気と友情を聖なる母は決してお見捨てにゃならない。あたし等も、決してね! ほら、急いでも足下を疎かにしない! こんな時だからこそあたふたせずに、しっかり地面を踏みしめて歩くんだよ!」
威勢よく青年の背を叩くと、ジャイアントの肝っ玉母さんはホーリーシンボルのついた首飾りを手に小さく呟く。白く優しい光に包まれた彼女の「祝福」に、あわや恐慌状態に陥る所であった青年は正常な思考を取り戻した。そして、それは不利な状況下で依頼人を守る仲間達をも助ける結果となったのである。
●山を越えて
「はい」
シフールの少女が差し出す、彼女の体の半分もあろうかと思われる袋いっぱいに詰め込まれた秋の実りに、青年は幾度か目を瞬かせた。
「お見舞い」
邪気無い笑顔を見せるカファに、青年も安堵と感謝の入り混じった笑みを返す。
「‥‥あんなにもの、どこに持っていたんだ?」
その様子を微笑ましく見守っていたルカの素朴な疑問。カファが袋を抱えている姿は見ていない。はて? と首を傾げたルカに、はっ、と燠巫が顔を上げた。
「聞いた事がある。リスとかの小動物には、頬に食べ物を詰めておく頬袋があ‥‥」
「カファちゃんは小動物じゃありませんよ〜」
クラリッサがやんわり口調で窘めるのと前後して、カファの錐揉みの勢いをつけた蹴りが燠巫の後頭部に炸裂する。
「‥‥解説してやろう。カファは道々、拾った木の実を」
病に伏す男の家から出て来た天華は、髪を掻き上げて彼らの元へと歩み寄ると、ヒースのマントを大きく払った。ベルトに吊されているのは、カファが木の実を入れていたものと変わらぬ布袋だ。
「こっそり、ここに吊した袋の中に仕舞っていたのだ」
「ああっ! 気が付かなかったよ」
大袈裟に驚いてみせるヒースに、ルカと顔を見合わせたジラルティーデが肩を竦める。感謝の気持ちが上乗せされた依頼料が詰まった革袋が、彼の手の上で小気味良い音を立てた。
「でも、間に合って良かったですね〜」
「あんた達のお陰だ」
山越えの間に乱れてしまった自慢の髪を気にしつつ、微笑みかけたクラリッサに、青年はもう一度、感謝の言葉を口に乗せた。
幾度もモンスターに襲われた分、思ったよりも時間を取られてしまったが、彼の友は何とか危機を脱する事が出来たのだ。
「あんた達がいなければ、もっと時間が掛かっていただろうし、俺も戻る事は出来なかった」
その素直な言葉に、ジラルティーデが彼の肩に手を置く。
山越えの最中には、気持ちを逆撫でする言動に腹を立てもしたが、村に辿り着いて、ようやくその真意を察する事が出来た。
「俺を奮起させようとしてくれたんだな」
「さて、何の事だ? 俺は、妹の持参金を稼ぎに来ただけだが」
わざとらしく、金の詰まった袋を見せたジラルティーデに、天華も口元に笑みを浮かべる。
「メタボリズムを掛けておいた。多少の効果はあるだろう」
依頼人を守り、彼の友の命も救う事が出来た。依頼を成し遂げた心地よい充実感を味わいながら、ルカは大きく両手を振り上げる。
「さぁて、じゃあ、キャメロットに帰るとするか。美味い酒も待ってるしな」
「‥‥やっぱりアレク坊主の意見は無視かい」
酒を奢らされる運命の青年に同情しつつも、反対を唱える事はない。
そうして、彼らは意気揚々と帰路についたのであった。