WANTED

■ショートシナリオ


担当:桜紫苑

対応レベル:3〜7lv

難易度:普通

成功報酬:2 G 46 C

参加人数:8人

サポート参加人数:-人

冒険期間:12月05日〜12月12日

リプレイ公開日:2004年12月13日

●オープニング

「ギルドってのは、金払えば何でもやってくれるんだよなッ!」
 扉を開くやいなや、ギルド内に轟き渡る大音声で叫んだ少年に、依頼を物色していた冒険者達の動きが一瞬止まった。
 妙な迫力を漂わせ、肩でぜぇはぁと息をしている少年がずかずかと受付台へと歩み寄る。
「おっさんを1匹、とっつかまえて欲しいんだけど」
 しんと静まりかえったギルド内に、少年の声が流れた。その声には、最初の怒鳴り声に含まれていた荒々しさはない。その分、内に籠もった怒りがひしひしと伝わって来て、冒険者達は互いに顔を見合わせると乾いた笑みを交わし合った。
 しばしの無言の攻防の後、聞き出し役を押しつけられた冒険者が、渋々と受付前で肩を怒らせている少年へと近づく。
「坊主、そんなにかっかとするな。落ち着いて、事情を話してくれん事には我々も応えようがないぞ」
「俺は冷静だよ」
 冷ややかに冒険者を横目で見て、少年は忙しなく受付台を指で叩いた。
「そうか? 俺にはそんな風には見えんが。‥‥ま、いいさ。で? おっさんをとっ捕まえるとか言っていたが?」
「そう。とっ捕まえて欲しいんだよ。数日前から姿を消した司教サマをね」
 少年の言葉に、冒険者は背後で聞き耳を立てていた仲間達を振り返る。
「司教様がいなくなったの? 誰かに誘拐でもされたのかしら?」
「違う。トンズラしたんだ」
 依頼人へと近づいた女冒険者が、何度か目を瞬かせた。そんな彼女に気づく様子もなく、少年は続ける。
「アイツ、いなくなる前に綺麗なねーちゃんが多いって村と、美味い飯屋のある村と、美味いエールを作っている村の話をしていたらしいから、その3つの村のどこかにいるはずなんだけど」
「ねーちゃんと」
「美味い飯と酒‥‥」
 聖職者にはおおよそ縁遠そうな言葉である。
 絶句した冒険者をよそに、少年は苛々と爪を噛んだ。
「冬至までにやらなきゃいけない事が山積みなのに、あのおっさんは何考えてんだか‥‥。ベイトンのおっちゃん達も困ってんだ」
 ベイトン、と冒険者は口の中で繰り返した。
「キャメロットに居を構えている商人‥‥だったかしら? 最近、羽振りがいいらしいんだけど」
 女冒険者の問いに、少年はうんと頷いた。
「あの放蕩親父をキャメロットに呼んだおっちゃんさ」
「む? 何やら‥‥どこかで聞いたような話だが」
 考え込んだ冒険者の視線が、壁一面に貼られた依頼に止まる。もしや、と彼はぶ厚い羊皮紙の束に手を伸ばした。それは、このギルドで扱われた様々な依頼の詳細が記されている報告書の束であった。
「‥‥坊主‥‥その司教の名前は、もしやアンドリュー‥‥」
「うん。アンドリュー・グレモン」
 羊皮紙を捲る手を止めて尋ねた冒険者にあっさりと肯定を返す。
「冬至の10日前から、潔斎とか色々あるらしいんだ。3つの村は離れてるから、俺1人じゃ、おっさんを連れ戻すなんて出来やしない。協力してくれよな!」
 少年が挙げた3つの村の名に、冒険者達も呻く。
 どの村も、キャメロットから片道2日はかかるし、村から村の間も、中継となる村を挟んで2日か3日はかかるだろう。アンドリューの捜索の時間も考えると、1つ1つ回っていては間に合わない。
「手分けして探すか」
「3つに分かれるのはいいとして、お互いの連絡はどうするのよ」
 アンドリューを見つけた場合に、他の2つの村へと回った仲間にそれを知らせる為の手段を講じておかなければならないだろう。
「‥‥いちかばちかで1つの村にアタリをつけるというのもアリだな」
 女か料理か酒か。
 3つに1つだ。
「何にしても、人騒がせな奴だな。そのアンドリューとやらは」
 キャメロットにやって来た時には真っ当な護衛依頼だったが、今度は自ら遊び歩いて捜索願いとは。
 冒険者達は深く息を吐き出すと、がくりと肩を落とした。



「やれやれ、アンドリュー殿にも困ったもので」
 カチ、と小さく石を打つ音の後に蝋燭の灯りが点り、暗い室内をほのかに照らし出した。
「あの御方にも何か深いお考えがあるのでしょうが。‥‥それよりも問題なのはあの子供ですぞ。よりにもよってギルドに話を持ち込むなどと」
 応える声に頷いて、男は手にした燭台を机の上へと乗せた。椅子に腰掛けていた男は、散乱していた何枚かの羊皮紙を掻き集めて灯りの下で透かし見る。
「薄っぺらい正義とやらに振り回されているだけの冒険者に、我らの求める大儀など分かろうはずもなかろうて」
「‥‥まあ、ギルドも使い様によっては便利なもの。必要以上に首を突っ込ませないようにすればよいだけですよ。あの時のように」
 男の言葉に、羊皮紙を揃えていた男が低く笑った。
「それもそうですな。精々、我らの邪魔にならぬよう働いて貰う事に致しましょうぞ」

●今回の参加者

 ea0029 沖田 光(27歳・♂・志士・人間・ジャパン)
 ea0364 セリア・アストライア(25歳・♀・神聖騎士・人間・イギリス王国)
 ea0479 サリトリア・エリシオン(37歳・♀・神聖騎士・人間・イギリス王国)
 ea1182 葛城 伊織(37歳・♂・忍者・人間・ジャパン)
 ea2834 ネフティス・ネト・アメン(26歳・♀・ジプシー・人間・エジプト)
 ea3385 遊士 天狼(21歳・♂・忍者・人間・ジャパン)
 ea3590 チェルシー・カイウェル(27歳・♀・バード・人間・イギリス王国)
 ea3692 ジラルティーデ・ガブリエ(33歳・♂・ナイト・人間・神聖ローマ帝国)

●リプレイ本文

●行灯龍の行方
 その名を聞いて、サリトリア・エリシオン(ea0479)は盛大に顔を顰めた。名前と一緒に彼女の頭の中を駆け抜けて行くのは、以前の依頼で出会った男の姿。
「‥‥よもや、再びその名を聞く事になろうとはな」
 しかも、また「奴」を捜す依頼である。
 傾いでしまいそうになる体を気力で真っ直ぐに保って、サリは壁際のテーブルを陣取っている仲間達に目を向けた。
「アンドリュー・グレモン。司教だとは信じたくない男だ」
「行灯龍のおっちゃん、悪い人?」
 楽しげに羊皮紙にお絵描きしていた遊士天狼(ea3385)が、羽根ペンを握り締めたままで顔を上げた。少し躊躇った後、いや、とサリは首を振る。
「悪い奴というよりは、お近づきになりたくない奴だな」
 神に仕える者と聞いてひどく衝撃を受けた。宗派まで同じであれば立ち直れなくなりそうなぐらい、サリの中で彼の印象は悪かった。普段は気にもしないが、つくづくと第一印象というものは大切である。
「なるほどね」
 仲間達からの情報を聞いていた沖田光(ea0029)は、椅子に深く腰掛け直すと足を組み、肘掛けに肘を乗せて婉然と微笑む。
「サリさんの話しぶりから察するに、彼の居場所は恐らく」
「せくしぃなお姉様方のいる村だな」
 すかさず答えたジラルティーデ・ガブリエ(ea3692)に、光が肯定を込めた微笑を送る。周囲の女性陣から浴びせかけられる冷たい視線には2人とも気づいていない。
「天もぉ、行灯龍のおっちゃんは綺麗なお姉ちゃんの村だと思うの〜」
「アンドリュー、よ。でも、どうしてそう思うの?」
 インクで汚れた手で頬を擦る天をやんわりと制止して、セリア・アストライア(ea0364)は幼い子供へと語りかける口調で尋ねた。男どもの発想は仕方がないとして、年端もいかない天がそう言い出すからには何か理由があるに違いない。
 小首を傾げたセリアに、天は無邪気な笑顔を向ける。
「あのね、とと様が前に、綺麗な姉ちゃんとお友達になって、一緒にご飯食べて、最後にお酒飲ましてむふふ〜が王道だって言ってたの!」
 だから、お姉ちゃんが先なの。
 ひくりとセリアの頬が引き攣る。幼少期の生育環境の大切さとか、人格形成に及ぼす影響とか、そんな小難しい事は百歩譲って置いといて、とりあえず、今、彼女が言うべき言葉はただ1つであった。
「天ちゃん、そんな汚れた大人になっちゃいけません」
 肩に置かれた手と、注がれる真剣な眼差しとに不思議そうな顔をしつつ、天はうんと頷く。意味など分かっちゃいないだろうが。
「でもさ、ぶっちゃけ、アンドリューさんが何を考えているのか、さっぱり分からないわ。だから、私には彼がどこへ向かったかなんて推測出来ないけど‥‥」
 果物の蜂蜜漬けを口の中に放り込んだチェルシー・カイウェル(ea3590)は、指を折りつつ、現在分かっている情報を再確認していく。
「どう考えても、三手に分かれるのは得策じゃないと思うな。彼が向かった村を特定して動いた方がいいよね。あ、でも、顔が分からないと捜しようがないな‥‥」
 はいはーい!
 チェルシーの言葉に反応したのは、セリアに顔を拭いて貰っていた天であった。
「アレク兄ちゃと一緒に、天、似顔絵描いたの〜!」
「天ちゃん! 偉‥‥」
 天が差し出した羊皮紙を受け取ったチェルシーの言葉が中途半端に途切れた。覗き込んだサリが額に手を当てて首を振る。
 お姉さん達の反応に、天は、返して貰った羊皮紙を銀髪青年に見せて尋ねた。
「似てりゅ?」
 途端に、青年の笑顔が強張った。素知らぬ顔で茶を飲む主を鋭い目で睨みつけ、彼は不安そうに見上げる少年の目線に合わせて膝を折る。
「天くん」
「みゅ?」
「‥‥とりあえず、目は2つ、口と鼻は1つずつです」
 ああ、とセリアが首を振った。どうか彼が真っ直ぐに育ちますようにと聖なる母に祈りを捧げ、天の放り出した羽根ペンを手に取る。
「似顔絵は私が描きますわ。彼の特徴を教えて頂けますか?」
「そ、そうね。絵はセリアさんに任せて、あたし達は行き先を決めましょ! ネティさん、お願い出来る?」
 勿論よ、と片目を瞑ってみせたネフティス・ネト・アメン(ea2834)の手には、既に金貨が握られている。静かだったのは、太陽と会話していた為らしい。
「太陽神からのお告げだと、光さんやジラさんの言う通り、女の人がいる村の方角にいるわ!」
 何度か位置を変えて尋ねてみたから間違いない、とネティは胸を張る。
「‥‥そう‥‥」
 ふ、と遠い目をしたチェルシーの気持ちが、サリには痛い程によく分かった。

●行動の理由
 村を特定出来れば、その後は簡単だと彼らは思っていた。
 話を聞く限り、アンドリューは良くも悪くも目立つ人物らしいから、目撃情報を集めるのも容易いと考えていたのだ。だが、彼らの当ては外れてしまった。
 礼節を重んじるFORの生徒らしからぬ乱暴な舌打ちがジラの口から漏れる。さほど広くはない村の中とはいえ、仲間とぶつかるのはこれで何度目だろう。
「これじゃ、花壇でナメクジの跡を追ってるようなものだ」
「全くデスネ」
 やれやれと肩を竦めたチェルシーを横目で見ると、ジラは髪を掻き上げた。ロクでもない噂ばかり追いかけさせられ、苛立っていたが頭が冷めて来たようだ。
「少し休憩しよう」
 目についた店に入り、エールを注文する。チェルシーは香草茶だ。
「一番新しい目撃情報は、昨日の夜、お姉さん達と村の外れにある店に入って行ったというものね」
 ずきんと痛んだこめかみを揉んで、ジラは自分の調査結果を告げた。どれも似たような目撃情報である。情報が多いのはありがたいが、多すぎるのは考えものだ。
「奴は、自分の行動を誰かに見せるように動いている気がする」
 エールを1口啜り、ジラは声のトーンを落とした。素焼きカップを包み込むように持ち、指先を温めつつ茶を飲んでいたチェルシーが視線を上げる。
「例えば‥‥そうだな、この村に来たのは目的があっての事で、豪遊はその目的から誰かの目を逸らす為のものだった、とか?」
「単に、派手好きって気がしないでもないけと?」
「まぁ‥‥それは確かに‥‥」
 どちらにしても、本人を見つけ出さない事には話にならない。
「ともかく、この話は、本人に聞いてからにしましょ。用があるなら、それが終わるまで待てばいいし、‥‥もし、くだらない内容だったら首に縄をつけて持ち帰ればいいし」
 微笑んでさらりと告げたチェルシーに反論する気にもなれず、ジラは曖昧に頷いた。

●サンワード
「結構です」
 掛けられた声をにべなく撥ねつける光の姿を通りの向こうに見つけて、ネティは吐息を漏らした。
「また声掛けられてるよ。やーねぇ。この村の男達って本っ当に見る目がないんだから」
 ぷんすか頬を膨らませている理由は深く追及せずにおくとして、サリはセリアの描いた似顔絵を眺め、何度目か分からない言葉を口にする。
「やっぱりこれは高すぎると思うが?」
「あら? そうですか?」
 アンドリューの似顔絵の下には、大きく書かれた「WANTED」と「2G45C」の文字。
「でも、本当に貼り出すわけじゃないし、いいじゃない」
 これまた何度めかのネティの言葉に、サリは小さく唸る。分かってはいるが、やはり納得出来ないといったところか。
「それより、セリア。私、気になってたんだけど‥‥以前、私達の目の前で女性1人を堂々と攫っていった男がいたでしょ?」
「え? ああ、深くフードを被っていた男ですね」
 ネティはセリアに顔を寄せた。潜められた声を聞き取ろうと、サリも腕を組んだ姿勢のまま耳をすます。
「アンドリューさんって、あの時の男に背格好が似てるのよね。‥‥あのフードの男が、今、どこにいるのか太陽神にお伺いしてみようかしら」
「1つ聞くが‥‥ネティはそのフードの中を知っているのか?」
 相手が今もフード姿でうろついているとは限らない。顔を知っているアンドリューを捜すのとわけが違う。冷静な指摘を受けて固まったネティの肩を1つ叩いて、サリは通りの中を行き交う人々に目を戻した。
「ああ、また声を掛けられているな」

●行状
「君、うちの店で‥‥」
「間に合ってます」
 捜しモノは見つからないのに、関係ないものばかりが寄って来る。酒場やら料理屋やらで働かないかという勧誘ばかりである。法衣を着ているセリアのグループに声を掛けていない所を見ると、彼らにも分別はあるのだろう。しかし‥‥。
−モンスターと戦っている方がまだマシです‥‥
 何が悲しゅうて、勧誘合戦に付き合わねばならないのか。こんな状態ではアンドリューを捜すどころではないではないか。
「やあ、君はこの子の‥‥」
「‥‥僕は男ですッ!」
 頂点に達した苛立ちに任せ、相手を怒鳴りつけて我に返る。つんと手を引かれ、面食らった男から視線を下げれば、見知った少年の姿があった。
「光兄ちゃ、天、迷子になったの」
 ぐっと、光は拳を握った。決して、周囲から聞こえた「子持ち」という単語に反応したわけではない。彼は、自嘲の念に駆られていたのだ。
 考えられる事だったのに、迷子対策をすっかり忘れていた自分の迂闊さに。
「ごめんね、天ちゃん。‥‥あの、ご迷惑をおかけし‥‥」
 天の頭を撫で、彼を自分の元まで連れて来てくれた男へ礼を述べようと向き直った光は、はてと首を傾げた。どこかで見たような気がする。
 自分の記憶を探り、天と男とを見比べていた光は、無言で男の腕をがしりと掴んだ。
「おい?」
「グレモン、ゲットだぜッッ!!」
 男の腕を掴む手を高々と挙げて叫ぶ光に、思わず後退った天の肩に誰かの手が置かれた。見上げた視線の先に、柄の悪い男の厳つい顔。
「何ですか? 貴方達は」
 いつでも剣を抜けるように身構えた光を一瞥して、男はアンドリューに顎をしゃくる。
「お嬢ちゃんにゃ関係ない。用があるのは、そっちの男だ」
 素早く周囲を見渡すと、人相の悪いごろつき達が彼らの退路を塞ぎつつ近づいて来る。
「僕達も、この人に用があるんです」
 光の言葉が終わらぬうちに、背後を塞いでいた男が苦鳴をあげて倒れた。騒ぎに気づいて駆けつけたジラが手刀を男の首筋に叩き付けたのだ。
「じゃ‥‥邪魔をするな! 俺達は、そいつに!」
「そいつに‥‥何だ? お前達に正義があるならば、はっきりと言うがよい」
 湧き起こる怒声を突き抜けて静かな声が響いた。侮る事を許さない、強い光を湛えたサリの瞳が男達を射抜く。自分達が逆に囲まれていたと気づいたのは、数瞬後。
「どうした? 言えないのか?」
「そ、そいつが俺達から金を巻き上げやがったんだッ」
 思ってもいなかった言葉に、サリの瞳が見開かれた。
「あれは勝負だっただろ? 負けたからと言って難癖つけるのはどうかと思うが?」
 飄々と答えたアンドリューに、男がくってかかる。
「イカサマしやがっただろうがッッ!!」
「その場で気づかなかった君達が間抜けなんだろ」
 ぐらり、とサリの体が揺れた。
「ひ‥‥否定しないのか」
「何をやってるんですか貴方はッッッ!!」
 激しい目眩を感じたサリの隣で、わなわなと拳を震わせていたセリアがつかつかとアンドリューに歩み寄り、その法衣を掴んでゆさゆさと揺さぶる。
「貴方には貴方のお考えがきっとあるのだろうと思っていましたけれど! 私は、こんな話を聞いて何も言わないでいられるような出来た人間ではありませんから言わせて頂きますけれどッ」
 次から次へと紡ぎ出されるセリアの言葉に、ぽかんと口を開けたのはならず者達だった。
「えーと、お金っていくら?」
 後で絶対に返して貰うからと小声で囁いて、ネティが自分の懐を探る。
 不服そうなアンドリューの手にどこからか調達して来た紐を巻きつけ、その片端を光の手に結わえると、チェルシーは暮れかけた空を見上げて小さく笑った。
「まさか、本当に紐つけて連れて帰る事になるなんてね」
 疲れを滲ませた彼女の言葉に同意を示す気力が残っている者はいなかった。