朽ちた都で
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■ショートシナリオ
担当:桜紫苑
対応レベル:5〜9lv
難易度:やや難
成功報酬:4 G 62 C
参加人数:8人
サポート参加人数:-人
冒険期間:11月30日〜12月09日
リプレイ公開日:2005年12月10日
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●オープニング
バンパイアと呼ばれるモンスターは人の姿をしているアンデッドであり、人の血を啜る‥‥というのは、冒険者であれば誰でも知っている知識だ。太陽の光に弱いとも、ニンニクや十字架を恐れるとも言われている。バンパイアを討ち滅ぼすには、その心臓に木の杭を打ち込めばよいとも。
しかし、それが真実か否かは分からない。
彼らの生態は未だ多くの謎に包まれている。
確かに分かっているのは、バンパイアに噛まれた者は1週間高熱を発した後に吸血本能だけを持った魂のない抜け殻、スレイブ‥‥下僕と呼ばれるバンパイアになってしまうという事。
「スレイブは、バンパイアが人を襲えば襲うほどに増えていく。1匹のバンパイアが血を吸った人間がスレイブとなり、別の人間を襲う。襲われた相手も1週間すればスレイブだ。2匹に増えたスレイブが、また別の人間を襲う。ネズミが増えていくように、どんどん増殖していく」
険しい表情のまま淡々と告げられた言葉に、冒険者達は背筋に冷たい物が流れるのを感じた。
「だが、どれほど増殖しても、スレイブは上位種には決して逆らえない。もっとも、スレイブは意思など持たないアンデッドだからな。自発的に何かをする事などあり得ないのだが」
気の抜けたエールで乾いた唇を濡らして、彼は話を続ける。
「バンパイアには序列がある。バンパイアが上位の者に刃向かう事などあり得ない。そして、あの都は1匹の上位種が支配する都だった。俺が知る限り、数匹のバンパイアが支配者に従い、あの都で暮らしていた。気が向けば狩りをし、スレイブを増やして‥‥な」
「でも、何かが起きて都は崩壊し、周囲の人々を災厄が襲ったんだな?」
確認した冒険者に頷きを返し、彼は1枚の羊皮紙を卓の上に広げた。
正式な書式に則った冒険者ギルドへの依頼状だ。
依頼の最後には、アンドリュー・グレモンという彼のサインも入っている。
「もう1度、あの都を探索する依頼を出す。スレイブとなり、あの地で滅びた連中を、せめて骨や形見だけでも人間社会に戻してやりたい。‥‥それからある物を探して欲しい」
前回の探索では、見つけ出す事が出来なかったもの。
その為に、辛い思い出が眠る場所へと足を踏み入れる事を決意したのだ。
「探し物とは、何だ?」
「‥‥剣だ。俺が姉の魂を解放した剣」
姉を解放した剣は、彼には重すぎた。長く共に過ごし手に馴染んだ剣だというのに、都を守る何十、何百ものアンデッドを斬り捨てた剣だったのに、あの瞬間から、持つ事も出来ぬ程重くなった。
だから、捨てたのだ。
姉を手にかけたという罪悪感と共に。
せめてもの償いにという自己満足に浸りながら。
「剣は、今もあの都のどこかにあるはずだ」
アンドリューは、冒険者達の目を真っ直ぐに見据え、言葉に力を込めて告げた。
「俺は、1度逃げた。姉を斬った時に全てを終わった事にしてしまった。何も終わってはいなかったのに。だからこそ、剣を取り戻したいんだ」
「今度こそ、終わらせる為に?」
そうだ、と力強く答えたアンドリューに、冒険者達は苦笑めいた笑みを頬に浮かべ、肩を竦める。
「あの「グレモン司教」と同一人物だとは思えないよな」
西に綺麗なお姉ちゃんがいると聞けば目尻を下げて西へと走り、東に美味い酒があると聞けば東に向かう。派手に遊んでカムラッチ少年から怒鳴られていた問題司教。それは、彼の偽りの姿だったのかもしれない。
互いに顔を見交わし、冒険者達はアンドリューを振り返った。
「今度こそ、全てを終わらせる。だから、その時には、俺の気持ちに応えてくれるだろうか」
「‥‥‥‥‥‥‥一昨日いらっしゃい」
瞳を覗き込み、その手を握り締めて真剣に囁いた男の顔面に、受付嬢の痛烈な一撃が炸裂する。
仰向けになって倒れ込んだ依頼人の姿を、冒険者達は見なかった事にした。
●リプレイ本文
●危険
「出来たわよ」
温かい湯気の立つ椀を並べて、藍星花(ea4071)は仲間達を振り返った。
「ああ、すまない」
ドアや窓にロープを使った罠を仕掛けていた逢莉笛舞(ea6780)が作業の手を止めて立ち上がる。雪こそ降ってはいないが、夜は冷える。室内とはいえ、今、彼女達がいる場所は廃墟だ。崩れかけた壁や窓から冷たい隙間風が吹き込むし、足下から忍び寄る冷気は堪える。
スープで体の中から暖まろうと仲間達は確認の手を止めて、それぞれに集まって来た。
「体が冷えておりましたから、本当に有り難いですわ」
受け取った椀で指先を温めていた御法川沙雪華(eb3387)に、馴れ馴れしい腕が回される。
「冷えたなら、俺が暖めてあげようか」
すかさず、天霧那流(ea8065)は図々しい男の手を強かに抓ると、沙雪華を奪い返した。
アルマスの鞘を払った星花に冷や汗混じりの言い訳をしているアンドリューを一瞥して、那流は仲間達へと提案をした。
「ねぇ、色々と危険だから、司教様を外に吊しておくというのはどうかしら? 見張りも兼ねて貰う事にして」
「あら、それは良い考えね」
ゆっくり眠れそう。
即座に星花が同意すると、椀に口をつけていた舞もこくこくと頷く。
とりあえず沈黙を守ったのは遊士燠巫(ea4816)だ。しかし、それをアンドリューが見逃すはずもなく。
「危険というなら燠巫もだろうが。燠巫だけお嬢さん方と一緒なんて美味しい状況は許せん!」
「何を言う。俺は愛する妻と子がいるんだぞ! 妻を裏切る事など有り得ん!」
「では、何故聖書を見て身構えるっ!」
こめかみを指で押さえて、ヴァレリア・ロスフィールド(eb2435)は溜息をついた。
「低次元‥‥」
彼女からすれば五十歩百歩、どっちもどっちである。
「コレが、自分と同じ聖なる母に仕える者とは情けなくて涙が出ます‥‥」
「んー、じゃ、とりあえず、2人ともお外で寝て貰うという事で」
低レベルな争いにあっさりと決着をつけて、ケミカ・アクティオ(eb3653)は愛犬シヴァっちの頭を撫でた。
「シヴァっちは、私と一緒ね。あんまり吠えちゃダメよ? こわ〜いオバケが寄ってきちゃうのよ?」
ぱたぱたと尻尾を振って応えたシヴァっちに、燠巫とアンドリューはうらめしそうな視線を送る。しかし、女性陣はケミカの決定に概ね賛同しているらしい。人数的にも負けている上に、2人が2人とも女性には勝てない体質(?)だ。寒空の下で野宿かと諦めかけたその時に。
「ですが、皆様、何が襲って来るか分からないのですから、お2人と離れるのは危険ではありませんか?」
救いの女神!
遠慮がちに言葉を発した沙雪華へと抱きつかんばかりに感激を現すアンドリューを一撃のもとに沈めて、シータ・ラーダシュトラ(eb3389)は腕を組んだ。
「確かに、ばらばらになるのはマズイよね。でもねぇ〜?」
「ですから」
沙雪華は微笑んだ。彼女の手に握られているのは、舞の持っていたロープの余り。
「‥‥え?」
ぽん、とシータと那流が同時に手を打った。
●肖像画
「この屋敷の主は女性だったようね」
部屋の隅に転がっていた宝石箱を拾い上げて、星花が呟いた。壊れてはいるが、薔薇の細工が施された豪奢なものだ。
「それも、薔薇好きだったみたいよ?」
宝石箱から零れ落ちたのだろう。埃を被っていた宝石を丁寧に拭って、那流が手の上に転がした。彼女の言う通り、幾つかの指輪と飾り留めには薔薇が刻まれている。
「なんだか不思議ですね。バンパイアにも、装飾品に好みがあるなんて」
飾り留めを手に取ったヴァレリアが感慨深そうに、灯りに翳す。
「一体どうして、バンバイアは自分達の都を焼いたのかしらね」
シヴァっちの毛に埋もれて暖を取っていたケミカの疑問に、アンドリューは目を細めて冷笑を浮かべた。
「さぁな。分かっているのは、奴らは上位種に逆らえないという事と、自尊心がやたらと高くて、残酷だって事ぐらいだ」
「‥‥カッコつけても様にならないわよね」
やれやれと息を吐き出すケミカ。
彼女の言う通り、手足を縛られて床に転がされた状態では、如何に渋くキメても笑いを誘うだけだ。
「‥‥なら、これを外してくれないか」
「却下」
即座に切り捨てて、舞は灯りの下で確認していた肖像画を床へと並べた。以前、子供の絵が見つかった屋敷から運んで来たものだ。
「私も、この絵が気になっていたのよね。どうして、片方の子供が塗り潰されているのかしら」
覗き込んだ那流に、舞は首を振る。
塗り潰されていなかったのは、ポーツマスへと持ち帰った1枚のみ。それは、現在、ポーツマス領主が複製を作らせているという。
「そういえば、あの絵の少年、銀色の髪をしていたな。‥‥アンドリュー殿、今、ヒューがバンパイアではないかと疑われていると‥‥」
アンドリューと同様に床へと転がされていた燠巫が、不意に言葉を切った。
黙り込んでしまったアンドリューの表情が沈鬱なものになった事に気づいたからだ。
「アンドリュー殿?」
「いや、なんでもない」
何でもないという雰囲気ではなかったが、燠巫はその理由を聞きそびれた。
肖像画の額縁を外していたヴァレリアが驚きの声をあげたからだ。
「どうかしたのか?」
「字が書かれています」
ごろっと足下へと転がった燠巫に短く答えて、ヴァレリアは書かれてある文字を読み上げた。
「聖餐の儀‥‥と、あとは日付のようですね」
互いに顔を見合わせて、彼らは絵を見つめた。何だか得体の知れぬ悪寒が、背をはい上がって来るのを感じながら。
●朽ちた都で
那流の刀がズゥンビの右腕を切り落とした。続けて、小太刀が左腕を切り裂く。
「ナル、離れて」
短い星花の言葉に、那流は頷くと同時に飛び退った。星花のアルマスから放たれた真空の刃を浴びたズゥンビの体がその威力に耐えかねて吹き飛ばされる。
「だいたい片付いたな」
周囲を見回して確認すると、舞は遺品を守って木の陰に身を隠していたアンドリュー達を手招いた。
「遺品も集まったし、吸血鬼の屋敷の調査も終わったが」
言いかけて、舞は吐息をつく。
遺品の収集は良いとして、屋敷の調査は思っていた程の収穫がなかった。地下へと続く階段を発見しても、その先は崩れて進めなかったり、扉を開く事が出来なかったのだ。
「時間があるならば、簡素でもいいので弔いの儀を執り行いたいのですが」
ヴァレリアと語らっているアンドリューの顔を盗み見て、舞はもう1度吐息を吐き出した。
もう1つの目的であるアンドリューの剣も、未だ発見出来ない。
「アンドリューさん、お探しの剣はどのような形でしたの?」
「どこに捨てたか覚えていないの?」
沙雪華と那流が続け様に問うた。
セブンリーグブーツで急ぎ、探索の時間を多く取ったのだが、そろそろ滞在時間も尽きる。彼女達が焦るのも無理はない。
「剣は、クルスロングソードだ。捨てた場所は覚えているが‥‥多分、動いていると思う」
剣が自分で動くはずがない。
真面目に答えろとシータが詰め寄ったその時、犬の吠える声が響いた。
別れて探索に出ていたケミカはまだ戻っていない。顔を見合わせ、彼らは声のする方へと急ぐ。
林の中にある小さな泉に向かって、シヴァっちは吠え続けていた。
「シヴァっち、ケミカは!?」
「まさか、泉に?」
顔色を無くした冒険者達が駆け寄るよりも先に、シヴァっちが泉へと飛び込んだ。浮かび上がって来た小さな体を背に乗せ、岸へと泳ぎ着いたシヴァっちに、アンドリューは手持ちの毛布を乱暴に投げた。
「こんな寒い日に泉に入る奴があるか!」
言いながら、ずぶ濡れになったケミカの体を暖めるべく腕を伸ばし、彼は固まった。
震えるケミカが差し出したのは、1本のロープ。昨夜、彼の手足を縛っていたそれだ。水を吸って重くなったロープは、泉の中へと続いている。
燠巫が、ゆっくりとロープを引き上げる。
その先に結ばれていたのは、彼らが探し求めていた剣であった。
●贖罪
震える手で柄を握り締めて、アンドリューは痛みに耐えているかのように眉を寄せた。
「アンドリューさん‥‥」
気遣うような沙雪華の声に、彼は口元を歪める。
「この剣を初めて持った頃、俺はどんな凶悪なモンスターも、神の名の下に打ち倒す事が出来ると思っていた。‥‥奴に会った時も、そうだった。手強かったが、俺は奴に傷を負わせ、追いつめたんだ」
ぽつりぽつりと語るアンドリューに、その場の誰もが口を挟む事が出来ず、ただ黙って耳を傾ける。
「だが、奴は‥‥自尊心を傷つけられた奴は、俺が最も苦しむ報復手段を考えた。それは、俺に直接攻撃を仕掛けるのではなく、姉を‥‥」
アンドリューは唇を戦慄かせた。
「この都へと連れ去られた姉は、死ぬより辛い目に遭った。俺は、それを知らずに正義の味方気取りで各地を転々とし、姉の事を聞かされ、ここを突き止めるまでに何年も費やした。ようやく見つけ出した時、既に姉は姉で無くなっていた」
こみ上げて来る嗚咽を、シータは手の甲を口に押しつけて抑える。
「襲いかかって来た姉を、この剣で斬った。姉を斬った自分も、剣も厭わしくて‥‥一部始終を見ていた子供に剣を押しつけた。親切ごかしの忠告と共に」
子供、と燠巫が繰り返す。
子供の肖像画があったぐらいだ。バンパイアの子供がいてもおかしくはないのかもしれない。だが、何かが引っ掛かった。
「何と忠告したんだ?」
暗い目をしている。ヒューの事を尋ねた時と同じ目だと燠巫は思った。
「抜け道を教えた。生きたければ、都を出るがいいと」
え? と、冒険者達が顔を上げる。
「生きる‥‥」
いくら子供でもバンパイアはアンデッドである。まるで人の子に対する言葉だと考えて、ヴァレリアは息を呑んだ。
「まさか、その子供はバンパイアではない‥‥と?」
「バンパイアの上位種の支配を免れている子供だ」
「馬鹿なッ!」
そんな事はあり得ない!
思わず叫んだ舞に、アンドリューは疲れたように首を振った。
「本来、バンパイアの上下関係は絶対だ。だが、奴は何らかの手段を用いてそれを成した。人の間でハーフエルフが疎まれるように、その子供もバンパイアに忌まれ、存在すら認められないものとして扱われて獣のように生きていた」
何かが体に絡まっているかのように、指1本動かす事が出来ない。
ただ、彼らはその場に立ち竦む。
「連れ帰る事も出来た。だが、俺はそいつを見捨てた。そいつの母親のような存在‥‥姉を斬った剣を押しつけて、な」
押し殺した笑いが響いて、彼らは我に返った。
口元を歪めて、アンドリューは笑っていた。
「アンドリューさん‥‥」
手を伸ばしかけて、沙雪華は躊躇った。なんと言葉をかけてよいか、分からなかったのだ。慰める為の言葉が咄嗟に思い浮かばない。
「姉も、さぞや俺を恨んでいる事だろう」
「そんな事ない!」
低い自嘲を遮ったのは、シータの声だった。激しく頭を振ると、アンドリューへと駆け寄り、血が滲む程に握られた拳を包み込むように抱き締める。
「そんな事ない! アンドリューさんはお姉さんを人に戻してあげたんだよ! お姉さん、きっとアンドリューさんに感謝して眠りについているよ」
くしゃと顔を歪めて、シータは必死に訴えかけた。
祈りの形に指を組んだ沙雪華も言い募る。
「そうですわ。アンドリューさんは、死して尚もバンパイアに縛られていたお姉様を解放して差し上げたのですもの」
項垂れたアンドリューの肩が震えるのを、彼らはただ静かに見守った。
重く垂れ込めた雲から、白い雪がちらつき、焼けこげた地面を白く塗り潰していくまで、ずっと。
「‥‥俺は」
やがて、アンドリューは口を開いた。
「俺は、ずっと許されたかったのかもしれない‥‥」
嗄れた小さな呟きに微笑んで、舞が肩を叩く。
「もう! いつまでそんな風にぼーっとしているの? 風邪ひいちゃうでしょ」
涙声で叱りつけ、ケミカが重さにふらつきながらも毛布を彼の肩まで運んだ。
顔を上げれば、自分を見守る冒険者達の姿がある。
「‥‥この都で朽ちた人達の為に、鎮魂の舞を」
裾を翻して那流がゆるりと舞い始めた。それは、遠いジャパンの舞。最小限に抑えた動きの中、足のさばき、手の先までに込められた祈りが、白い雪の花と共に大地へと降り積もって行った。
●決意
「で、これからどうするの?」
肩に座ったケミカの問いに、彼は片方の眉を器用に上げてみせた。
「ん? 決まってるだろ。全てを終わらせるんだよ。奴を今度こそ滅ぼすんだ。勿論、俺1人の手には余るが‥‥」
「私達がいるわ。バンパイアだろうが、デビルだろうが、このアルマスの露にしてあげるわ」
聖剣アルマスを抱えて笑った星花に、アンドリューは笑み返しながら固まった。そういえば、アレの露にされかけたような記憶があるのだが、気のせいだろうか。
「そう、奴らに好き勝手させるわけには参りません。聖なる母の名にかけて。そうですよね、アンドリューさん?」
沙雪華の背後に逃げ込みかけた男の肩を掴んで、ヴァレリアが微笑む。
「そ‥‥そうでス‥‥」
「やれやれ。アンドリュー殿が勝てないのはバンパイアよりも女性だと思うぞ、俺は」
「人の事が言えるのか」
腕を組み、呆れ顔で呟いた燠巫に、ずばっと入る舞の鋭い突っ込み。
「ともかく、今はボク達に出来る事をやろうよ! ‥‥って、なに?」
手に押しつけられたものに、シータは戸惑ってアンドリューを見た。
布で巻かれたそれは、彼が探し求めたもの。
「ずっと、この剣は俺の罪の証だと思っていた。だが‥‥姉は恨んでないんだろ?」
「う、うん。恨んでないと思う」
ならば、と彼はもう1度、廃墟を振り返った。
「それは‥‥お前の好きにしてくれ。罪の証ではなくなった剣、使い道はあるだろう」
「でも、いいの?」
問われて、彼はおどけた風に肩を竦めてみせる。すっかり、いつもの調子に戻ったようだ。
「俺は司教、もう騎士じゃないんでな」
「‥‥素直に年だから、剣を振り回すのがキツイとおっしゃい」
那流の指摘に、アンドリューはぎくりと体を強張らせた。
「い‥‥いや、決してそんな事は‥‥」
当たらずとも遠からじ、といった所か。何やら必死に言い募るアンドリューに、冒険者達は堪えきれずに笑い出した。