深窓の令嬢誘拐事件

■ショートシナリオ


担当:桜紫苑

対応レベル:1〜5lv

難易度:普通

成功報酬:1 G 94 C

参加人数:6人

サポート参加人数:-人

冒険期間:09月18日〜09月25日

リプレイ公開日:2006年09月28日

●オープニング

●誘拐
 その木陰は、歩き疲れた旅人が足を休める為によく利用する。
 近くには清水の湧く泉もあるし、街道から1本外れているから人目を気にする事なく寛ぐ事が出来るのだ。
「あれ?」
 少し休憩しようと街道を逸れた所で、彼は柔らかな草の上に座った少女の姿に首を傾げた。
 ご近所の娘さんじゃない事は、すぐに分かった。上等な布で丁寧に作られた旅装束、手入れの行き届いた髪に、日に焼けていない白い肌。きっと、どこかの金持ちの娘だろう。
「失礼ですが」
 だからこそ、危ない。
 瞬間、迷う素振りを見せたが、彼は思い切って少女に声をかけた。
「もしかして、お1人で旅をしておられるのですか?」
 少女は驚いたようだった。だが、すぐに笑って口を開く。
「いいえ。供の者が一緒に。今は、水を汲みに行っておりますが」
「そうなんですか。よかった。貴女お1人で旅をなさっているのかと思っちゃいました。この辺り、最近、色々と物騒なんです」
 ほっと息をついて笑みを返した彼に、少女はまぁと目を丸くする。
「あ、申し遅れました。僕は、駆け出しの冒険者でアリアスと言います」
「アリアスさんですか」
 はい、と答えかけて、アリアスはダガーの柄を握った。いつの間にか周囲にいた旅人達の姿が消え、代わりに人相の悪い男達が数人、下卑た笑みを浮かべて彼らへと近づいて来る。
「バーモントの嬢ちゃんだな? 悪いが、俺達と一緒に来て貰うぜ」
「貴方達は何者ですか!」
 アリアスが身構えるよりも早く、男が動いた。
「逃げて下さ‥‥いぃぃ!?」
 少女を背に庇おうとしたアリアスを、男の1人が肩に担ぎ上げたのだ。
「ちょっ、ちょっと‥‥」
 ぽこぽこと男の背を叩いてはみるが、何のダメージも与えてはいないようだ。哄笑して、男は少女を振り返った。
「じゃあ、バーモントの嬢ちゃんは預かっていくぜ。嬢ちゃんを無事に返して欲しけりゃ、この羊皮紙に書いてある通りにしろとバーモントの旦那に伝えておけ」
 手の中に羊皮紙をねじ込まれ、呆気に取られた少女が我に返ったのは、男達が消えてしばらく経ってからの事だった。

●傷ついた自尊心
「‥‥えーとぉ」
 怒りに打ち震える依頼人の姿に、冒険者達は互いに顔を見合わせた。
 何と言葉をかけるべきだろうか。
「不幸中の幸いでした」? それとも「人違いでよかったですね」? それもどうだろう。
 書き上がった依頼状を卓に叩きつけて、彼女は戸惑う冒険者達を見据える。
「これでよろしいでしょうか? 不備がないかご確認下さい」
「あ、はい」
 慌てて駆け寄った受付嬢が内容に目を走らせる間にも、依頼人の不機嫌さは増していく。
 誘拐されかけた恐怖よりも、賊が自分と間違えて男を連れ去った事にいたく自尊心を傷つけられたようだ。
「私の代わりに連れ去られた方を放ってはおけません。彼の救出を依頼します」
 言葉の最初に妙な力が籠められていたのは気付かなかったフリをして、冒険者は賊が残して行ったという羊皮紙を卓の上に広げた。
「なになに? ああ、身代金の受け渡し日と場所の指定があるな。ここからそう遠くはない村だ」
 キャメロットから歩いて2日、と言うところか。
「この村って、廃村じゃなかったか?」
 記された村の名を指さして、冒険者の1人が呟いた。
「確か、井戸の水が涸れたとか何とかで‥‥。廃村なら、身を隠す所は多いだろうな」
 それが理由で、奴らもその村を選んだのだろう。
「奴らに有利とも思えるが、周囲の事を気にしなくていい分、俺達も存分に暴れられる。地の利は五分五分だ」
「時間的にも十分余裕がある。予め脅迫状を用意しているという事は、金銭目的だろうから、人質の安全も受け渡し日までは保証されているだろう。我々は万全の準備を整えて‥‥」
「‥‥私の代わりに連れ去られた方‥‥」
 地を這う低い声が、彼らの会話に割って入った。ぴきりと凍り付いた冒険者達に、少女はふふふと笑いかける。可憐な少女の笑みには、どことはなく鬼気迫るものがあった。
「冒険者だとおっしゃっていました。皆様のお仲間なのですよね‥‥」
「準備するものをリストアップしなくちゃなー」
 話を逸らしかけた冒険者の後ろ襟を引っ張って、少女は何事もなかったかのように続ける。
「軽装でしたけれど皮鎧をつけていました。腰にダガーも。どうして、武装した男性を私と間違えたのでしょうね」
 結局、そこに話が戻るのか。
 がくりと肩を落として、冒険者は力無く笑った。
「お嬢さんを男装させてると思ったんじゃないかなぁ、とか言ってみたり」
 取り繕った言葉の裏に、別の意味が含まれている事に気付いた者は数名。
 連れ去られたアリアスは、風が吹けば飛んで行きそうな弱々風情の冒険者なのだ。か弱いお嬢さんに見間違えられる程に。
「ああ、そうか。捕まっているのはアリアスなんだ‥‥」
 その事実に思い当たって、冒険者は遠い目をした。
 冒険者と言っても、剣を持たせれば、その重さに振り回される激弱だ。賊に捕まっている彼の援護は期待してはいけない。と言うよりも、一般人の娘さんを救出するつもりで掛からねばならないだろう。
 未だ怒りが収まらない様子の少女を眺めつつ、彼らは深く溜息をついたのだった。

●今回の参加者

 ea4825 ユウタ・ヒロセ(23歳・♂・ファイター・人間・イギリス王国)
 ea4890 ラーム・パラシオン(30歳・♂・ウィザード・エルフ・イギリス王国)
 eb3671 シルヴィア・クロスロード(32歳・♀・神聖騎士・人間・神聖ローマ帝国)
 eb6575 ラプリィ・ローグ(21歳・♀・レンジャー・エルフ・イギリス王国)
 eb6621 レット・バトラー(34歳・♂・レンジャー・人間・イギリス王国)
 eb6702 アーシャ・イクティノス(24歳・♀・ナイト・ハーフエルフ・イギリス王国)

●リプレイ本文

●きっと、それも試練
 「はーい、いい子ですね」
 丸めた布のおもちゃをくわえて戻って来た愛犬、ルヴィリアの頭を撫でて誉めてやり、シルヴィア・クロスロード(eb3671)はバックパックの中から剣を取り出した。
 にっこり笑って、その剣を愛犬にくわえさせる。
「じゃあ、今度はその剣を持っていくんですよ? あっちで手を振っているユウタ殿に、渡して来て下さい!」
 命ずるシルヴィアの声と同時に、ルヴィリアは土を蹴った。
「いい子ね! ルヴィリ‥‥ルヴィリア!?」
 まっすぐ駆けて言った愛犬がくわえていた剣を放り出し、ユウタ・ヒロセ(ea4825)に飛びついていく様に、シルヴィアは額を押さえる。これは、ルヴィリアにとって遊びの一環なのだ。ユウタに腹を見せて懐きながらシルヴィアへと視線を送る。誉めて欲しいのだろう。怒らなきゃと思うのだが、そんな仕草を見せられると怒る気もどこかへ吹き飛ぶというものだ。
「ルヴィリア、ちゃんとユウタ殿の所まで運んでくれたのですね」
 放り出された剣を拾い上げ、シルヴィアは溜息をついてみせた。
 ここ数日のうちにすっかりユウタと仲良くなった愛犬の頭を一撫ですると、今度はめっと顔を顰める。
「でも、私はユウタ殿に渡して下さいって言いました。ちゃんと渡さないと駄目でしょう?」
「シルヴィアお姉ちゃん、ルヴィリアを怒らないで! ボクがおいでって言っちゃったのが悪いんだよ!」
 ルヴィリアを庇って訴えかけるユウタのうるうる瞳に、瞬間的な眩暈を感じた。
 手にした剣を投げたら、ルヴィリアと一緒になって喜んで走って行きそうな気がする。投げてみようか‥‥。
 内心の葛藤を気取られぬようにと、シルヴィアはこほんと咳払った。
「甘やかしちゃ駄目なのです。さ、ルヴィリア、もう1度最初からです!」
 とってこーい!
 おもちゃ目掛けて駆けて行く犬を目の端で追いながら、レット・バトラー(eb6621)は柔らかな土の上に簡単な地図を描いた。これから向かうのは無人の村である。当然、人気はない。しかも、「令嬢」を誘拐した相手が指定して来た村なのだ。罠が仕掛けられている可能性も否めない。
「とりあえず、俺は盗賊どもに気付かれぬよう忍び足で近づく。それまで時間稼ぎは頼むぞ」
「えっ!? 1人で? それって危険じゃないのかなぁ? だって、どこに敵がいて、どこにアリアス君が捕まっているかも分からないんだよ?」
 驚きの声をあげたユウタに、レットはう、と言葉に詰まる。
「だ‥‥大丈夫だ。俺ならば」
「駄目だよ、駄目! ボクも一緒に行く! ボクだって冒険者だよ? いざとなったらレットくんの背中を守って戦えるんだからね!」
 まさか、ここで答えに窮するなどとは!
 息を詰めたレットに、傍らで座り込んでいたラーム・パラシオン(ea4890)が呟く。
「うんうん。可愛いねぇ、本当に。キミにも見えてるんだろう? ふさふさの尻尾」
 その通りだった。
 何度か目を擦ってみても、見える気がする。
 ユウタ少年に、ふさふさとした幻の尻尾が。
「どうしたの? レットくん?」
 きょとんと尋ねるユウタの隣に、おもちゃをくわえて戻って来たルヴィリアが並ぶ。
「さァ、頑張れ」
 無責任なエールを送ってくるラームを睨みつけて、レットは不機嫌そうに顔を背けた。
「レットくん、などと呼ぶな。これでも俺はお前よりも年上で‥‥」
「あ、レットくん! ボクの事を心配してくれているんだねっ!? でも大丈夫だから!」
 聞いちゃいねぇ。
 がくりと肩を落としたレットの姿に、ラームがくすくすと楽しそうに笑う。ルヴィリアを手招きし、苦悩するレットの手に「お手」をさせてから、彼はユウタを振り返った。
「心配ない。村に着いたら、私がバイブレーションセンサーで敵の数と位置とを確認する。それから先は、キミ達に任せるぞ」
「任せるって、ラームくんはその後どうするの?」
 子供の無邪気な問いに、ラームは寂しげな笑みを見せる。
「どうせウィザードは努力したって‥‥な。ほら、物語でも、いつも剣士の脇役だろ?」
「そんな事ないよッ!」
 突然に叫ばれて、ラームは目を瞬かせた。
「ウィザードは凄いんだよッ! 魔法とかで風を起こすし、水や火を操るし、地面だって由良しちゃうんだよッ!」
「や、それは魔法が使えるからで‥‥」
 そもそも、魔法が使えないウィザードなんて聞いた事がない。
 しかし、やっぱりユウタ少年は人の話は聞いちゃいない。
「アーサーくんのところにだって、マーリンくんがいるじゃないかッ!」
「やっぱり剣士の脇役じゃないか」
 世に流布している噂によると、王は大魔術師マーリンの協力を得て聖剣を手にし、英雄となった。この場合、主体となるのはやはり王のアーサーで、マーリンは彼のサポート役だ。
冷静に指摘してくる大人に、「ひどいよー」と全速力で走り去って行くユウタ。
「暗くなる前に戻って来るんだぞー」
「いぢわるな大人ですよねぇ、ルヴィリア?」
 その後ろ姿に声を掛けるラームに、シルヴィアは「お手」をしたまま、お利口さんに次の指示を待っている愛犬へと微笑みかけた。
 指定された村まで、後1日という距離でのお話。

●作戦決行
 寂れた村を秋風が吹き抜けて行く。
 約束の時刻に村へと入ったシルヴィア達を待ち構えていたのは、案の定な光景。
 拘束された令嬢こと駆け出し冒険者のアリアスは、盗賊達から未だに「お嬢様」と思われているようだった。
「‥‥アリアスさん、なんというか‥‥ご愁傷様です」
 そっと目頭を押さえると、シルヴィアは即座に頭を切り換えた。ここから先、依頼の成否は彼女らに掛かっているのだ。
「おっと、それ以上動くなよ」
 アリアスに剣を突きつけて脅しかけて来る男に、シルヴィアはにっこり微笑んでみせた。
「まぁ、そのような事をおっしゃって。こちらは女4人だけ。貴方がたが圧倒的に有利です」
「女4人‥‥?」
 嫌そうに眉を寄せたラームの足を軽く踏みつけて黙らせると、シルヴィアは続ける。
「それに、ほら、ご覧下さい」
 その場でくるりと回って自分が武器の類を身につけていないと強調すると、彼女は「それとも」と小首を傾げた。どこか悪戯っぽい、からかうような口調で尋ねる。
「こちらは丸腰ですよ。そんな相手が怖いのですか?」
「何を!?」
 いきり立つ男達を手を挙げて制すると、ラームはぐるりと周囲を見渡した。予め、バイブレーションセンサーで盗賊の数と配置はあらかた掴んでいる。数の上では負けているが、そこいらの小悪党に苦戦する予定は毛頭ない。
 もちろん、この場合、戦うのは彼ではなく仲間達だ。
『私は戦闘向きじゃないし。むしろ、私を守って貰いたいぐらいだな』
 村に入る直前、きっぱりと言いきったラームに仲間達は目を白黒させていた。「任せて!」と息巻くお子様を除いて。
 その時の様子を思い出して、ラームの表情が和らいだ。
ーさて、ここからが私の腕の見せ所だな。レット達が背後に回り込むまで、どうやって時間を稼ぐか‥‥。
 アリアスは女性と思われているのが効を奏しているのか、さほどきつく縛られていない様子だ。冒険者であれば、あの程度の拘束を解くぐらい容易いはず。
「まあまあ、落ち着いて。人間というものは話せば分かる。分かり合えない奴など人間じゃない」
 とりあえず、時間稼ぎの布石を1つ。
 アリアスを淑女として遇している事、そして、シルヴィアの挑発に簡単に乗ったところを見ると、彼らは自尊心は高いようだ。これで、話し合いの前に襲いかかって来る事は出来なくなっただろう。
 所詮は小者の自尊心程度だが、と心中でほくそ笑み、ラームは続ける。
「ところで、最近、キャメロットで流れている噂を知っているか?」
「噂?」
 尋ね返して来た盗賊に、ラームはシルヴィアと視線を交わした。「丸腰の弱い立場」の4人に剣を向ける機会を、彼らはこれで逸した。
「そう、噂。猫の噂から劇的恋愛話、それから蘇った怖いお姉さんの話まで色々と。キャメロットから離れているからこそ、王都で何が起きているのか知っておいた方がいいと思うんだが。それに、互いに分かり合う為には難しい話よりも、世間話の方がいい」
「それは‥‥そうかもしれんが‥‥」
 曲がり角で思いっきり頭突きをかまし合った結果、恋に落ちた男女。
 二階の窓から、毎日毎日通りを眺めていた愛らしい女の子に恋い焦がれる男達が続出。だが、彼女は本当は男の子だったという話。
 迷い込んだら二度と出られない袋小路。
 ご近所の噂話から都市伝説まで、次から次へと語りながら、ラームはアリアスへと視線で訴えかけた。
ーアリアス、ここで冒険者の意地をみせろ!
 彼の視線に気付いて、アリアスは戸惑ったように眉を寄せる。
ーお前はやれば出来る子だ、出来る子なんだっ!
 反応が返った事で、ラームは更に強く、熱っぽく眼差しに想いを込めて語りかける。
 やがて、意を決したように、アリアスが唇を動かした。
「そ‥‥」
 目を眇め、唇の動きだけで伝えられるアリアスの言葉を、気持ちを、ラームは読み取った。
「そ・ん・な・に・食・べ・ら・れ・な・い・よ」
「絶対に違う」
 盗賊達から死角となる場所で、アリアスの声無き声を読み取ったユウタへ即座にツッコミを入れ、レットは鞭を巻き取った。同時に倒れ込む男を受け止めると、手早く縛り上げる。ラームが感知した伏兵の数と、彼らが気を失わせて来た男達の数はこれで同じ。
 後は、アリアスに剣を突きつけ、シルヴィア達と対峙している数人を残すのみだ。
 披露した読唇術を否定されて頬を膨らませるユウタの足下にも、気を失った男が倒れていた。
「そもそも、お前、読唇術なんて使えるのか」
「そんなの簡単だよ、レットくん! 真似してみればいいだけなんだもん!」
 聞いた自分が馬鹿だった。
 無言で、レットは転がった男達を一纏めにして放り出す。
「さ、ここは片付いた。行くぞ」
 時間稼ぎをしている仲間達へと合図を送ると、レットは地を蹴った。盗賊達が背後からの襲撃に気付くよりも早く、レットの鞭がアリアスに突きつけられた剣を弾き落とす。
「ルヴィリア!」
「アリアスくん、行けーッ!」
 愛犬の名を呼んでシルヴィアが駆け出すのと、虚を突かれた盗賊の腕が緩んだ瞬間を逃さず、ユウタがアリアスの背中を思い切り突き飛ばしたのはほぼ同時だった。
「動くな!」
 鋭いレットの声に、盗賊達が動きを止める。
「お前達の仲間には眠って貰った。残っているのはお前達だけだ」
 静かな宣告に、盗賊達の顔が歪んだ。気がつけば、いつの間にか形勢が逆転していた。
 丸腰だと思っていた者達の手にも剣が握られており、自分達の周囲を囲んでいる。
「そうだそうだ! お嬢様みたいなアリアスくんも助け出したぞ! お前達の野望もここまでだ!」
 駄目押しのようにユウタが叫べば、さすがに男達も負けを認めざるを得なかった。がくりと膝をついた彼らに注意深く剣を向けつつ、シルヴィアは激しく吠え立てていたルヴィリアを黙らせた。
「ま、こんなものだろう」
 ひょいと肩を竦めると、ラームは細い指先で長い髪を掻き上げた。
 勝負は一瞬だったが、それまでに少々時間が掛かった気がする。だが、無駄に時間を費やしたというわけでもない。確実に盗賊達は捕縛し、人質も無事に奪還する為に必要だったのだ。
 依頼は果たした。
 ベストに近い形で。
 満足げに頷き合う冒険者達の中、女性2人に抱き留められた羨ましい状態のアリアスだけが目まぐるしく変わった状況を把握しきれずに目を瞬かせていたのだった。