妖精の幼子たちを救出せよ!

■ショートシナリオ&プロモート


担当:大林さゆる

対応レベル:1〜3lv

難易度:普通

成功報酬:0 G 65 C

参加人数:5人

サポート参加人数:-人

冒険期間:09月01日〜09月06日

リプレイ公開日:2005年09月05日

●オープニング

「貴様らの命もこれまでだっ!!」
 ギャリー・ジャックの手下たちは、残忍な笑みを浮かべると、ディナ・シーの騎士たちを容赦なく斬りつけた。
「お父さぁぁぁぁぁぁーんっ!!」
 目の前で父親が殺され、妖精の幼子が泣き叫ぶ。
「我らに逆らうとどうなるか、身を持って知るがいい!」
 ジャック側に付いたファー・ダリッグは、楽しくて仕方が無いといった顔つきで、妖精の幼子を2人抱きかかえた。
「これは、代償としていただいていくよ。ヒッヒッヒ」
 ファー・ダリッグの言葉に、幼子たちは恐怖のあまり声も出ず、ただ震えるしかできなかった。
 幼子の母親は、身体中から血を流しながらも、子供たちを助けたい一心で、必死に立ち上がろうとしていた。だが、そんなこともお構いなしに、ジャックの手下は母親を蹴り飛ばした。
「余計なことしやがって!!」
 手下の傲慢な叫びは、母親には届かなかった。

「た‥‥大変だ‥‥知らせ‥‥なきゃ‥‥」
 茂みに隠れていたディナ・シーの少年は、手下たちが立ち去った後、ようやく我に返った。
 自分の無力さを歯痒く思い、少年の頬に一筋の涙が零れていた。
「どうすれば‥‥争いは‥‥終わるんだろう‥‥」
 それは、少年にとって不可解な自問自答であった。

「弟たちが捕まった?!」
 ディナ・シーの青年騎士は、少年の報告を聞き、思わず叫んだ。
「‥‥ご、ごめんなさい‥‥」
「‥‥いや、取り乱してすまなかった。よく知らせてくれたな」
 青年騎士が優しく告げると、ディナ・シーの少年は今まで抑えていた想いを解き放つかのように泣き始めた。
「‥‥やはり、弟たちを見殺しにはできない‥‥」
 ディナ・シーの騎士がそうつぶやくと、数人の仲間たちが同意するように頷いた。
 翌日、捕まった妖精の幼子たちは、森の外れにある古惚けた小屋に閉じ込められていることが分かった。案の定、見張り役がいた。
「本来ならば、騎士として、王や女王を救出するのを優先せねばならないのだが‥‥これは、俺の独断だ。だから、強請はしない‥‥」
 父を失い、母を失い、弟たちは『代償』として捕えられてしまった。
 そんな青年の想いを悟り、協力すると自ら手を差し伸べてくれる仲間たちもいた。
「できれば‥‥冒険者たちにも力を貸して欲しいところだが‥‥」
 救出作戦は、果たして成功するのか‥‥?
 今こそ立ち上がれ、冒険者たちよ!

●今回の参加者

 ea8444 コーダ・タンホイザー(46歳・♂・バード・エルフ・イギリス王国)
 eb2554 セラフィマ・レオーノフ(23歳・♀・ナイト・ハーフエルフ・ロシア王国)
 eb3117 陸 琢磨(31歳・♂・ファイター・人間・華仙教大国)
 eb3412 ディアナ・シャンティーネ(29歳・♀・神聖騎士・人間・フランク王国)
 eb3454 イグナーツ・ヨルムハイト(29歳・♂・レンジャー・人間・イギリス王国)

●リプレイ本文

 ディナ・シーの青年騎士リュートは、ディアナ・シャンティーネ(eb3412)の問いかけに、こう答えた。
「ギャリー・ジャックに味方したディナ・シーのことを、俺たちは『ファー・ダリッグ』と呼んでいる。ヤツらは、残忍なのさ。その性格が災いとなって、ついには妖精王もお怒りになり‥‥それでファー・ダリッグたちは妖精王国から追放されたんだ」
「ということは‥‥ファー・ダリッグたちは追放された腹癒せに妖精王国を滅ぼそうとジャックに味方している可能性もありますね」
 ディアナがそう言うと、リュートは無言で頷いた。
 『ファー・ダリッグ』はディナ・シーとは同種族であったが、互いの仲は悪かった。ディナ・シーは悪意のない挨拶代わり程度の悪戯をすることがあるが、ファー・ダリッグの悪戯は非情に残忍で陰険なものが多かった。それはリュート自身、よく分かっていた。何故なら、実の父母をジャックの手下たちに殺されたからだ。そんなリュートの心中を察して、セラフィマ・レオーノフ(eb2554)が優しく声をかけた。
「救出は、リュートさんたちに任せますね。その方が、弟さんたちも喜ぶと思いますし」
 その言葉に、リュートはようやく顔を上げた。
「‥‥お気遣いに感謝する‥‥」

 翌日、森の奥へと進み、小屋付近に辿り着いた。
 偵察から帰ってきたイグナーツ・ヨルムハイト(eb3454)が現在の状況を説明した後、直ちに作戦は実行された。一刻も猶予はならぬ‥‥そんな緊縛した雰囲気が漂っていた。
(「‥‥あせるな‥‥まだだ」)
 一筋の汗が、イグナーツの額から零れ落ちた。
(「‥‥落ち着くんだ‥‥」)
 そう自分に言い聞かせながら、イグナーツは木蔭に隠れ、ミドルボウを構えた。
「ユーたちはァ、完全に包囲されてまァす! 大人しくとっとと出てきやがれなのでェす! オラオラでェす!」
 何者かの叫びが森を震撼させた。小屋の周囲にいたピクシーたちがとっさに身構えた。前方約50メートル先に、3メートル近いジャイアント戦士の姿が見えた。ピクシーたちは敵が攻めてきたのかと思い、ジャイアント戦士目掛けて突撃していた。
 小屋の中にいたファー・ダリッグも反射的に外へと飛び出したが、ジャイアント戦士が全く動いていないことに気付き、舌打ちした。
「チッ、幻影か」
 その刹那、鋭い矢がファー・ダリッグの頬をかすめた。
(「外したか?!」)
 繁みに溶け込んでいたイグナーツが放った矢は確かに外れたが、充分な好機となった。小屋に戻ろうとしたファー・ダリッグの前に立ちはだかったのは、ディアナとセラフィマだった。逃げるのに精一杯だったファー・ダリッグは魔法を唱える暇もなかった。
 セラフィマがオーラソードを突きつけると、とっさにディアナがナイフを振るった。2人の攻撃は当たらなかったが、背後には陸琢磨(eb3117)がいた。
「‥‥俺たちを甘くみるな」
 琢磨は素早くロングソードを振り下ろした。ファー・ダリッグはなんとか回避しようとしたが、脇腹を切り裂かれた。
「ウギャッ?!」
 血飛沫が飛び、セラフィマの顔付きが無表情になった。
「ためらう必要はありません」
 そう言うセラフィマの口調も、どことなく冷めていた。
「ヒィィィー?!」
 セラフィマの豹変を見て、ファー・ダリッグは悲鳴をあげ、とっさに呪文を詠唱し始めた。
 詠唱中に狙いを定め、イグナーツは弓を引いた。
 自然の流れに乗るかのように、矢がファー・ダリッグの背に突き刺さった。さらに琢磨のスマッシュが狙い通りに炸裂した。見事な連携攻撃であった。
「‥‥因果応報だな」
 ファー・ダリッグが倒れると、琢磨は落ち着き払った表情でそう告げた。

 一方、ピクシーたちは大変なことになっていた。
「ズンチャッチャ、ズンチャッチャなのでェす!」
 幻影を見破られてしまったが、コーダ・タンホイザー(ea8444)に抜かりはなかった。
 メロディー‥‥かと思いきや、チャームの魔法を唱えた。専門レベルとは言え、気を抜くと失敗することもあるが、運良くチャームのみ発動した。2匹のピクシーはコーダを守るように、残りのピクシーに対してこう叫んでいた。
「この人に一歩でも近付いたら、許さへんで!!」
「近付くんじゃねぇー!!」
 堪忍袋の緒が切れたのか、魔法にかからなかったピクシーたちも負けじと言い返していた。
「なんやと、ワレー?! 上等じゃねぇか!!」
 2匹対2匹の対決が、コーダの前で繰り広げられていた。
「どんどんケンカしやがれなのでェす。その方が、ミーが楽なのでありまァす」
 騒ぎを聞きつけ、ディアナとセラフィマが駆けつけると、ピクシーたちは一目散に逃げ出した。セラフィマはピクシーたちのやり取りを見て、いつもの自分に戻っていた。
「リュートさんたち‥‥大丈夫でしょうか?」
 ディナ・シーたちのことが気になり、ディアナがそう告げると、コーダたちはすぐに小屋へと向かった。
「お兄ちゃん!!」
 2人の幼子が、リュートに抱きついた。
「‥‥腕‥‥大丈夫か?」
 リュートが心配そうに告げると、妖精の幼子たちは声を揃えて言った。
「へっちゃらだよ!」
 両腕は頑丈なロープで縛られていたため、斬るにも解くにも時間がかかったが、無事に救出することができた。救出組のディナ・シーたちも、作戦が成功して気が抜けたのか、床に着地していた。
「良かったですね、リュートさん」
 セラフィマの言葉に、リュートは皆を見渡し、深く一礼した。
「皆さんのおかげで、弟たちを助け出すことができた。本当にありがとう」
 ようやくリュートにも、笑顔が戻った。その様子を見て、ディアナは十字架のネックレスを握り締めた。
「‥‥セーラ様のご加護に感謝致します」
 自らが信仰する神に祈りを捧げた。
 祝福の言葉を聞いて、妖精の幼子たちはうれしそうに笑っていた。
「笑顔を守るというのも、悪くはないな」
 琢磨が思わずそう呟いた。