にゃんにゃんパニックin畑
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■ショートシナリオ&プロモート
担当:大林さゆる
対応レベル:フリーlv
難易度:やや易
成功報酬:0 G 65 C
参加人数:6人
サポート参加人数:1人
冒険期間:09月09日〜09月14日
リプレイ公開日:2005年09月18日
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●オープニング
「ニャーン」
「ニャニャニャ!」
昼過ぎ、庭の畑で猫の鳴き声が聞こえてきた。
「こいつは、またどうしたもんだ?」
畑の管理をしているお爺さんは困った顔で、頭を掻いた。
ようやく実をつけ始めた野菜畑で、数匹の猫たちが走り回っていた。
「これ、待たんか、こいつめ」
お爺さんは猫を捕まえようとしたが、やはり年には勝てなかったのか、猫の方がすばしっこい。なかなか捕まえることができなかった。
「参ったのぉ‥‥これからが本番だと言うのに‥‥」
猫が畑で暴れたせいか、いくつかの野菜は売り物にはならなくなってしまった。
秋の収穫前に、この騒ぎであった。さすがのお爺さんも困り果ててしまった。
数年前にお婆さんは亡くなり、今のお爺さんは一人暮らしであった。時々、近所の若者たちが手伝いに来るが、それほど親しいという訳でもない。
「うむ‥‥とりあえず、冒険者ギルドにでも助っ人を頼むとするかの」
お爺さんは腰を叩きながら、家の中へと入った。
数日後、冒険者ギルド宛にお爺さんからの手紙が届いた。
庭の畑に住み着いた猫たちを追っ払って欲しい。
ただし、なるべく畑は荒らさずに‥‥とのことである。
そして、売り物にならなくなった野菜を、どうにかして欲しいとも書いてあった。
お爺さんが住んでいる家は、ケンブリッジから歩いて1日の場所にある。
後日、息子夫婦が久し振りに帰宅することもあり、3日間で問題を解決して欲しいらしい。
「息子たちに心配はかけたくないからの」
果たして、どうなることやら‥‥。
●リプレイ本文
初日の昼前、ティーゲル・スロウ(ea3108)が代表として丁重に挨拶すると、ボジェーロお爺さんはうれしそうに出迎えてくれた。
「まさか6人も冒険者が来てくれるとは思わなかったのぅ」
そう告げた後、ボジェーロはニコニコしながら自己紹介した。皆の挨拶が済むと、ディアナ・シャンティーネ(eb3412)は自ら料理を手伝うと言った。すると、ボジェーロは寝室の奥からヒラヒラのエプロンを取り出して、ディアナに渡した。
「これは‥‥もしかして、亡くなったおばあさんのですか?」
「うむ。さすがにわしは似合わんからのぅ。せっかくだから、ディアナ嬢ちゃんが使ってくれんかの?」
ディアナは少し思案した後、こう答えた。
「このエプロン、おじいさんにとっては大切な思い出だと思うんです。差し支えなければ、汚れても良いエプロンを貸していただけませんか?」
ボジェーロの脳裏に、若き日の妻がヒラヒラのエプロンを付けて料理している姿が浮かんだ。
「‥‥そうじゃの。ディアナ嬢ちゃんに似合うと思ったが、このエプロンは大切にしまっておこうかの」
ディアナがちょっとボロボロのエプロンを借りると、所所楽柊(eb2919)がのっそりと顔を出した。
「俺、ツケモノ作ろうと思うんだけど、いいかな〜?」
「ツケモノ‥‥聞かない名じゃが、ジャパンの食べ物かのぉ?」
「うん、ジャパンの保存食」
すると、ボジェーロは嬉しそうに頷き、柊にもお古のエプロンを貸した。
2日目の夕方。ネコ捕獲班のメンバーは、畑の隅にある繁みで待機していた。
「ふわぁ〜」
トルト・メトラ(ea3009)はつい欠伸をしてしまった。トルトは寝不足気味であったが、同じくらいの睡眠しか取っていないはずのティーゲルは、いつもと変わらない顔つきだった。
「‥‥待ってた甲斐があったな」
「良かったー」
トルトが畑の隅にばら撒いていた餌につられて、2匹の子猫たちがやってきた。見計らうように、コーギー・カーディガンに変身したマクシミリアン・リーマス(eb0311)が逆方向へと行くようにわざと吠えた。ネコたちはびっくりしたのか、繁みの中へと走り去った。
「ネコさんですわ〜。捕まえますわ〜」
軽やかな足取りで、ミリランシェル・ガブリエル(ea1782)は後を追いかけた。ティーゲルたちもネコたちを追って、さらに繁みの奥へと入っていった。
「あら? ‥‥もしかしなくても、ケガしているんですの?」
なんともぎこちない口調でミリランシェルが言った。ふと見ると、傷付いた親ネコの周囲で、子猫たちがミャーミャー鳴いていた。
マクシミリアンはミミクリーの効果がまだ残っていたこともあり、気をつかって近付かないように少し離れた場所で様子を窺っていた。
「このにゃんこ、右の後ろ足が変に曲がってるよ」
トルトがそう言うと、ティーゲルがそっと近付き、直ぐにリカバーを唱えた。傷口は跡形もなくなったが、思っていたよりも骨の曲がりが酷かった。
ティーゲルは小枝を切り、紐を使って応急手当をした。
「これはあくまでも応急処置だ。ボジェーロ氏の家に戻ったら、もう少しなんとかした方がいいかもな」
「そうだね。じいちゃんの家に連れてこう」
ティーゲルはトルトの荷物も持ちつつ、親猫をそっと抱えた。
「じゃあ、コネコちゃんたち、だっこしますね〜」
ミリランシェルが3匹の子猫を抱きかかえ、変身の解けたマクシミリアンが4匹の子猫を拾い上げた。
「お母さんネコ、きっと大丈夫だと思います」
ボジェーロの家に戻った後、マクシミリアンが今までの経緯を話した。
「そうか‥‥親ネコが骨を折っていたのか。かわいそうにのぅ」
談話室にて、おじいさんが治療を施していたが、専門的な技術は持っていなかったため、少し困った顔をしていた。
「この際ですから、足が治るまで、おじいさんが面倒みるっていうのはどうでしょうか?」
マクシミリアンがそう言うと、柊は子猫を撫でながらこう告げた。
「うん、俺もそうした方が良いと思うな〜。おじいさんが定期的に餌をやれば、畑を荒らし回らないと思うし」
「あ、俺も賛成ー! どうせなら、じいちゃんが飼っちゃえば?」
トルトはそう言いながら、ボジェーロの肩に乗った。
「ふむ‥‥飼うかどうかはともかく、治るまではわしが面倒みようかのぅ」
その言葉に、ティーゲルは何故か安心したような瞳をしていた。
ネコたちはとりあえず、ボジェーロの家で面倒をみることになった。
少し経ってから、ディアナがエプロン姿でやってきた。
「あの‥‥お夕食ができました。あまり自信はありませんが‥‥」
「気にすんなって。昨日は『でろでろでろりーん』な料理だったけど、今日はどんなのかな〜って、楽しみにしてたから、な?」
柊はいつもの調子ながらも、懸命に言っていた。
「そうだ、柊。荷物運んでくれたお礼に、俺の分、あげるよ」
トルトの言葉に、ディアナが微笑みながら答えた。
「えと‥‥野菜の入っていないスープも作ってみました。味気ないかもしれませんけど」
「えっ?! いや、別に‥‥嫌いって訳じゃないんだけど‥‥うん、食べるよ」
トルトが席につくと、ボジェーロはティーゲルにとっておきのワインを差し出した。
「あ、ワイン」
「大きくなってからな」
ティーゲルがそう告げると、トルトは頬を膨らませた。
「えー、それじゃ一生飲めないじゃないかー」
すると、皆が楽しそうに笑っていた。
3日目のお昼。
「しょっぱいですわ!」
思わず、ミリランシェルが叫んだ。
「所所楽さん‥‥お塩、何杯いれたんですか?」
マクシミリアンが複雑な表情で言うと、柊は頭を軽く掻きながら告げた。
「えーと‥‥10杯かな? あれ、20杯だったかな〜?」
それを聞いて、マクシミリアンは柊の料理姿を想像した。それは、柊が大雑把に塩を入れて、ツケモノを作っている様子であった。
「白い飯があったら、丁度良かったかも〜?」
とは言え、米はイギリスにおいては入手が大変困難であるため、ケンブリッジでも当然ご飯まで用意することはできなかった。
ミリランシェルがポツリと告げた。
「‥‥しょっぱいけど‥‥意外と美味しいですわ」
「ディアナの料理、できたかな〜」
誤魔化すように、柊は調理場へと向かった。
「お、今日は‥‥『とりとりとりりーん』だね。日に日にうまく‥‥ってか、初日のスープがどうとか、関係ないからな〜」
すると、ディアナは小さく笑っていた。
「料理作るのって、楽しいですね。柊さんが『おツケモノ』を作っていた時、そう思いました」
「ディアナー、おなか減ったよー」
トルトの呼びかけに、ディアナと柊は皿を持って食卓へと向かった。