【妖精王国】外伝・妖精たちのお茶会

■ショートシナリオ


担当:大林さゆる

対応レベル:フリーlv

難易度:普通

成功報酬:0 G 65 C

参加人数:6人

サポート参加人数:2人

冒険期間:10月23日〜10月28日

リプレイ公開日:2005年11月02日

●オープニング

 冒険者たちの協力により、妖精王国も再び落ち着きを取り戻した。
 そんなある日のこと。
「いろいろと力を貸してもらったから、何かお礼がしたいわね」
 ディナ・シーの少女たちが、集いの場で話し合っていた。
「私たちで『お茶会』を開くというのは、どうかしら?」
「そうね。ケンブリッジにいる人たちとの交流が深まれば、妖精王もきっとお喜びになるわ」
 花の妖精たちも、同意するように微笑んでいた。
「けれど、私たちのティーセットでは、人間たちには小さ過ぎるわ」
「どうしましょう?」
「そういえば、ケンブリッジには『クエストリガー』という冒険者ギルドがあったわね」
「そこの人たちに頼んで、人間たちのティーセットを貸してもらいに行ってみる?」
「断られるかもしれないけれど、言うだけ言ってみましょうか?」
 ディナ・シーの少女たちは、相談した結果、ケンブリッジのギルドへと向かうことにした。

「私たち、皆さんにお礼がしたいの。だけど、なかなかうまく伝わらなくて‥‥それで、いろいろと相談してみたのだけれど、私たちの『秘密の場所』でお茶会を開くことにしたわ」
 ディナ・シーの少女は、ギルドの長に頭を下げた。
「とは言っても、さすがに100人もお招きできませんし‥‥代表の方が何人か来ていただけるとうれしいのですけど」
 こうして、ギルドへと『お茶会』の話が持ち込まれてきた。
「花の蜜で作った甘いお菓子をご用意しますわ。どうせならば、楽しくやりたいですわ。皆様が来て下さるならば、踊りや歌もご披露致しますわ」
 ディナ・シーの少女は、微笑みながら会釈した。
 人と妖精が互いに協力し合えるならば、人と人との絆も自然なことと言える。
 妖精たちとの『お茶会』は、そのきっかけに過ぎない‥‥。
 そう願う人々もいた。

●今回の参加者

 ea0673 ルシフェル・クライム(32歳・♂・神聖騎士・人間・神聖ローマ帝国)
 ea1364 ルーウィン・ルクレール(35歳・♂・ナイト・人間・イギリス王国)
 ea8737 アディアール・アド(17歳・♂・ウィザード・エルフ・ビザンチン帝国)
 eb1915 御門 魔諭羅(28歳・♀・陰陽師・人間・ジャパン)
 eb3226 茉莉花 緋雨(30歳・♀・志士・人間・ジャパン)
 eb3412 ディアナ・シャンティーネ(29歳・♀・神聖騎士・人間・フランク王国)

●サポート参加者

李 麟(eb3143)/ 紗夢 紅蘭(eb3467

●リプレイ本文

 出発前、ギルドにて。
「人数分のティーセットを用意しようと思うのだが‥‥」
 不慣れなイギリス語で茉莉花緋雨(eb3226)がそう言うと、ルーウィン・ルクレール(ea1364)が少し思案した後、こう告げた。
「妖精たちとのお茶会は、今回だけではなく、今後も行われるようになればさらに交流が深まるきっかけになるはずです。どうせなら、新品のティーセットを持っていって、妖精たちに差し上げたいと思っています」
 すると、御門魔諭羅(eb1915)が同意するよう微笑んだ。
「生徒会の人たちに相談してみませんか? 今後もお茶会が行われることを願って、新品のティーセットをお持ち致しましょう」
 妖精騒動に関しては、生徒会も関与していた。ならば、話を持ちかけてみるのも一つの手であった。
「それでは、私はハーブティーをご用意しようと思います」
 アディアール・アド(ea8737)は、ふと妖精王国の事件を思い出しながら、そう告げた。
 準備が整い、約束の時間になると、ディナ・シーの少女たちが現れた。
「こんにちは! それでは、早速行きましょう!」
 ディナ・シーたちの誘導で、冒険者たちは『秘密の場所』へと向かうことになった。
「どんな場所なのか、今から楽しみです」
 ディアナ・シャンティーネ(eb3412)は楽しそうにしていた。緋雨も同じことを考えていたのか、ふと微笑んでいた。
 森の木々は秋に彩られ、時折、リスたちが木蔭から顔を覗かせていた。
「やはり、森の中は落ち着きますね」
 アディアールは、森の中をゆっくりと歩くことができるという事実に、心底安堵していた。

 3日目当日。
 森を抜けると、見たこともない花々が散りばめられた空間になっていた。
「白と黄色の花がたくさん‥‥綺麗‥‥秘密の花園ですね」
 ディアナが思わずそう呟いた。
「皆様、お待ちしておりましたわ」
 出迎えのディナ・シーが笑顔で言った。お茶会の準備はすでに整っており、すぐにでも始められるようになっていた。日の光を浴びて、花園は輝いていた。
「新品のティーセットをお持ちしました」
 緋雨が飛び切りの笑顔でそう言った後、ルーウィンが持ってきた事情を説明した。
「まあまあ、それはご丁寧に。ありがとうございます」
 そう言いながら、上品なドレスを纏った一人のディナ・シーが舞い降りてきた。すると、傍にいた侍女のディナ・シーが慌ててやってきた。
「姫様! あれほど王からご忠告を受けたというのに」
「だって、お父様もお母様もハロウィンのお祭に行ってしまって、退屈だったんだもん。私だけお城で居残りなんて、できる訳ないじゃない?」
 どうやら、この口振りから察して、ディナ・シーの王女であることが冒険者たちにも分かった。
 ディアナが丁重に挨拶をして、他の冒険者たちが自己紹介すると、王女はうれしそうに笑っていた。
「突然来てしまって、ごめんね〜。じゃなかった、申し訳ございません。王国は平穏になったというのに、お父様ったら『おまえは可愛い過ぎるから、まだまだ狙われる危険がある。城で大人しくおれ』なんて‥‥」
 そこまで言うと、侍女が口を遮るようにぴしゃりと言った。
「姫様!」
「う‥‥余計なことを言ってしまって、ごめんなさい」
 王女が少ししょんぼりすると、魔諭羅が元気付けるように言った。
「あの‥‥気になさらないで下さい。王女様とお会いできて、とてもうれしく思います」
 魔諭羅の言葉に、王女はすぐに笑顔になった。意外と単純な面もあった。 
「ありがとう〜。それじゃ、さっそくお茶会を始めましょう」
 そして、妖精たちとの『お茶会』が始まった。
 ディナ・シーの少女たちが歌や踊りを披露して場が和んでくると、ルシフェル・クライム(ea0673)が歌のリズムに合わせてレオン流の華麗な剣技を見せた。
「戦いの技も、こうして見てみるとまた違った味わいがありますね」
 ルーウィンは歌に聞き惚れながらも、ルシフェルの剣技にも目を離さなかった。
 ルシフェルは一礼してレイピアを納めると、魔諭羅に声をかけた。
「一緒に踊っていただけませんか?」
「え、あの‥‥私、異国の踊りはよく分からないのですが‥‥」
「ご安心を。私の手を取ってくれれば‥‥それだけでいい」
 ルシフェルに促されて、魔諭羅は躊躇いながらも手を取った。
 小さな楽器を持ったディナ・シーたちが奏でる曲に合わせて、ルシフェルは魔諭羅が踊り易いように気を配っていた。そんな様子に、ディアナは心温まるような気がしていた。
 曲が終わり、ルシフェルと魔諭羅が一礼すると、ディナ・シーたちは盛大な拍手をしていた。
「素敵なダンスをありがとう! なんだか贈り物をいただいた気分だわ。本当にありがとう!」 
 王女も感動のあまり、はしゃいでいた。
「そんなに喜んでいただけたとは‥‥光栄だな」
 ルシフェルが微笑した。
「皆さん、ハーブティーはいかがですか?」
 アディアールと緋雨がお茶の用意をしていたことに気付き、ディアナもすかさず手伝いに入った。
「いい香りですね」
 ルーウィンはゆったりと切り株に腰掛け、ハーブティーの味を堪能していた。
「喉越しもさわやかだね」
 妖精の王女も、自分専用の豪華なカップでお茶を飲んでいた。
「初めての味ですけど、とても美味しいです」
 妖精たちが用意した甘いお菓子を食して、魔諭羅はそう言った。
 少し雑談した後、自然と妖精王国に関する話題になっていた。
「もしお時間があれば、巨大樹とお話させていただきたいのですが、よろしいでしょうか?」
 アディアールの問いに、王女はしばらく悩んだ後、こう言った。
「ここから巨大樹まで行くには、さらに時間がかかるかな?」
「そうですか。では、またの機会に‥‥」
 そして、緋雨がさらに問い掛けると、王女は恥かしそうに笑いながら言った。 
「妖精王国の歴史?‥‥うっ‥‥ごめんね。勉強不足で、よく分からないな」
「それでは、妖精たちは普段、どんな生活をしているのか、教えていただけませんか?」
 王女ということもあり、緋雨は気遣って敢えて丁寧語で話していた。
「どんな生活?‥‥みんな、好きなことしてるんじゃないかな? 基本的なことは、人間たちの生活とそれほど変わらないような気もするけど、やっぱり妖精と人間とでは、考え方が違うかも?」
 王女が首を傾げながら言うと、ディアナがこう告げた。
「私たちにとっては『当り前』のことでも、妖精さんたちから見れば『不思議なこと』に見えるかもしれませんね。文化の違いは、お互いの考えを尊重する架け橋になれば良いですね。いえ‥‥そう願うだけではなくて、少しでもそうなるように努力していきたいです」
 ディアナの決意を聞いて、ルシフェルがふと告げた。
「口で言うのは簡単だが、実行するとなると、なかなか難しいものだ。たとえ失敗しても、後悔だけはしたくないがな」
 その言葉に、ディアナも共感したようだった。
「そうですね。努力していきたいという気持ちを忘れたくないというより、自然とそうなるようにしていきたいです。文化の違いを争いの種にするのではなく、調和への道標となるように‥‥」
 ディアナはそう言いながら、自ら信仰する神に願いを込めた。
「王女様、今日の記念にこれを差し上げたいと思います」
 緋雨は持っていたローズ・ブローチを王女に渡した。
「‥‥ありがとう」
 王女は受け取ったローズ・ブローチを大切に両手で包むと、想いを込めて、両手を広げた。
「それでは、本日の記念に、このローズ・ブローチを受け取って下さいませね」
 妖精の王女は微笑みながら、緋雨にローズ・ブローチを手渡した。